※筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商として買取業を営んでいます。工場の求人については、法律の条文と厚生労働省のサイトで確認できた内容だけを書いています。条文はすべてe-Gov法令検索で実際に開いて確認しました。情報時点は本文中に記載しています。
「工場の正社員」という求人には、雇用主がちがう3つの入口がまとめて並んでいます。応募する前に見るのは仕事内容ではなく、誰に雇われるのかです。
第二新卒で工場に移るとき、いちばん多い事故は「入った会社がメーカーではなかった」というものです。これは面接の前、求人票の段階で見分けられます。厚生労働省のサイトで会社名を1つ調べるだけです。
3つの入口の違いを見る「工場の正社員」は、3つの別物をまとめて指している
求人サイトで「工場」「製造」「正社員」と絞ると、似た見た目の求人がずらりと並びます。勤務地はメーカーの工場、仕事は組立や検査、給料の書き方もほとんど同じ。ところが、この中には雇う会社がちがう3つの型が混ざっています。
混ざっていること自体は、法律違反ではありません。どれも正規の働き方です。問題は、読み分けないまま応募すると、3年後・5年後にできることが大きく変わってしまうことです。
| 入口 | 雇う会社 | 働く場所 | 契約期間 | 同じ職場にいられる上限 |
|---|---|---|---|---|
| ① メーカーの直接雇用 | メーカー本体 | そのメーカーの工場 | 期間の定めなし | 上限なし |
| ② 派遣会社の社員 | 派遣会社 | 取引先の工場(変わる) | 期間あり/なしの両方 | 同じ組織単位で3年 |
| ③ 期間を決めた直接雇用 | メーカー本体 | そのメーカーの工場 | 期間の定めあり | 契約期間まで |
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第二新卒が①だと思って②に入ってしまう理由
求人票の会社名が聞いたことのない社名でも、勤務地に有名メーカーの工場名が書いてあると、「そのメーカーの関連会社だろう」と読んでしまいます。ここが分かれ目です。
②の場合、あなたの雇用主は派遣会社です。給料を払うのも、契約を更新するのも、次にどの工場へ行くかを決めるのも派遣会社です。工場で毎日顔を合わせるメーカーの社員は、あなたの会社の人ではありません。
未経験から製造の現場に入る道として②は現実的な選択です。ただし「将来メーカーの社員になる」ことを目標にしているなら、①と②はまったく別のルートです。目標と入口が合っているかを、応募前に確かめてください。
派遣かどうかは、応募前に自分で調べられる
ここが、この記事でいちばん持ち帰ってほしいところです。②かどうかは、勘で判断する必要がありません。派遣会社は国の許可がないと営業できないので、許可を受けた会社は公的な名簿に載っています。
労働者派遣法の条文はこうなっています。
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第五条第一項)
つまり、許可を受けていない会社は派遣ができません。逆に言えば、応募先の社名が許可事業所として載っていれば、その会社は派遣事業をしている会社だと分かります。名簿は厚生労働省職業安定局の「人材サービス総合サイト」で、誰でも社名から検索できます。
- 求人票から「雇用主の社名」を正確に書き写す
勤務地に書かれている工場名ではありません。募集している会社の名前です。株式会社が前につくか後につくかまで、そのとおりに写します。
- 人材サービス総合サイトの検索に、その社名を入れる
厚生労働省職業安定局が運営しているサイトです。「検索を行う場合」のメニューから、労働者派遣事業の事業所を探せます。
- 出てきたかどうかで読み分ける
出てきた=派遣事業の許可を持っている会社です。出てこない=少なくとも派遣の許可は受けていません。ただし「製造請負」という別の形もあるので、これだけで①と確定はしません。
- 面接で、契約の相手と就業先の決まり方を聞く
「雇用契約を結ぶ会社はどちらですか」「配属先はどのように決まりますか」の2つです。答えを濁されたら、その場で判断材料が増えたことになります。
