筆者は新卒で入ったアパレル企業を8ヶ月で退職し、その後アパレル販売・買取査定を経て、現在は古物商としてブランド買取業を営んでいます。この記事に出てくる級・語彙量・受験料・認定基準は、すべて日本中国語検定協会とHSK日本実施委員会の公式ページを実際に開いて確認したものです(情報時点:2026年10月3日)。
資格欄に「中国語3級」とだけ書くと、2段階ぶん損をすることがあります。
日本の中検は1級が最上位、中国政府公認のHSKは6級が最上位。番号の向きが逆です。しかも中検3級は常用語約2,000語、HSK3級は600語。協会自身の対応表でも、中検3級はHSKの4〜5級の高さに置かれています。書くべきは級だけではなく、試験名・級・語彙量の3点セットです。
自分の級がどこに乗るか見る出典:日本中国語検定協会「出題内容・認定基準」/HSK日本実施委員会「各級の紹介」
中国語が加点になる職種か、先に確かめる
資格欄の書き方を直しても、中国語が評価されない職種に出していては結果が変わりません。いまの経歴で出せる職種と、そこで語学が効くかどうかを、登録なしで確認できます。
転職シミュレーターで確かめる 登録不要 / 所要3分「中国語3級です」は、面接官に何も伝わっていません
第二新卒の職務経歴書を見ていると、資格欄がこうなっている人がかなりいます。
問題は、日本で受けられる中国語の試験が1つではないことです。しかも2つの主要な試験は、級の番号の向きがそろっていません。
つまり「3級」という同じ言葉が、一方では上から4番目、もう一方では下から3番目を指します。試験名を書かずに級だけ書くと、読んだ人は自分の知っているほうの試験で解釈します。中検3級を持っている人が「3級」とだけ書けば、HSKしか知らない採用担当者には下から3番目に見えます。
そして、ここからが本題です。試験名を書いても、まだ足りません。
同じ「3級」が、同じ高さにありません
日本中国語検定協会は、公式サイトの試験概要ページに難易度対応表を出しています。中検の各級が、HSKやCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でどのあたりに当たるかを協会自身が示したものです。
これを縦に並べ直すと、こうなります。

中検3級の帯は、HSKの4級から5級の高さにかかります。HSK3級は、中検でいえば4級のあたりです。同じ「3級」でも、1〜2段階ずれています。
| 中検 | 公式の認定基準(要約) | 出題語彙 | 対応表でのHSKの位置 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 高いレベルで中国語を駆使しうる能力の保証 | — | 対応なし |
| 準1級 | 実務に即従事しうる能力の保証 | — | 対応なし〜6級 |
| 2級 | 実務能力の基礎づくり完成の保証 | — | 6〜5級 |
| 3級 | 自力で応用力を養いうる能力の保証 | 常用語 約2,000 | 5〜4級 |
| 4級 | 中国語の基礎をマスター | 常用語 約1,000 | 3級 |
| 準4級 | 中国語学習の準備完了 | 基礎単語 約500 | 2級 |
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出典:日本中国語検定協会「出題内容・認定基準」/HSKの位置は同協会「試験概要」内の難易度対応表。協会は「試験の目的も出題形式も異なるため厳密な比較はできませんが,およその目安を記します」としています
HSK側の語彙量も、公式に数字が出ています。
| HSK | 公式の「試験の程度」(要約) | 語彙量の目安 | HSK公式のCEFR |
|---|---|---|---|
| 6級 | 中国語の情報をスムーズに読み・聞き、会話や文章で自分の見解を流暢に表現できる | 5,000語以上 | C2 |
| 5級 | 新聞・雑誌を読み、テレビや映画を鑑賞でき、比較的整ったスピーチができる | 2,500語 | C1 |
| 4級 | 広範囲の話題で会話ができ、母国語とする相手と比較的流暢にやりとりできる | 1,200語 | B2 |
| 3級 | 生活・学習・仕事の場面で基本的なコミュニケーションがとれる | 600語 | B1 |
| 2級 | 簡単な日常会話。大学の第二外国語における第一年度履修程度 | 300語 | A2 |
| 1級 | 非常に簡単な単語とフレーズを理解・使用できる | 150語 | A1 |
