未経験からのエンジニア転職、逆質問で聞くべきは8項目|求人票に書かれない労働条件の埋め方

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逆質問で聞くのは8項目

筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着とG-SHOCKの買取業を営んでいます。エンジニアでも人事担当者でもありません。この記事で条文として扱うのは、e-Gov法令検索で実際に条文を開いて確認した労働基準法施行規則・職業安定法と、厚生労働省のページに書かれている内容だけです。サービスの数値は公式ページで確認したものです。情報の時点は2026年9月です。

CONCLUSION

逆質問は意欲を見せる時間ではありません。求人票に書かれていない8項目を埋める時間です。

労働条件のうち、会社が必ず示さなければならないものと、定めがなければ示さなくてよいものは法律で分かれています。未経験でエンジニアを目指す人にとって効いてくる研修・就業場所・退職金は、ぜんぶ後者にあります。だから聞かないと分かりません。

どの8項目か見る
明示すべき労働条件12項目労働基準法施行規則 第5条第1項
書面で必ず交付される4項目第1号〜第4号(昇給に関する事項を除く)
定めがなければ示されない8項目第4号の2〜第11号

出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条/2026年9月24日に条文を確認

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逆質問が「何もありません」で終わると、確かめる機会が消える

未経験からエンジニアを目指して面接まで進むと、最後にほぼ必ず「何か質問はありますか」と聞かれます。ここで多くの人が、意欲が伝わりそうな質問を探します。「入社までに勉強しておくことはありますか」「活躍している方の共通点は何ですか」といったものです。

悪い質問ではありません。ただ、その時間を全部そこに使ってしまうと、本来そこでしか確かめられないことが確かめられないまま内定を受けることになります。

理由は、労働条件の示され方にあります。会社が働き手に示さなければならない労働条件は、労働基準法施行規則の第5条第1項に12項目が並んでいます。ところが、この条文にはただし書きが付いています。

第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない(労働基準法施行規則 第5条第1項ただし書き)

つまり、12項目のうち8項目は「会社にその定めがなければ、示さなくてよい」ものです。求人票にも労働条件通知書にも出てきません。書いていないことは、違法でも不誠実でもなく、単に定めがないか、示す義務がないだけです。だから、こちらから聞くしかありません。

労働基準法施行規則第5条第1項の労働条件12項目を、常に明示される4項目と定めがあるときだけ明示される8項目に分けた図

左が、契約のたびに必ず示されるもの。このうち第1号から第4号までは、書面で渡すことまで決められています(同条第3項・第4項。本人が希望すればFAXや電子メールでも可)。右が、定めがあるときだけのものです。

号労働条件示され方
1号労働契約の期間書面で必ず
1号の2有期契約を更新する場合の基準(通算期間・更新回数の上限を含む)有期契約のときだけ
1号の3就業の場所・従事すべき業務(変更の範囲を含む)書面で必ず
2号始業終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇、交替制書面で必ず
3号賃金の決定・計算・支払の方法、締切と支払時期、昇給書面で必ず(昇給を除く)
4号退職に関する事項(解雇の事由を含む)書面で必ず
4号の2退職手当定めがあるときだけ
5号賞与・臨時の賃金・最低賃金額定めがあるときだけ
6号食費・作業用品などの自己負担定めがあるときだけ
7号安全及び衛生定めがあるときだけ
8号職業訓練定めがあるときだけ
9号災害補償・業務外の傷病扶助定めがあるときだけ
10号表彰及び制裁定めがあるときだけ
11号休職定めがあるときだけ

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出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条(第1項各号・同項ただし書き・第3項)

○
VERDICT 逆質問の枠は、右の8項目に使って正解です

左の4項目は放っておいても書面で届きます。限られた逆質問の枠を左に使うと、同じ答えを二度もらうだけになります。

未経験のときにいちばん効くのは「8号・職業訓練」

表の中で、未経験からエンジニアを目指す人に直接効いてくるのが8号の「職業訓練」です。研修のことです。

ここが「定めがあるときだけ」の側にあるのは、なかなか重い事実です。未経験採用の求人で「研修あり」「未経験歓迎」と書かれていても、その研修が何日で、何を扱い、その間の賃金がどうなるかまで示す義務は、この条文からは出てきません。定めがなければ、示されないまま入社日が来ます。

だから逆質問では、研修の有無ではなく中身を聞きます。「研修はありますか」だと「あります」で終わってしまい、何も分かりません。

  1. 期間と形を聞く

    「入社後の研修は、何週間くらいで、座学と実務のどちらが中心になりますか」。日数と形式は、会社に定めがあれば即答されます。答えが曖昧なら、定めが固まっていないということです。

