第二新卒で大手子会社に転職するとどうなるか|賃金の差は入社時より10年後に開く

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大手子会社という選択

※この記事に出てくる数字は、厚生労働省の統計とe-Gov法令検索(国の法令データベース)を筆者が実際に開いて確認したものだけを載せています。統計は毎年更新されるので、調査時点のものとして読んでください。筆者は新卒で入ったアパレルを8ヶ月で辞めた元販売員で、その後は買取査定員を経て、いまはブランド古着買取「オーラリアン」とG-SHOCK買取「ShockMania」を運営する古物商です。

CONCLUSION

大手の子会社は、法律の上でも統計の上でも親会社とは別の会社です。看板は付いてきますが、賃金テーブルは自動では付いてきません。

そして差が出るのは入社した日ではありません。厚生労働省の統計では、従業員1,000人以上の会社と100〜999人の会社の賃金差は、25〜29歳では11%、35〜39歳では18.5%。10年で倍近くに開きます。ただし第二新卒にとって子会社が合理的な選択になる場面もあります。その線引きを数字で引きます。

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「大手子会社」は、どこまで大手なのか

求人サイトで「〇〇グループ」「東証プライム上場企業の100%子会社」と書かれた求人を見ると、大手そのものに見えます。ここを最初にはっきりさせておきます。

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VERDICT 入口としては十分にあり。ただし「親会社と同じ」を前提にしない

子会社は親会社とは別の法人で、給与制度も別に作れます。同じ制度を使っている会社もあれば、まったく別の会社もあります。「どちらなのか」を応募前に確かめる作業が要ります。

法律の上では、はっきり別の会社

会社法は「子会社」をこう定義しています。

会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの(会社法 第2条第3号)

読みくだすと、「株を過半数持たれていて、経営を支配されている、別の法人」です。支配されてはいるけれど、法人格は独立している。だから就業規則も給与テーブルも退職金制度も、子会社は子会社で作ります。親会社のものが自動的に適用されるわけではありません。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」第2条第3号

統計の上でも、別に数えられている

ここがいちばん誤解されるところです。厚生労働省の賃金統計でいう「企業規模」は、こう決まります。

調査労働者の属する企業の全常用労働者数の規模をいい、本概況では、常用労働者1,000人以上を「大企業」、100〜999人を「中企業」、10〜99人を「小企業」に区分している(厚生労働省 賃金構造基本統計調査 結果の概況「主な用語の定義」)

数えるのはグループ全体ではなく、その会社単体の人数です。親会社が10万人いても、あなたが受ける子会社の従業員が300人なら、統計の上でその人は「中企業に勤めている人」に入ります。

ここを間違えない:「東証プライム上場企業グループ」という肩書きは、その会社の規模を何も保証していません。見るべきはその求人を出している会社単体の従業員数です。求人票の会社概要欄に必ず書いてあります。

では、どれくらい違うのか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、企業規模別の賃金を並べます。

大企業(1,000人以上)385.1千円男女計・年齢計の所定内給与額
中企業(100〜999人)326.2千円大企業を100とすると84.7
小企業(10〜99人)305.6千円大企業を100とすると79.4

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 結果の概況」第4表(企業規模、性、年齢階級別賃金)/男女計・年齢計

この「賃金」は6月分の所定内給与額です。残業代も賞与も入っていない月額で、年収ではありません。賞与の差はこの数字の外にあるので、実際の年収差はこれより大きくなることも小さくなることもあります。

差は入社時ではなく、そのあとに開く

ここからが本題です。同じ統計を、男性の年齢階級別で見ます。

年齢大企業中企業大企業=100月額の差
20〜24歳261.3240.392.021.0
25〜29歳312.2278.089.034.2
30〜34歳366.4315.486.151.0
35〜39歳420.0342.381.577.7
40〜44歳464.8376.881.188.0
45〜49歳495.1400.680.994.5

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出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 結果の概況」第4表(男)。単位は千円。「月額の差」は大企業と中企業の差を筆者が引き算したもの

