※この記事の年齢制限のルールはe-Gov法令検索で法令の原文を、転職の数字は厚生労働省「令和6年 雇用動向調査 結果の概要」(mhlw.go.jp)の図表データを実際にダウンロードして読んだ値だけを載せています。求人サイトや他のまとめ記事の数字は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。
経験を条件にした求人に、年齢の上限は付けられません。ただし40代で動いている人の数は、20代の半分以下です。
「40代のアパレル転職は無理」という話は、法律の話と人数の話がごちゃ混ぜになっています。この2つを分けると、やることがはっきりします。
まず法律のほうから見る「40代は転職できない」を2つに割ります
アパレルの店頭に10年以上いて、40代が見えてくると、必ず一度は同じことを考えます。この歳で採ってくれる会社があるのか。求人サイトを開けば「35歳まで」という表示が目に入る。それを何度か見ているうちに、応募する前から答えが出た気になってしまう。
ただ、この不安は中身の違う2つの心配がくっついたものです。分けると次のようになります。
心配1:年齢で門前払いされるのでは
- これは法律で決まっている話
- 年齢制限を付けられる場面は限定されている
- 調べれば白黒がつく
心配2:そもそも動いている人がいないのでは
- これは実際の人数の話
- 国の調査に毎年の数字が出ている
- これも調べれば分かる
どちらも、感覚で答える必要のない話です。順番に見ていきます。
法律:年齢制限を付けられるのは4つの場面だけ
求人の年齢制限には、はっきりした法律の根拠があります。長い名前の法律ですが、条文そのものは短いので、原文をそのまま引きます。
事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
「厚生労働省令で定めるとき」という言い方が回りくどいのですが、実際の中身は施行規則の第一条の三に書かれていて、そこで年齢制限を付けてよい場面を先に列挙し、それ以外はすべて禁止という作りになっています。挙がっているのは次の4つだけです。
| 号 | 年齢制限が許される場面 | 40代の経験者に当てはまるか |
|---|---|---|
| 一号 | 定年の定めがある会社が、定年年齢を下回ることを条件に募集するとき(無期契約が目的の場合に限る) | 当てはまる。定年60歳なら「59歳以下」は合法 |
| 二号 | 労働基準法などで、特定の年齢の就業が禁止・制限されている業務 | アパレルの職種では、まず出てこない |
| 三号イ | 長期間の継続勤務によるキャリア形成を目的とした若年者の募集。無期契約が目的で、かつ職業に従事した経験を求人の条件としない場合で、新卒またはそれと同等の処遇で募集する場合に限る | 当てはまらない。ここが最重要(後述) |
| 三号ロ | 特定の年齢層が著しく少ない職種で、技能を継承するために募集するとき | ほぼ出てこない |
| 三号ハ | 芸術・芸能の分野で、表現の真実性を確保するため | 出てこない |
| 三号ニ | 60歳以上の高年齢者の雇用促進、または国の施策を活用する場合 | 40代では出てこない |
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出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」第一条の三第一項(原文を取得して確認・情報時点 2026年8月)
「35歳まで」と書ける求人は、あなたが受ける求人ではありません
いちばんよく見かける年齢制限が、三号イの「長期間の継続勤務によるキャリア形成」です。若い人を採って長く育てたい、という理由づけですね。求人サイトの「35歳まで」のほとんどはこれです。
ここで条文をもう一度よく読んでください。三号イには、こういう但し書きが付いています。
つまり、この例外を使って年齢制限を付けるには、「経験不問」でなければならないのです。逆に言うと、こうなります。
経験を条件にした時点で、三号イの例外は使えなくなります。残る例外は定年(一号)だけ。40代の経験者が受けるのは、まさにこの経験者採用のほうです。
同じ条文の第二項には、事業主は募集にあたって職務の内容・必要な適性・能力・経験・技能の程度をできる限り明示するものとする、とも書かれています。年齢という一行で切るのではなく、仕事の中身で書きなさい、という建て付けです。
販売員をしていた頃、求人票の「35歳まで」を見て勝手にあきらめていました。あとで採用側に回って分かったのは、あの表記が付いているのは未経験の育成枠だけで、経験者の枠はそもそも年齢を書けない、ということでした。見ていた棚が最初から違っていたわけです。
数字:40代で実際に何人が転職しているか
次は人数の話です。国が毎年やっている「雇用動向調査」に、年齢別の数字がそのまま載っています。使うのは転職入職率という指標です。定義は公式の用語説明にこう書かれています。

