この記事で数字として扱うのは、厚生労働省の公的統計を実際に開いて確認した値だけです。転職サイトやまとめ記事の数字は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商として仕入れと買取の仕事をしています。人事の専門家ではないため、統計で確認できるのは「企業がどの項目を重視したか」までで、文面の良し悪しを裏づける公的データは存在しません。その線引きは本文でも明示します。情報の時点は2026年9月です。
第二新卒の志望動機は、「経験」から書き出さない。企業が中途採用でいちばん重視しているのは、経験ではありません。
国の事業所調査では、中途採用で重視された項目の1位は「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」で72.7%。「業務に役立つ職業経験」は42.3%で5番目です。書くことがないと止まっている人は、企業が5番目にしか見ていない項目で悩んでいます。
重視された10項目の順位を見る出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」図表データ 事表4(表4 採用区分、若年正社員の採用選考の有無及び採用選考にあたり重視した点別事業所割合)/2026年9月24日に取得して確認
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第二新卒の志望動機の書き方を検索すると、どのページにも同じことが書いてあります。「第二新卒は経験が浅いので、ポテンシャルや意欲をアピールしましょう」。言っていることは間違っていないのですが、なぜそうなのかの根拠は、たいてい示されません。
根拠になる数字は、実はあります。厚生労働省の「若年者雇用実態調査」は、事業所に対して若年正社員を採用するときに何を重視したかを、新規学卒者と中途採用者に分けて聞いています。第二新卒の応募は、この調査でいう「中途採用者」の枠に入ります。
その10項目を、中途採用者で重視された割合の高い順に並べたのが次の図です。

数字でも置いておきます。左が新規学卒者、右が中途採用者です。
| 採用選考で重視した点 | 新規学卒者 | 中途採用者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 | 79.3 | 72.7 | -6.6 |
| コミュニケーション能力 | 74.8 | 66.9 | -7.9 |
| マナー・社会常識 | 58.6 | 58.1 | -0.5 |
| 組織への適応性 | 53.2 | 51.8 | -1.4 |
| 業務に役立つ職業経験・訓練経験 | 14.7 | 42.3 | +27.6 |
| 業務に役立つ専門知識や技能 | 30.4 | 34.8 | +4.4 |
| 体力・ストレス耐性 | 36.2 | 31.4 | -4.8 |
| 学歴・経歴 | 22.4 | 23.1 | +0.7 |
| 柔軟な発想 | 29.3 | 22.9 | -6.4 |
| 従順さ・会社への忠誠心 | 20.1 | 20.3 | +0.2 |
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この表から読み取れることは、ひとつに絞れます。中途採用で新卒より上がる項目は、職業経験と専門知識の2つしかないということです。残りの8項目は、ほぼ横ばいか、むしろ中途のほうが低くなっています。
つまり企業は、中途だからといって評価の軸を丸ごと入れ替えているわけではありません。新卒のときと同じ土俵に、経験という1項目が足されているだけです。そしてその1項目は、順位でいえば5番目です。
中途採用には、新卒と違うところがもうひとつある
同じ表の左側には、あまり注目されない数字が載っています。採用選考をしたかどうかです。
出典:同上(事表4)。「不明」は中途4.2%・新卒6.6%。
新規学卒者の採用では、7社に1社が選考らしい選考をしていません。学校推薦や紹介で決まる枠があるからです。ところが中途採用では、選考をしない事業所は25社に1社まで減ります。
ここが第二新卒の実感とつながるところです。「新卒のときより落とされている気がする」というのは、ひとりよがりな感覚ではありません。中途の応募には、ほぼ必ず選考があるという構造の話です。
