この記事に出てくる条文の中身は、e-Gov法令検索で労働者派遣法・労働契約法・労働基準法の本文を実際に開き、そこに書かれている文言だけを使って書いています。まとめサイトや体験談のページは使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商です。個別の事情によって結論が変わる話なので、判断が必要な場面では最後に挙げる公的な相談窓口を使ってください。確認日は本文の出典に書きました。
同じ「もう来なくていい」でも、中途解除・解雇・雇止めの3つは別物です。どれに当たるかで、会社に生じる義務が変わります。
見分ける手がかりは2つだけ。契約書に書いてある契約期間が終わっているかどうかと、終わらせたのが派遣先か派遣元か。この2つで3つに割れます。言われた言葉ではなく、この2点で決まります。
自分がどれか見分ける「切られた」は3つある。まずどれか見分ける
派遣で働いていると、仕事の終わり方が正社員よりずっと分かりにくくなります。雇っているのは派遣元(派遣会社)、働く場所を用意しているのは派遣先(お店やブランド)で、契約が2本走っているからです。だから「切られた」と感じた出来事が、法律の上では3つのどれかに分かれます。

| 何が起きたか | 呼び方 | 根拠 | いちばん大きな違い |
|---|---|---|---|
| 契約期間の途中で、派遣先が派遣契約を切った | 中途解除 | 労働者派遣法 第29条の2 | 派遣元との雇用契約はまだ続いている |
| 契約期間の途中で、派遣元があなたを辞めさせた | 解雇 | 労働契約法 第17条 | 「やむを得ない事由」がなければできない |
| 契約期間が満了し、次を更新されなかった | 雇止め | 労働契約法 第19条 | 条件を満たせば更新の申込みが通ったとみなされることがある |
← 横にスクロールできます
アパレルの現場でいちばん多いのは、いちばん下の雇止めです。3か月や6か月で契約を切り直しながら何年も同じ店に立っている人は多く、その更新が止まった形になります。ただし、店長から「来月から人を減らすことになって」と言われた場合、それが派遣先の都合による中途解除なのか、期間満了に合わせた雇止めなのかは、言葉だけでは判別できません。
まず、手元のこの4つを確認してください
- 労働条件通知書(就業条件明示書)に書いてある契約期間の終了日
- 言われた「終わり」の日が、その終了日と同じか、手前か
- 言ってきたのが派遣元の担当者か、派遣先の店長か
- これまでに何回更新してきたか(回数と、通算の年数)
→ 終了日より手前なら中途解除か解雇、終了日と同じなら雇止め。この4つが分かれば、以下のどの章を読めばいいかが決まります。
A:派遣先が切った(中途解除)— あなたの雇用はまだ終わっていない
ここがいちばん誤解されます。派遣先が「この派遣、来月でやめます」と派遣元に伝えても、それは会社と会社の間の契約(労働者派遣契約)が終わっただけです。あなたと派遣元の間の雇用契約は、契約期間が残っているかぎり、それだけでは終わりません。
派遣先都合の解除では、派遣先の側に、新たな就業機会の確保や休業手当等の費用負担といった措置を講じる義務が法律で定められています。聞くのは無理なお願いではありません。
労働者派遣法の第29条の2は、派遣先について次のように定めています。自分の都合で労働者派遣契約を解除するときは、その派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣元による休業手当等の支払に要する費用の負担、その他の雇用の安定に必要な措置を講じなければならない——条文が「努めなければならない」ではなく「講じなければならない」と書いている点が大事です。
条文がわざわざ「休業手当等の支払に要する費用の負担」と書いているのは、この場面で休業手当が発生することを前提にしているからです。労働基準法の第26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業について、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないと定めています。つまり、次の就業先が決まるまでの待機期間が、丸ごと無収入になるとはかぎりません。
- 契約期間の残りが何日あるか数える
労働条件通知書の終了日までが、あなたの雇用契約が残っている期間です。ここが交渉の土台になります。
