アパレル関係の仕事は、服に近いほど給料が安い|30代で並べた9職種と470万円の段差

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服に近いほど、給料は安い

※この記事の金額は、すべて厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の公表ファイルを実際にe-Statからダウンロードして読んだ値だけを使っています(確認日:2026年9月10日)。年収まとめサイトや求人広告の「平均年収」は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商です。

CONCLUSION

「アパレル関係の仕事」の給料は、服に近いほど安い。30代前半で並べると、服を作る人が318.3万円、店と人を束ねる人が788.6万円です。

同じ業界の中で、差は470.4万円。しかも安い段ほど、30代の5年間でほとんど増えません。「アパレルは給料が安い」ではなく「アパレルの中のどの段に立つか」の話だ、というのがこの記事の結論です。

9つの職種を並べた図を見る
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「アパレル関係の仕事」を、給料の順に並べてみる

「アパレル関係の仕事に就きたい」と考えるとき、頭に浮かぶのはたいてい服を作る人と、服を売る人だと思います。縫製やパタンナー、そして店頭の販売員です。

国の統計で年収を並べると、その2つがいちばん下に来ます。

アパレル関係の仕事7職種の30〜34歳の年収換算を並べた横棒グラフ。服を作る318.3万円・服を売る387.1万円が最下段

使ったのは令和7年賃金構造基本統計調査の(職種)第5表です。この表は職種ごとに年齢階級を分けてあるので、「30代の自分」に当てはめて読めます。金額は月額と年間賞与に分かれて公表されているので、年収換算は次の1本の式で出しました。

年収換算=きまって支給する現金給与額(月額)× 12 + 年間賞与その他特別給与額。この式だけが筆者の計算で、元の値は公表ファイルの欄をそのまま使っています。
いちばん下といちばん上の差470.4万30〜34歳・年収換算
服を作る人の5年の伸び+4.5万30〜34歳→35〜39歳
店と人を束ねる人の伸び+101.1万同じ5年間

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表(2026年9月10日にe-Statで確認・男女計・企業規模計10人以上)

9つの職種を、30代の年収と「5年の伸び」で並べる

図に入りきらなかった職種も足して、全部を1枚にします。右端の「5年の伸び」が、この記事でいちばん見てほしい列です。30〜34歳と35〜39歳の差を引き算しただけの列ですが、ここに段ごとの性格がはっきり出ます。

統計上の職種の欄アパレルでいうと30〜34歳35〜39歳5年の伸び
紡織・衣服・繊維製品製造従事者服を作る(縫製・裁断まわり)318.3万322.8万+4.5万
販売店員服を売る(店頭・販売員)387.1万401.9万+14.8万
営業・販売事務従事者受発注・営業アシスタント501.8万539.5万+37.8万
総合事務員本社の一般事務522.6万568.4万+45.8万
デザイナー服をデザインする534.6万564.8万+30.2万
その他の商品販売従事者仕入れる(商品バイヤーはここ)547.4万584.6万+37.3万
その他の営業職業従事者卸す・法人に売る596.7万646.8万+50.1万
企画事務員売り方を企画する644.4万709.7万+65.2万
管理的職業従事者人と店を束ねる788.6万889.8万+101.1万

← 横にスクロールできます(産業計・男女計・企業規模10人以上・一般労働者)

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表(2026年9月10日にe-Statで確認)。年収換算と「5年の伸び」は、公表値からこちらで計算した列です。

並べると、順番が2つの意味で同じであることに気づきます。年収が低い職種は、伸びも小さい。服を作る人は5年で4.5万円、服を売る人は14.8万円しか増えません。いっぽうで束ねる人は101.1万円増えます。

つまり30代の5年間は、差が縮まる期間ではなく、開く期間です。「今は安いけど、そのうち上がるだろう」という前提が、この表の上では成り立ちません。

伸びの差は、月給ではなく賞与で付いている

どこで差が付いているのかを分けると、はっきりします。30〜34歳の内訳を見てください。

服を作る/月額23.6万
服を作る/年間賞与35.1万
束ねる/月額53.0万
束ねる/年間賞与153.1万

月額は23.6万円と53.0万円で2.2倍ですが、年間賞与は35.1万円と153.1万円で4.4倍です。差を大きくしているのは賞与のほうです。

ここが実感とずれる理由でもあります。求人票に並ぶのは月給なので、月給だけを見比べていると差は小さく見えます。実際に開くのは、年に2回の振込のほうです。求人票の見方はアパレルで給料が高い会社はどこかでも同じ落とし穴を書きました。

