※この記事の数字は、2026年10月1日に公式ページを実際に開いて確認しました。開いたのは国税庁のタックスアンサーと、ソニー生命・日本生命・かんぽ生命の3社です。筆者は税理士でも保険の専門家でもありません。特定の保険商品をすすめる記事ではなく、公式に書いてあることだけを並べて、ご自身で決められるようにするための記事です。
分かれ目は2つだけです。12歳の壁に耐えられるか。そして親に万一のとき、積立が止まって困るか。
「どちらが得か」は、やってみないと分かりません。先に決まるのはこの2つです。
4つの軸で見る比べる軸は4つでいい
どちらも「子どもの教育費を18年かけて用意する」道具ですが、仕組みはまったく違います。
ネット上の比較は「返戻率」と「想定利回り」の勝負になりがちですが、それは将来の数字です。先に決まるものから見ます。
| 軸 | こどもNISA | 学資保険 |
|---|---|---|
| 元本が減るか | 減ることがある。元本の保証はない | 満期まで払い切れば払込総額を上回る設計の商品がある。ただし中途解約は元本割れ |
| 途中で引き出せるか | 12歳になる年までは原則できない。災害等で税務署長の確認を受けた場合だけ | 解約すればいつでも受け取れる。ただし受け取れる額は払込総額より少ないことが多い |
| 税金(入口) | 所得控除はない | 生命保険料控除がある(所得税で最高4万円、条件を満たせば最高6万円) |
| 税金(出口) | 運用でふえた分が非課税 | 一時金なら一時所得、年金なら雑所得として所得税の対象 |
| 受け取る時期 | 払出し制限が解けるのは「その年3月31日において18歳である年」 | 契約のときに決める。17歳・18歳・21歳・22歳満期など |
| 親に万一のとき | 積立は自動では続かない | 以後の保険料が免除される商品がある(商品によって条件が違う) |
← 横にスクロールできます
太字の3つが「あとから変えられない差」です。順番に見ます。
① 元本が減るか:減り方の種類が違う
こどもNISAで買えるのは投資信託だけです。値下がりすれば、元本より減ります。これは隠れた条件ではなく、制度の前提です。
学資保険には「満期まで払い切れば増える」と書かれた商品があります。ソニー生命は公式ページで返戻率127.4%と出しています。
では学資保険は元本が減らないのか。減ります。やめたときです。
減り方が逆向きです。こどもNISAは相場で減る。学資保険は自分がやめたときに減る。18年のうちに転職や減収があるかどうかで効く差です。
② 途中で引き出せるか:ここが制度の最大の差
こどもNISAには、他のNISAにない縛りがあります。財務省の大綱の原文を引きます。
基準年の前年12月31日までは、…非課税口座以外の口座に払い出すことはできない
「基準年」は「その年3月31日において18歳である年」と定義されています。つまり18歳になるまで、口座の外にお金を出せません。
例外は2段階に分かれています。ここは読み飛ばしやすいので表にします。
| 時期 | 引き出せる場合 |
|---|---|
| 12歳になる年の前年まで | 「居住する家屋が災害により全壊したことその他これに類する事由」で、税務署長の確認を受けた場合に限り、全部を払い出すときだけ |
| 12歳になる年以後 | 上に加えて「学校等の入学金又は授業料その他の…教育費又は生活費の支払」。書類の提出が必要 |
← 横にスクロールできます
書類の出し方にも条件があります。「書類提出手続は当該居住者等の親権者等が行うとともに、…当該居住者等の同意を得たことを証する書類を添付しなければならない」。子ども本人の同意書が要ります。
学資保険は逆です。解約すればいつでも現金になり、税務署は関係ありません。そのかわり受け取れる額は払込総額を下回ることが多い。
「出せるが減る」か、「減らないが出せない」かの違いです。
③ 税金は、入口と出口で向きが逆
両方に税のメリットがありますが、効く場所が違います。
入口:学資保険には控除がある
学資保険の保険料は、生命保険料控除の対象になります。こどもNISAに入れたお金は、所得控除になりません。
そして2026年分の申告から、子育て世帯向けの枠が広がっています。国税庁No.1140の原文です。
令和8年分以降の申告の場合、新契約に基づく新生命保険料の控除額について、23歳未満の扶養親族を有する場合の控除額は次の表の計算式に当てはめて計算した金額です
| 年間の保険料 | 控除額(23歳未満の扶養親族あり) | その表を使わない場合 |
|---|---|---|
| 3万円以下 | 全額 | 2万円以下なら全額 |
| 3万円超〜6万円以下 | 保険料×1/2+1万5千円 | — |
| 6万円超〜12万円以下 | 保険料×1/4+3万円 | — |
| 12万円超 | 一律6万円 | 8万円超で一律4万円 |
← 横にスクロールできます
公式の契約例で計算します。かんぽ生命「はじめのかんぽ」の契約例は、契約者30歳男性・子ども0歳・基準保険金額200万円・全期間払込・18歳満期で月9,100円(契約日を2026年10月1日として算出、との注記つき)。
