アパレルの派遣とバイトの違い|時給ではなく「誰に雇われるか」で決まる5つの差

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派遣とバイトの違い

筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商として服と時計の売買を営んでいます。この記事の制度の説明は、すべて e-Gov 法令検索で条文本体を確認して書いています(確認日 2026年9月2日)。個別の契約内容は会社ごとに異なるため、最終的には求人票と雇用契約書をご確認ください。

CONCLUSION

派遣とバイトを分けているのは時給ではなく誰に雇われるか。この一点で、有給・社会保険・働ける年数の3つが変わります。

同じ店の同じ売り場でも、派遣なら雇い主は派遣会社、バイトなら雇い主は店の会社です。求人票の時給を並べて悩む前に、この違いが自分にどう効くかを先に決めてください。

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同じ売り場に立っていても、雇い主が違う

アパレルの求人サイトを開くと、同じ商業施設の同じブランドで「派遣」と「アルバイト」の両方が出てくることがあります。仕事内容の欄はほとんど同じで、時給も数十円しか違いません。それでこの2つは何が違うのかというと、誰があなたを雇っているかだけです。

法律の言葉ではこうなっています。労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」(労働者派遣法 第2条第1号)。つまり雇う人と、指示を出す人が別という形です。アルバイトはその2つが同じ相手になります。

派遣は派遣会社と雇用契約を結び店から指揮命令を受ける、アルバイトは店と直接雇用契約を結び同じ相手から指揮命令を受けることを示した図
派遣とアルバイトの違いは、雇用の線と指揮命令の線のつなぎ方だけ(労働者派遣法 第2条第1号より作図)

絵にすると当たり前に見えますが、この線が2本に割れているせいで、給料の決まり方も、有給の数え方も、働ける年数も、文句を言う相手も全部ずれます。以下はすべてここから出てくる話です。

補足:ここでいう「バイト」は、店の会社と直接雇用契約を結ぶ短時間労働者・有期雇用労働者のことです。法律上は「アルバイト」「パート」「契約社員」という区分ではなく、所定労働時間が短いか(短時間労働者)、契約期間の定めがあるか(有期雇用労働者)で扱いが決まります(パートタイム・有期雇用労働法 第2条)。

この一点が変える5つの差

順番に見ていきます。求人票の時給を比べるより、この5つのどれが自分に効くかを先に決めるほうが早いです。

比べるもの派遣アルバイト
雇い主派遣会社店の会社
有給を出す相手派遣会社(店が変わっても継続)店の会社(店を変えるとリセット)
シフト・休憩・休日を決める相手店(派遣先)店の会社
時給の決め方法律で2方式のどちらか方式の指定はない
社会保険の加入先派遣会社店の会社
同じ場所で働ける年数同じ組織単位で3年が上限上限なし

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1. 有給は「派遣会社での勤続」で数える

ここがいちばん効きます。年次有給休暇は「雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者」に10労働日与えられます(労働基準法 第39条第1項)。問題は誰が「雇入れた人」なのかです。

派遣の場合、労働基準法のうち労働時間・休憩・休日などは「派遣先の事業のみを使用する事業とみなして」適用されます(労働者派遣法 第44条第2項)。ところがこの読み替えの対象条文に、有給休暇の第39条は入っていません。つまり有給を与える義務は派遣会社に残ったままです。

実務的にどうなるかというと、こうです。

  1. 派遣なら、店が変わっても6か月がリセットされない

    A店の契約が終わってB店に移っても、雇い主は同じ派遣会社のままなので勤続は続きます。3か月ずつ違う店を回っても、半年で有給が付きます。

  2. バイトなら、店を変えた時点でゼロから

    雇い主が変わるので、また6か月です。掛け持ちや店の移動が多い人ほど、ここの差が積み上がります。

勤続年数が伸びれば付与日数も増えます。6か月経過日から1年ごとに、1年で1日、2年で2日、3年で4日、4年で6日、5年で8日、6年以上で10日が加算されます(同 第39条第2項の表)。週の所定労働日数が少ない場合は、日数に応じて比例して付きます(同 第3項)。