安い段に、いちばん人が立っている

もう1つ、この表には残酷な列があります。労働者数です。同じ30〜34歳で数えると、こうなります。

職種の欄30〜34歳の人数年収換算
販売店員127,000人387.1万
総合事務員129,150人522.6万
その他の営業職業従事者111,450人596.7万
企画事務員72,600人644.4万
管理的職業従事者25,560人788.6万
その他の商品販売従事者(バイヤー)16,560人547.4万
デザイナー12,540人534.6万
紡織・衣服・繊維製品製造従事者9,810人318.3万

← 横にスクロールできます

「アパレル関係の仕事」と聞いて憧れるデザイナーは12,540人、バイヤーは16,560人しかいません。それに対して販売店員は127,000人。10倍です。

この数字が言っているのは、才能の話ではありません。椅子の数の話です。服が好きで業界に入った人の大半は、いちばん椅子が多くて、いちばん安くて、いちばん伸びない段に立つことになります。それは能力ではなく、席の配分でそうなっています。

この人数は産業を分けていない全国の数字です。販売店員127,000人の中には、アパレル以外の小売の販売員も入っています。アパレルだけを抜いた人数は公表されていないので、ここで見てほしいのは絶対数ではなく、職種によって椅子の数がひと桁ちがうという形のほうです。

この表を自分に当てはめる前に、知っておく3つのこと

数字は正確ですが、そのまま「アパレル業界の年収表」として読むと間違えます。前提を3つ書きます。ここを飛ばすと、話が合わなくなります。

  1. この職種表は、産業を分けていません

    「アパレル業界の販売店員だけ」を抜き出した表ではなく、全産業の販売店員の平均です。家電量販もスーパーも同じ欄に入っています。アパレルだけを抜いた職種別の表は公表されていないので、いちばん近い公的な数字がこれになります。

  2. 「バイヤー」「プレス」「MD」という欄はありません

    統計の職種名は、世間で使われている肩書きと一致しません。商品バイヤーはその他の商品販売従事者という欄に入っています。同じ調査の職種解説にそう書かれています。肩書きではなく実際にやっている仕事で欄を選ぶ必要があります。

  3. 対象は一般労働者(フルタイム)です

    短時間労働者は別集計なので、この表にパート・アルバイトの水準は入っていません。派遣で働いている場合も、金額の決まり方そのものが違います。派遣の時給には自分で計算できる下限があります。

補足:産業を絞れば、金額そのものは上下します。この記事が示せるのは同じ調査・同じ条件(男女計・企業規模10人以上・一般労働者)でそろえて比べたときの並び順までで、「アパレル業界の販売店員は◯◯万円」と言い切れる公的な数字は存在しません。

では、服に近い仕事を続けるか、離れるか

この表を見せると、たいてい「じゃあ辞めたほうがいいのか」と聞かれます。答えは、いま何段目にいるかで変わります。3つに分けます。

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VERDICT 「そのうち上がる」を待つのは、いちばん損です

服を作る段・売る段にいる人の5年の伸びは、4.5万円と14.8万円。待って解決する差ではありません。30代の5年を待機に使うと、35〜39歳の段でも同じ位置にいることになります。

VERDICT 「服から離れる」まで決める必要はありません

表のまん中は、服に関わったまま金額が上がる段です。仕入れる(547.4万)・卸す(596.7万)・企画する(644.4万)。販売店員から見ると、仕入れる段まで160.3万円、企画する段まで257.3万円の差があります。

