アパレル販売の派遣会社を比べる前に|時給の天井は会社ではなく職種で決まる

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時給の天井は職種で決まる

※この記事の数字は、厚生労働省が公表している集計結果と、派遣会社が労働者派遣法にもとづいて公開している情報を、筆者が実際にページを開いて書き写したものです(2026年9月3日時点)。求人件数も同じ日に筆者が数えました。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商です。

CONCLUSION

アパレル販売の派遣は時給1,400円台が中心で、1,600円を超える求人は10件に1件しかありません。天井は派遣会社ではなく職種のほうで決まっています。

「どの派遣会社がいちばん時給が高いか」を探す前に、この仕事がいくらの世界なのかを見ておきます。国の集計と、実際の求人4,413件を数えた結果が、同じ場所を指していました。

時給の分布を先に見る

国の集計と実際の求人が、同じ位置を指している

厚生労働省は毎年、全国の派遣会社から集めた報告書を集計して公表しています。令和6年度の集計では、派遣で働いている人は約220万人。無期雇用が908,956人、有期雇用が1,290,683人でした。この集計には、職種ごとの賃金も載っています。

アパレルの店頭に立つ仕事は、統計の分類でいう「商品販売従事者」に入ります。

商品販売従事者の賃金11,372円1日8時間あたり/時給にすると約1,422円
全業務の平均16,735円1日8時間あたり/時給にすると約2,092円
その差670円1時間あたり/月160時間なら約10.7万円

出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年9月3日に取得)。時給換算と差額は筆者が計算しました。

派遣という働き方全体の平均が時給にして約2,092円なのに対し、商品販売従事者は約1,422円。1時間あたり670円低い位置にいます。1日8時間・月20日働いた場合の単純計算で、月に10万7,200円の差です。

これは統計上の平均なので、実際の求人でも同じことが起きているかを確かめました。アパレル販売に強い派遣求人サイトで、職種を「販売(ファッション・アパレル・コスメ)」に絞ると4,413件。これを時給の下限で絞り込みながら数えると、山と壁がはっきり出ます。

アパレル・ファッション販売の派遣求人4413件の時給帯別件数。1400〜1499円が1994件で最多、1600円以上は405件で全体の9.2%しかない
時給の帯件数全体に占める割合
1,399円以下76017.2%
1,400〜1,499円1,99445.2%
1,500〜1,599円1,25428.4%
1,600〜1,699円3528.0%
1,700〜1,799円340.8%
1,800円以上190.4%

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出典:派遣なび(株式会社シーエーセールススタッフ)の求人検索。2026年9月3日に、職種「販売(ファッション・アパレル・コスメ)」の総数と、時給の下限で絞った件数を筆者が読み取り、その差から各帯の件数を出しました。件数は日々動きます。

いちばん厚いのが1,400円台で、全体の45.2%。国の集計が示す平均(約1,422円)とぴたりと重なります。そして1,600円を超える求人は405件、全体の9.2%しかありません。1,700円以上になると53件、1,800円以上は19件です。

VERDICT 時給1,600円は「がんばれば届く」ではなく「10件に1件」です

派遣会社を替えて超える数字ではありません。会社を比べる時間より、どうすればその9.2%の側に入れるかを考えるほうが実入りが変わります。

勤務地でも偏りがあります。同じ4,413件のうち東京が1,532件(34.7%)。全国のおよそ3分の1が東京に集まっています。地方で1,600円台を探すと、母数はさらに小さくなります。

天井が低いのは、派遣会社が取りすぎているからではない

時給が低いと聞くと、「派遣会社が中間で抜いているのでは」と考えたくなります。同じ集計に、その答えが出ています。派遣先が派遣会社に払っている料金(派遣料金)も職種ごとに公表されているからです。

区分派遣料金賃金マージン率
全業務の平均26,25716,7359,52236.3%
商品販売従事者16,41611,3725,04430.7%

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出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」。金額はいずれも1日8時間あたりの平均額です。差とマージン率は筆者が計算しました。

読み取れるのは、抜かれている割合はむしろ小さいということです。全業務では36.3%が賃金以外に回っているのに対し、商品販売従事者は30.7%。それでも時給が低いのは、そもそも派遣先が払っている料金が16,416円(時給にして約2,052円)しかないからです。

つまり、アパレル販売の派遣の時給は、派遣会社の取り分ではなく、店側が人件費にいくら出しているかで決まっている。会社を替えても、この前提は動きません。

注意:国の集計に載っている派遣料金は、注記に「消費税を含む額の記載である」と明記されています。派遣会社が自社で公開しているマージン率が税抜きで計算されている場合、そのまま比べると国のほうが高く出ます。会社どうしを比べるときは、同じ「情報公開」ページの数字どうしで比べてください。国の集計は、業界全体のだいたいの位置を知るために使うものです。

