アパレルから異業種へ転職|賃金が上がって門も開いている産業は、16のうち3つだけ

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異業種で上がるのは3つ

※この記事の数字は、すべて厚生労働省の統計表を実際に開いて、表のマス目から書き写したものです(確認日:2026年9月11日)。転職サービスの独自調査や、まとめサイトの数字は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商です。

CONCLUSION

「異業種に出れば上がる」は半分しか当たっていません。上がって、しかも門が開いている産業は16のうち3つです。

30代前半の男性で見ると、いまアパレル販売員が立っている高さは月31万6,900円。ここより賃金が高い産業は15のうち8つ、低い産業は7つ。ほぼ半々です。そこに「入職率」を重ねると、上がる側で、かつ人の出入りが産業平均より多い産業は、情報通信業・不動産業・医療福祉の3つしか残りません。そして接客経験がそのまま活きる産業ほど、賃金は下がる側に固まっています。

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「異業種なら上がる」は、半分しか当たっていない

アパレルの店頭に立っていると、必ず一度は考えます。「この業界にいるから給料が上がらないのであって、外に出れば変わるんじゃないか」と。

これは確かめられます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、産業ごと・性別ごと・年齢階級ごとに、実際に支払われた賃金の平均を毎年出しているからです。アパレルの販売職は日本標準産業分類でいう「卸売業,小売業」に入ります。ここを基準の高さにして、ほかの15産業と並べれば、外に出たときに上がるのか下がるのかがそのまま読めます。

補足:ここでいう「賃金」は、令和7年6月分として支払われた所定内給与額の月額平均です。年収でもボーナス込みでもありません。残業代も入っていません。対象は労働者10人以上の民営事業所です。

30代前半の男性(30〜34歳)の数字を、高い順に並べます。

産業賃金(千円)卸売業,小売業との差
金融業,保険業449.9+133.0
学術研究,専門・技術サービス業429.5+112.6
鉱業,採石業,砂利採取業392.5+75.6
電気・ガス・熱供給・水道業383.5+66.6
情報通信業374.1+57.2
不動産業,物品賃貸業359.4+42.5
教育,学習支援業348.0+31.1
建設業339.2+22.3
医療,福祉336.8+19.9
卸売業,小売業
アパレル販売はここ
316.9
運輸業,郵便業314.7−2.2
製造業302.7−14.2
生活関連サービス業,娯楽業302.4−14.5
サービス業(他に分類されないもの)289.8−27.1
宿泊業,飲食サービス業288.6−28.3
複合サービス事業282.8−34.1

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第5-2表 産業、性、年齢階級別賃金及び対前年増減率(男・30〜34歳・単位:千円/2026年9月11日に確認)。差は筆者が引き算したもので、引いた数字はすべて同じ表に載っています。

上に8つ、下に7つ。「業界の外に出る」という選択そのものには、上がる力も下がる力もありません。コインを投げるのとほとんど同じ確率です。

上がる側の産業815産業のうち
下がる側の産業7ほぼ半々
上と下の開き16.7万円金融業と複合サービス事業の差

出典:同じ第5-2表の数字を筆者が数え、引き算したもの

そして開きが大きい。いちばん上の金融業,保険業(44万9,900円)といちばん下の複合サービス事業(28万2,800円)では、同じ30代前半の男性で月16万7,100円ちがいます。年に直せば200万円です。

つまり決めるべきは「出るかどうか」ではありません。どこに出るかです。ここを決めずに動いた人が、「異業種に移ったのに給料が下がった」と言うことになります。

賃金だけで選ぶと、入れない産業ばかりが残る

上の表を見て、多くの人が金融業や学術研究(コンサルティング・専門技術サービスなど)を指さします。差が大きいからです。しかしここで、もうひとつの数字が要ります。

入職率です。厚生労働省の雇用動向調査は、その産業で働く人100人に対して、1年間に何人が新しく入ったかを産業ごとに出しています。数字が大きいほど、外から人が入ってきている産業です。

