この記事に出てくる日数・金額・制度の条件は、厚生労働省・ハローワークインターネットサービス・日本年金機構・東京都主税局・新宿区の公式ページを実際に開いて読んだ内容だけを載せています。まとめサイトや他社ブログの解説は使っていません。公式で確認できなかったことは「確認できなかった」とそのまま書きました。筆者は元アパレル販売員で、いまはファッションバイヤー兼古物商として働いています。確認日は本文の出典に書きました。
アパレルを辞めて転職するときに効いてくるのは、行き先より先に順番です。辞めてから探すと、お金が出ていく側だけが退職日から始まります。
失業手当は、辞めた日からは始まりません。ハローワークで求職の申込みをした日が起点で、そこから待期7日と給付制限が乗ります。いっぽう国民年金・国民健康保険・住民税は、退職日から自分の財布に移ります。この記事は、その入る額と出る額を公式の数字だけで並べたものです。
その引き算を見る「辞めてから探す」は、手当が入るより先に支払いが始まる
売場に5年も10年も立っていると、辞めたい理由は1つではなくなります。給料、休み、社販、体力。理由を並べるところまでは、たいていの人が終わっています。
そこで止まるのが、順番です。先に辞めて落ち着いてから探すか、在職中のうちに決めてしまうか。ここだけは気持ちで決めると、あとから金額で返ってきます。
まず、公式ページに書いてある数字を3つ並べます。
出典:厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」/ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」/日本年金機構「国民年金の保険料はいくらですか。」。2026年9月12日に確認。
この3つは、向きが逆です。上の2つは「まだ入らない」期間で、下の1つは「もう出ていく」金額です。辞めた瞬間から、この2つが同時に走り出します。
辞めた日から、手当が初めて振り込まれるまでの順番
「待期7日と給付制限1か月だから、1か月と1週間で入る」——ここを間違える人がとても多いところです。実際にはもう2つ、間に段があります。

大事なのは3段目です。起点は退職日ではなく、ハローワークで求職の申込みをして受給資格の決定を受けた日。離職票が会社から届くのが遅れると、後ろの段が全部そのぶん遅れます。待期の7日すら、まだ始まっていません。
そして6段目。失業の認定は原則4週に1度で、認定を受けるには、その期間に原則2回以上の求職活動の実績が要ります。公式には、求人情報を眺めただけ、知人に紹介を頼んだだけは実績に含まれないと明記されています。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」/同「雇用保険の具体的な手続き」。2026年9月12日に確認。
入ってくる額は、自分で計算できる
1日あたりの額を「基本手当日額」といいます。公式の説明はこうです。
賞与は入りません。毎月きまって支払われた賃金の6か月分を180で割ります。賃金が低い人ほど率は高くなります。
アパレルの売場で月給24万円(額面)だった人なら、こうなります。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 賃金日額 | 24万円×6か月÷180 | 8,000円 |
| 基本手当日額 | 8,000円の50〜80% | 4,000〜6,400円 |
| 90日分の合計 | 上の日額×90日 | 36万〜57.6万円 |
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90日というのは、自己都合で辞めた人で、雇用保険に入っていた期間が1年以上10年未満のときの日数です。この日数は離職理由の区分で変わります。そこは別の記事で表にしてあるので、自分がどちらに当たるかは先にそちらで確かめてください。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」/同「基本手当の所定給付日数」。2026年9月12日に確認。
出ていく側は3つ。うち2つは、自分の額を調べないと分からない
会社を辞めると、これまで給与から天引きされていたものが、自分で払うものに変わります。3つあります。
| 払うもの | いつから | 金額 | 調べる場所 |
|---|---|---|---|
| 国民年金 | 退職日から | 月17,920円 | 全国一律(令和8年度) |
| 国民健康保険 | 退職日から | 人によって違う | 住んでいる区市町村の公式ページ |
| 住民税 | 退職の時期による | 前年の所得で決まる | 手元に届く納税通知書 |
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金額を出せるのは国民年金だけです。残りの2つは、住んでいる自治体と前年の所得で変わるので、この記事では金額を書きません。ただし、しくみは共通なので、そこだけ押さえておけば自分で調べられます。
住民税は、収入が止まっても下がらない
東京都主税局の説明によると、個人住民税は前年の所得金額に応じて課税されるものです。給与所得者は6月から翌年5月までの毎月の給与から差し引かれ(特別徴収)、それ以外の人は年4回に分けて自分で納めます(普通徴収)。
つまり、辞めた翌年に届く住民税は、まだ売場に立っていた年の所得で計算された額です。収入が止まったからといって下がりません。そして退職の時期によって、渡され方が変わります。
| 辞めた時期 | 残りの住民税がどうなるか |
|---|---|
| 6月1日〜12月31日 | 原則、普通徴収に切り替わって自分で納める。本人が申し出れば、給与や退職金から一括徴収してもらえる |
| 翌年1月1日〜4月30日 | 本人の申し出がなくても、5月31日までに支給される給与・退職金から一括徴収される(会社の義務) |
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1月から4月に辞めると、最後の給与や退職金から住民税の残りがまとめて引かれます。「思っていたより手取りが少ない」はここで起きます。