ちなみに、無期雇用と有期雇用でも差が出ています。商品販売従事者の賃金は、無期雇用が11,830円(時給約1,479円)、有期雇用が11,299円(時給約1,412円)。1時間あたり67円ほど、無期のほうが上です。長く続ける前提なら、無期雇用派遣を扱っている会社かどうかは確認する価値があります。

それでも会社ごとの差は出る。公開されている数字で見る

職種で天井が決まるとはいえ、同じ職種でも会社ごと・拠点ごとに差はあります。そしてその差は、想像ではなく数字で確かめられます。派遣会社には、平成24年の労働者派遣法改正によりマージン率などの情報を公開する義務があり、令和3年4月1日からは原則として常時インターネットで公開することとされているからです。

実際の例をひとつ挙げます。アパレル販売に強い株式会社シーエーセールススタッフ(サービス名「派遣なび」)は、事業所ごとにこう公開しています。

事業所派遣スタッフ数派遣料金賃金賃金の時給換算マージン率
東京40718,46513,1891,64928.6%
名古屋20716,78212,1681,52127.5%
大阪24618,94413,7921,72427.2%
福岡30516,58312,0401,50527.4%

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出典:株式会社シーエーセールススタッフ「労働者派遣法に基づく情報公開」(情報対象期間 2024年6月1日〜2025年5月31日)。派遣料金と賃金はいずれも1日8時間あたりの平均額です。時給換算は筆者が8で割って出しました。

注目してほしいのは、マージン率の列ではなく賃金の時給換算の列です。同じ会社でも、大阪の1,724円と福岡の1,505円で219円ちがいます。求人票の「時給1,300円〜」より、この数字のほうが実際に働いている人の現実に近いところにあります。

補足:この表の賃金は、その事業所が扱ったすべての派遣の平均です。アパレル販売だけの平均ではありません。事務やコールセンターなども含まれるため、アパレル販売の求人だけを見た場合の水準とは一致しません。

マージン率のほうを「低い会社を選べばいい」と読むのは誤りです。厚生労働省は、こう書いています。

マージンには、社会保険料、教育訓練費なども含まれているため、マージン率は低いほどよいというわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要です。(厚生労働省「派遣会社のマージン率等について」より)

マージン率・賃金の平均額・教育訓練の取組状況という3つの情報を、どう組み合わせて読むかはアパレルに強い派遣会社の選び方のほうで詳しく書きました。この記事は「そもそもいくらの世界か」を先に決める役割です。

会社概要の許可番号で、その会社がやれることが分かる

情報公開のページは、たいてい会社のサイトのフッターか会社概要のあたりにあります。見つからないときは、厚生労働省が運営する検索サイトで会社名を引く方法があります。

  1. 会社のサイトを開き、フッターを見る

    「労働者派遣法に基づく情報公開」「マージン率」といったリンクが、いちばん下に置かれていることが多いです。

  2. 自分が登録する拠点の欄を見る

    数字は事業所ごとに分かれています。会社全体の平均ではなく、東京で働くなら東京の欄です。

  3. 見つからなければ、人材サービス総合サイトで探す

    厚生労働省が運営しています。会社名で引くと、その会社が届け出た情報が出てきます。

  4. 会社概要で許可番号を確かめる

    「派」で始まる番号があれば労働者派遣事業の許可を、「ユ」が入った番号があれば有料職業紹介事業の許可を受けている会社です。

人材サービス総合サイト(厚生労働省)を開く

許可番号は実際にはこう書かれています。アパレル業界でよく名前が挙がる2社の会社概要から、そのまま引きます。

会社労働者派遣事業有料職業紹介事業拠点
株式会社シーエーセールススタッフ派13-04073713-ユ-040624新宿(本社)・東京・名古屋・大阪・福岡
東レエンタープライズ株式会社派13-30353813-ユ-302985東京本社・大阪・名古屋・滋賀

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出典:株式会社シーエーセールススタッフ 会社概要東レエンタープライズ株式会社 会社概要・拠点一覧(いずれも2026年9月3日に確認)。

この2社はどちらも「派」と「ユ」の両方を持っています。つまり、同じ会社の中で派遣として働く道と、正社員として紹介してもらう道の両方があるということです。「いまは派遣で、条件が合えば正社員も考えたい」と面談で言える相手かどうかが、番号を見るだけで分かります。

補足:東レエンタープライズのマージン率については、コーポレートサイトのトップとサイトマップを見た範囲では公開ページを見つけられませんでした。「公開していない」という意味ではありません。人材サービス総合サイトで会社名を引くと確認できる場合があるので、登録前にそちらで確かめてください。

販売員だったころ、時給の話は売場の中でよく出ました。「あの子は1,500円らしい」と聞いて、自分の会社が安いのだと思い込んでいた人がいました。あとから振り返ると、差がついていたのは会社より、担当している売場のほうです。デパートの高単価ブランドと、駅ビルのカジュアルでは、店が人件費に出せる額がそもそも違いました。会社を替えて上げるより、立つ売場を替えるほうが早い場面があります。