  2. 研修中の配属先を聞く

    「研修期間中は、自社内での勤務になりますか」。ここが後で出てくる「就業の場所の変更の範囲」と直結します。

  3. 研修後に誰が見てくれるのかを聞く

    「研修が終わったあと、分からないことを聞ける相手は決まっていますか」。メンター制度の有無は、未経験の1年目の伸びをいちばん左右します。

  4. 費用負担の取り決めを聞く

    「研修や資格の費用を会社が負担する場合、一定期間内に退職したら返還を求められることはありますか」。6号(作業用品その他の自己負担)と地続きの話で、定めがあるかないかで扱いが変わります。

注意:研修費用の返還を求める取り決めは、内容によって労働基準法第16条(賠償予定の禁止)との関係が問題になることがあります。個別の契約が有効かどうかは事情によるため、この記事では判断しません。気になる取り決めを示されたら、署名する前に労働基準監督署の総合労働相談コーナーなど公的な窓口で確認してください。

「就業の場所の変更の範囲」は、客先常駐になるかどうかの話

表の1号の3には、少し前まで無かった括弧書きが付いています。「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む」という部分です。

厚生労働省は、募集や求人申込みの際に明示すべき事項として、令和6年4月1日から次の3つが追加されたと案内しています。

  1. 従事すべき業務の変更の範囲

    いまの仕事だけでなく、契約期間中にどこまで業務が変わり得るかの範囲です。

  2. 就業の場所の変更の範囲

    同じく、働く場所がどこまで変わり得るかの範囲です。

  3. 有期労働契約を更新する場合の基準

    通算契約期間または更新回数の上限を含みます。

出典:厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」/2026年9月24日に確認

未経験でエンジニアの求人を見ていると、勤務地の欄に「本社および各プロジェクト先」「東京23区内のプロジェクト先」といった書き方を見かけます。この書き方のとき、実際に毎日通う場所は自社ではなく、取引先の会社になることがあります。いわゆる客先常駐です。

客先常駐そのものは、悪いものではありません。未経験でも入りやすく、現場の数をこなせる入口でもあります。ただ、自社で開発チームに入るつもりで受けた人が、入社後に常駐だと知るという食い違いは起きます。面接の段階で確かめられます。

CASE A

就業の場所の変更の範囲が「自社事業所」

自社内
  • 毎日通う場所が変わらない
  • 同じ社員と長く組む
  • 未経験で入れる枠は少なめ
CASE B

就業の場所の変更の範囲が「プロジェクト先を含む」

客先
  • 案件ごとに通う場所が変わる
  • 現場の種類を早く経験できる
  • チームの組み替えが起きやすい

どちらが良いかは人によります。決めるために必要なのは、自分が受けている会社がどちらなのかを、入社前に言葉で確認しておくことです。逆質問での聞き方はこうなります。

「労働条件通知書に書かれる、就業の場所の変更の範囲について伺えますか。プロジェクト先での勤務が含まれる場合、その割合はどのくらいになりますか」

この聞き方なら、条件を疑っているのではなく、書面に書かれる項目を先に確認している形になります。会社側も答えやすい質問です。

△
VERDICT 答えがはっきりしない会社を、すぐ切る必要はありません

面接官が現場のリーダーだと、契約書面の文言まで把握していないことがあります。「人事に確認して書面で示します」と返ってくれば、それで十分な答えです。

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残り6項目は、聞く順番を決めておく

8号(職業訓練)と1号の3(就業の場所)以外にも、定めがあるときだけの項目が残っています。逆質問の時間は長くて5分程度です。全部は聞けないので、未経験のときに効く順に並べておきます。

  1. 3号まわり:試用期間中の賃金

    賃金の決定・計算の方法は書面で示されますが、試用期間中だけ金額が変わるかどうかは、書面に書かれていなければ分かりません。「試用期間中の賃金は、本採用後と同じ条件になりますか」と聞きます。

  2. 5号:賞与

    定めがなければ示されません。「賞与の支給実績を伺えますか」。金額そのものより、1年目から対象になるかどうかを確かめます。

  3. 2号まわり:所定時間外労働の実績

    残業の有無は書面で示されますが、実際の時間数は別です。「直近の、エンジニア職の月平均の時間外労働はどのくらいですか」と数字で聞きます。

  4. 11号:休職

    定めがあるときだけの項目です。長く働くつもりなら、制度の有無だけでも確かめる価値があります。

  5. 4号の2:退職手当

    ここまで聞ける時間があればで構いません。中途入社で制度の対象になるかどうかは、会社によって分かれます。

面接の前に、手元の求人票でこれを確かめてください

  • 就業の場所の欄に「プロジェクト先」「顧客先」という言葉が入っている
  • 研修について「あり」「充実」としか書かれていない
  • 試用期間の記載はあるが、その間の賃金の記載がない
  • 賞与・退職金の欄が空欄、または記載そのものがない
  • 月給の中に、何時間分かの固定残業代が含まれている

