※この記事に出てくる金額は、すべて厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」の原表(図表のExcel)と、総務省「日本標準産業分類」を実際に開いて書き写したものです。特定のコンサルティング会社や転職サービスを紹介する記事ではないため、事業者へのリンクはありません。筆者は新卒で入ったアパレル会社を8ヶ月で退職し、ブランド古着のECベンチャー、買取査定員を経て、いまは古物商として独立しています。コンサル業界の出身ではなく、公表されている統計の読み方だけを書いています(情報の時点は本文末尾)。
コンサルが入る産業の25〜29歳・男は月343,100円で全産業トップ。ただしその平均には持株会社と弁護士事務所が混ざっている。
「第二新卒でもコンサルに行ける」「コンサルは給料がいい」を、国の統計で確かめられるところまで落とします。結論は2つです。25〜29歳の時点で全産業のいちばん上にいるのは本当。ただし公式統計に「コンサル業」という産業は存在せず、読んでいる数字は純粋持株会社や法律事務所と同じ箱の平均です。ここを知らずに年収だけ見ると判断を間違います。
25〜29歳の産業別の順位を見る次のうち3つ以上あてはまるなら、この記事の対象です
- 新卒で入った会社に1〜3年いて、辞めた/辞めるつもり
- コンサルを候補に入れているが、業界の実像がつかめていない
- 「コンサルは年収1,000万」という数字の出どころを確かめたことがない
- コンサルとIT(情報通信業)とメーカーで迷っている
- エージェントの説明しか情報源がない
→ 3つ以上なら、先に決めるのは志望する会社名ではなく「どの数字を根拠に選んでいるのか」です。
公式統計に「コンサル業」という産業はない
年収の話を始める前に、必ず先に確認しておくことがあります。国の賃金統計に「コンサルティング業」という産業区分は存在しません。
総務省の「日本標準産業分類」で経営コンサルタント業をたどると、こうなっています。
コンサルは、4段まで下りた細分類7281にあります。ところが賃金統計が産業ごとの金額を出すのは、いちばん上の大分類Lまでです。つまり読める数字は「経営コンサルタント業の賃金」ではなく、大分類Lに入っている全部をまとめた平均ということになります。
では、同じ箱に何が入っているのか。分類表を実際に開いて書き写すと、こうでした。
| 分類 | 中身 |
|---|---|
| 71 学術・開発研究機関 | 理学・工学・農学・医学薬学の研究所/人文・社会科学研究所 |
| 721 | 法律事務所,特許事務所 |
| 725 | 社会保険労務士事務所 |
| 726 | デザイン業 |
| 727 | 著述家業,芸術家業 |
| 7281 | 経営コンサルタント業 ← ここがコンサル |
| 7282 | 純粋持株会社 ← ここが同じ箱に入っている |
| 729 | 興信所/翻訳業/通訳業 |
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出典:総務省「日本標準産業分類」大分類L 学術研究,専門・技術サービス業(2026年9月29日に閲覧)
あるのは「コンサルを含む大分類Lの平均」です。この記事でもそう呼びます。数字は使えますが、コンサル1社の提示額として読むことはできません。
それでも25〜29歳では、全産業のいちばん上にいる
ここからが本題です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、男・25〜29歳の所定内給与額を産業別に並べました。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第5-2表・第2表(男・所定内給与額)。2026年9月29日に原表を確認
| 産業(男・25〜29歳) | 賃金 |
|---|---|
| 学術研究,専門・技術サービス業(コンサルを含む) | 343.1 |
| 金融業,保険業 | 339.8 |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 327.0 |
| 不動産業,物品賃貸業 | 314.9 |
| 情報通信業 | 312.4 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 310.3 |
| 建設業 | 296.0 |
| 教育,学習支援業 | 290.6 |
| 全産業計 | 288.0 |
| 医療,福祉 | 285.9 |
| 運輸業,郵便業 | 284.0 |
| 卸売業,小売業 | 281.4 |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 278.2 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 272.1 |
| 製造業 | 267.0 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 259.0 |
| 複合サービス事業 | 256.0 |
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25〜29歳の時点で、大分類Lは金融業,保険業(339.8)をわずかに上回って1位です。よく比較対象になる情報通信業(312.4)とは30.7千円、製造業(267.0)とは76.1千円の差があります。「コンサルは20代のうちから高い」は、統計の上では本当だと言えます。
