筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の金額は、すべて厚生労働省と大阪労働局の公式ページを実際に開いて確認したものです。特定の派遣会社から提供を受けた数字は使っていません。情報の時点は2026年9月15日です。
梅田でアパレルの派遣を探すとき、見る下限は1本だけです。大阪府最低賃金1,177円。10月1日に1,231円へ上がります。
「百貨店には小売の最低賃金が別にある」という話を聞いたことがあるかもしれません。大阪府にはそれが1本もありません。京都・兵庫・滋賀にはあるのに、大阪だけ存在しないのです。だから阪急でもルクアでもグランフロントでも、求人票で比べる線は1本で足ります。
その1本がいくらか見る梅田で見る下限は、1,177円の1本だけ
梅田でアパレルの派遣を探すとき、最初に押さえるべきなのは「時給の相場」ではなく下限です。相場は求人によって上下しますが、下限は法律で決まっていて、下回った求人はそもそも成立しません。
大阪府の下限は、いま1時間1,177円です。2025年10月16日から効いています。
最低賃金には2種類あります。1本目が地域別最低賃金。産業や職種に関係なく、大阪府内の事業場で働くすべての人にかかります。2本目が特定(産業別)最低賃金で、特定の産業だけに地域別より高い額を別に定めたものです。
大阪府にも特定(産業別)最低賃金は7本あります。ところが、その7本を全部並べてもアパレルの売場に当たるものが1本もありません。6本が製造業で、残る1本は自動車小売業です。
出典:厚生労働省「地域別最低賃金全国一覧」/同「特定(産業別)最低賃金全国一覧」(2026年9月15日に確認)
大阪府には、小売の最低賃金が1本もない
ここは都道府県によって事情がまったく違うところです。県によっては、百貨店や総合スーパーの最低賃金が地域別とは別に定められています。大阪府にはそれがありません。
大阪府の特定(産業別)最低賃金を7本すべて並べると、こうなります。
| 大阪府の特定(産業別)最低賃金 | 時間額 | 発効日 | アパレル販売との関係 |
|---|---|---|---|
| はん用機械・生産用機械・業務用機械器具製造業ほか | 1,197 | 2025年12月1日 | なし(製造業) |
| 電子部品・電気機械・情報通信機械器具製造業 | 1,197 | 2025年12月4日 | なし(製造業) |
| 自動車・同附属品製造業 | 1,194 | 2025年12月1日 | なし(製造業) |
| 塗料製造業 | 1,191 | 2025年12月4日 | なし(製造業) |
| 鉄鋼業 | 1,185 | 2025年12月1日 | なし(製造業) |
| 非鉄金属・同合金圧延業、電線・ケーブル製造業 | 1,180 | 2025年12月1日 | なし(製造業) |
| 自動車小売業 | 993 | 2021年12月1日 | 唯一の小売。ただし車の販売店 |
| 地域別(上のどれにも当たらない場合) | 1,177 | 2025年10月16日 | ここに当たる |
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出典:厚生労働省「特定(産業別)最低賃金全国一覧」(大阪府)/大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」(2026年9月15日に確認)
表の一番下を見てください。アパレル販売の売場は、7本のどれにも当たりません。だから地域別の1,177円がそのまま下限になります。

出典:厚生労働省 最低賃金特設ページ(地域別・特定(産業別)全国一覧)/大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」(2026年9月15日に確認・筆者作成)
唯一の小売である自動車小売業についても、大阪労働局の表にはっきりと書かれています。
出典:大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」自動車小売業の欄(2026年9月15日に確認)
993円は2021年12月1日から動いていないので、いまの地域別1,177円のほうが高く、高いほうが適用されるという意味です。車の販売店ですらそうなので、売場に立つ人が気にする産業別最低賃金は、大阪には存在しません。
これは近畿でも大阪だけの事情です。隣の府県には、小売の産業別最低賃金が残っています。
| 府県 | 各種商品小売業の最低賃金 | 発効日 | 地域別(いま) |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 設定なし | — | 1,177 |
| 京都府 | 938 | 2022年1月26日 | 1,122 |
| 滋賀県 | 840 | 2018年12月29日 | 1,080 |
| 兵庫県 | 797 | 2016年2月1日 | 1,116 |
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出典:厚生労働省「特定(産業別)最低賃金全国一覧」「地域別最低賃金全国一覧」(2026年9月15日に確認)
京都・滋賀・兵庫には制度として残っていますが、額が地域別を大きく下回っているので、実際には使われません。近畿では、小売の産業別最低賃金が効いている府県は一つもないということになります。大阪はその線がそもそも引かれていないだけで、結論は同じです。
「百貨店には小売の最低賃金が別にある」と言われたらどう受け止めるか
その説明が当てはまる県はあります。たとえば青森県には「百貨店、総合スーパーマーケット、その他の各種商品小売業」の最低賃金が、福岡県には「百貨店、総合スーパーマーケット」の最低賃金が設定されています。ただし大阪府には設定がありません。制度が県ごとに決まるものである以上、他県の話や他県で働いていた知人の説明を、そのまま大阪に当てはめないでください。大阪で確認するべき額は、地域別の1本だけです。
10月1日に、下限が54円上がる
これが、いま梅田で派遣の求人を見ている人にとっていちばん大きい話です。大阪府の地域別最低賃金は、2026年10月1日から1時間1,231円になります。
- 下限が54円上がる
1,177円から1,231円へ。1日8時間・月20日で計算すると、月あたり8,640円ぶんの下限が動きます。
- 製造業の産業別最低賃金も、いったん全部が飲み込まれる