→ 当てはまった数が、そのまま逆質問で聞くべき項目の数です。3つ以上なら、逆質問を雑談に使う余裕はありません。

聞き方を変えたほうがいい質問もある

確かめる権利がある項目でも、聞き方によっては答えにくくさせてしまうことがあります。未経験の面接でよく起きるのは、次の3つです。

そのまま聞いていい

  • 就業の場所の変更の範囲
  • 研修の期間・形式・研修中の勤務地
  • 月平均の時間外労働の実績
  • 試用期間中の賃金の扱い
  • 入社後に任される最初の業務

言い換えたほうがいい

  • 「残業は少ないですか」→ 時間数で聞く
  • 「有給は取れますか」→ 取得率や取り方で聞く
  • 「私は採用されそうですか」→ 相手が答えられない
  • 調べれば分かる沿革・事業内容
  • 待遇だけを続けて3問以上
×
VERDICT 「特にありません」で終えるのは、もったいない

聞かなかった項目は、入社日まで分からないままです。確かめる相手が目の前にいる時間は、この面接が最後になることもあります。

なお、示された労働条件については、条文にはっきり書かれていることがもう1つあります。

使用者は、法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない(労働基準法施行規則 第5条第2項)。

面接で受けた説明と、あとから届いた労働条件通知書の内容が食い違っていたら、それは確認していい食い違いです。言った言わないにしないために、逆質問で聞いた答えはその場でメモに残しておきます。

職業紹介や求人サイト経由で応募した場合はどうなるか

職業安定法第5条の3第1項は、職業紹介事業者や募集を行う者が、求職者に対して従事すべき業務の内容および賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。さらに同条第3項では、労働契約を結ぼうとする段階で、最初に明示した内容を変更する場合には、その変更する内容を明示しなければならないとされています。募集の段階で見た条件と、内定時に示された条件が違うときは、その違い自体を示してもらえる仕組みになっています。

出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の3/2026年9月24日に条文を確認

まとめ:逆質問は、条件を埋める最後の枠

未経験からエンジニアに移るとき、いちばん怖いのは「思っていたのと違った」です。その食い違いの多くは、意欲や実力の問題ではなく、示す義務のない条件を、誰も聞かないまま入社したことから起きます。

12項目のうち8項目は、定めがなければ書面に出てきません。研修も、就業の場所の実態も、賞与も、そこに入っています。逆質問は、その8項目のうち自分に効くものを2つか3つ選んで埋める時間です。

求人票を見ても客先常駐かどうか判断がつかない段階なら、求人を並べて説明してもらえる相手を先に作るほうが早いです。

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逆質問は何個用意していけばいいですか?
3つ用意して、そのうち2つ聞ければ十分です。面接の時間が押すことも、話の流れで先に答えが出てしまうこともあるため、優先順位をつけた3つを持っていくのが現実的です。
待遇のことを聞くと、印象が悪くなりませんか?
労働条件は本来、会社が示すことになっている事項です。労働基準法施行規則第5条第1項は12項目を明示すべき労働条件として挙げており、そのうち8項目は定めがあるときだけ示されます。聞くこと自体が失礼になる性質のものではありません。ただし時間数や金額を続けて3問以上聞くと待遇だけが関心事に見えるため、業務の質問と混ぜるのが無難です。
研修があると書いてあれば、研修の中身は聞かなくていいですか?
聞いたほうが確実です。研修にあたる「職業訓練」は労働基準法施行規則第5条第1項第8号にありますが、同項のただし書きにより、会社がその定めをしない場合は明示しなくてよい事項とされています。求人票に「研修あり」と書かれていても、期間や形式まで示す義務は条文からは出てきません。
面接で聞いた条件と、内定後の書面が違っていたらどうすればいいですか?
まず書面の内容を確認し、面接での説明との違いを会社に確かめてください。労働基準法施行規則第5条第2項は、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないと定めています。また職業紹介や求人サイト経由の場合、職業安定法第5条の3第3項により、最初に明示した条件を変更するときは変更内容を明示することとされています。納得できないまま署名せず、公的な相談窓口を使ってください。
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