アパレル転職の年収アップは、つまみが3つしかない|会社の規模で62万、役職で77万、職種で366万

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年収を上げるつまみは3つ

※この記事の金額は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」と「令和7年 雇用動向調査 結果の概要」の集計表をe-Stat厚生労働省から実際にダウンロードして読んだ値だけを使っています。求人サイトの「平均年収」や他のまとめ記事の数字は使っていません。年収換算と時間単価は当サイトによる計算で、式は本文に書きました。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。

CONCLUSION

年収を上げるために回せるつまみは3つだけです。いちばん大きく動くのは職種で、会社の規模はほとんど動きません。

「転職すれば年収が上がる」は、正確には「何を変えたかによる」です。会社を変えただけの転職は、統計上ほとんど金額が動きません。

3つのつまみを順に見る
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まず現実を1つ。転職した人の半分は、上がっていません

年収の話を始める前に、前提を1つそろえておきます。転職した人が実際にどうなったかの数字です。国が毎年、転職した本人に「前の職場と比べて賃金は増えたか減ったか」を聞いています。

30〜34歳で転職して賃金が増加48.6%ただし1割以上増えたのは32.8%
同じく賃金が減少29.0%1割以上減った人が19.0%
変わらなかった人20.8%動いたのに金額は同じ

出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査 結果の概要」表6 転職入職者の賃金変動状況別割合(mhlw.go.jp)の図表データを取得して確認

増えた人と減った人が、ほぼ半々です。しかも「変わらない」が2割います。転職そのものには、年収を上げる力はありません。上がった人と下がった人を分けているのは、転職したかどうかではなく、転職のときに何を変えたかです。

年齢別に並べると、もう少し見えてきます。

年齢増加うち1割以上の増加変わらない減少うち1割以上の減少
25〜29歳49.8%34.2%25.0%23.9%16.5%
30〜34歳48.6%32.8%20.8%29.0%19.0%
35〜39歳43.5%32.8%28.1%23.9%16.1%
40〜44歳44.9%29.9%24.6%27.4%17.6%
全年齢の計40.8%28.2%25.5%31.0%21.9%

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出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査 結果の概要」表6(2025年分)。転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者について集計したもので、自営業からの転職は含みません。計には賃金変動状況の不詳を含みます

30代は、全年齢の平均よりも「増えた」割合が高い層です。ここは素直に受け取っていい数字だと思います。ただし3割は減っています。そして減った人の多くは、1割以上減らしています。

もう1つ、条件をそろえた数字
同じ調査の表7では、正社員など「一般労働者」から「一般労働者」への移動だけを取り出しています。この場合、賃金が増えた人は42.0%。さらに、雇用期間の定めなしから定めなしへ移った人に絞ると44.5%まで上がります。パートや契約社員を挟まない移動のほうが、金額が上がりやすいということです。

回せるつまみは3つだけです

では、何を変えれば上がるのか。国の統計で金額の差として出てくるものは、そう多くありません。整理すると3つです。

アパレルから年収を上げるために動かせる3つのつまみ(会社の規模+62.0万円/役職+76.9万円/職種+365.9万円)を比べた図
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」から作成。年収換算は当サイトによる計算

先に、この記事で使う計算の式を出しておきます。統計に「年収」という欄はないので、公表されている2つの数字から組み立てます。

年収換算きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額
時間単価きまって支給する現金給与額 ÷(所定内実労働時間数+超過実労働時間数)
対象男・一般労働者・企業規模計(10人以上)
時点2025年6月分の給与/賞与は前年1年分