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出典:HSK日本実施委員会「各級の紹介」/CEFRは同「世界標準CEFRとは」
2つの試験は、そもそも測っているものが違います
級の高さがずれるのは、難易度の設計がいいかげんだからではありません。目的が違う試験だからです。ここを理解しておくと、どちらを受けるかの判断も早くなります。
日本語を母語とする学習者向け
訳す力- 1981年に第1回。累計受験者数は120万人を超える
- すべての級で中国語→日本語、日本語→中国語の翻訳を課す
- 漢字文化圏にいる日本人の読解力を前提に設計されている
- 準1級・1級には面接の二次試験がある
中国政府公認・世界共通の物差し
使える量- リスニング・読解・作文の3パート(1級・2級に作文はなし)
- 2010年のリニューアルでCEFRと合致するよう設計された
- 日本語を介さない。中国語だけで出題される
- 話す力は口頭試験(HSKK)という別の試験で測る
出典:日本中国語検定協会「試験概要」/HSK日本実施委員会「各級の紹介」・「世界標準CEFRとは」
中検は、協会自身が「読む・聞く・話す・書くの4技能だけでは足りず、母語と外国語の関係を処理する『訳す』能力を必要とする」と書いています。だから全級で翻訳問題が出ます。
HSKには、その発想がありません。日本語が一切出てこないので、日本語を介さずに中国語を処理できるかがそのまま測られます。
求人票の「ビジネスレベル」は、どの級のことか
求人票でよく見る「中国語ビジネスレベル」「中国語日常会話レベル」。これが何級に当たるのかは、求人票には書いてありません。ただ、中検の認定基準には「実務」という言葉がはっきり出てきます。
| 公式の認定基準に出てくる言葉 | 中検 | HSK(対応表のおよその位置) | 求人票でいうと |
|---|---|---|---|
| 学習の準備完了/基礎をマスター | 準4級・4級 | 2〜3級 | 書かないほうがよい |
| 自力で応用力を養いうる能力の保証 | 3級 | 4〜5級 | 日常会話レベル |
| 実務能力の基礎づくり完成の保証 | 2級 | 5〜6級 | ビジネスレベルの入口 |
| 実務に即従事しうる能力の保証 | 準1級 | 6級〜 | ビジネスレベル |
| 高いレベルで駆使しうる能力の保証 | 1級 | 対応なし | 通訳・翻訳 |
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出典:日本中国語検定協会「出題内容・認定基準」(「求人票でいうと」の列は、認定基準の文言から筆者が対応づけたものです)
第二新卒の現実的な線で言うと、大学の第二外国語で2年やって中検3級、というのがいちばん多い到達点です。協会の基準でも3級は「一般大学の第二外国語において二年以上の学習程度」とされています。この3級は「日常会話レベル」と書いて差し支えありませんが、「ビジネスレベル」と書くと面接で崩れます。
語学は面接の場で検証されやすい項目です。中国語で自己紹介してください、と言われて止まると、その1点だけでなく職務経歴書全体の信頼が落ちます。等級を正確に書き、「できること/まだできないこと」を自分の言葉で言えるほうが、結果として強く見えます。
資格欄は、3点セットで書き直す
ここまでを踏まえて、職務経歴書の書き方に落とします。やることは1行を書き換えるだけです。
- 試験名をフルネームで書く
「中国語検定試験(中検)3級」「HSK(漢語水平考試)4級」。略称だけ、級だけは避けます。どちらの試験かが分からないと、読んだ人は自分の知っているほうで解釈します。
- 語彙量か、CEFRを1つ添える
「中検3級(出題語彙 常用語約2,000)」、または「HSK4級(1,200語/HSK公式のCEFR対応でB2)」。公式に出ている数字なので、盛っていると思われません。
- 取得年を書く
大学2年で取った中検3級を、5年後にそのまま書くのは正確ではありません。年を書いたうえで、いまのレベルを次の行で説明します。
- いま何ができるかを1行だけ足す
「中国語の社内メールと議事録は辞書ありで読める。会話は自己紹介と簡単な受け答えまで」。級が古くても、この1行があれば面接で確かめやすくなります。
次のうち2つ以上に当てはまるなら、資格欄を書き直す価値があります
- 「中国語検定3級」とだけ書いている
- 試験名を書かずに「3級」とだけ書いている
- 取得年を書いていない
- 中検とHSKのどちらを持っているか、自分でもあいまいになっている