年間109,200円を上の表に当てはめると控除額は57,300円。23歳未満の表を使わなければ40,000円です。
出口:こどもNISAは非課税、学資保険は課税
こどもNISAは、ふえた分に税金がかかりません。学資保険の受取は、国税庁No.1755によると課税の対象です。ただし受け取り方で区分が変わります。
- 一時金で受け取ると一時所得
一時所得は「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)」で計算します。さらに「その所得金額の2分の1」が課税の対象です。つまり受取総額と払込保険料の差が50万円以下なら、一時金で受け取るぶんには所得税がかからない計算になります。
- 年金で受け取ると雑所得
「満期保険金等を年金で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります」。雑所得には50万円の特別控除がありません。日本生命も「こども祝金は一時所得として、学資年金は雑所得として所得税の対象になります」と明記しています。
- 払った人と受け取る人が違うと贈与税
No.1755の表は、同じなら所得税、違えば贈与税としています。受取人を子どもにした契約は要確認です。
返戻率が高い商品ほど差益が大きくなり、50万円の枠に収まりにくくなります。返戻率だけで比べると、ここが抜けます。
④ 受け取る時期:決めておけるのは学資保険
学資保険は、受け取る時期を契約のときに選びます。かんぽ生命は17歳満期・18歳満期・21歳満期の3コースを載せ、「高校2年生の時点で学資金をお受け取りいただけるプランもございます」としています。学校推薦型選抜のように入試が早い場合に備える形です。
日本生命は大学入学の年から毎年1回、合計5回に分けて受け取るプランです。いっぽうこどもNISAは、受け取る時期を選べません。
⑤ 親に万一のとき:ここが学資保険の本体
4つの軸の外ですが、避けて通れないので入れます。学資保険には、契約者が亡くなったあと保険料の払込が免除される仕組みがあります。
日本生命は「ご契約者が保険料払込期間中に亡くなられた場合、将来の保険料のお払込みは必要ありません。保障内容はそのまま継続されます」と書いています。
こどもNISAにこの仕組みはありません。資産は子ども本人のものとして残りますが、積立そのものは止まります。
「学資保険なら払込免除がある」とまとめてはいけません。どの事由で免除されるかは、申し込む商品の約款で確認してください。
こういう家庭はこちら
ここまでが公式に書いてあることです。ここからは、筆者がどう読んだかです。公式の見解ではありません。
こどもNISAは引き出せない口座です。生活費や急な出費に使う可能性があるお金を入れる場所ではありません。学資保険も、やめると減ります。
どちらも「18年続けられる額にする」ことが先で、どちらを選ぶかは後です。
両方を使う家庭があってもいいと思います。ソニー生命自身が、自社の記事で「複数の方法を併用することで、投資の相場変動、インフレ、親の死亡や所定の高度障害などのリスクを抑えられます」と書いています。
公式ページでも確認できなかったこと
推測で埋めずに、そのまま書きます。
- かんぽ生命の返戻率
公式ページに記載がありませんでした。月9,100円を216か月なら払込総額1,965,600円と計算できます。ただし満期保険金が基準保険金額と同額かは書かれていないため、返戻率は出していません。
- 両者を並べた公的な比較
金融庁・国税庁のどちらにも、両者を比べた資料は見つかりませんでした。この記事の表は、それぞれの一次情報を筆者が並べたものです。
- 住民税の生命保険料控除
国税庁のタックスアンサーは所得税の説明です。住民税側の控除限度額は確認していないので書いていません。
- 払出しに要る書類の様式
大綱は「書類」とだけ書いており、国税庁のQ&Aはまだ出ていません。教育費での払出しが実務でどのくらい手間なのかは分かりません。
よくある質問
学資保険に入っていても、こどもNISAは作れますか?
こどもNISAは本当に18歳まで引き出せないのですか?
学資保険の保険料は、全額が所得控除になりますか?
学資保険の満期金に税金はかかりますか?
結局どちらが得ですか?
まとめ
得意なところは、きれいに分かれていました。元本を守るのは学資保険、ふえた分の税金をゼロにするのはこどもNISA。入口の控除は学資保険、出口の非課税はこどもNISAです。
先に決まるのは2つです。12歳の年まで引き出せないことに耐えられるか。親に万一のとき、積立が止まって困るか。ここが決まれば、返戻率や利回りを調べる前に答えが出ます。
なお「こどもNISA」は各社が使っている通称で、税法上の名称は「未成年者特定累積投資勘定」です。
出典(いずれも2026年10月1日に公式ページで確認):国税庁 No.1140 生命保険料控除/同 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき/同 No.1490 一時所得/ソニー生命「学資金準備スクエア」/日本生命「ニッセイ学資保険」/かんぽ生命「学資保険 はじめのかんぽ」/財務省「令和8年度税制改正の大綱」/計算に使ったスクリプトは scripts/kodomo_nisa_sim.py