時間単価も一緒に出すのは、年収だけを見ると「長く働いて増えただけ」を見落とすからです。同じ年収でも、働いた時間が違えば別物です。

つまみ1:会社の規模を変える|上限は62.0万円

いちばんよく聞くのが「もっと大きい会社に行けば給料が上がる」です。これは本当なのですが、幅が思ったより小さいのが実際のところです。

職種を「販売店員」に固定したまま、会社の規模だけを変えたときの数字です。

会社の規模平均年齢勤続所定内+超過きまって支給年間賞与年収換算時間単価
10〜99人44.9歳12.9年169+9時間307.0千円497.9千円418.2万円1,725円
100〜999人43.4歳12.9年166+11時間326.5千円602.9千円452.1万円1,845円
1,000人以上42.1歳13.5年164+10時間334.4千円789.3千円480.2万円1,922円

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額等」より、販売店員・男・企業規模別。年収換算と時間単価は当サイトによる計算

いちばん小さい会社といちばん大きい会社で、差は62.0万円。月にならすと5万円ほどです。小さくはありませんが、「大手に行けば人生が変わる」という規模の話ではありません。

もう1つ、この表で目に付くところがあります。差の中身です。きまって支給する現金給与額の差は27.4千円ですが、年間賞与の差は291.4千円。つまり大手と中小の差は、毎月の給料よりもボーナスに出ています。月々の生活が急に楽になるわけではない、ということです。

VERDICT 規模だけを変える転職は、単独では弱い

上限が62.0万円と決まっているうえに、差の大半がボーナスです。ほかのつまみと一緒に回すなら意味がありますが、これだけを理由に動くと「思ったより変わらなかった」になりやすいところです。

つまみ2:役職に就く|330万円に見えて、実は76.9万円

次が役職です。ここは数字の見せ方でいちばん誤解が起きるところなので、順番に見ます。

まず、よく引用されるほうの数字から。小売業で働く男性を、役職ごとに並べたものです。

役職平均年齢所定内+超過きまって支給年間賞与年収換算人数
非役職41.6歳164+12時間371.2千円1,182.7千円563.7万円1,525,090人
係長級45.3歳164+13時間435.9千円1,529.9千円676.1万円246,290人
課長級49.5歳164+3時間543.6千円2,414.1千円893.7万円331,440人
部長級53.3歳167+2時間626.9千円2,415.3千円993.8万円172,630人

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」役職第1表「役職、年齢階級別きまって支給する現金給与額等」より、I 卸売業,小売業・男・学歴計・企業規模計(10人以上)。年収換算は当サイトによる計算

非役職563.7万円に対して課長級893.7万円。差は330.0万円です。「課長になれば330万上がる」と書いてある記事を見たことがあるかもしれません。

ただし、平均年齢の列を見てください。非役職は41.6歳、課長級は49.5歳です。8歳ちがう人たちを比べています。この330万円には、役職の分と年齢の分が混ざっています。

同じ30代前半どうしで比べ直すと、こうなります

幸い、この表は年齢階級ごとにも数字が出ています。年齢をそろえて比べ直します。

30〜34歳・男所定内+超過きまって支給年間賞与年収換算時間単価非役職との差
非役職164+15時間353.4千円1,078.9千円532.0万円1,974円
係長級163+16時間388.6千円1,417.0千円608.0万円2,171円+76.0万円
課長級169+6時間420.2千円1,046.5千円608.9万円2,401円+76.9万円
部長級165+7時間471.3千円1,411.6千円706.7万円2,740円+174.7万円

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出典:同上(役職第1表、I 卸売業,小売業・男・学歴計・企業規模計、30〜34歳)。年収換算・時間単価は当サイトによる計算

330.0万円が76.9万円になりました。差の大半は役職ではなく、年齢と勤続だったということです。

そして、この表にはもう1つ面白いところがあります。30代前半では、係長級(608.0万円)と課長級(608.9万円)の年収がほとんど同じです。

違うのは働いた時間のほうです。超過実労働時間が、係長級は月16時間、課長級は6時間。時間単価にすると2,171円と2,401円で、230円の差がつきます。年収は同じでも、課長級のほうが短い時間で稼いでいます。

なぜ課長になると残業時間が減るのか
減っているのは実際の労働時間ではなく、集計上の「超過実労働時間数」です。管理監督者として扱われると時間外手当の対象から外れるため、超過時間としてカウントされる分が小さくなります。役職に就いた月から「残業代がなくなって手取りが減った」という話が起きるのはここです。