大阪の産業別で最も高いのは1,197円です。10月1日に地域別が1,231円になると、確認時点で公表されている7本はすべて地域別を下回ります。つまり10月1日の時点では、大阪府で意味を持つ産業別最低賃金は1本もなくなる計算です。アパレルに限らず、大阪で働く人の下限が1,231円の1本になります。なお産業別の額は毎年12月ごろに改定されるので、その先は改めて公式で確認してください。
| 時期 | 小売(アパレル販売)の売場 | 大阪府で下限を決めているもの |
|---|---|---|
| 9月30日まで | 1,177 | 地域別最低賃金 |
| 10月1日から | 1,231 | 地域別最低賃金 |
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いま梅田で出ている時給1,177円〜1,230円の求人は、10月1日以降は最低賃金を下回ります。求人が消えるか、時給が引き上げられるかのどちらかです。応募の前に「10月1日以降の時給はいくらになりますか」と必ず聞いてください。
逆に言えば、いま時給1,350円や1,400円で募集している求人は、10月1日以降も上乗せが残るということです。同じ1,400円でも、9月時点では下限+223円ですが、10月以降は+169円に目減りします。金額そのものではなく、下限からの距離で見てください。
派遣は「働く場所の府県」で決まる。登録した会社の場所ではない
ここが派遣ならではの分かれ目です。厚生労働省は、派遣で働く人の最低賃金についてこう説明しています。派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の事業場に適用される最低賃金が適用される、と。
兵庫の派遣会社に登録していても、実際に立つ店が梅田なら、かかるのは大阪府の最低賃金です。逆に大阪の派遣会社に登録して三宮の店に入るなら、兵庫県の額になります。登録先の住所も、自分が住んでいる場所も関係ありません。
出典:厚生労働省「派遣労働者の最低賃金は?」(2026年9月15日に確認)
そして梅田で働く人にとって、この仕組みは有利に働きます。大阪府の下限は近畿で突出して高いからです。
| 派遣先の府県 | いまの下限 | 10月以降 | 大阪との差(10月以降) |
|---|---|---|---|
| 大阪府(梅田) | 1,177 | 1,231 | — |
| 京都府 | 1,122 | 確認時点で掲載なし | — |
| 兵庫県 | 1,116 | 1,172 | -59 |
| 滋賀県 | 1,080 | 1,136 | -95 |
| 奈良県 | 1,051 | 1,107 | -124 |
| 和歌山県 | 1,045 | 1,101 | -130 |
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出典:厚生労働省「地域別最低賃金全国一覧」(2026年9月15日に確認)。大阪と兵庫の改定日は10月1日、滋賀と和歌山は10月3日、奈良は10月4日です。京都府は、確認した時点で改定額の掲載がありませんでした。
近畿2府4県の下限の幅と、大阪の位置(10月以降)
10月以降、大阪の1,231円に対して兵庫は1,172円で、59円の差があります。1日8時間・月20日なら、月9,440円の違いです。奈良との差は124円で、月にすると19,840円になります。
阪急・阪神・JRの各線が集まる梅田は、兵庫からも奈良からも通える場所です。同じ通勤時間をかけるなら、どちら側の店に入るかで下限が変わる、ということになります。ただし単純に「梅田で働けば得」とは言い切れません。次の章がそこに関係します。
最低賃金に「入らない」お金がある
求人票の時給と、最低賃金を比べるときに引っかかるのがここです。支払われるお金のうち、最低賃金の計算に入らないものが決まっています。
次のお金は、最低賃金の計算に入りません
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働への賃金(時間外割増など)
- 所定労働日以外の労働への賃金(休日割増など)
- 深夜割増のうち、通常の計算額を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
→ 「交通費込みで時給1,250円」という条件は、交通費を除いた額で1,231円と比べる必要があります。
出典:厚生労働省「対象となる賃金は?」(2026年9月15日に確認)
梅田で効いてくるのは通勤手当です。梅田は府外から通う人が多い場所で、勤務先が同じでも通勤費は人によってまるで違います。往復で1日600円かかるなら、8時間勤務で時給75円ぶん。「交通費込み1,250円」は、実質1,175円ということになります。10月1日以降の1,231円を下回ります。
販売の求人票を見ていたころ、時給の欄だけを比べて応募先を決める人をよく見ました。ところが入ってから効いてくるのは、時給より「交通費が別で出るか」と「最低何時間の勤務が契約書に書いてあるか」の2つです。時給が30円高い店より、交通費が全額出て勤務時間が固定されている店のほうが、月末に手元に残る額は大きい。求人票は時給の数字がいちばん大きく印刷されているので、そこだけを見てしまうのは無理もないのですが。
梅田の求人票を、3つの線で読む
ここまでの数字を、実際の求人票に当てる手順にします。大阪府内の求人に限った読み方です。
- 1,231円を下回っていないか
10月1日以降の下限です。ここを下回る求人は、そのままでは続きません。応募前に確認する対象です。
- 下限からの上乗せが100円あるか
1,331円以上かどうか。上乗せが100円を切っていると、販売経験が時給に反映されていない水準だと考えていいと思います。
- 交通費が時給に含まれていないか
通勤手当は最低賃金に算入されません。「交通費込み」と書かれている場合、実質の時給はその分低くなります。府外から梅田に通うなら、この差は小さくありません。
3つ以上あてはまる人は、条件を見直す段階です
- 提示された時給が1,231円を下回っている
- 契約更新のときに時給が上がったことが一度もない
- 交通費が時給に含まれている
- 「百貨店には小売の最低賃金がある」と説明されたが、額を確認していない
- 同じ派遣先に3年近く入っていて、その先の契約の話が出ていない
→ 3つ以上なら、いまの派遣先で交渉する前に、自分の経験がどこで評価されるのかを先に調べたほうが早いです。
