筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着とG-SHOCKの買取業を営んでいます。製造業の現場にいた経験はありません。この記事で扱うのは、厚生労働省の公的統計と、各サービスの公式ページに書いてあることだけです。情報の時点は2026年8月です。
製造業は、入る人より辞める人のほうが多い産業です。それでも30代なら、転職で賃金が上がる側にまだ立てます。
求人の多さを「枠が増えている」と読み違えると、入口の選び方を間違えます。公的統計の数字だけで、いま何を見ればいいかを3つに絞ります。
まず産業の状態を見る出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」(令和7(2025)年1年間・全国)
登録不要・個人情報の入力なし製造業の求人が多いのは、枠が増えているからではない
転職サイトで「製造業」を選ぶと、求人はいくらでも出てきます。そこから「製造業は人を増やしている」と受け取ってしまうと、最初のボタンを掛け違えます。
厚生労働省の雇用動向調査は、1年間に何人が入り、何人が辞めたかを産業別に数えています。製造業の一般労働者は、入職率8.8%に対して離職率9.2%。差し引き −0.4ポイントで、入ってくる人より出ていく人のほうが多いという結果でした。

| 産業(一般労働者) | 入職率 | 離職率 | 入職超過率 |
|---|---|---|---|
| 産業計 | 12.0% | 11.4% | +0.6 |
| 製造業 | 8.8% | 9.2% | −0.4 |
| 建設業 | 10.0% | 7.9% | +2.1 |
| 情報通信業 | 13.1% | 10.0% | +3.1 |
| 運輸業,郵便業 | 9.3% | 8.1% | +1.2 |
| 卸売業,小売業 | 8.9% | 8.5% | +0.4 |
| 医療,福祉 | 13.1% | 13.6% | −0.5 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 24.4% | 21.5% | +2.9 |
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出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」表4-2(一般労働者・令和7年)
入職率そのものも、産業計の12.0%に対して8.8%と低いほうです。つまり製造業は、人の出入りが激しい産業ではなく、静かに人が減っている産業です。実数で見ても、令和7年の1年間に入職したのが731.6千人、離職したのが750.7千人でした。
この数字が、求人の中身を決めている
枠を増やす採用と、抜けた穴を埋める採用では、求める人が変わります。前者なら未経験を採って育てる余裕がありますが、後者は辞めた人がやっていた仕事を、明日から回せる人を探すことになります。
だから「製造業 未経験歓迎」で出てくる求人と、経験者向けの求人は、同じ検索結果に並んでいても中身がまったく違います。ここを分けずに応募すると、落ち続ける理由が自分では分かりません。
30代は、転職で賃金が上がる側にまだいる
もうひとつ、同じ調査に「転職した人の賃金が、前の職場と比べて増えたか減ったか」という表があります。年齢階級ごとに出ているので、自分がどちら側かが分かります。

| 年齢階級 | 増加 | うち1割以上の増加 | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|---|
| 25〜29歳 | 49.8% | 34.2% | 23.9% | +25.9 |
| 30〜34歳 | 48.6% | 32.8% | 29.0% | +19.6 |
| 35〜39歳 | 43.5% | 32.8% | 23.9% | +19.6 |
| 40〜44歳 | 44.9% | 29.9% | 27.4% | +17.5 |
| 45〜49歳 | 41.1% | 30.0% | 30.1% | +11.0 |
| 50〜54歳 | 29.4% | 18.4% | 42.0% | −12.6 |
| 55〜59歳 | 25.5% | 16.8% | 38.9% | −13.4 |
| 全年齢計 | 40.8% | 28.2% | 31.0% | +9.8 |
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出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」表6(産業計・令和7年)
30〜34歳は48.6%が増加、29.0%が減少で、差し引き +19.6ポイント。35〜39歳も同じ +19.6ポイントです。そして45〜49歳の +11.0 を最後に、50〜54歳で −12.6 へ反転します。上がった人のほうが多い側にいられるのは、統計上は40代までということになります。
ただしこれは産業を問わない全体の数字です。「30代なら上がる」ではなく「30代はまだ上がった人のほうが多い層にいる」と読んでください。上がるかどうかを決めるのは、次に説明する入口の選び方です。
求人票で最初に見るのは、給料ではなく雇用期間
製造業の求人には、雇用期間の定めがあるもの(有期)と、ないもの(無期)が混在しています。同じ工場の同じ製品を作る仕事でも、この欄が違えば別の入口です。
同じ調査に、雇用形態ごとの賃金変動が出ています。
| 移動のかたち | 増加 | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|
| 一般労働者 → 一般労働者 | 42.0% | 31.5% | +10.5 |
| うち 雇用期間の定めなし → 定めなし | 44.5% | 29.0% | +15.5 |
| パートタイム労働者 → パートタイム労働者 | 39.0% | 21.8% | +17.2 |
| うち 雇用期間の定めなし → 定めなし | 45.1% | 28.3% | +16.8 |
| うち 雇用期間の定めあり → 定めあり | 34.9% | 27.9% | +7.0 |