役職が効いてくるのは35歳からです

同じ表を35〜39歳で見ると、景色が変わります。

35〜39歳・男年収換算時間単価非役職との差参考:30〜34歳の差
非役職562.9万円2,115円
係長級663.0万円2,362円+100.1万円+76.0万円
課長級831.0万円3,212円+268.1万円+76.9万円

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出典:同上(役職第1表、I 卸売業,小売業・男・学歴計・企業規模計、35〜39歳)。年収換算・時間単価は当サイトによる計算

30代前半では76.9万円だった課長級の上乗せが、30代後半では268.1万円になります。つまり役職は、就いた瞬間に効くつまみではなく、就いてから数年かけて効いてくるつまみです。

VERDICT 役職は「早く就く」ほど得なつまみ

30代前半で就いても、その時点では76.9万円しか動きません。金額の見返りが来るのは30代後半です。逆に言えば、35歳を過ぎてから役職を目指し始めると、効き始める前に賃金カーブの上がり方が鈍る年齢に入ります。

つまみ3:職種を変える|幅は365.9万円

3つめが職種です。3つのなかで、いちばん幅が大きいのがここです。

職種ごとの数字は、同じ調査の別の表に出ています。代表的なところだけ並べます。

職種(男・企業規模計)平均年齢所定内+超過きまって支給年間賞与年収換算時間単価
販売店員43.1歳166+10時間326.3千円677.3千円459.3万円1,854円
その他の商品販売従事者(商品バイヤー・仕入員を含む)42.4歳166+9時間391.3千円1,068.7千円576.4万円2,236円
総合事務員45.2歳158+12時間433.0千円1,551.4千円674.7万円2,547円
その他の営業職業従事者43.5歳164+10時間442.3千円1,582.2千円689.0万円2,542円
企画事務員(商品開発・マーケティング)44.9歳159+11時間514.9千円2,073.0千円825.2万円3,029円

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表より、男・企業規模計(10人以上)。職種の中身は同調査の「役職及び職種解説」で確認。年収換算・時間単価は当サイトによる計算

販売店員459.3万円と企画事務員825.2万円で、365.9万円の差です。会社の規模(62.0万円)とはけたが違います。

時間単価で見ても同じです。販売店員は1,854円、企画事務員は3,029円。1時間あたりで1,175円ちがいます。これは長く働いて埋まる差ではありません。

この表は年齢をそろえられません
職種別の表には、男女別の年齢階級のデータが公表されていません(年齢階級別の表は男女計のみ)。そのため、この365.9万円には平均年齢の差(43.1歳と44.9歳)が1.8歳分だけ含まれています。役職の330万円のときのような8歳の開きはありませんが、まったく同条件の比較ではないことは書いておきます。

職種ごとの金額と、販売の経験がそのまま効く職種・効かない職種の見分け方は、別の記事で1つずつ並べています。

つまみを回す順番

3つのつまみは、同時には回せません。順番があります。

  1. 先に職種を決める

    いちばん幅が大きく、しかも後から変えるのがいちばん難しいのがここです。「販売のまま条件のいい会社へ」を1回はさむと、次に職種を変えるときの経歴が1年ぶん販売で埋まります。順番としては損です。

  2. 職種を変えた先で、役職を狙う

    役職の見返りは30代後半から来ます。30代前半で職種を変えておくと、効き始める時期にちょうど間に合います。逆に役職を先に取ると、その役職は職種を変えたときに持っていけません。

  3. 会社の規模は、最後に効く条件として使う

    62.0万円は、単独で狙うには小さく、他の条件が同じなら選ぶ価値がある大きさです。内定が2つ並んだときの決め手にはなりますが、これを目的に動くつまみではありません。