VERDICT 先に動かすのは「職種」で、会社ではありません

同じ販売店員のまま会社を替えても、移る先は同じ段です。金額を変えるのは段を上がることで、そのために要るのは店の実績を数字で説明できる状態にしておくことだけです。

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いま自分がどの段にいるか、5つで確かめる

肩書きではなく、1日の時間の使い方で判定します。当てはまる数を数えてください。

当てはまるものを数えてください

  • 勤務時間の8割以上を、売場でお客様に対応して過ごしている
  • 発注する数量を、自分の判断で決めたことがない
  • 自店以外の売上を見る画面に、アクセス権がない
  • 予算(目標)を作る会議に、出たことがない
  • 直近1年で、賞与が月給の2か月分を超えていない

→ 4つ以上なら、いまは表のいちばん下の2段にいます。3つ以下なら、すでに1段上の仕事を任され始めています。

最後の1つは、この記事の表とそのままつながっています。賞与の月数は、自分がどの段で評価されているかの目盛りです。服を作る段は月給1.5か月ぶん、束ねる段は2.9か月ぶんが平均でした。

段を上げるときの順番

いきなり求人を見ない、というのがこの順番の要点です。先に社内でできることを確かめてからのほうが、条件の比較ができます。

  1. 給与規程で、社内の等級を確かめる

    自分の会社に何段あって、いまどこにいるか。上の段の金額がいくらか。ここが分からないと、外の求人と比べられません。就業規則と一緒に閲覧できるようになっているはずです。

  2. 数字を3つ、書き出しておく

    担当した売場の年間売上・前年比・自分が決めた発注の点数。「接客が得意です」は段を上げません。数量と金額で説明できるかどうかが、まん中の段へ入れるかどうかを分けます。

  3. 社内の職種転換制度を先に当たる

    本社・EC・仕入れへの異動枠が、公募で出ている会社があります。在籍したまま段を上げられるなら、それがいちばん早くて損が小さい方法です。

  4. そのうえで、外の段の金額を見る

    社内に上の段が無い、または埋まっていると分かってから外を見ます。順番が逆だと「なんとなく高そうな会社」を比べることになります。

2で書き出した数字を入れて、届く段を見る

職種ごとの詳しい話は、それぞれの記事に分けています

この記事は横に並べるところまでです。気になった段があれば、その職種だけを掘った記事を読んでください。金額の根拠は、どれも同じ公的統計をあたっています。

アパレル関係の仕事で、いちばん給料が高いのはどれですか?
令和7年賃金構造基本統計調査の職種別で見ると、30〜34歳の年収換算がいちばん高いのは管理的職業従事者(788.6万円)です。アパレルでいうと部長職やエリアを統括する立場が入ります。次が企画事務員の644.4万円で、売り方を企画する仕事がここに入ります。ただし職種表は産業を分けていないため、アパレル業界だけを抜き出した金額ではありません。
服を作る仕事は、なぜ販売員より低いのですか?
統計上の「紡織・衣服・繊維製品製造従事者」の30〜34歳は318.3万円で、販売店員の387.1万円より68.8万円低い水準です。差の大きな部分は賞与で、年間賞与は35.1万円(販売店員は46.1万円)でした。理由まで統計は説明していないため、この記事では金額の事実だけを書いています。
30代からでも、上の段の職種に移れますか?
移れますが、椅子の数が違います。30〜34歳の労働者数は販売店員が127,000人に対し、バイヤーが入る「その他の商品販売従事者」は16,560人、デザイナーは12,540人です。まず社内の職種転換制度を確かめ、担当売場の売上・前年比・発注点数を数字で説明できる状態にしてから外を見る順番が、遠回りに見えていちばん確実です。
この記事の金額は、手取りですか?
手取りではありません。「きまって支給する現金給与額」は税・社会保険料を引く前の額で、超過労働給与額(残業代など)を含みます。年収換算はこれを12倍して年間賞与を足したものです。手取りは、ここからさらに税と社会保険料が引かれた額になります。

まとめ

「アパレル関係の仕事は給料が安い」という言い方は、半分だけ当たっています。安いのは業界ではなく、服にいちばん近い2つの段です。そしてその2段は、30代の5年間でほとんど伸びません。

やることは1つだけです。いま自分が何段目に立っているかを確かめて、上の段が社内にあるかを見ること。無ければ、外にはあります。服から離れなくても、仕入れる段まで160.3万円、企画する段まで257.3万円の余地が残っています。

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(職種)第1表(職種)第5表(いずれも2026年9月10日にe-Statで確認)

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