選考が省かれる余地が新卒より小さい、というのがこの数字の意味です。だから志望動機は、飾る場所ではなく、読まれる前提で準備する場所になります。
志望動機に入れる材料は、上位4項目から選ぶ
順位が分かったら、次は材料選びです。上位4項目は、どれも勤続1〜3年でも証明できる中身です。逆にいえば、ここを書かずに「経験が浅くて…」と前置きから入ると、いちばん重視されている項目を自分で空欄にすることになります。
自分がどれを証明できるか、先に確かめてください。
あてはまるものに印をつけてください
- 担当を任されて、途中で投げ出さずに区切りまでやり切った仕事がある(職業意識)
- 自分から誰かに相談・提案して、その結果ものごとが動いたことがある(コミュニケーション能力)
- 社外の人と直接やり取りする場面があった(マナー・社会常識)
- チームやシフトの中で、自分の役割が決まっていた(組織への適応性)
- 特定の作業・ツール・商材について、後輩や同僚に説明できる(職業経験)
→ 1つでも印が付けば書けます。印が付いた項目のうち、いちばん具体的に話せるものが志望動機の軸になります。
ここで大事なのは、印が付いた項目を全部書かないことです。志望動機は300〜400字しかありません。1項目を最後まで具体的に書いたほうが、4項目を薄く並べるより読まれます。
型は3つ。どれで書くかを先に決める
軸が決まったら、文章の型を選びます。上位項目のどれを主役にするかで、書き出しから変わります。
- TYPE A 続けた事実を主役にする(職業意識・勤労意欲)
職種未経験の会社を受ける人向けです。経験が使えないぶん、1〜3年のあいだに「途中でやめなかった」ことを具体的な仕事で示します。業務内容ではなく、続けた区切りのほうを書くのがこの型です。
- TYPE B 動かした相手を主役にする(コミュニケーション能力)
接客・営業・販売・サポートの経験がある人向けです。重視された項目の2位を正面から取りにいきます。「コミュニケーションが得意です」とは書かず、誰に何を伝えて何が変わったかを1件だけ書きます。
- TYPE C 仕事の中身を主役にする(職業経験・専門知識)
同職種で移る人向けです。5番目の項目とはいえ、新卒の14.7%から42.3%へ上がる唯一の項目なので、当てはまる人はここを使うのが最短です。扱った商材・ツール・工程を名指しします。
型ごとの例文と、直す前の文
まず、いちばんよく見る「直す前」の形から見ます。
経験から書き出した志望動機
×- 「経験が浅いのですが」から始まる
- 会社を替えても成立する文になる
- 上位4項目が1つも入らない
上位項目から書き出した志望動機
○- やり切った仕事の名前から始まる
- その会社でないと成立しない
- 経験の薄さは最後に1行で処理する
直す前の文は、たいていこうなります。
前職では販売職として1年半勤務しておりました。まだ経験は浅いのですが、持ち前の明るさとコミュニケーション能力を活かし、御社で一から学ばせていただきたいと思い志望いたしました。
この文の問題は「経験が浅い」と書いたことではなく、読み終えても応募先が分からないことです。では型ごとに直します。
TYPE A の例文(職種未経験・続けた事実を主役にする)
前職:アパレル販売/応募先:法人向けの内勤営業という想定です。
経験の薄さには触れていません。触れる必要があるなら、末尾に1行だけ足します。「営業の実務は未経験のため、入社後3か月で商材と価格帯を覚えることを最初の目標にしています」。謝るのではなく、いつまでに何を埋めるかを書くのが、この1行の役割です。
TYPE B の例文(人を動かした場面を主役にする)
前職:携帯ショップの接客/応募先:カスタマーサポートという想定です。
「コミュニケーション能力があります」とは書いていません。誰に、何を変えて、何が起きたかを1件だけ書けば、その項目は読み手が勝手に判定してくれます。
TYPE C の例文(同職種・仕事の中身を主役にする)
前職:中小企業の経理/応募先:同じく経理という想定です。
この例文にはできないことが書いてあります。決算の全体を見た経験はない、と明示しています。中途採用で職業経験が重視されるということは、経験の中身を確かめられるということでもあります。盛った分は面接で崩れます。
企業側は、入社後に辞められることを気にしている
