筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとブランド古着の買取業を営んでいます。この記事に出てくる条文と数字は、すべてe-Gov法令検索(デジタル庁)と厚生労働省のサイトを実際に開いて確認したものです。まとめサイトや他人のブログからの引き写しは入れていません。紹介する転職サービスには広告リンクを含みます。
第二新卒の転職のコツは、面接の受け答えより先にあります。応募先の残業時間・辞めた人の数・平均勤続年数は、条件がそろえば法律で企業に出させられるからです。
根拠は若者雇用促進法の第13条第2項。新卒枠の募集に応募する(応募しようとする)既卒者が求めたら、企業は職場の情報を「提供しなければならない」と書かれています。努力義務ではありません。まず、あなたが受けようとしている求人がその対象かどうかを確かめてください。
自分が請求できる側か確かめる「コツ」を探している人が、たいてい見落としているもの
第二新卒の転職記事を何本か読むと、書いてあることはだいたい同じです。退職理由は前向きに言い換える、短期離職の説明を用意する、自己分析をやり直す。どれも間違いではありませんが、全部「自分をどう見せるか」の話です。
一度辞めている人がいちばん恐れているのは、面接でうまく話せないことではありません。また同じような会社に入ってしまうことです。それは自分の見せ方をいくら磨いても防げません。防げるのは、入る前に相手の中身を見ることだけです。
最初の会社を8か月で辞めたとき、次はちゃんと調べようと思って口コミサイトを片っ端から読みました。でも書いてあるのは辞めた人の感想ばかりで、残業が実際に何時間なのかはどこにも数字で出てこない。結局、求人票の「月平均20時間程度」という一文を信じるしかありませんでした。
当時は知りませんでしたが、相手に数字を出させる仕組みは、法律のほうに用意されていました。しかも既卒者が使えるように作られています。この記事はその使い方だけを書きます。
2つ以上あてはまるなら、この記事は役に立ちます
- いま応募を考えている会社の残業時間を、求人票の一文以外で確認していない
- その会社が1年で何人採って何人辞めたかを知らない
- 口コミサイトの点数を見て、信じていいのか分からなくなった
- 面接対策の記事ばかり読んでいて、会社側の資料を1つも開いていない
→ 2つ以上なら、いま足りないのは対策ではなく情報です。先に取りにいけます。
まず確かめる。その求人は「新卒枠」か「中途枠」か
ここが分かれ道です。請求の権利が働くのは新卒枠の募集だけで、中途採用・キャリア採用の求人には効きません。同じ会社でも、どちらの門から入るかで使える手が変わります。

条文はこう書かれている
青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)の第13条は、「学校卒業見込者等であることを条件とした労働者の募集」について定めた条文です。つまり新卒枠の募集を対象にしています。その第2項がこれです。
大事なのは語尾です。第1項は「提供するように努めなければならない」=努力義務ですが、本人が求めた場合の第2項は「提供しなければならない」になっています。ここだけ強さが違います。
「学校卒業見込者等」に、既卒は入るのか
入ります。条文だけを読むと卒業見込みの学生のことのように見えますが、続きに「その他厚生労働省令で定める者」とあり、その省令(同法施行規則 第2条第2号イ)に「学校又は専修学校を卒業した者」と書かれています。卒業済みの人も同じ扱いです。
「応じ、又は応じようとする」とあるので、応募を済ませていなくても請求できます。検討段階で聞いて、内容を見てから出すかどうか決める順番で問題ありません。
なお、既卒者が新卒枠に応募できること自体の根拠(卒業後3年以内は新卒枠で受け付けるよう国が企業に求めている件)は、別の記事で扱っています。そちらを先に読むと、この記事の前提がつながります。
ハローワークやエージェント経由でも請求できる
自分で直接応募する場合だけの話ではありません。第14条第2項に、ハローワーク・自治体・職業紹介事業者(=転職エージェント)から紹介を受ける/受けようとする人の求めにも、求人を出した企業が応じなければならないと書かれています。担当者に「この求人について青少年雇用情報をもらえますか」と伝えれば、取り次ぐ先があるということです。
第13条は新卒枠の募集を対象にした条文です。中途枠しか出していない会社に同じ請求はできません。その場合は後半の「公表している会社から逆に探す」に進んでください。
出てくるのは3種類。しかも「それぞれ1つ以上」でいい
ここを知らないと損をします。青少年雇用情報は12項目ほどありますが、企業が出す義務があるのは全部ではありません。施行規則 第4条第3項に、3つの類型「それぞれ一以上について」提供するものとする、と書かれています。
裏を返せば、何が出てくるかは企業側が選べるということです。だから請求する側が先に指名します。「この3つをお願いします」と書いて送れば、そのとおりに返ってくる可能性がぐっと上がります。

| 類型 | 指名するならこれ | 何が見えるか |
|---|---|---|
| 第1号 募集・採用の状況 | イ:直近3事業年度に採用した新規学卒者等の数と、そのうち離職した者の数 | 入った人のうち何人が残ったか。定着の実数 |
| 第2号 職業能力の開発・向上 | ハ:新規学卒者等に相談役を割り当てる制度の有無 | 放置されるか、面倒を見る仕組みがあるか |
| 第3号 職場への定着 | イ:労働者1人当たりの、1か月平均の所定外労働時間 | 求人票の「月平均20時間程度」の裏取り |