産業入職率(%)離職率(%)賃金は上がるか
宿泊業,飲食サービス業24.421.5下がる
サービス業(他に分類されないもの)21.420.3下がる
生活関連サービス業,娯楽業15.016.1下がる
情報通信業13.110.0上がる
医療,福祉13.113.6上がる
不動産業,物品賃貸業12.610.5上がる
産業計(すべての産業の平均)12.011.4
学術研究,専門・技術サービス業11.110.0上がる
鉱業,採石業,砂利採取業10.29.8上がる
建設業10.07.9上がる
教育,学習支援業9.49.8上がる
運輸業,郵便業9.38.1下がる
卸売業,小売業8.98.5
製造業8.89.2下がる
電気・ガス・熱供給・水道業8.78.0上がる
金融業,保険業8.66.3上がる
複合サービス事業5.67.7下がる

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出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」表4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率(一般労働者・令和7年/2026年9月11日に確認)。「賃金は上がるか」の列は、ひとつ前の表の卸売業,小売業(316.9千円)と比べた筆者の判定です。

賃金が高い産業ほど、入職率が低く並んでいます。金融業,保険業は8.6%。全産業の平均12.0%を大きく下回り、16産業のうち下から2番目です。賃金の差が大きい産業ほど、外から人を入れていません。

補足:入職率は「その産業で働く人100人あたり、1年間に何人が入ったか」です。未経験者がどれだけ入ったかを示す数字ではありません。それでも、門が開いているかどうかの目安にはなります。

2つの軸を重ねると、残るのは3つだけ

2つの表を1枚に重ねます。縦が賃金、横が入職率です。

アパレル(卸売業,小売業)から異業種へ移るとき、賃金と入職率の2軸で16産業を置いた図

横の線は卸売業,小売業の31万6,900円。この線より上に出れば賃金は上がります。縦の線は全産業の入職率12.0%。この線より右にあれば、門は平均より開いています。

右上に入っているのは3つだけです。

VERDICT 情報通信業・不動産業,物品賃貸業・医療,福祉

賃金が卸売業,小売業より高く、かつ入職率が全産業平均を上回る産業は、16のうちこの3つです。ほかは「上がるが門が狭い」か「入りやすいが下がる」のどちらかに分かれます。

産業賃金(千円)入職率(%)離職率(%)
情報通信業374.1+57.213.110.0
不動産業,物品賃貸業359.4+42.512.610.5
医療,福祉336.8+19.913.113.6

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出典:賃金は賃金構造基本統計調査 第5-2表(男・30〜34歳)、入職率・離職率は雇用動向調査 表4-2(一般労働者)。いずれも令和7年・2026年9月11日に確認

3つのうち、情報通信業と不動産業は離職率が入職率より低い——つまり出ていく人より入ってくる人のほうが多い産業です。医療,福祉だけは離職率のほうが高く(13.6%)、人の出入りが激しいぶん門が開いている、という読み方になります。

ただしこの3つは、あくまで産業全体の平均が示す「行き先の候補」です。自分の職歴で、このうちどれが現実に通るのかは別の話になります。

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移りやすい産業ほど、賃金は下がる側にある

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

入職率のいちばん上を見てください。宿泊業,飲食サービス業が24.4%。次がサービス業(他に分類されないもの)で21.4%。3番目が生活関連サービス業,娯楽業で15.0%。この3つはすべて、賃金が下がる側です。

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VERDICT 「接客が活きる」を理由に選ぶと、下がります

宿泊・飲食で−2万8,300円、サービス業(他)で−2万7,100円、生活関連サービス・娯楽で−1万4,500円。入りやすさと賃金が、きれいに逆を向いています。

理由は考えれば当たり前です。入りやすいということは、その産業がいつも人を探しているということで、人を探し続けている産業は、たいてい人が定着しない理由を抱えています。宿泊・飲食の離職率は21.5%で16産業のうち最も高い。入る人が多いぶん、出る人も多い。

そしてアパレル販売員にとって、この3つはいちばん移りやすく見える産業です。接客の経験がそのまま使える、シフト制の働き方も同じ、面接でも話が通じる。だから「異業種に移った」という実感はいちばん強く出ます。ところが給与明細は下がります。

店頭を辞めた同期で、いちばん多かった行き先はホテルと飲食です。「接客が好きだから」という理由で、それ自体は間違っていない。ただ、賃金が上がると思って移った人はほとんどいませんでした。上がると思って移ったのは、法人営業に行った1人だけです。

REAL EXPERIENCE — 元アパレル販売員・元買取査定員としての見聞き
注意:この表は産業の平均です。「宿泊・飲食に移ると必ず下がる」という意味ではありません。同じ産業の中でも、本社の企画職と店舗のスタッフでは金額がまったく違います。産業を選んだあと、その中でどの職種に就くかで、もう一段の差が付きます。

