筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の制度・数字は、すべて厚生労働省とハローワークインターネットサービスの公式ページで確認したものです(確認日 2026年9月7日)。制度の細部は改正されることがあるため、手続きの前に必ず最新の公式ページとお近くのハローワークでご確認ください。
「転職理由」の例文を整える前に、離職票に書かれた離職理由を先に読んでください。同じ辞め方でも、区分ひとつで受け取れる日数が最大90日変わります。
アパレルを辞めるとき、多くの人が応募書類の文面から考え始めます。ですが転職理由には宛先が2つあり、そのうち片方――ハローワークに出るほうは、あなたの生活費に直接効きます。元アパレル販売員の筆者が、公式の表をそのまま並べて、どこを見ればいいかだけを説明します。
日数がどれだけ変わるか見る出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(確認日 2026年9月7日)
転職理由には、宛先が2つある
「アパレル 転職理由 例文」で検索してたどり着く記事のほとんどは、応募書類に貼るための文面を並べています。それも必要です。ただ、辞める前後にあなたが「辞めた理由」を書く場面は、実は2回あります。
応募先に出す「転職理由」
評価が変わる- 職務経歴書と面接で使う
- 読むのは採用担当者
- 書き方で印象が動く
- 間違えても、落ちるだけで済む
離職票に載る「離職理由」
金額が変わる- 会社が離職票に記入する
- 読むのはハローワーク
- 書き方では動かない。事実で決まる
- 見落とすと、日数がそのまま減る
ややこしいのは、この2つで同じ言葉が正反対の意味を持つことです。応募先に「人間関係が理由で辞めました」と伝えるのは、多くの場合それだけでは不利に働きます。一方でハローワークの世界では、「上司・同僚からの著しい冷遇や嫌がらせ」は、公式に定められた区分のひとつに実際に載っています。
区分が変わると、日数はどれだけ変わるのか
雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)が何日分もらえるかは、公式に「所定給付日数」として表で決まっています。この表は、離職した人を大きく2つに分けています。
- 特定受給資格者・一部の特定理由離職者
倒産・解雇など、再就職の準備をする時間の余裕なく辞めることになった人。日数が手厚くなります。
- 一般の離職者
上に当てはまらない人。いわゆる自己都合退職の多くがここに入ります。
30代の欄だけを、公式の表からそのまま抜き出して並べます。
| 被保険者だった期間 | 1年未満 | 1〜5年 | 5〜10年 | 10〜20年 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳以上35歳未満(手厚いほう) | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満(手厚いほう) | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 一般の離職者(全年齢) | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 | 150日 |
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出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」(確認日 2026年9月7日)。公式の表は一部が結合セルになっているため、上の表はそれを展開して並べ直しています。数字そのものは公式表のままです。
引き算をすると、こうなります。アパレルに新卒から入って30代半ばという、いちばんありがちな経歴のところが、いちばん差が大きく開きます。
90日は、およそ3か月です。次の職場を選ぶときに、3か月分の余裕があるかないかは、選べる求人の範囲そのものを変えます。この差は、応募書類の文章をどれだけ上手に書いても埋まりません。
さらに、待たされる期間も変わる
日数だけではありません。正当な理由がなく自己都合で辞めた場合、7日間の待期が終わってからさらに一定期間、支給されない「給付制限」があります。
- 待期 7日間
受給資格が決まった日から7日間。これは区分にかかわらず全員に共通します。
- 給付制限 原則1か月
正当な理由がない自己都合退職の場合。退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月です(同年3月31日以前に辞めた場合は原則2か月)。
- 例外:3か月になる場合
退職日から遡って5年のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合。また、自分の重大な責任による解雇(重責解雇)の場合も3か月です。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(LL070228保01)(確認日 2026年9月7日)
アパレルでよくある辞め方は、公式のどの項目に当たるか
ハローワークは「特定受給資格者の範囲」として、当てはまる状況を公式に列挙しています。ここでは、アパレルの現場で実際に起きやすいものだけを抜き出して、公式の文言と並べます。
| 現場での言い方 | 公式の項目(抜粋) | 区分 |
|---|---|---|
| 店長や先輩からの当たりがきつく、無視や嫌がらせが続いた | 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者 | 特定受給資格者 |
| 求人票や契約時の説明と、実際の労働条件が全く違った | 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者 | 特定受給資格者 |
| 手当や歩合が削られ、月の手取りが大きく落ちた | 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る) | 特定受給資格者 |
| 棚卸やセールが重なり、残業が何か月も続いた | 離職の直前6か月間のうちに、いずれか連続する3か月で45時間、いずれか1か月で100時間、又はいずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者 | 特定受給資格者 |