価値は「初任給の高さ」ではなく「傾きの急さ」にある
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。同じ2つの表を、年齢階級で縦に並べ替えます。
| 年齢階級(男) | 大分類L | 全産業計 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 282.7 | 245.7 | +37.0 |
| 25〜29歳 | 343.1 | 288.0 | +55.1 |
| 30〜34歳 | 429.5 | 330.4 | +99.1 |
| 35〜39歳 | 468.0 | 366.2 | +101.8 |
| 年齢計 | 477.9 | 373.4 | +104.5 |
← 横にスクロールできます(単位:千円)

差の列だけを追ってください。25〜29歳で+55.1、30〜34歳で+99.1。5年でほぼ倍になります。そして35〜39歳(+101.8)から先はほとんど広がりません。
この形が意味することは、はっきりしています。第二新卒でこの産業に移る値打ちは、入った時点の提示額ではなく、20代後半から30代前半にかけての上がり方のほうにあります。逆から読むと、こうも言えます。
差がいちばん開くのは30〜34歳の区間です。25〜29歳で降りると、受け取れるのは+55.1千円の区間だけ。「とりあえずコンサルで箔をつける」は、この統計の形とは噛み合いません。
傾きが急な区間に自分の年齢を重ねるには、その前に入っている必要があります。第二新卒はちょうどその手前です。
通説とずれた数字が2つあった
原表を写していて、よく言われている話と合わない数字が2つ出てきました。どちらも断定はできませんが、知っておくと判断が変わります。
- 伸び率が16産業で最大だった
大分類L(男・年齢計)の対前年増減率は+9.8%で、第5-2表に並ぶ16産業のうちいちばん大きい伸びでした。2位が金融業,保険業の+7.6%、情報通信業は+3.8%、製造業は+3.5%です。いま賃金が動いている産業だということになります。
- 平均勤続年数は13.2年で、短くはなかった
「コンサルは3年で辞める業界」という言い方をよく見ますが、この産業の平均勤続年数は13.2年(平均年齢43.8歳)でした。ただしこれは研究所・法律事務所・持株会社を含む箱の平均です。コンサル専業の勤続年数がこれと同じだとは言えません。通説を否定する材料にはならない、という程度に受け取ってください。
メーターは、この記事で確認できた公式統計の数字だけを5段階に置き直したものです。各社の評価ではありません
この統計から言えること
- 25〜29歳の時点で全産業のいちばん上にいる
- 残業代・賞与を含まずにその位置にいる
- 差が開くのは30〜34歳の区間
- 産業全体の賃金がいま動いている(+9.8%)
この統計から言えないこと
- コンサル1社の提示額(箱の平均なので出せない)
- 第二新卒の初年度年収(公式統計に見つからなかった)
- 年収(所定内給与だけで賞与が入っていない)
- コンサル専業の離職率・勤続年数
第二新卒で受けるなら、この順番で確かめる
統計から決められるのはここまでです。残りは自分で確かめる部分になります。応募先を調べる順番だけ置いておきます。
- その会社が7281なのか7282なのかを見る
求人の会社名で検索して、事業内容が「経営コンサルティング」なのか「グループ会社の管理」なのかを確認します。同じ「コンサル」の看板でも、持株会社の経営企画部門とコンサルティングファームは別の仕事です。
- 賞与の扱いを募集要項で確認する
この統計には賞与が入っていません。コンサルは賞与や業績連動の比率が高いと言われる業界なので、月給だけ比べると判断を誤ります。年俸制なのか、月給+賞与なのか、業績連動が何割かを見ます。
- 30代前半まで居られる働き方かを見る
差がいちばん開くのは30〜34歳の区間でした。その区間に自分が残っていられるかどうかが、この産業を選ぶかどうかの実質的な判断になります。
- 比較対象を2つに絞る
25〜29歳で近いのは金融業,保険業(339.8)と情報通信業(312.4)です。3つ以上を並べると決まらなくなるので、コンサルとどちらか1つに絞って比べます。
私は新卒のアパレルを8ヶ月で辞めたとき、業界の平均年収しか見ていませんでした。見るべきだったのは平均額ではなく、5年後10年後にどう開くかの形でした。数字が1つしか出てこない比較記事は、その形を隠してしまいます。年齢階級で並んだ表を自分で見るほうが、結局早いです。
この記事で使った数字の出どころと定義
賃金=調査実施年6月分の所定内給与額(税引き前)。残業代・賞与・通勤手当の一部を含みません。産業区分は日本標準産業分類の大分類にもとづきます。第5-2表は産業別・性別・年齢階級別の平均で、企業規模をそろえていません。第2表は全産業計です。どちらも個々の求人の提示額ではなく、その属性の平均値です。
よくある質問
第二新卒でもコンサルティングファームに応募できますか?
コンサルの平均年収が1,000万円という話は正しいですか?
コンサルとIT(情報通信業)では、どちらが賃金が高いですか?
20代のうちに入らないと意味がないのですか?
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第5-2表・第2表/同「主な用語の定義」/総務省「日本標準産業分類」(すべて2026年9月29日に原資料を確認)