- 派遣元に「次の就業先の提示」を書面かメールで求める
電話だけで済ませると記録が残りません。担当者名と日付が残る形にしておきます。
- 提示がない期間の扱いを確認する
休業手当が出るのか、出ないならその理由を聞きます。この確認自体が、記録として意味を持ちます。
そして、待機のあいだに次を探し始めるのは早すぎることではありません。派遣元からの提示を待ちながら、自分でも条件を見ておくと、提示された仕事が妥当かどうかを判断できます。
いまの経験がどこで使えるか、1分で見る 登録不要・個人情報の入力なしB:契約期間の途中で辞めさせられた(解雇)— 正社員より条件が厳しい
派遣元から「今日で終わりにしてください」と、契約期間の終了日より手前で言われた場合は、解雇です。そしてここは、有期契約で働く人にとって正社員より有利な場面になります。
契約期間の途中の解雇には「やむを得ない事由」が必要です。期間の定めのない社員を解雇するときより、条件は厳しく設定されています。
労働契約法の第17条は、使用者は有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができないと定めています。期間を決めて雇った以上、その期間は雇い切るのが原則、という考え方です。
さらに労働基準法の第20条があります。解雇しようとする場合は少なくとも30日前に予告すること、予告をしないなら30日分以上の平均賃金を支払うことが必要です(天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合などを除きます)。予告の日数は、1日について平均賃金を支払った日数だけ短くできます。
出典:労働契約法(e-Gov法令検索)/労働基準法(e-Gov法令検索)/条文は2026年9月16日に確認
ここで押さえておきたいのは、AとBは別物だということです。派遣先が派遣契約を切ったこと(A)と、派遣元があなたを解雇すること(B)は、同じ出来事ではありません。派遣先の都合で仕事がなくなったからといって、それがそのまま「やむを得ない事由」になるわけでもありません。派遣元には、まず別の就業先を探す動きが求められる場面です。
「契約期間の途中なのに、更新しないと言われた」はどっち?
いま働いている契約の終了日が来ていないのなら、それは「次の更新をしない」という予告であって、いまの契約を打ち切る話ではありません。終了日まではこれまでどおり働き、その日をもって終わる形になります。この場合は次の章(雇止め)を読んでください。終了日より手前で就業をやめさせられたなら、この章の解雇の話になります。
C:期間満了で更新されなかった(雇止め)— 争える場合がある
アパレル派遣でいちばん多い形です。3か月ごとの契約を何度も更新してきて、あるとき「次はありません」と言われる。期間が満了しているので、契約としては自然に終わる——のが原則です。ただし、労働契約法の第19条には例外が書かれています。
反復して更新されてきた場合、または更新されると期待することに合理的な理由があると認められる場合には、更新を拒むこと自体が争える対象になります。
条文の作りはこうです。まず、次のどちらかに当てはまる有期契約であること。
- 過去に反復して更新されてきた
更新しないことで契約を終わらせるのが、期間の定めのない社員に解雇を告げるのと社会通念上同じだと認められる場合です。
- 更新されると期待することに合理的な理由がある
契約期間の満了時に、更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合です。
そのうえで、契約期間が満了する日までに労働者が更新の申込みをしたとき(または満了後に遅滞なく契約の申込みをしたとき)、使用者がその申込みを拒むことが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、使用者は従前と同一の労働条件でその申込みを承諾したものとみなされます。
合理的な理由が認められやすい方向の事情
- 更新回数が多く、通算の期間も長い
- 更新の手続きが形式的だった(書類を出すだけ)
- 「来期もよろしく」など継続を前提にした話があった
- 同じ職場で同じ仕事を続けてきた
認められにくい方向の事情
- 初回の契約で、まだ一度も更新していない
- 契約書に更新回数や年数の上限が最初から書かれていた
- そのつど更新の可否を判断する運用が実際にあった