上がりやすい転職の形

  • 職種そのものを変えている
  • 正社員から正社員へ、雇用期間の定めなしで移っている
  • 30代前半のうちに動いている

上がりにくい転職の形

  • 販売店員のまま、会社だけを変えている
  • 間に契約社員や派遣をはさんでいる
  • 役職手当のぶんを、転職先で新人として捨てている

あなたがいま回すべきつまみ

あてはまるものを数えてください

  • 店頭に立つ仕事を、あと10年続けたいとは思っていない
  • いまの会社に、店長より先の役職の空きが見えていない
  • 売上・在庫・発注の数字を、自分で管理した経験がある
  • 過去2年、基本給がほとんど動いていない
  • 残業代を除くと、手取りが同期の事務職より低い

→ 3つ以上あてはまるなら、回すのは「職種」のつまみです。会社を変えるだけの転職では、統計上62.0万円が上限です。

販売から本部の仕入に移った年、額面はほとんど変わりませんでした。上がったのは翌年からです。売場にいたころは「異動しても給料は変わらないらしい」と聞いていたのですが、いま思うと、変わらないのは最初の1年だけでした。

REAL EXPERIENCE — 筆者が販売から買取査定・仕入に移ったときの実感
この記事の数字をどう作ったか(計算の内訳)

統計に「年収」という欄はないので、公表されている2つの数字を足しています。たとえば販売店員(男・企業規模計)なら、きまって支給する現金給与額が326.3千円、年間賞与その他特別給与額が677.3千円なので、326.3×12+677.3=4,592.9千円、つまり459.3万円です。

時間単価は、きまって支給する現金給与額を実労働時間で割っています。販売店員なら326,300円÷(166時間+10時間)=1,854円です。所定内と超過を足しているのは、残業代込みの給料を残業込みの時間で割らないと、実際の割のよさが分からないためです。

きまって支給する現金給与額は2025年6月分、年間賞与その他特別給与額は2024年7月から2025年6月までの1年分です。手取りではなく、税や社会保険料を引く前の額面です。

よくある質問

アパレルから転職すれば年収は上がりますか?
転職した人全体で見ると、上がった人は48.6%(30〜34歳)です。減った人も29.0%います。上がるかどうかは転職したかどうかではなく、職種・役職・会社の規模のどれを変えたかで決まります。
大きい会社に移れば年収はどのくらい上がりますか?
販売店員のまま会社の規模だけを変えた場合、10〜99人の会社で418.2万円、1,000人以上の会社で480.2万円です。差は62.0万円で、その大半は毎月の給料ではなく年間賞与の差です。
店長や課長になれば年収は上がりますか?
上がりますが、30代前半では思ったほど動きません。小売業の男性を30〜34歳どうしで比べると、非役職532.0万円に対して課長級608.9万円で、差は76.9万円です。同じ比較を35〜39歳ですると差は268.1万円に広がるので、役職の効果は就いてから数年かけて出てきます。
職種を変えると年収はどのくらい変わりますか?
男性の場合、販売店員は459.3万円、企画事務員は825.2万円で、差は365.9万円です。時間単価でも1,854円と3,029円で1,175円の差があります。3つのつまみのなかで、いちばん幅が大きいのがここです。
アパレル業界だけの年収データはありますか?
ありません。国の賃金統計で公表されている最小の単位は「卸売業,小売業」という産業大分類までで、衣服小売だけを抜き出した集計は出ていません。この記事の役職別の数字も、卸売業,小売業の値です。

まとめ

年収を上げるために回せるつまみは3つで、動く幅はそれぞれ決まっています。会社の規模で62.0万円、役職で76.9万円(30代前半の場合)、職種で365.9万円。順番としては、いちばん幅が大きく、いちばん後から変えにくい職種を先に決めるのが理にかなっています。

そして、転職そのものには年収を上げる力がありません。30〜34歳で転職した人のうち、賃金が増えたのは48.6%、減ったのは29.0%です。その差を作っているのは、動いたかどうかではなく、動くときに何を変えたかです。

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