残った3つを、1つずつ見る

右上に残った3つを、同じものさしで並べます。5年後——35〜39歳になったときの賃金も一緒に見ます。

産業30〜34歳35〜39歳5年の伸び
情報通信業374.1423.5+49.4
不動産業,物品賃貸業359.4400.6+41.2
医療,福祉336.8363.5+26.7
卸売業,小売業
残った場合
316.9365.2+48.3

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出典:賃金構造基本統計調査 第5-2表(男・単位:千円)。情報通信業の35〜39歳(423.5)には原表に「*」が付いています。同調査の利用上の注意によれば「*」は調査回答数が少ないなど利用に注意を要する場合を示す符号です。5年の伸びは筆者の引き算です。

ここで1つ、見落とすと痛い数字が出てきます。医療,福祉は30代前半では卸売業,小売業を上回りますが、30代後半で並ばれます。336.8 → 363.5に対し、卸売業,小売業は316.9 → 365.2。5年で追いつかれ、わずかに抜かれます。

VERDICT 医療,福祉は「いま上がる」産業で、「上がり続ける」産業ではありません

移った直後の差(+1万9,900円)は本物ですが、30代後半では卸売業,小売業とほぼ同額になります。5年より長い目で見るなら、この産業を選ぶ理由は賃金以外に置く必要があります。

3つを、賃金・門の開き方・伸びの3項目で評価します。

情報通信業30代前半 374.1千円/入職率 13.1%
不動産業,物品賃貸業30代前半 359.4千円/入職率 12.6%
医療,福祉30代前半 336.8千円/入職率 13.1%

評価は上の3つの表(賃金・入職率・5年の伸び)だけを根拠にした筆者の整理です。求人数や採用のしやすさは含んでいません。

情報通信業 — 差がいちばん大きく、伸びも続く

30代前半で+5万7,200円。5年後の伸びも+4万9,400円と、卸売業,小売業(+4万8,300円)を上回ります。入職率13.1%は産業平均より高く、離職率10.0%より入職率のほうが多い。数字の上では、この3つの中でいちばん条件がいい産業です。

ただし「情報通信業」は範囲が広い産業です。ソフトウェア開発だけでなく、通信・放送・情報処理・広告関連のサービスまで含みます。アパレル販売から入り口になりやすいのは、開発そのものより、顧客とやり取りする側の職種です。

不動産業,物品賃貸業 — 接客の経験が値段になる数少ない産業

30代前半で+4万2,500円。入職率12.6%、離職率10.5%。ここも入ってくる人のほうが多い産業です。

そして、この産業は右下の罠に落ちていない数少ない「接客寄り」の産業です。宿泊・飲食や生活関連サービスと同じように人と向き合う仕事でありながら、賃金は上の側にいます。店頭で身につけた「初対面の人に高額なものを納得して買ってもらう」という経験が、そのまま値段になりやすい場所だからです。

医療,福祉 — 門はいちばん開いているが、伸びは鈍い

30代前半で+1万9,900円。入職率13.1%は情報通信業と並んで高く、3つの中でいちばん入りやすい産業です。ただし離職率13.6%のほうが高く、5年の伸びも+2万6,700円と3つの中で最も小さい。先に書いたとおり、30代後半では卸売業,小売業に並ばれます。

この3つが向いている人

  • 産業を1つに絞ってから求人を見たい
  • 「接客が活きるか」より「金額が上がるか」で決めたい
  • 5年後の高さまで含めて考えたい

この3つでは決まらない人

  • 服に関わる仕事であること自体を外したくない
  • いまの会社で職種を変える道をまだ試していない
  • 勤務地や休日のほうが金額より重い

右の列に当てはまる人は、業界の外に出る前に見るべきものが残っています。アパレルの転職先は4つに分かれるで、業界に残ったまま職種を変える道(本社・EC・バイヤー)と外に出る道を並べて比べられます。