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出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」表7(令和7年)。就業形態が前職と異なる転職入職者は除く
並んでいる5行のうち、いちばん数字が小さいのは「雇用期間の定めあり → 定めあり」の +7.0ポイントでした。有期から有期へ動く形は、賃金が上向く力がいちばん弱いという結果です。一方、雇用期間の定めがない者どうしの移動は +15.5ポイントあります。
もうひとつ、前の職場を辞めた理由も見ておく価値があります。男性の場合、「その他の個人的理由」16.8%と「その他の理由(出向等を含む)」12.1%を除くと、最も多い理由は「定年・契約期間の満了」で16.1%。前の年からの上昇幅もこの項目が最大(+2.0ポイント)でした。
求人票で、この4つを先に確認してください
- 雇用期間に「定めあり」と書かれていないか(期間が書いてあれば有期です)
- 給与が日給・時給表示になっていないか(月給表示かどうかで性格が変わります)
- 雇用主が、働く工場を持つ会社と同じか(派遣・請負だと雇用主は別会社です)
- 正社員登用制度の有無ではなく、登用の条件が具体的に書いてあるか
→ 1つでも曖昧なら、応募する前に募集元へ直接聞いてください。ここは面接で聞きにくくなる項目です。
経験があるかどうかで、使うサービスが分かれる
ここまでの数字を踏まえると、30代の選択肢は大きく2つに分かれます。自分がどちらかを決めてから、使うサービスを選んでください。
製造業の経験を持って動く
+15.5pt- 雇用期間の定めなし同士の移動にあたる
- 前職の工程・設備・改善の実績が材料になる
- 製造業に特化したエージェントが使える
製造業の外から入る
要確認- 入職超過率がマイナスの産業に、育成前提で入ることになる
- 入口が有期に寄りやすい
- 製造業特化のエージェントは対象外になる
TYPE A:製造業の経験がある人
製造業に特化した転職エージェントが使えます。メーカーズジョブは、公式サイトで自ら「製造業出身の方におすすめの独自の限定求人を紹介する」と説明しているサービスです。運営は株式会社MyVision(東京都港区虎ノ門)。
出典:メーカーズジョブ公式サイトの掲出値。取扱求人数とGoogle口コミは2026年4月1日時点・株式会社MyVisionとして。平均年収UP額は2026年1月1日〜3月31日に同社経由で年収アップの内定を承諾した人の平均値
向いている人
- 製造業での実務経験がある
- 同業他社以外の選択肢も見たい
- いまの年収を基準に交渉したい
向いていない人
- 製造業の経験がまったくない
- 期間従業員・有期の仕事を探している
- 今週中に働き先を決めたい
メーカーズジョブ
製造業に特化した転職エージェントです。公式サイトにキャリアアドバイザーの実名と前職が掲載されており、責任者は住友電工で生産管理を経験した人物です。相談は無料で、まずキャリア面談から始まります。
無料のキャリア面談を申し込む 相談は無料 / 対象は製造業の経験がある方 公式サイトで条件を確認するTYPE B:製造業の経験がない人
正直に書きます。製造業未経験の30代に、この記事から自信を持って勧められる専門サービスはありません。製造業特化のエージェントは公式に対象を経験者としており、無理に登録しても紹介できる求人が出てきません。
この場合に先にやることは、応募ではなく企業側を調べることです。入職超過率がマイナスの産業に外から入るなら、「その会社が本当に人を増やしているのか」を自分で確かめる価値があります。転職サイトの企業ページには、年収の実績値・社員のクチコミ・選考体験談が載っています。
ワンキャリア転職
企業ごとの年収・クチコミ・選考体験談・転職体験談を見られる転職サイトです。製造業に限定されていないので、メーカーの募集を他業界と横に並べて比べられます。会員登録は無料です。
企業のクチコミと年収を見る 無料の会員登録 / 製造業以外も横断して比較できる資格で入口を1つ増やしておく
未経験から製造業を狙うなら、書類で見せられるものを1つ作っておくと応募先が広がります。品質管理の共通言語であるQC検定は、独学でも3級から始められます。
動き出す順番
- いまの雇用契約書を出して、雇用期間の欄を読む
自分がいま有期なのか無期なのかを、記憶ではなく書面で確認します。ここが次の移動のかたちを決めます。
- 直近3年でやったことを、工程・設備・数字の3つで書き出す
「組立をしていました」ではなく、何の工程を、どの設備で、どれだけの量や不良率で回していたか。製造業の経験がある人はここが交渉材料になります。
- 気になる求人の雇用期間と雇用主を確認する
働く場所と雇用主が違う求人(派遣・請負)は、条件の決まり方が変わります。応募前に見分けます。
- 経験がある人はエージェント、ない人は企業調べから始める
順番を逆にすると、紹介できる求人がない状態で面談することになり、時間だけが減ります。
- 在職中に動く
離職期間があると条件交渉で不利になりやすく、有期契約の満了を待ってから動くと選択肢が狭まります。
- 年収は「額面の総額」で比べる
日給や手当の内訳で比べると比較になりません。賞与と各種手当を含めた年間の総額に揃えてから並べてください。
- 入職超過率がマイナスであることを面接で使う
「なぜこのポジションが空いているのか」は、聞いても失礼にならない質問です。答え方で職場の状態が見えます。
製造業の入職超過率がマイナスの年は、これが初めてなのか
この記事で確認したのは令和7(2025)年の1年分だけです。過去の年との比較は、同じ調査の各年の結果概要に当たる必要があります。ここでは「令和7年はマイナスだった」という事実のみを扱っています。
期間従業員(期間工)として入るのはどうなのか
選択肢としては存在します。ただしこの記事では、待遇の条件を公式に確認できるサービスが見つからなかったため、具体的な日給・満了金・寮費などの数字は書いていません。求人サイトやまとめ記事に載っている金額は、募集元の公式発表と照らして確認してから判断してください。統計から言えるのは、雇用期間の定めがある者どうしの移動は賃金が上向く力が最も弱い(+7.0ポイント)ということだけです。
