筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の金額は、すべて厚生労働省と栃木労働局の公式ページを実際に開いて確認したものです。特定の派遣会社から提供を受けた数字は使っていません。情報の時点は2026年9月15日です。
宇都宮でアパレルの派遣を探すとき、見る下限は1本だけです。栃木県最低賃金1,068円。10月1日に1,125円へ上がります。
「小売には別の最低賃金がある」という話を聞いたことがあるかもしれません。栃木県にもあります。ただしその額は874円で、2020年から動いていません。地域別の1,068円を194円も下回るので、実際には使われません。求人票で見るべき線は1本です。
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宇都宮で見る下限は、1本だけ
宇都宮市でアパレルの派遣を探すとき、最初に押さえるべきなのは「時給の相場」ではなく下限です。相場は求人によって上下しますが、下限は法律で決まっていて、下回った求人はそもそも成立しません。
栃木県の下限は、いま1時間1,068円です。2025年10月1日から効いています。
最低賃金には2種類あります。1本目が地域別最低賃金。産業や職種に関係なく、栃木県内の事業場で働くすべての人にかかります。2本目が特定(産業別)最低賃金で、特定の産業だけに地域別より高い額を別に定めたものです。
栃木県にも特定(産業別)最低賃金は6本あります。そのうちアパレル販売が関係しそうなのは「各種商品小売業」の1本ですが、この額が874円。地域別の1,068円より194円低いのです。
出典:厚生労働省「地域別最低賃金全国一覧」/同「特定(産業別)最低賃金全国一覧」(2026年9月15日に確認)
栃木の「小売の最低賃金」は、874円で止まっている
ここは都道府県によって事情が違います。県によっては、百貨店や総合スーパーの最低賃金が地域別を上回っていて、実際に効いています。栃木県はそうなっていません。
栃木県の特定(産業別)最低賃金を6本すべて並べると、こうなります。
| 栃木県の最低賃金 | 時間額 | 発効日 | 厚労省の一覧表の印 |
|---|---|---|---|
| 塗料製造業 | 1,159 | 2025年12月31日 | 印なし |
| 自動車・同附属品製造業 | 1,114 | 2025年12月31日 | ※ 地域別が適用 |
| 電子部品・電気機械・情報通信機械器具製造業 | 1,105 | 2025年12月31日 | ※ 地域別が適用 |
| 計量器・医療用機械・時計等製造業 | 1,104 | 2025年12月31日 | ※ 地域別が適用 |
| はん用機械・生産用機械・業務用機械器具製造業 | 1,070 | 2025年12月31日 | ※ 地域別が適用 |
| 各種商品小売業 | 874 | 2020年12月31日 | ※ 地域別が適用 |
| 地域別(上のどれにも当たらない場合) | 1,068 | 2025年10月1日 | — |
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出典:厚生労働省「特定(産業別)最低賃金全国一覧」(栃木県・2026年9月15日に確認)
右端の「※」は筆者が付けたものではありません。厚生労働省の一覧表にもともと付いている印です。注記にこう書かれています。
注2)「※」で示された特定(産業別)最低賃金額については、地域別最低賃金額が適用されます。
栃木県の各種商品小売業には、この「※」が付いています。つまり栃木県で小売の売場に立つ人の下限は、874円ではなく地域別の額です。印が付いていないのは塗料製造業の1本だけで、アパレル販売とは関係のない産業です。

出典:厚生労働省 最低賃金特設ページ(地域別・特定(産業別)全国一覧)/栃木労働局「栃木県の最低賃金」(2026年9月15日に確認・筆者作成)
そして栃木労働局のページには、10月1日の改定にあわせて、そのものずばりの一文が載っています。
出典:栃木労働局「栃木県の最低賃金」(2026年9月15日に確認)
10月1日以降、栃木県で意味を持つ産業別最低賃金は塗料製造業の1本だけになります。アパレル販売とは関係のない産業です。だから宇都宮で求人票を見るとき、比べる線は1本でいい、という結論になります。
「小売の最低賃金が別にある」と言われたらどう受け止めるか
その説明自体は間違いではありません。栃木県にも各種商品小売業の最低賃金は存在していて、廃止されたわけではないからです。ただし額が874円で止まっているので、いまの地域別1,068円のほうが高く、高いほうが適用されます。「制度としてはある/実際には使われない」という状態です。都道府県によって事情が違うので、他県の記事や知人の話をそのまま栃木に当てはめないでください。
10月1日に、下限が57円上がる
これが、いま宇都宮で派遣の求人を見ている人にとっていちばん大きい話です。栃木県の地域別最低賃金は、2026年10月1日から1時間1,125円になります。
- 下限が57円上がる
1,068円から1,125円へ。1日8時間・月20日で計算すると、月あたり9,120円ぶんの下限が動きます。
- 製造業の産業別最低賃金も、ほぼ全部が飲み込まれる
自動車1,114円・電子部品1,105円・計量器1,104円・はん用機械1,070円は、いずれも1,125円を下回ります。10月1日からは、これらの産業の人も下限は1,125円です。栃木県で1,125円を上回って残るのは塗料製造業の1,159円だけになります。
| 時期 | 小売(アパレル販売)の売場 | 栃木県で下限を決めているもの |
|---|---|---|
| 9月30日まで | 1,068 | 地域別最低賃金 |