大企業を100としたときの中企業・小企業の賃金(男・年齢階級別)。中企業は25〜29歳で89.0、35〜39歳で81.5

第二新卒でよくある25〜29歳の時点では、差は月3.4万円です。年間にして約41万円。これなら「通勤が近い」「残業が少ない」で十分にひっくり返る幅です。

ところが35〜39歳になると、差は月7.8万円。年間で約93万円になります。10年で倍以上に開く。しかもこれは賞与を含まない数字なので、賞与月数まで違えば実際の年収差はもっと大きくなります。

補足:この表は全産業を平均した数字で、特定の会社の話ではありません。子会社でも親会社と同じ給与テーブルを使っている会社はありますし、業界によっては中企業のほうが高いこともあります。ここで言いたいのは「子会社を選ぶな」ではなく、差が開くとしたら入社時ではなく30代後半だという点です。

勤続年数も違う

同じ表に、平均勤続年数も出ています。男性で、大企業15.9年・中企業13.8年・小企業12.5年。平均年齢は大企業43.9歳・中企業44.9歳・小企業46.9歳です。大企業のほうが、若く入って長くいる形になっています。

これは賃金カーブの話につながります。長くいる人が多い会社ほど、年次で上がる仕組みが機能している。逆に言えば、賃金カーブがゆるい会社は、長くいる理由が薄くなります。

それでも第二新卒に子会社が合理的な場面

ここまで差の話ばかりしましたが、子会社を勧めない記事ではありません。第二新卒の年代には、この差を上回る事情があります。

20代の転職は、そもそも賃金が上がりやすい

厚生労働省の雇用動向調査から、転職して賃金がどう変わったかを見ます。

年齢増加うち1割以上の増加変わらない減少
20〜24歳55.244.219.917.5
25〜29歳49.834.225.023.9
30〜34歳48.632.820.829.0
全年齢の計40.828.225.531.0

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出典:厚生労働省「雇用動向調査結果の概要」表6(転職入職者の賃金変動状況別割合)。単位は%。転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてみたもの

25〜29歳は、転職で賃金が増えた人が49.8%、減った人が23.9%。増えた人が2倍います。しかも「1割以上増えた」が34.2%で、増えた人の大半は小幅ではありません。

全年齢の計だと増加40.8%・減少31.0%なので差は9.8ポイントしかない。20代のあいだは、転職そのものが賃金にプラスに効きやすいということです。ここが第二新卒の武器になります。

HONSHA

本体の中途枠を待つ

枠:小
  • 賃金カーブは統計上いちばん有利
  • 社名がそのまま次の職歴になる
  • 枠が開くのを待つ時間がかかる
  • 待っているあいだ年齢は上がる
KOGAISHA

子会社に先に入る

枠:中
  • いま動ける。20代のうちに1回動ける
  • グループの仕事の中身は見られる
  • 賃金カーブは会社ごとに要確認
  • グループ内異動があるとは限らない

「待つ」にも費用がかかります。25〜29歳で動けば増加49.8%の側にいますが、30〜34歳では減少が29.0%まで上がる。待つ時間は、そのまま条件の悪化として跳ね返ります。

大手本体そのものの狙い方は「第二新卒で大手に転職できるのか」にまとめてあります。本体をまだ諦めていない人は、そちらを先に読んでください。

応募前に確かめる4つのこと

ここからは統計ではなく、求人票と会社のページで自分で確かめる作業です。順番に意味があります。

  1. その会社「単体」の従業員数を見る

    求人票の会社概要か、その子会社自身のコーポレートサイトの会社概要。グループ全体の人数しか書いていない求人は、そこがまず一つの情報です。100〜999人なら統計上は中企業、1,000人以上なら大企業の側に入ります。

  2. 給与制度が「親会社と同じ」かどうかを確かめる

    ここは求人票に書いていないことが多いので、面接で聞く項目です。「給与テーブルは親会社と共通ですか、それとも御社独自ですか」。答えにくい質問ではありません。共通なら、その旨を誇る会社が多いくらいです。

  3. 売上の相手が誰かを見る

    親会社向けの仕事だけで成り立っている会社と、外部にも売っている会社では、伸び方がまったく違います。子会社のコーポレートサイトの事業紹介と実績ページを開いて、親会社以外の顧客名が出てくるかを見てください。出てこなければ、売上は親会社の予算次第です。