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出典:青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)第3条第1項・第4条第3項(2026年9月29日に条文を取得して確認)
第3号には有給休暇の平均取得日数(ロ)もあります。残業と有給のどちらを見たいかで、第3号の指名先を入れ替えてください。両方は指名できますが、企業が応じる義務は各類型1つまでと考えておくほうが安全です。
請求の文面。規則が求めているのは3点だけ
難しい手続きではありません。施行規則 第4条第2項に、請求するとき明示すべきことが書かれています。次の3点を入れたメールを1通送るだけです。
- 氏名と、住所またはメールアドレス
連絡先はメールアドレスだけで足ります。住所を書かなければならない決まりではありません。
- 学校名と、卒業した年月
卒業見込みの学生は在学年を書きますが、既卒者は卒業年月を書きます。ここで「自分は対象者です」と示すことになります。
- 青少年雇用情報の提供を希望する旨
この言葉をそのまま使ってください。担当者が条文を思い出す合図になります。あわせて、指名する3項目を並べます。
方法も規則で決まっていて、メールまたは書面です(同 第4条第2項)。電話だけで済ませようとすると記録が残らないので、メールを使ってください。
そのまま使える文面を見る
件名:青少年雇用情報のご提供のお願い(○○職の募集について)
採用ご担当者さま 貴社の○○職の募集への応募を検討しております、△△と申します。連絡先は本メールアドレスです。私は□□大学を20××年3月に卒業した既卒者で、青少年の雇用の促進等に関する法律 第13条第2項にもとづき、青少年雇用情報の提供を希望いたします。
同法施行規則 第3条第1項の各号から、次の3点をお願いできますでしょうか。(1)第1号イ 直近3事業年度に採用した新規学卒者等の数と、そのうち離職した者の数 (2)第2号ハ 新規学卒者等に相談役を割り当てる制度の有無 (3)第3号イ 労働者1人当たりの、1か月平均の所定外労働時間
お手数をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
中途枠しかないなら、公表している会社から逆に探す
受けたい会社が中途採用しか出していないなら、請求はできません。代わりに、先に職場情報を公表している会社のほうから探します。厚生労働省が運営している「若者雇用促進総合サイト」が、そのためのデータベースです。
出典:厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」(2026年9月29日に開いて確認)/認定の対象は青少年の雇用の促進等に関する法律第15条
ユースエール認定は、それ自体が数字の証明になる
ユースエールは、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。大企業は対象外なので、そこは誤解しないでください。
この制度が使える理由は、認定の基準がぜんぶ数字で決まっていることです。認定されている=次の水準を満たしている、と読めます。
出典:青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則第7条第3号イ・ハ・ニ。離職の割合は直近3事業年度に採用した新規学卒等採用者に対する、同期間に離職した者の割合。有給は取得率10分の7以上、または1人当たり平均10日以上のいずれか
さらに第7条第4号で、認定企業は採用数・離職者数・平均継続勤務年数・研修の内容・残業時間・有給日数など9区分をインターネットで公表していることが条件になっています。だから請求しなくても最初から読めます。
厚生労働省の企業検索を開くこの探し方が向いている人
- 業種より働き方を先に決めたい
- 中小企業も選択肢に入れている
- 面接前に数字を見て安心したい
向いていない人
- 大手だけを受けると決めている
- 業種・職種が先に固まっている
- 掲載社数の中に希望の地域がない
返ってきた数字を、どう読むか
情報が手に入っても、読み方を間違えると意味がありません。3つの類型は見えるものが違うので、それぞれの強さと弱さを分けて考えてください。
メーターは条文上の定義がどれだけ具体的かで筆者が付けたものです。第2号は「有無」を答えれば足りる項目が多く、内容の濃さまでは分かりません
- 所定外労働時間は「全社の平均」である
条文は「その雇用する労働者一人当たり」の平均です。配属先の部署がどうかは、この数字では分かりません。面接で部署単位の実態を聞く材料として使ってください。
- 離職者数は分母を必ず聞く
第1号イは採用数と離職者数がセットになっています。片方だけ返ってきたら、もう片方も同じ号の項目なので追加で聞いて問題ありません。
- 「制度あり」は「使われている」ではない
第2号は制度の有無を答える項目です。あるかないかは分かっても、実際に機能しているかは面接で聞くしかありません。
やることは3つに絞れる
- 求人票で「新卒枠か中途枠か」を見る
ここが決まらないと、使える手が決まりません。募集要項に「既卒3年以内応募可」などの記載があれば新卒枠です。
- 新卒枠なら、3項目を指名してメールを1通送る
氏名と連絡先、学校名と卒業年月、提供を希望する旨。返事の内容を見てから応募するかどうか決めて構いません。
- 中途枠なら、公表済みの会社から逆に探す
厚生労働省の若者雇用促進総合サイトに、職場情報を公表している会社が2,907社あります(認定2,151社+一般756社)。
どの枠で動くにしても、自分の経歴がいまどのくらいの条件で評価されるのかは、先に知っておいたほうが判断が早くなります。この記事の冒頭に置いた転職シミュレーターに経歴を入れると、想定される範囲が出ます。登録は要りません。