30代で決めるなら、この順番で

産業が3つに絞れたら、次は順番の問題です。いきなり求人サイトを開くと、条件のいい求人から目に入るので、また振り出しに戻ります。

  1. いまの月給から、所定内給与額だけを取り出す

    上の表と比べられるのは「基本給+固定的な手当」です。残業代と賞与を抜いた金額を出してください。ここを間違えると、比較そのものが成立しません。

  2. 3つの産業のうち、どれか1つを選ぶ

    2つ以上を同時に受けると、志望動機がどちらも薄くなります。数字で選ぶなら情報通信業、接客経験を値段に変えたいなら不動産業、早く決めたいなら医療・福祉です。

  3. その産業の中で、職種を1つ決める

    産業を変えても、職種を変えなければ金額はあまり動きません。逆も同じです。産業と職種の両方を動かすのが、いちばん差が出る移り方です。

  4. 在職のまま応募する

    辞めてから探すと、離職期間が条件交渉で不利に働きます。シフト制でも面接は組めます。

3つ以上あてはまるなら、産業を変える判断のほうが先です

  • 入社してから所定内給与額がほとんど変わっていない
  • 自分の会社で、職種を変える制度があるかどうかを知らない
  • 店長より上のポストが、いつ空くのか見当がつかない
  • 同期で残っている人が半分を切った
  • 「接客が好きだから」以外の理由で、いまの仕事を説明できない

→ 3つ以上なら、求人を見る前に「どの産業へ出るか」を1つに決める段階です。

どの産業から当たるべきか、答えを出す いまの職歴・希望条件から、向いている行き先を並べ替えます

業界に残る道も、同じものさしで測れる

公平を期すために書いておきます。卸売業,小売業に残った場合の5年の伸びは+4万8,300円で、3つのうち2つ(不動産業・医療福祉)より大きい数字です。30〜34歳の316.9千円から、35〜39歳で365.2千円まで上がります。

ただしこれは「卸売業,小売業」という産業全体の平均で、本社勤務や卸の営業職まで含んだ数字です。店頭に立ち続けた場合の金額ではありません。同じ産業の中でどこに立つかで、この平均の上にも下にも振れます。

業界に残りながら金額を動かす道については、アパレル転職はメンズこそ職種で決まるアパレル本社勤務への転職にまとめてあります。年齢のことが気になるなら、26歳のアパレル転職に、急ぐ理由はないで、転職で賃金が1割以上上がる人の割合が何歳まで平らなのかを確かめられます。

まとめ

  1. 「異業種に出れば上がる」は半分だけ本当

    30代前半の男性で、卸売業,小売業(316.9千円)より高い産業は15のうち8つ、低い産業は7つ。出る・出ないという選択そのものには方向がありません。

  2. 賃金が高い産業ほど、門は閉じている

    金融業,保険業は差が+13万3,000円でいちばん大きい一方、入職率8.6%は16産業のうち下から2番目です。

  3. 両方を満たすのは3つだけ

    情報通信業(374.1千円/13.1%)、不動産業,物品賃貸業(359.4千円/12.6%)、医療,福祉(336.8千円/13.1%)。

  4. 移りやすく見える産業は、下がる側に固まっている

    入職率の上位3つ(宿泊・飲食、サービス業(他)、生活関連サービス・娯楽)は、すべて賃金が卸売業,小売業を下回ります。接客経験が活きることと、金額が上がることは別です。

  5. 産業を決めてから、職種を決める

    産業だけ、職種だけを変えても、金額はあまり動きません。両方を動かすのがいちばん差が出ます。

アパレルから異業種に移ると、給料は上がりますか?
産業によって半々です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)で男性30〜34歳を見ると、アパレル販売が属する卸売業,小売業の316.9千円より高い産業は15のうち8つ、低い産業は7つでした。上がるかどうかは「異業種かどうか」ではなく「どの産業に移るか」で決まります。
接客の経験が活きる異業種はどこですか?
宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、サービス業(他に分類されないもの)は、入職率が高く移りやすい産業です。ただしこの3つはいずれも賃金が卸売業,小売業を下回ります。接客経験が活き、かつ賃金が上の側にあるのは不動産業,物品賃貸業(359.4千円・入職率12.6%)です。
医療・福祉はねらい目ですか?
30代前半に限れば、卸売業,小売業より月1万9,900円高く、入職率13.1%と門も開いています。ただし35〜39歳では363.5千円となり、卸売業,小売業の365.2千円にほぼ並ばれます。5年より長い目で見るなら、賃金以外の理由が要ります。
この記事の「賃金」には賞与や残業代は入っていますか?
入っていません。賃金構造基本統計調査の「賃金」は、令和7年6月分として支払われた所定内給与額の月額平均です。賞与も残業代も含みません。自分の給料と比べるときは、基本給と固定的な手当だけを取り出して比べてください。
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