注意:「派遣は有給が取りにくい」という話とは別問題です。付与されるかどうかと、実際に取れるかどうかは別で、派遣の場合は取得の相談先が派遣会社、シフトの調整先が店と分かれます。登録前に、有給の申請をどちらに出すのかを必ず聞いてください。

2. 時給の決め方が、派遣だけ法律で二択になっている

派遣会社は、派遣スタッフの待遇を次のどちらかの方式で決めなければなりません。

METHOD A

派遣先均等・均衡方式

30条の3
  • 派遣先の通常の労働者の待遇と比べる
  • 基本給・賞与その他の待遇それぞれについて、不合理な相違を設けてはならない
  • 派遣先が変わると比べる相手も変わる
METHOD B

労使協定方式

30条の4
  • 派遣会社が過半数労組等と書面で協定を結ぶ
  • 賃金は同種の業務の一般労働者の平均的な賃金額と同等以上
  • 派遣先が変わっても水準の物差しは変わらない

アルバイト側にこれに当たる仕組みはありません。あるのは「不合理な待遇の禁止」(パートタイム・有期雇用労働法 第8条)だけで、どういう方式で決めるかの指定がないのです。文言は派遣法30条の3とほぼ同じですが、比べる相手は同じ会社の通常の労働者になります。

補足:どちらが得かは一概に言えません。ただし派遣は「どちらの方式で決めているか」を派遣会社に聞けば答えが返ってくるのに対し、バイトは店の賃金テーブルを教えてもらえるとは限りません。条件を数字で確かめやすいのは派遣のほうです。

3. 社会保険の加入先が違う。ただし入る条件は同じ物差し

厚生年金の加入は、まず所定労働時間か所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上かどうかで分かれます。4分の3未満の人でも、次の3つのどれにも当たらなければ加入対象です(厚生年金保険法 第12条第5号)。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間未満

    この線を下回ると対象外です。週3日・1日6時間だと18時間なので、あと1日足すかどうかで変わります。

  2. 報酬の算定額が月8万8千円未満

    通勤手当など一部は算定から除かれます。

  3. 高校・大学等の学生である

    30代の読者にはまず関係しませんが、条文上の除外はここに置かれています。

雇用保険のほうは、週の所定労働時間20時間未満の人と、同一の事業主に継続31日以上雇用される見込みがない人が対象外です(雇用保険法 第6条第1号・第2号)。

条件そのものは派遣もバイトも同じ物差しです。違うのはどこの会社で入るかで、派遣なら派遣会社、バイトなら店の会社になります。ここでも派遣は、店が変わっても保険が切り替わらないという利点があります。

注意:4分の3未満の人が加入対象になるかどうかには、勤め先の規模による条件が別に定められています。今回はその条文まで確認できていないため、この記事では人数の線を書いていません。自分が対象かどうかは、応募先か年金事務所に確認してください。

4. 派遣には3年の上限がある

派遣会社は「派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣」を行ってはなりません(労働者派遣法 第35条の3)。店の側にも、事業所ごとに派遣を受け入れられる期間は原則3年という制限があります(同 第40条の2 第1項・第2項)。

ただし例外があり、派遣会社に無期雇用されている派遣スタッフは、この期間制限の対象外です(同 第40条の2 第1項第1号)。ほかに、一定期間内に完了予定の業務、産休・育休・介護休業の代替なども除かれます。

アルバイトにはこの上限がありません。同じ店に10年いても制度上の問題はありません。「この店にずっといたい」が一番の希望なら、それだけで答えはバイト寄りです。

5. 文句を言う相手が2つに割れる

派遣の場合、労働時間・休憩・休日・深夜業などは派遣先の責任になります(労働者派遣法 第44条第2項が、労働基準法 第32条・第34条・第35条などを派遣先に適用すると定めています)。一方で給料・有給・社会保険は派遣会社です。

これは店(派遣先)に言う

  • 休憩が取れない
  • シフトが契約と違う
  • 残業を強いられる
  • 売り場での指示の内容

これは派遣会社に言う

  • 時給が上がらない
  • 有給を使いたい
  • 社会保険の手続き
  • 次の契約を更新するか

面倒に見えますが、店に直接言いにくいことを代わりに言ってくれる相手がいるという見方もできます。アパレルの店頭は人間関係が濃く、店長に直接交渉するのが苦しい職場もあります。そこを外部の担当者に持っていけるのは、派遣の実務上のいちばん大きな利点だと思っています。