  4. 昇進の天井がどこにあるかを聞く

    「役員は親会社からの出向の方が多いですか」。これも面接で聞ける質問です。管理職の上が全員出向で埋まっている会社では、自分が上がれる高さが先に決まっています。それが悪いわけではなく、知ったうえで選ぶかどうかの問題です。

3つ以上あてはまるなら、その子会社は「親会社とは別物」として見たほうがいい

  • 求人票にグループ全体の人数しか書いていない
  • その会社単体のコーポレートサイトが見つからない、または採用ページしかない
  • 事業紹介に親会社以外の顧客名が出てこない
  • 給与テーブルが親会社と共通かどうか、面接で明言されなかった
  • 「グループ内異動の実績」を聞いても具体例が出てこない

→ 3つ以上なら、社名の重さで判断せず、提示される条件そのもので判断してください。

向いている人・向いていない人

子会社が合っている人

  • いま20代で、とにかく早く一度動きたい
  • 大手の仕事の進め方を内側から見たい
  • 30代後半の年収より、直近3年の環境を優先したい
  • 職種を変えたい(未経験枠が本体より開いていることがある)

本体を狙い直したほうがいい人

  • 年収の最大値を取りに行きたい
  • 「大手の社名」そのものを次の職歴に使いたい
  • すでに30代前半で、次が最後の転職になりそう
  • いまの会社に残る選択肢がまだ生きている

新卒で入ったアパレルを8ヶ月で辞めたとき、いちばん怖かったのは「この会社にいた」と言える時間が短すぎることでした。結局わたしは社名ではなく、そこで何を数字で動かしたかを話せるようになるまで動けませんでした。社名の重さは、思っているほど長くは効きません。効くのは、そこで何を任されたかのほうです。

REAL EXPERIENCE — 新卒で入ったアパレルを8ヶ月で退職
「中企業」「小企業」の線引きをもう一度確認する

賃金構造基本統計調査では、その人が属する企業の常用労働者数で区分します。1,000人以上が大企業、100〜999人が中企業、10〜99人が小企業。事業所(店舗や支社)の人数ではなく、会社全体の人数です。そして子会社は親会社とは別の企業なので、グループ合算ではありません。なお「常用労働者」とは、期間を定めずに雇われている人か、1か月以上の期間を定めて雇われている人を指します。

まとめ

大手子会社は、第二新卒にとって現実的で、悪い選択ではありません。ただし「大手と同じ」ではない。押さえておくのは3つです。

  1. 子会社は法律上も統計上も別の会社

    会社法では親会社に支配された別の法人。統計の企業規模も、グループ合算ではなく会社単体の人数で決まります。

  2. 差が開くのは入社時ではなく30代後半

    大企業と中企業の男性の賃金差は、25〜29歳で月3.4万円、35〜39歳で月7.8万円。判断するときは入社時の提示額だけを見ないこと。

  3. 20代のうちは転職そのものが賃金にプラスに効く

    25〜29歳の転職では増えた人49.8%・減った人23.9%。待つほど条件が良くなるわけではありません。

そのうえで、応募前に「会社単体の従業員数」「給与テーブルの出どころ」「売上の相手」「昇進の天井」の4つを確かめてください。ここまで見て納得できるなら、子会社は十分に取りに行く価値のある入口です。

大手子会社は大手本体より受かりやすいですか?
本体より中途の募集が出やすい会社はありますが、「受かりやすさ」を示す公的な統計は見つかりませんでした。数字で保証できないので、倍率ではなく募集が実際に出ているかどうかで判断してください。
子会社に入れば、いずれ親会社に移れますか?
グループ内異動の制度がある会社もありますが、あるかどうかは会社ごとに違います。面接で「グループ内異動の実績」を具体例で聞いてください。具体例が出てこない場合は、無いものとして条件を判断したほうが安全です。
年収は本当に下がりますか?
会社によります。統計上は企業規模が小さいほうが平均賃金は低いですが、これは全産業の平均で、個別の会社の話ではありません。実際に確かめるべきは提示される金額と、賞与月数、そして昇給の仕組みの3つです。
求人票のどこを見れば子会社かどうか分かりますか?
会社概要欄の「株主」「資本金」「設立年」を見てください。株主に親会社名が入っていれば子会社です。あわせて従業員数がグループ全体なのか会社単体なのかも確認してください。

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