- 「日常会話レベル」とだけ書いて、級を書いていない
→ 持っている力を、自分で低く見せている状態です。書き換えるだけで、面接で聞かれる質問の質が変わります。
ここまでで「書き方」は解決します。問題は、そもそもどの職種でこの1行が効くのかです。中国語が加点になる求人と、まったく見られない求人があります。
いまの経歴で、中国語が効く職種を見る 登録不要 / 所要3分これから受けるなら、どちらを何級で受けるか
「中検3級しか持っていない」「何も持っていない」という人向けに、選び方を整理します。目的で決めます。
TYPE A / 日本の会社で日中をつなぐなら中検
日系企業の中国法人とのやりとり、日中の資料の突き合わせ、議事録の翻訳。こうした仕事は「訳す」作業そのものです。中検は全級で中文日訳・日文中訳を課しているので、設計が仕事に直結します。
目標は2級です。協会が「実務能力の基礎づくり完成の保証」と書いている最初の級がここだからです。いきなり2級が遠ければ3級からで構いません。
TYPE B / 中国語圏と直接やるならHSK
相手が中国語話者で、日本語を挟まない仕事。この場合、日本語訳の力は評価軸になりません。HSKは中国政府公認で、中国国内・中国企業でもそのまま通じる物差しです。
目標は5級です。公式の説明が「新聞・雑誌を読み、テレビや映画を鑑賞でき、比較的整ったスピーチができる」で、ここから仕事の文脈に入ります。4級は「母国語とする相手と比較的流暢にコミュニケーション」なので、会話中心の職種ならまず4級でも1行になります。
TYPE C / まず1行がほしいなら費用で選ぶ
とにかく職務経歴書に書ける1行がほしい段階なら、受験料と日程で決めて構いません。両方の公式の金額を並べます。
| 中検 | 受験料(税込) | HSK | 受験料(税込) |
|---|---|---|---|
| 準4級 | 3,800円 | 1級 | 3,850円 |
| 4級 | 5,800円 | 2級 | 5,060円 |
| 3級 | 6,800円 | 3級 | 6,600円 |
| 2級 | 8,800円 | 4級 | 7,920円 |
| 準1級 | 11,800円 | 5級 | 9,900円 |
| 1級 | 13,800円 | 6級 | 11,550円 |
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出典:日本中国語検定協会「受験申込」/HSK日本実施委員会「受験料と時間」。金額は改定されることがあるので、申し込み前に公式でご確認ください
日程の条件も違います。
出典:日本中国語検定協会「試験概要」/HSK日本実施委員会「受験料と時間」・「試験日程」
過去問は、どちらも公式のものが出ています
どちらを受けるか決まったら、最初に買うものは1冊だけです。公式が出している過去問です。どの語彙がどの級で出るのかは、公式の問題を見るのがいちばん早く、いちばん間違いがありません。
HSKは、中国教育部の中外語言交流合作中心が編んだ公式過去問集が級ごとに出ています。
中検のほうは、協会が一次試験の問題冊子の持ち帰りを認めていて、解答も試験後に公式サイトで公開されます。市販の対策問題集と合わせて使えます。
中国語が効く求人と、効かない求人があります
最後に、第二新卒の転職で中国語が実際に効く場面を整理します。ここを見誤ると、資格を取ること自体が遠回りになります。
中国語が入口になる求人
- 応募要件に「中国語」が書いてある(必須・歓迎の両方)
- 中国・台湾・香港に拠点か取引先がある
- インバウンド接客、越境EC、貿易事務
- 通訳・翻訳のアシスタント
中国語を書いても動かない求人
- 応募要件に語学の記載がまったくない
- 国内向けの営業・販売・事務だけで完結する職種
- 「語学力不問」と明記されている
- 未経験可の大量採用枠(選考基準が別にある)
第二新卒の場合、中国語は単独の武器にはなりにくいのが正直なところです。社会人経験がまだ短く、語学だけで採る会社は通訳職くらいだからです。
効くのは「いまの職務経験 + 中国語」の組み合わせです。販売の経験があってインバウンド比率の高い店、事務の経験があって中国の工場とやりとりのあるメーカー。職種を変えずに、中国語が乗る会社へ移るのがいちばん無理のない使い方です。
中検2級やHSK5級は、働きながらだと半年から1年かかります。その前に、いま持っている級を「試験名・級・語彙量」の3点セットで書き直すほうが先です。費用はゼロで、今日できます。受け直すかどうかは、その状態で何社か出してから決めても遅くありません。
