筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の金額は、すべて福岡労働局と厚生労働省の公式ページを実際に開いて確認したものです。特定の派遣会社から提供を受けた数字は使っていません。情報の時点は2026年9月14日です。
福岡で働くアパレル派遣の時給の下限は、いま2本あります。そして2026年10月4日に1,114円へ切り替わります。
福岡県の最低賃金はいま1,057円。ところが百貨店と総合スーパーだけは別に1,065円が定められています。さらに10月4日からは地域別が1,114円に上がり、下限が57円動きます。求人票の時給がこの線を越えているかどうかを、先に確かめてください。
まず福岡の下限がいくらか見る福岡の時給の下限は、いま2本ある
福岡市でアパレルの派遣を探すとき、最初に押さえるべきなのは「時給の相場」ではなく下限です。相場は求人によって上下しますが、下限は法律で決まっていて、下回った求人はそもそも成立しません。
そして福岡県の下限は、1本ではありません。
1本目が地域別最低賃金。産業や職種に関係なく、福岡県内の事業場で働くすべての人にかかります。いまは1時間1,057円で、2025年11月16日から効いています。
2本目が特定(産業別)最低賃金。特定の産業だけに、地域別より高い額を別に定めたものです。福岡県には5つあり、そのうちのひとつが「百貨店、総合スーパーマーケット」で、1時間1,065円。2026年2月1日から効いています。その前は1,000円だったので、65円上がった計算です。
出典:福岡労働局「福岡県の最低賃金」/厚生労働省 最低賃金特設ページ(福岡県)(2026年9月14日に確認)
福岡県にある5つの特定(産業別)最低賃金を並べると、アパレル販売が関係するのは百貨店の1本だけで、しかもいちばん低い位置にあることが分かります。
| 福岡県の最低賃金 | 時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業 | 1,176 | 2025年12月10日 |
| 輸送用機械器具製造業 | 1,147 | 2025年12月10日 |
| 電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業 | 1,137 | 2025年12月10日 |
| 自動車(新車)小売業 | 1,131 | 2025年12月10日 |
| 百貨店、総合スーパーマーケット | 1,065 | 2026年2月1日 |
| 地域別(上のどれにも当たらない場合) | 1,057 | 2025年11月16日 |
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出典:福岡労働局「福岡県の最低賃金」(2026年9月14日に確認)
福岡県内の最低賃金の幅と、アパレル販売の位置
製造業の産業別最低賃金と比べると、百貨店の1,065円は地域別からわずか8円しか上乗せされていません。アパレル販売は、福岡県の最低賃金の体系の中でいちばん下の段にいるというのが実情です。
派遣は「派遣先」で決まる。登録した会社の場所ではない
ここが派遣ならではの分かれ目です。厚生労働省は、派遣で働く人の最低賃金についてこう説明しています。派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の事業場に適用される最低賃金が適用される、と。
東京の派遣会社に登録していても、実際に立つ店が福岡市内なら、かかるのは福岡県の最低賃金です。逆に福岡の派遣会社に登録して県外の店に入るなら、そちらの県の額になります。登録先の住所は関係ありません。
そしてもうひとつ。地域別と特定(産業別)の両方が同時にかかる人には、使用者は高いほうの額以上を支払わなければならないと定められています。つまり百貨店の売場に入る場合、いまは1,057円ではなく1,065円が下限になります。
ただし、ここで自己判断しないでください。「百貨店の中にある売場だから百貨店の最低賃金」とは限りません。福岡県の規定が対象にしているのは、百貨店・総合スーパーを営む使用者に使用される労働者です。館の名前ではなく、あなたが入る事業場そのものの業種で決まります。百貨店に入っているブランドのショップは、そのブランドの会社の事業場として扱われることがあります。
- 派遣先の「事業場」の名前を確認する
契約書や就業条件明示書に、実際に働く事業場が書かれています。館の名前ではなく、そこに書かれている事業場がどこかを見てください。
- その事業場の業種をコーディネーターに聞く
「この派遣先には、福岡県の百貨店・総合スーパーの最低賃金が適用されますか」と、そのまま聞いて構いません。派遣会社は派遣先に適用される最低賃金を把握しておく必要がある、と国が明記しています。
- 答えが曖昧なら、福岡労働局に確認する
福岡労働局 労働基準部 賃金室(092-411-4578)が公式ページに問い合わせ先として載っています。判断に迷ったらここが確実です。
2026年10月4日に、下限が57円上がる
これが、いま福岡で派遣の求人を見ている人にとっていちばん大きい話です。福岡県の地域別最低賃金は、2026年10月4日から1時間1,114円になります。福岡労働局のページには「令和8年10月3日までは、1時間1,057円」と書かれています。

