筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーと買取業を営んでいます。採用する側として職務経歴書を読んできた経験と、公的統計の数字だけをもとに書いています。情報時点は2026年9月です。
「スキルアップしたいからです」は、例文としては一番人気、実態では一番少数。20代男性で20人に1人しか選んでいません。
厚生労働省の調査で「能力・個性・資格を生かせなかった」を離職理由に挙げた20〜24歳の男性は3.5%。給料(13.8%)の4分の1です。面接官が身構えるのはここに理由があります。この記事では、例文を写す前に自分の本音がどれかを特定し、そこからスキルアップへつなぐ順番を3ステップで示します。
まず実際の数字を見る「スキルアップ」を理由にする人は、20人に1人しかいない
転職理由の例文をいくつか読むと、必ず上位に出てくるのが「スキルアップしたい」「成長できる環境で働きたい」です。前向きで、誰も傷つけず、会社の悪口にならない。書きやすい理由ではあります。
ところが、実際に会社を辞めた人が挙げた理由を国が集計すると、順位はまったく違います。厚生労働省の雇用動向調査では、離職理由の選択肢のうちスキルアップにいちばん近いのは「能力・個性・資格を生かせなかった」ですが、これを選んだ20〜24歳の男性は3.5%しかいません。

出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」図表データ 表5(男・年齢階級別)/前職雇用者で調査時在籍者。自営業からの転職入職者を含まない/2026年9月22日に確認
| 前職を辞めた理由(男) | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 30〜34歳 |
|---|---|---|---|
| 給料等収入が少なかった | 13.8 | 13.1 | 13.4 |
| 労働時間・休日等の労働条件が悪かった | 12.4 | 10.5 | 13.0 |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 10.3 | 10.7 | 5.9 |
| 会社の将来が不安だった | 2.4 | 11.0 | 10.0 |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 6.3 | 6.5 | 9.0 |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 3.5 | 5.6 | 5.2 |
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面接官が身構えるのは、この差を知っているからです
採用する側は、毎年たくさんの職務経歴書を読みます。そこに並ぶ転職理由の多くが「スキルアップ」で、一方で実際の離職理由の分布はそうなっていない。このズレを日常的に見ているのが面接官です。
だから「スキルアップしたくて」と言われた瞬間、頭の中で一つ質問が立ちます。「で、本当の理由は給料ですか、人間関係ですか、労働時間ですか」。この問いに答えられないまま例文を写すと、深掘りの2問目で必ず止まります。
嘘ではないなら消す必要はありません。問題は、それを辞めた理由として置くこと。辞めた理由は別にあり、スキルアップは次に選ぶ基準として置くと筋が通ります。
まず、自分の本音がどれかを決める
例文を探すのは、この後です。順番を逆にすると、どの例文を選んでもしっくりこない状態から抜けられません。
あてはまるものに印をつけてください
- 同期や友人の給与額を聞いて、自分の低さを具体的に知った
- 休日出勤や残業が常態化していて、平日に予定が立てられない
- 特定の人物が理由で、出社そのものが苦しい
- 会社の売上・受注・人員が、この1〜2年で目に見えて減っている
- 任される仕事が入社時から変わらず、3年後も同じだと分かる
→ 印がついた項目が、あなたの本当の転職理由です。複数ついたら、いちばん強いもの1つに絞ります。
25歳を境に、使える理由が1つ増えます
表をもう一度見てください。「会社の将来が不安だった」は20〜24歳で2.4%ですが、25〜29歳では11.0%と4.6倍に跳ね上がります。
これは、その年代になると会社の数字が見えてくるからです。担当を持ち、受注の増減を肌で知り、先輩の離職を見る。24歳では言えなかったことが、26歳では実感として言えるようになります。
第二新卒の後半にいる人は、この理由を正面から使えます。ただし条件があります。感想ではなく、自分が見た数字で言うことです。
通る言い方
- 担当部署の受注が2年で3割減り、新規の予算も止まった
- 同じ職種の先輩3人が1年以内に全員退職した
- 主力商材の取引先が1社に集中していると知った
止まる言い方
- 業界全体に将来性がないと感じた
- なんとなく不安になった
- ネットで会社の評判が悪かった
本音を、そのまま言える形に直す
本音が決まったら、それを言い換えずに、事実と希望に分けるだけで面接に出せる形になります。よくある「ポジティブ変換」は、やりすぎると最初の問題に戻ります。
- 事実を1行で書く