出典:東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」/同「特別徴収にかかる手続きについて」。2026年9月12日に確認。
自己都合だと使えない救済が、ひとつある
「払えないなら減らしてもらえばいい」と思うところですが、2つの救済は、条件がまったく違います。ここが自己都合で辞める人にとっていちばん痛いところです。
退職による特例免除
自己都合でも使える- 退職した本人の前年所得をゼロとして審査する
- 離職票または雇用保険受給資格者証が要る
- ただし世帯主と配偶者の前年所得も審査の対象になる
非自発的失業者の軽減
自己都合では使えない- 特定受給資格者・特定理由離職者だけが対象
- 前年の給与所得を100分の30として計算してもらえる
- 離職日の翌日の属する月から翌年度末まで
国民年金のほうは、自分から辞めた場合でも使えます。日本年金機構の説明では、退職による特例免除は退職した人の前年所得をゼロとして審査するとあります。ただし審査の対象は本人だけではありません。世帯主と配偶者の前年所得も見られるので、実家に戻る人や共働きの人は通らないことがあります。
国民健康保険の軽減のほうは、そうはいきません。新宿区の説明によると、対象はハローワークで特定受給資格者または特定理由離職者と認められた人で、雇用保険受給資格者証の離職理由コードが11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)か23・33・34(特定理由離職者)である必要があります。自分の意思で辞めた場合のコードはここに入りません。
出典:日本年金機構「【転職をご検討中の方へ】国民年金の加入、保険料免除・納付猶予制度のご案内」/新宿区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減について」。2026年9月12日に確認。
では、辞めてから探すのはやめたほうがいいのか
手当が初めて入るまでのおよそ1か月半を、手当ゼロで越えられる蓄え。そして、その間も出ていく固定費の自分の金額。この2つが分かっていれば、先に辞めても壊れません。分からないまま辞めると、条件を下げて決めることになります。
いちばん損をするのは、辞めることでも在職中に動くことでもありません。手当が止まる時期に焦って、いちばん早く受かった1社に決めてしまうことです。転職で年収が動くのは職種を変えたときだけなので、焦って同じ職種の別の店に移ると、辞めた理由がそのまま残ります。
3つ以上あてはまるなら、辞める前に順番を変えたほうが安全です
- 手当がゼロの1か月半を越えられる蓄えが、いま手元にない
- 自分の国民健康保険料がいくらになるか調べたことがない
- 来年の住民税の額を見ていない
- 行き先の職種がまだ決まっていない
- 「辞めたら少し休みたい」と思っている
→ 3つ以上なら、まず在職中に行き先を絞る段階です。辞めるかどうかは、そのあとで決まります。
行き先の分類そのものは、この記事では扱いません。すでに数字で分けた記事があるので、そちらを先に読んでから戻ってくるのがいちばん早いです。
自分に向いている行き先を1分で診断する 所要1分・登録不要・個人情報の入力なし在職中にやることは、4つだけ
辞める前にやるべきことは多く見えますが、金額に効くのは次の4つだけです。上から順に進めてください。
- 自分の被保険者だった期間を数える
雇用保険に入っていた期間が1年以上10年未満なら、自己都合での所定給付日数は90日です。10年以上20年未満で120日、20年以上で150日。まず自分がどこに入るかを知ります。
- 来年の住民税の額を、いまの納税通知書で見る
住民税は前年の所得で決まります。いま手元にある通知書の年税額が、辞めたあとも同じ規模で来ると思ってください。ここが、蓄えの計算でいちばん抜けやすい項目です。
- 住んでいる区市町村の国民健康保険のページを開く
保険料の計算方法と、軽減の条件が載っています。自己都合だと非自発的失業者の軽減は使えないので、素の金額を見ておきます。
- 行き先の職種を、在職中に1つに絞る
ここまで終わってから辞めれば、手当の残り日数を気にしながら探すことになりません。職種が決まっていれば、面接で聞かれる「なぜ辞めたのか」にも金額の裏づけで答えられます。
先に辞めてもいい人
- 手当ゼロの1か月半ぶんの蓄えがある
- 行き先の職種がもう決まっている
- 会社都合・雇止めなど、特定受給資格者に当たる可能性がある
- 資格の勉強や教育訓練の予定が具体的にある
在職中に決めたほうがいい人
- 貯金が給料1か月分を切っている
- まだ「アパレル以外」としか決まっていない
- 辞めたらまず休みたいと思っている
- 住民税と国保の自分の金額を見ていない
筆者自身は、新卒で入ったアパレルを8か月で辞めています。そのときに痛かったのは辞めたこと自体ではなく、次をどうするかを辞めたあとから考え始めたことでした。順番が逆だと、選ぶ側から選ばれる側に回ります。
まとめ
アパレルを辞めて転職するとき、金額を決めているのは行き先より先に順番でした。
- 手当の起点は退職日ではない
ハローワークで求職の申込みをした日が起点。そこから待期7日と、自己都合なら給付制限が原則1か月。離職票が遅れると全部が遅れます。
- 固定費だけは退職日から始まる
国民年金は令和8年度で月17,920円。国民健康保険と住民税は人によって違うので、辞める前に自分の金額を調べます。住民税は前年の所得で決まるので下がりません。
- 自己都合だと国保の軽減は使えない
非自発的失業者の軽減は特定受給資格者・特定理由離職者だけ。いっぽう国民年金の退職による特例免除は自己都合でも使えますが、世帯主と配偶者の所得も審査されます。
- 「辞めて少し休む」は制度の外
すぐに就職できる状態でないと基本手当は受けられないと公式に書かれています。休みたいなら、それは手当とは別に用意する期間です。
ここまで分かったうえで、まだ足りないのは「どこへ行くか」ひとつです。在職中のいまなら、落ち着いて選べます。
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