出典:福岡労働局「福岡県の最低賃金」/厚生労働省 最低賃金特設ページ(2026年9月14日に確認・筆者作成)
この日を境に、2つのことが起きます。
- 下限が57円上がる
1,057円から1,114円へ。1日8時間・月20日で計算すると、月あたり9,120円ぶんの下限が動きます。
- 百貨店の別枠が意味を持たなくなる
地域別の1,114円が百貨店の1,065円を上回るので、高いほうが適用されるルールにより、百貨店で働く人の下限も1,114円になります。
| 時期 | 百貨店・総合スーパーの売場 | それ以外の売場 |
|---|---|---|
| 10月3日まで | 1,065 | 1,057 |
| 10月4日から | 1,114 | 1,114 |
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いま福岡で出ている時給1,057円〜1,113円の求人は、10月4日以降は最低賃金を下回ります。求人が消えるか、時給が引き上げられるかのどちらかです。応募の前に「10月4日以降の時給はいくらになりますか」と必ず聞いてください。
逆に言えば、いま時給1,150円や1,200円で募集している求人は、10月4日以降も上乗せが残るということです。同じ1,200円でも、9月時点では下限+143円ですが、10月以降は+86円に目減りします。金額そのものではなく、下限からの距離で見てください。
百貨店の最低賃金が当てはまらない人がいる
特定(産業別)最低賃金には、対象から外れる人が定められています。福岡県の百貨店・総合スーパーの規定では、次の人が除かれます。
次に当てはまる人には、百貨店の1,065円ではなく地域別の額が適用されます
- 18歳未満、または65歳以上の人
- 雇い入れ後3か月未満で、技能習得中の人
- 清掃または片付けの業務に主として従事する人
- 倉庫番、包装、袋詰め、場内整理、検品、容器の洗浄の業務に従事する人
→ 入って3か月以内は、百貨店でも下限が1,057円のことがあります。30代なら年齢では外れませんが、期間の条件は関係します。
注目してほしいのは2番目です。同じ売場に同じ日から入っても、入って3か月未満で技能習得中とされる間は、百貨店の上乗せ8円が乗らないことがあります。短期の派遣ほど、この期間に丸ごと収まってしまいます。
製造業の産業別最低賃金と、除外条件が違う理由
福岡県の製鉄業や輸送用機械器具製造業の規定では「雇入れ後6月未満の者であって、技能習得中のもの」が除外されています。百貨店・総合スーパーは3か月です。産業ごとに労使が話し合って決めるため、除外の期間も業務の範囲も産業別に違います。自分に当てはまる規定を見るときは、その産業のものを見てください。
福岡の求人票を、3つの線で読む
ここまでの数字を、実際の求人票に当てる手順にします。福岡市の求人に限った読み方です。
- 1,114円を下回っていないか
10月4日以降の下限です。ここを下回る求人は、そのままでは続きません。応募前に確認する対象です。
- 下限からの上乗せが100円あるか
1,214円以上かどうか。上乗せが100円を切っていると、経験や資格が時給に反映されていない水準だと考えていいと思います。
- 交通費が時給に含まれていないか
通勤手当は最低賃金に算入されません。「交通費込み」と書かれている場合、実質の時給はその分低くなります。天神や博多への通勤で1日500円かかるなら、8時間勤務で時給62円ぶんです。
3つ以上あてはまる人は、条件を見直す段階です
- 提示された時給が1,114円を下回っている
- 契約更新のときに時給が上がったことが一度もない
- 交通費が時給に含まれている
- 百貨店の売場に入っているのに、下限が1,065円かどうか説明を受けていない
- 同じ派遣先に3年近く入っていて、その先の契約の話が出ていない
→ 3つ以上なら、いまの派遣先で交渉する前に、自分の経験がどこで評価されるのかを先に調べたほうが早いです。
下限が上がっても、手取りが増えるとは限らない
最低賃金が57円上がるのは、働く側にとっていい話です。ただし、そのまま手取りが増えるとは限りません。時給が上がったぶん、シフトを削られることがあるからです。
上がった分がそのまま乗る人
- 契約時間が固定で、シフトが安定している
- 長期の契約で、派遣先が人を減らせない売場にいる
- すでに下限より100円以上高い時給で入っている
上がっても手取りが増えにくい人
- 週の勤務日数が月ごとに変わる契約になっている
- 時給が下限ぎりぎりで、人件費の調整対象になりやすい
- 短期・単発の案件をつないで働いている
販売の現場にいたころ、人件費の予算は「時給×時間」ではなく月の総額で降りてきていました。時給が上がる年は、決まってシフトの本数を削る話が同時に出ます。時給だけを見て喜んで、月末の給与明細で気づく人を何人も見ました。契約前に見るべきは時給ではなく、最低保証の勤務時間が契約書に書いてあるかどうかです。
月の見込みを立てるときは、いちばん少ない月で計算してください。時給1,200円でも、週4日・1日7時間の月なら月134,400円です。時給1,114円で週5日・8時間なら月178,240円。時給の高さより、契約時間のほうが手取りへの影響は大きいことが少なくありません。