評価や感情を入れず、起きたことだけ。「残業が月60時間を超える月が1年で8回ありました」のように、数えられる形にします。
- 自分が試したことを1行足す
ここが抜けると「嫌だから辞めた」になります。上長に相談した、異動を希望した、業務を効率化した。結果が出なかったことも含めて書きます。
- 次の会社で何を基準に選ぶかを1行で書く
ここで初めてスキルアップが出てきます。「辞めた理由」ではなく「選ぶ基準」の位置です。
本音別の例文(3ステップで組み立てたもの)
以下は上の順番どおりに組んだ文です。そのまま写すのではなく、数字の部分を自分のものに入れ替えて使ってください。数字が入っていない文は、面接で必ず聞き返されます。
本音が「給料」の人の例文を見る
「前職では入社から2年半、基本給が据え置きでした。評価面談で昇給の基準を確認し、資格を2つ取得して申請しましたが、制度上その等級では上がらないと説明を受けました。給与だけが目的ではありませんが、成果が処遇に反映される仕組みがある会社で、腰を据えて力をつけたいと考えています。」
ポイントは、金額の不満ではなく仕組みの話にしていること。そして自分から動いた記録を入れていることです。
本音が「労働時間・休日」の人の例文を見る
「担当していた業務の性質上、月の残業が60時間を超える月が1年で8回ありました。作業手順を見直して2工程を自動化し、チームの残業は減りましたが、人員が補充されず総量は変わりませんでした。体力のあるうちに、業務量の設計まで含めて改善できる立場を目指したいと考えています。」
「きつかった」を数字に置き換え、自分が改善側に回った事実を入れると、愚痴に聞こえません。
本音が「人間関係」の人の例文を見る
「前職は個人ごとに案件を抱える体制で、情報共有の場が定例会のみでした。自分から週次の共有資料を作って運用しましたが、部署全体の進め方までは変えられませんでした。チームで検証しながら進める環境のほうが、自分は成果を出せると考えています。」
個人名や具体的な対立には絶対に触れません。「体制・仕組みの話」に置き換えられるかどうかが分かれ目です。置き換えられない場合は、この理由は使わず別の本音を主役にしてください。
本音が「会社の将来」の人の例文を見る(25歳以上向け)
「担当していた部署の受注が2年で3割減り、新規向けの予算も停止しました。既存顧客の掘り起こしを提案して2件は成約しましたが、事業の方向自体は変わりませんでした。伸びている領域で経験を積み直したいと考え、転職を決めました。」
この理由は25〜29歳で11.0%と実際に多く、面接官も見慣れています。だからこそ、自分が見た数字がないとすぐに見抜かれます。
スキルアップを最後に足すときの1行
ここまでで、辞めた理由は事実として書けました。最後にスキルアップを足しますが、足し方に決まりがあります。
- 身につけたいものを名前で書く
「成長したい」ではなく「要件定義の経験」「BtoBの新規開拓」のように、求人票に載っている言葉で書きます。名前で書けないものは、まだ本人も分かっていない状態です。
- それが応募先でできる根拠を書く
求人票や公式サイトのどこを読んでそう思ったかを1つ挙げます。ここが書けると、志望動機を別に用意する必要がなくなります。
- すでに始めていることを1つ書く
独学、資格、社内での小さな担当替えでかまいません。何も始めていない「スキルアップしたい」は、面接官にとっては願望の表明にしか見えません。
買取業の面接で職務経歴書を読む側に回って分かったのは、落ちる理由のほとんどが「辞めた理由と志望動機がつながっていない」ことでした。辞めた理由が給料なのに、志望動機が「御社の理念に共感」だと、途中で話が切れています。給料が理由なら、評価制度の話に着地させるほうがずっと自然です。前向きな言葉を探すより、2つの文をつなげることに時間を使ってください。
書いた文は、他人に一度読ませる
自分で書いた転職理由は、自分では判定できません。書いた本人には背景が全部見えているので、説明が足りていても足りなくても同じように読めてしまうからです。
読ませる相手は、その業界の求人を日常的に見ている人がいちばん精度が高くなります。「この理由で、この職種を受けるのは自然か」だけ聞ければ十分です。どのサービスを使うかは、自分の年齢と経験で対象が変わります。次の診断で確かめてください。
この記事の内容で足りる人
- 本音が上の5項目のどれかに当てはまった
- 入れ替える数字が自分の中にある
- 受ける職種はもう決まっている
先に相談したほうがいい人
- 本音が複数あって1つに絞れない
- 在籍期間が1年未満で、書き方に迷っている
- 次にどの職種を受けるか決まっていない
まとめ
- 「スキルアップ」は実態では20人に1人
20〜24歳男性で3.5%。給料(13.8%)の4分の1です。面接官はこのズレを知っています。
- 辞めた理由と選ぶ基準を分ける
スキルアップは「辞めた理由」ではなく「次を選ぶ基準」の位置に置くと筋が通ります。
- 本音は事実・試したこと・基準の3行に分解する
言い換えではなく分解です。評価語を使わずに同じ内容が書けているか確認します。
- 25歳以上は「会社の将来」が正面から使える
25〜29歳で11.0%。ただし自分が見た数字を添えることが条件です。