| 「そろそろ考えたら」と繰り返し言われて辞めた | 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない) | 特定受給資格者 |
| 契約社員・派遣で3年以上続けて働いてきたが、更新されなかった | 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者 | 特定受給資格者 |
| 店舗が閉店した/通えない場所に移転した | 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む)に伴い離職した者/事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者 | 特定受給資格者 |
| 立ち仕事で腰や膝を痛め、続けられなくなった | 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者 | 特定理由離職者 |
| 更新を希望したが、有期契約が更新されなかった(上の3年以上に当たらない場合) | 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(更新を希望したにもかかわらず合意が成立するに至らなかった場合に限る) | 特定理由離職者 |
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出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」(確認日 2026年9月7日)。左の列は筆者が現場の言い方に置き換えたもので、公式の文言は中央の列がそのままです。項目はほかにもあるため、必ず出典で全文を確認してください。
「特定受給資格者」と「特定理由離職者」はどう違うのか
おおまかに言えば、特定受給資格者は倒産・解雇など会社側の事情で辞めることになった人、特定理由離職者は有期契約が更新されなかった人や、正当な理由のある自己都合で辞めた人です。所定給付日数の表では、特定受給資格者と、特定理由離職者のうち「範囲」の1に当たる人(有期契約が更新されなかった人)が、同じ手厚い表を使います。ただしこの扱いは、離職の日が2027年3月31日までの間にある方に限る、と公式に明記されています。詳しくは出典のページをご確認ください。
自分がどちら側か、先に確かめる
ひとつでも当てはまるなら、離職票が届いたときに読み込む価値があります
- 辞める直前の数か月、残業が明らかに増えていた
- 手当・歩合・インセンティブが削られ、月の手取りが目に見えて下がった
- 入社時に聞いていた条件(勤務地・シフト・給与・職種)と実際が違った
- 特定の人からの言動が原因で、出勤そのものがつらくなっていた
- 上司から退職をほのめかされる場面が複数回あった
- 契約社員・派遣で、更新を希望したのに更新されなかった
- 店舗の閉店・移転・撤退が辞めるきっかけだった
→ ひとつでも当てはまるなら、離職票の離職理由欄をそのまま受け入れる前に、公式の「範囲」と照合してください。
応募書類はいつでも直せます。離職理由の確認は、離職票が届いたタイミングを逃すと手間が増えます。順番を逆にしないでください。
離職票が届いてからの手順
- 離職票-2の「離職理由」欄を読む
事業主が記入した離職理由と、その具体的事情の記載内容を確認します。ここに書かれていることが、そのまま通るわけではありません。
- 離職者本人が記入する欄を確認する
離職票には、事業主が記載した内容について、離職者本人の判断を記入する欄があります。事業主の記載に異なる意見があるなら、そこに記入します。
- 手元の証拠を集めておく
シフト表、タイムカードの控え、給与明細、雇用契約書、求人票の写し、やり取りの記録など。時間外労働の時間数や賃金の低下は、記録があるかどうかで話が変わります。
- ハローワークで求職の申込みをするときに相談する
離職理由の判断はハローワークが行います。自分の認識と事業主の記載が違う場合は、その場で申し出てください。
そのうえで、応募先に出す「転職理由」をどう書くか
ここからが、検索していた本題です。ただ、ここでも順番があります。例文を先に選ぶと、面接で1つ掘り下げられただけで崩れます。
使いものにならない書き方
そのまま出すと詰まる型
- 「人間関係が合わなかった」…次の職場でも同じでは、と読まれる
- 「給料が低かった」…条件だけで動く人だと読まれる
- 「土日が休めなかった」…業種を変えない限り解決しない
- 「スキルアップのため」…中身がなく、誰でも書ける
- 「アパレルが好きなので」…好きは志望動機で、転職理由ではない
通る型がやっていること
- 辞めた事実を、数字で1つだけ示す
- その事実に対して、在職中に何をやってみたかを言う
- それでも動かなかった構造の部分を、恨みなく説明する
- 次の職場でやりたいことに、そのままつなげる
骨組みは3つだけ
例文をそのまま貼るのではなく、この3つの箱を自分の言葉で埋めてください。埋まらない箱があるなら、その部分がまだ言語化できていないところです。
- 事実(数字を1つ入れる)
「担当ブランドの店舗が2店から1店に統合され、販売以外に任されていた在庫管理の範囲が変わりました」のように、確認できる事実だけを書きます。感情を入れないほうが強くなります。
- 自分が試したこと
「社内の職種転換制度に応募しました」「上長に配置の相談をしました」など、辞める前に動いた事実。これがあるだけで、逃げたのではないと伝わります。
- 次でやりたいこと
「店頭で数字を作ってきた経験を、EC側の在庫と販促の設計に使いたい」のように、辞めた理由と地続きにします。ここが飛ぶと、転職理由と志望動機が別々の話に見えます。
筆者は販売の現場から買取の査定側に移りましたが、面接で最も掘られたのは「なぜ辞めたか」ではなく「辞める前に何を試したか」でした。辞めた理由そのものは、たいてい面接官のほうが先に想像がついています。試したことを具体的に言えるかどうかで、話の重さがはっきり変わります。
職種の方向が決まっていないなら、先にそこから
転職理由の3つ目の箱――「次でやりたいこと」が埋まらないまま例文を探している人が、いちばん多いパターンです。その場合、文面をいじっても堂々巡りになります。先に方向を出してから、書いてください。
アパレル経験から向く職種を診断する 特定受給資格者の範囲(公式)を全文で確認する