出典:厚生労働省職業安定局「人材サービス総合サイト」/e-Gov法令検索「労働者派遣法」(いずれも2026年9月29日に閲覧)
派遣なら「派遣だと言わなければならない」決まりがある
もうひとつ、読者の側が強く出られる条文があります。派遣会社は、あなたを派遣労働者として雇うつもりなら、雇い入れる前にその旨を伝えなければなりません。
(労働者派遣法 第三十二条第一項・かっこ書きを省略して引用)
さらに、すでに雇っている人を後から派遣に回す場合は、明示だけでは足りず本人の同意が必要です(同条第二項)。「入ってみたら派遣だった」「正社員として入ったのに、いつのまにか他社の工場に出されていた」という状態は、法律が想定している形ではありません。
3年と5年。この2つの数字で、あとの人生が分かれる
②で入った場合、あとから効いてくる数字が2つあります。どちらも法律で決まっている数字で、会社ごとの方針ではありません。
ひとつめ:同じ職場の同じ部署に、3年を超えていられない
(労働者派遣法 第三十五条の三・かっこ書きを省略して引用)
受け入れる側のメーカーにも、同じ内容の禁止があります(同法 第四十条の三)。つまり送り出す側と受け入れる側の両方に、同じ3年の縛りがかかっているということです。
これが何を意味するか。あなたがその工場を気に入って、ラインを覚えて、後輩に教えられるようになったとしても、3年で同じ部署にはいられません。続けたいなら、部署が変わるか、そのメーカーに直接雇われるか、別の派遣先に移るかのどれかです。
ふたつめ:有期契約は、通算5年を超えると無期に変えられる
(労働契約法 第十八条第一項・一部を省略して引用)
ここで大事なのは「同一の使用者」という言葉です。②なら使用者は派遣会社、③なら使用者はメーカーです。5年を数える相手がちがいます。
そしてこの5年は、期間の定めがない契約には関係ありません。①で入れば、最初から期間の定めがないので、この条文を待つ必要がないということです。
②を選んでいい人
- 製造の経験がまったくなく、まず現場に入りたい
- 住む地域や勤務先を、自分で選びたい
- 数年のうちに①へ移ることを前提に、経験と資格を取りに行く
②で止まると苦しくなる人
- 同じ工場で長く働きたい
- 数年後に住宅ローンなど、雇用の安定が前提の予定がある
- 役職や設備の管理まで任される側に行きたい
出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」/e-Gov法令検索「労働契約法」(2026年9月29日に条文を閲覧)
①を狙うなら、第二新卒のうちに「持っていける物」を1つ作る
①のメーカー直接雇用は、当然ながら②③より枠が少ないです。第二新卒で経験が浅いなら、実務経験の代わりになるものを1つ持っていくのがいちばん早い手です。
おすすめは受験資格が要らない国家資格です。学歴も実務経験も問われないので、いま働いている人でも申し込めます。代表が危険物取扱者の乙種です。公式にこう書かれています。
(一般財団法人消防試験研究センター「危険物取扱者試験」/2026年9月29日に閲覧)
受験手数料は乙種で5,300円です(同センターの記載・情報時点2026年9月29日)。なかでも乙種第4類、いわゆる乙4はガソリンや灯油、アルコール類などを扱うための資格で、化学・塗料・食品・印刷など、工場の求人で名前が出てくる頻度が高いものです。
資格そのものが採用を決めるわけではありません。効くのは「辞めたいと言いながら、自分で調べて申し込んで受かった」という事実のほうです。第二新卒の面接で必ず聞かれる「なぜ前の会社を短期間で辞めたのか」に対して、逃げではなく移動だったと示す材料になります。
やることは4つに絞れる
- 気になっている求人を3件だけ並べる
10件見ても同じ結論になります。3件で十分です。会社名だけを別に書き出してください。
- その3社を人材サービス総合サイトで引く
1社あたり1分かかりません。①②③のどれかに仕分けるだけで、応募先の優先順位が変わります。
- 自分が狙うのは①か②かを、先に決める
「受かればどこでもいい」で動くと、3年後にまた同じ決断をやり直すことになります。ここだけは面接前に決めてください。
- 受験資格の要らない資格を1つ申し込む
受かるまで待つ必要はありません。申し込んだ時点で面接で話せる材料になります。