- 期間限定の催事・繁忙期対応として入った
実務として、いますぐできることが1つあります。更新の申込みをしておくことです。条文は「労働者が更新の申込みをした場合」を入口にしています。黙って受け入れると、その入口に立たないまま終わります。メールで「更新を希望します」と送り、送信日が残る形にしておけば足ります。
販売の現場では「今期で終わりね」が世間話の延長で伝えられます。私が見てきた範囲でも、その場で「分かりました」と答えてしまう人がほとんどでした。返事をしないといけない場面ではありません。「持ち帰って確認します」で終えて大丈夫です。
通算5年を超えていたら、別の切り札がある
更新を重ねてきた人には、雇止めとは別の道があります。労働契約法の第18条、無期転換ルールです。
同じ使用者(この場合は派遣元)との間で結んだ有期労働契約の通算期間が5年を超える労働者が、いま結んでいる契約の期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約の申込みをしたときは、使用者はその申込みを承諾したものとみなされます。厚生労働省の説明でも「使用者は断ることができません」と明記されています。
申込みは口頭でも法律上は有効です。ただし厚生労働省は、後から「申し込んだかどうか」で争いになりやすいとして、できるだけ書面での申込みを勧めています。契約期間が1年なら5回目の更新後の1年間に、3年なら1回目の更新後の3年間に、申込む権利が発生します。
出典:厚生労働省「~無期転換ルール~」/労働契約法 第18条(e-Gov法令検索)/2026年9月16日に確認
1年・3年の節目には、派遣元にやることが決まっている
もうひとつ、更新が続いている人に関わる仕組みがあります。労働者派遣法の第30条、雇用安定措置です。同じ派遣先の同じ組織単位で働く見込みの長さによって、派遣元の義務の重さが変わります。
| 同じ組織単位での見込み | 派遣元の義務 | 条文の書き方 |
|---|---|---|
| 継続して1年以上 | 4つの措置のどれかを講じる | 努めなければならない(努力義務) |
| 継続して3年 | 4つの措置のどれかを講じる | 講じなければならない(義務) |
← 横にスクロールできます
4つの措置とは、①派遣先に直接雇用を申し込むよう求めること、②新たな派遣就業の機会を確保して提供すること、③派遣労働者以外の労働者として無期で雇用する機会を確保して提供すること、④その他の雇用の安定に必要な措置(教育訓練など)です。順番に優先度がある形ではなく、どれかを講じることが求められています。
ここで期待をかけすぎないほうがいい点も、はっきり書いておきます。義務の中身は「直接雇用させること」ではなく「依頼すること」までです。実際にどれだけの人が直接雇用に至っているかは、国の集計を使って別の記事で数字を出しています。
出典:労働者派遣法 第30条(e-Gov法令検索)/2026年9月16日に確認
なお、同じ組織単位で3年を超えて同じ人を派遣することは、派遣法の第35条の3で禁じられています(事業所単位の上限3年は第40条の2)。3年で職場を替わることになるのは、会社があなたを切ったからではなく、制度がそう作られているからです。ここは分けて考えてください。
3年の節目が近い人向けに、次の選択肢を出す 所要1分・登録不要今日からの順番
- 書類を集める
労働条件通知書(就業条件明示書)、これまでの契約書、更新のたびに受け取った書面。契約期間の終了日と更新回数が、すべての判断の土台になります。
- 言われた内容を記録に落とす
いつ、誰から、どう言われたか。メモで構いません。その日のうちに書くほど正確になります。
- 意思を書面かメールで伝える
続けたいなら「更新を希望します」。通算5年を超えているなら「無期労働契約への転換を申し込みます」。送信日が残る形にします。
- 派遣元に確認する
次の就業先の提示予定、休業手当の扱い、雇用安定措置として何を行うか。口頭の回答でも、あとから自分でメールに書き起こして送っておくと記録になります。
- 公的な窓口に相談する
各都道府県の労働局・労働基準監督署に置かれている総合労働相談コーナーは無料で、予約なしで相談できます。書類を持っていくと話が早く進みます。
- 並行して、次の選択肢を見ておく
結果がどう転んでも、選べる状態にしておくほうが交渉は落ち着いてできます。ここまで読んだ知識は、次の契約書を読むときにそのまま使えます。