REAL EXPERIENCE — 元アパレル販売員/現ファッションバイヤー

天井が見えたあと、時給を上げる方法は3つしかない

1,600円を超える求人が9.2%しかない以上、その9.2%に入るか、別の考え方に切り替えるかのどちらかです。現実的なのは3つです。

  1. 求人側の条件に自分を合わせる

    語学、外資ラグジュアリー、店長やサブ経験。時給の上のほうに置かれている求人は、たいてい何かしらの条件が付いています。条件のない求人を高い順に並べても、上位はほとんど残りません。

  2. 売場のグレードを上げる

    同じ販売でも、店が人件費に出せる額は業態で違います。派遣先の候補を聞くとき、ブランド名だけでなく館と客単価まで聞いておくと、提示される時給の理由が読めます。

  3. 無期雇用派遣か、直接雇用に切り替える道を先に確認する

    統計上も無期のほうが時給換算で67円高く出ています。腰を据えるつもりなら、面談の時点で無期雇用派遣と紹介予定派遣を扱っているかを聞いてください。

3つめについては、アパレルの紹介予定派遣がどのくらいあるのかを別記事で数えています。数はかなり限られるので、期待値を持ちすぎないほうが安全です。

この天井を受け入れて派遣を選ぶ価値がある人

  • ブランドを試したい。合わなければ次に移りたい
  • 売上責任や在庫責任を持たずに、接客だけをやりたい
  • いったん現場に戻って、勘を取り戻したい
  • 働く日数や時間を自分で決めたい

先に別の道を検討したほうがいい人

  • いまの手取りを大きく上げたい(時給の天井が1,600円あたり)
  • 同じ売場に長くいたい(同じ組織単位への派遣は原則3年まで)
  • 役職に就いてマネジメントをやりたい
  • 住宅ローンなど、雇用の安定が前提の予定がある

登録する前に確かめる5つ

会社を1社に絞る必要はありません。ただし登録ボタンを押す前に、次の5つは開いて確かめてください。全部あわせて10分あれば終わります。

登録前チェック(4つ以上に「はい」と言えたら進んでいい)

  • アパレル販売の派遣の時給が、どのあたりに集まっているかを知っている
  • その会社の「労働者派遣法に基づく情報公開」ページを実際に開いた
  • 自分が登録する拠点の、賃金の平均額を見た(求人票の下限ではなく)
  • 会社概要で「派」の付いた許可番号があることを確認した
  • 無期雇用派遣や紹介予定派遣を扱っているかを確認した

→ ここまで見てから面談に行くと、時給の交渉ではなく「どの売場に入れるか」の話ができます。

もう一度書きます。時給の天井は、派遣会社ではなく職種で決まります。手取りを大きく変えたいなら、会社を比べるより職種そのものを動かすほうが早いことがあります。いまの経歴で、販売のまま条件を上げる道と、職種を変える道のどちらが現実的か。下の診断で30秒ほどで整理できます。

いまの経歴で進める方向を診断する
アパレル販売の派遣で、時給はどのくらいが相場ですか?
国の集計では、商品販売従事者の賃金は1日8時間あたり11,372円で、時給にすると約1,422円です(令和6年度)。実際の求人でも同じ傾向で、アパレル・ファッション販売の派遣求人4,413件のうち45.2%が1,400円台に集まっていました。1,600円を超える求人は405件で全体の9.2%、1,800円以上は19件だけです。派遣会社を替えて超える数字ではないので、語学や店長経験など条件のほうを変える必要があります。
時給が低いのは、派遣会社が中間で取りすぎているからですか?
集計を見るかぎり、そうとは言えません。商品販売従事者では、派遣先が払う料金が1日8時間あたり16,416円、そのうち賃金が11,372円で、賃金以外に回る割合は30.7%です。全業務の平均は36.3%なので、むしろ小さいほうです。時給が低いのは取り分の問題ではなく、店側が人件費に出している額そのものが低いためです。会社を替えても、この前提は動きません。
同じ派遣会社なら、どこの拠点でも時給は同じですか?
違います。ある会社の公開情報では、賃金の平均額を時給に直すと大阪が約1,724円、東京が約1,649円、名古屋が約1,521円、福岡が約1,505円でした。マージン率も27.2%〜28.6%と幅があります。会社全体の平均ではなく、自分が登録する拠点の欄を見てください。数字は各社の「労働者派遣法に基づく情報公開」のページに載っています。
派遣会社が本当に派遣をやっているか、どこで確かめられますか?
会社概要の許可番号です。「派」で始まる番号があれば労働者派遣事業の許可を、「ユ」が入った番号があれば有料職業紹介事業の許可を受けています。両方持っている会社は、派遣と正社員紹介の両方を扱えます。会社のサイトで見つからない場合は、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトで会社名を検索すると確認できます。

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