もうひとつ、同じ調査から見ておきたい数字があります。若年労働者に長く勤めてもらうために、企業が何をしているかという表です。
| 若年正社員の定着のために実施している対策 | 令和5年 | 平成30年 |
|---|---|---|
| 職場での意思疎通の向上 | 59.7 | 59.0 |
| 採用前の詳細な説明・情報提供 | 58.4 | 52.0 |
| 本人の能力・適性にあった配置 | 55.6 | 53.5 |
| 労働時間の短縮・有給休暇の取得奨励 | 52.9 | 37.8 |
| 教育訓練の実施・援助 | 48.5 | 49.5 |
| 職場環境の充実・福利厚生の充実 | 41.2 | 36.6 |
| 仕事の成果に見合った賃金 | 39.1 | 36.0 |
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出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」図表データ 事表8(表8 雇用形態、若年労働者の定着のために実施している対策別事業所割合)。若年正社員の定着のための対策を行っている事業所を100とした割合。対策を行っている事業所は全体の73.7%(平成30年調査72.0%)/2026年9月24日に取得して確認
2番目の「採用前の詳細な説明・情報提供」を見てください。52.0%から58.4%へ、5年で6.4ポイント上がっています。入ってから辞められないように、入る前に説明しておくという動きが増えているということです。
これは応募する側から見ると、志望動機で見られている中身がひとつ増えるという意味になります。意欲があるかどうかだけでなく、この会社の実際のところを分かったうえで応募しているかです。求人票や採用ページに書いてあることを志望動機の中で1か所引くだけで、この確認は済みます。上の例文で「求人票で拝見しました」「採用ページで拝見しました」と入れているのは、そのためです。
やらないほうがいいこと、3つ
- 例文をそのまま使う
第二新卒の志望動機の例文は、検索すればいくらでも出てきます。同じ会社に同じ文が届きます。型は借りていいので、事実の部分は自分のものに置き換えてください。
- 前の会社の悪口を材料にする
辞める理由と志望動機は別のものです。辞める理由は「転職理由」として別に聞かれます。志望動機のほうに不満を混ぜると、重視された項目の1位(職業意識・勤労意欲)を自分で削ることになります。
- 意欲だけで埋める
1位が「職業意識・勤労意欲」だからといって、意欲を宣言する文を並べても届きません。この項目は、やり切った仕事の事実からしか伝わりません。「頑張ります」は事実ではありません。
重視された上位4項目は、勤続1〜3年で証明できるものばかりです。書けないのではなく、5番目の項目から書き出そうとして止まっているだけです。
まとめ
- 順位を頭に入れる
中途採用で重視されるのは、職業意識72.7%・コミュニケーション能力66.9%・マナー58.1%・組織への適応性51.8%、そして職業経験42.3%の順です。
- 自分が証明できる項目を1つ選ぶ
上位4項目は1〜3年でも証明できます。印が付いた中で、いちばん具体的に話せるものを軸にします。
- 3つの型のどれかに当てはめる
続けた事実(TYPE A)/動かした相手(TYPE B)/仕事の中身(TYPE C)。経験の薄さは、末尾の1行で「いつまでに何を埋めるか」に変えます。
- 応募先が自分で出している情報を1か所引く
求人票・採用ページの記述を志望動機の中で使えば、その会社にしか出せない文になります。
- 書いた文を、他人に一度読ませる
他社に出しても成立する文になっていないか、自分では気づけません。ここだけは人の目が要ります。
この記事で使った統計について
厚生労働省「若年者雇用実態調査」は、事業所側と労働者側の両方に聞く調査で、5年に一度おこなわれています。この記事で使ったのは事業所調査のほうです。採用区分は「新規学卒者」と「中途採用者」の2つで、第二新卒だけを切り出した数字は公表されていません。第二新卒の応募が中途採用者の枠に入ることを前提に読んでいます。中途採用者には30代・40代の応募も含まれるため、この表の数字を「第二新卒に対する評価」と言い換えることはできません。あくまで、新卒と中途で企業が見る場所がどう動くかの目安として使っています。