| 10月1日から | 1,125 | 地域別最低賃金 |
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いま宇都宮で出ている時給1,068円〜1,124円の求人は、10月1日以降は最低賃金を下回ります。求人が消えるか、時給が引き上げられるかのどちらかです。応募の前に「10月1日以降の時給はいくらになりますか」と必ず聞いてください。
逆に言えば、いま時給1,200円や1,250円で募集している求人は、10月1日以降も上乗せが残るということです。同じ1,250円でも、9月時点では下限+182円ですが、10月以降は+125円に目減りします。金額そのものではなく、下限からの距離で見てください。
派遣は「派遣先の県」で決まる。登録した会社の場所ではない
ここが派遣ならではの分かれ目です。厚生労働省は、派遣で働く人の最低賃金についてこう説明しています。派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の事業場に適用される最低賃金が適用される、と。
東京の派遣会社に登録していても、実際に立つ店が宇都宮市内なら、かかるのは栃木県の最低賃金です。逆に宇都宮の派遣会社に登録して県外の店に入るなら、そちらの県の額になります。登録先の住所も、自分が住んでいる場所も関係ありません。
出典:厚生労働省「派遣労働者の最低賃金は?」(2026年9月15日に確認)
宇都宮に住んでいる人にとって、これは他人事ではありません。栃木県は隣接する県との差が大きく、どこの店に入るかで下限が変わるからです。
| 派遣先の県 | いまの下限 | 10月以降 |
|---|---|---|
| 東京都 | 1,226 | 1,280 |
| 埼玉県 | 1,141 | 1,196 |
| 栃木県(宇都宮) | 1,068 | 1,125 |
| 茨城県 | 1,074 | 確認時点で掲載なし |
| 群馬県 | 1,063 | 1,120 |
| 福島県 | 1,033 | 確認時点で掲載なし |
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出典:厚生労働省「地域別最低賃金全国一覧」(2026年9月15日に確認)。栃木の改定日は10月1日、群馬は10月3日です。茨城県と福島県は、確認した時点で改定額の掲載がありませんでした。
宇都宮から通える範囲の下限の幅と、栃木の位置(10月以降)
いまの時点でも、栃木の1,068円に対して埼玉は1,141円で、73円の差があります。10月以降は1,125円対1,196円で、差は71円のまま残ります。1日8時間・月20日なら、月11,360円の違いです。
ただし、これは「県境を越えて働けば得」という単純な話ではありません。通勤時間と交通費が増えるからです。次の章がそこに関係します。
最低賃金に「入らない」お金がある
求人票の時給と、最低賃金を比べるときに引っかかるのがここです。支払われるお金のうち、最低賃金の計算に入らないものが決まっています。
次のお金は、最低賃金の計算に入りません
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働への賃金(時間外割増など)
- 所定労働日以外の労働への賃金(休日割増など)
- 深夜割増のうち、通常の計算額を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
→ 「交通費込みで時給1,150円」という条件は、交通費を除いた額で1,125円と比べる必要があります。
出典:厚生労働省「対象となる賃金は?」(2026年9月15日に確認)
いちばん効いてくるのは通勤手当です。宇都宮の商業施設は駅前だけでなく郊外にも散らばっていて、勤務先によって通勤の負担がまるで違います。往復で1日600円かかる勤務先なら、8時間勤務で時給75円ぶん。「交通費込み1,150円」は、実質1,075円ということになります。10月1日以降の1,125円を下回ります。
販売の求人票を見ていたころ、時給の欄だけを比べて応募先を決める人をよく見ました。ところが入ってから効いてくるのは、時給より「交通費が別で出るか」と「最低何時間の勤務が契約書に書いてあるか」の2つです。時給が30円高い店より、交通費が全額出て勤務時間が固定されている店のほうが、月末に手元に残る額は大きい。求人票は時給の数字がいちばん大きく印刷されているので、そこだけを見てしまうのは無理もないのですが。
宇都宮の求人票を、3つの線で読む
ここまでの数字を、実際の求人票に当てる手順にします。栃木県内の求人に限った読み方です。
- 1,125円を下回っていないか
10月1日以降の下限です。ここを下回る求人は、そのままでは続きません。応募前に確認する対象です。
- 下限からの上乗せが100円あるか
1,225円以上かどうか。上乗せが100円を切っていると、販売経験が時給に反映されていない水準だと考えていいと思います。
- 交通費が時給に含まれていないか
通勤手当は最低賃金に算入されません。「交通費込み」と書かれている場合、実質の時給はその分低くなります。郊外の商業施設なら、駅前より通勤の負担は大きくなりがちです。
3つ以上あてはまる人は、条件を見直す段階です
- 提示された時給が1,125円を下回っている
- 契約更新のときに時給が上がったことが一度もない
- 交通費が時給に含まれている
- 「小売には別の最低賃金がある」と説明されたが、額を確認していない
- 同じ派遣先に3年近く入っていて、その先の契約の話が出ていない
→ 3つ以上なら、いまの派遣先で交渉する前に、自分の経験がどこで評価されるのかを先に調べたほうが早いです。
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