新卒で入った店では、シフトの希望も社販の額も、全部その場の店長との交渉でした。言えば通ることもあったけれど、言った翌週の空気が重くなるのが分かるので、だんだん言わなくなりました。あのとき交渉の窓口が社外にあったら、続け方が変わっていたと思います。

REAL EXPERIENCE — 新卒で入ったアパレルを8ヶ月で退職

どちらを選ぶかは、この5行で決まる

あてはまるほうに丸を付けてください

  • この店・このブランドで長く働きたい(=バイト寄り)
  • 店を替えながら経験を広げたい/続けられる店を探している段階(=派遣寄り)
  • 条件の交渉を自分でやるのがつらい(=派遣寄り)
  • シフトも待遇も1人の相手と話すほうが早い(=バイト寄り)
  • 有給や社会保険を切らさずに積み上げたい(=派遣寄り)

→ 派遣寄りが2つ以上なら派遣、バイト寄りが2つ以上ならバイトです。同数なら「いま一番困っていること」がどちらの列にあるかで決めてください。

VERDICT 時給の数十円で決めるのは、いちばん損な決め方

月160時間働いても時給50円差は8,000円です。有給が半年で付くか付かないか、社会保険が切り替わるか続くかのほうが、年で見ると大きく効きます。

応募する前に確認する4つ

  1. その求人が派遣かどうかを確かめる

    募集元の会社名と、実際に働く店の会社名が違えば派遣です。同じなら直接雇用(バイト)です。求人票の「雇用形態」より、この2つの社名を見るほうが確実です。

  2. 週の所定労働時間を数える

    20時間の線が、社会保険と雇用保険の両方に効いてきます。週3日・1日6時間なら18時間で、あと2時間足りません。ここは応募前に計算しておきます。

  3. 派遣なら、待遇をどちらの方式で決めているか聞く

    「派遣先均等・均衡方式ですか、労使協定方式ですか」と聞けば答えが返ってきます。答えられない会社は、その時点で判断材料になります。

  4. 3年後にどうなるかを聞く

    同じ組織単位での上限は3年です。その先に直接雇用への切り替えを想定しているのか、別の店に移るのかを、登録の時点で確認しておきます。

「紹介予定派遣」はどちらに入るのか

紹介予定派遣は、派遣の期間が終わったあとに派遣先に雇われることを予定して行う派遣のことです(労働者派遣法 第2条第4号)。入口は派遣なので、働いている間の雇い主は派遣会社です。そのうえで、期間の終了前に派遣先に雇用されることが約束される形も含まれます。「まず中を見てから正社員かを決めたい」人向けの入口だと考えてください。

出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律労働基準法短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律厚生年金保険法雇用保険法(いずれも e-Gov 法令検索・2026年9月2日に条文を確認)

派遣とバイトでは、どちらが時給が高いですか?
求人によります。公的な統計でアパレルに限った比較を確認できなかったため、この記事では金額の差を書いていません。ただし派遣は待遇の決め方が法律で2方式のどちらかに限られており、どちらで決めているかを派遣会社に聞けば答えが返ってきます。金額そのものより、決め方を確認するほうが確実です。
派遣でも有給はもらえますか?
もらえます。年次有給休暇は雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日与えられます(労働基準法 第39条第1項)。派遣の場合この義務は派遣会社に残るため、勤務先の店が変わっても勤続は途切れません。申請先は店ではなく派遣会社になります。
派遣は同じ店で何年まで働けますか?
同じ組織単位では3年が上限です(労働者派遣法 第35条の3)。店の側にも事業所単位で原則3年の制限があります(同 第40条の2)。ただし派遣会社に無期雇用されている場合など、期間制限の対象外になる例外があります。アルバイトにはこの上限はありません。
シフトの相談は派遣会社と店のどちらにすればいいですか?
労働時間・休憩・休日については派遣先である店の責任とされています(労働者派遣法 第44条第2項)。一方で時給・有給・社会保険は派遣会社です。日々のシフトは店、条件の話は派遣会社、と分けて考えてください。
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