出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査 結果の概要」図4-2(男・一般労働者の転職入職率)
グラフの形を言葉にすると、こうなります。
- ピークは25〜29歳の13.6%
ここがいちばん動く時期です。30〜34歳で9.5%、35〜39歳で7.5%と、5歳ごとに順当に減っていきます。
- 40〜44歳は5.9%。ピークの半分以下
「40代は動きにくい」という体感そのものは、数字のうえでも当たっています。減っているのは事実です。
- ただし、40代前半と後半でほとんど落ちない
40〜44歳が5.9%、45〜49歳が5.8%。40歳を越えたところで崖のように落ちるわけではなく、すでに30代後半から緩やかに下っている坂の続きです。「40歳が境目」という区切りは、数字の中には見当たりません。
言い方を変えます。40〜44歳の5.9%は、だいたい17人に1人。あなたの職場の同世代を17人思い浮かべて、そのうち1人が去年よそから入ってきた、という密度です。少ないと感じるかもしれませんが、ゼロとはずいぶん違います。
40代の転職で、給料は上がるのか下がるのか
動けるかどうかの次は、動いて損をしないかどうかです。これも同じ調査に載っています。転職して入職した人に、前の職場と比べて賃金がどうなったかを聞いた結果です。

出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査 結果の概要」表6(男女計)。転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてみたもの。不詳を含むため3つを足しても100になりません
読みどころは3つです。
- 40代はまだ「増えるほうが多い」年代
40〜44歳は増加45.9%に対して減少29.0%。差し引きプラス16.9ポイントです。45〜49歳はさらに良くてプラス22.6ポイント。30代とほとんど変わりません。
- それでも、1割以上下がる人が21.2%いる
40〜44歳の減少29.0%のうち、1割以上減った人が21.2%を占めます。5人に1人は、はっきり下がっているということです。上がる可能性のほうが高い、という程度の話であって、上がると決まっているわけではありません。
- 反転するのは55歳から
55〜59歳になると増加27.4%・減少36.6%で、初めて減少が上回ります。60〜64歳では差し引きマイナス47.3ポイント。賃金の面で条件が悪くなるのは、40代ではなく50代の後半からというのが数字の形です。
アパレル業界そのものは、人が出ていっている
ここまでは全業種の話でした。業界の側の事情も見ておきます。同じ調査に産業別の数字があり、アパレルにいちばん近い区分が「卸売業,小売業」です。
| 区分 | 入職率 | 転職入職率 | 離職率 | 入職超過率 |
|---|---|---|---|---|
| 産業計(計) | 14.8 | 9.7 | 14.2 | +0.6 |
| 卸売業,小売業(計) | 14.7 | 9.4 | 15.1 | −0.4 |
| 産業計(一般労働者) | 11.8 | 8.3 | 11.5 | +0.3 |
| 卸売業,小売業(一般労働者) | 10.3 | 6.9 | 10.7 | −0.4 |
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出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査 結果の概要」付属統計表2-2(令和6年・単位%/入職超過率はポイント)
入職超過率というのは、入ってきた人から出ていった人を引いた差です。卸売業,小売業はマイナス0.4。入ってくるより出ていく人のほうが多い業界ということになります。産業計はプラス0.6なので、方向が逆です。
これは、あなたにとって悪い話ばかりではありません。人が抜けているということは、店を回せる人がその分だけ足りないということでもあります。10年以上店頭に立ってきた40代の経験は、業界の外から見れば替えの利かないものです。
40代の勝ち筋を、3つのうち1つに決める
法律のうえでは応募できる。人数のうえでもゼロではない。となると、次に決めるのはどこへ動くかです。40代のアパレル経験者が取れる道は、大きく3つに分かれます。まず自分がどれかを絞り込んでください。
あてはまるものにチェックを入れてください
- いまも接客そのものは嫌いではない
- 店長・エリアマネージャーなど、人と数字を管理した経験がある
- 予算・在庫・人員を自分の裁量で動かしたことがある
- 土日祝に休めないことが、家庭の事情で厳しくなってきた
- 立ち仕事が体にこたえるようになった
→ 上2つが中心なら「店頭を続ける」、真ん中2つがあるなら「本社側へ寄る」、下2つが決め手なら「業界の外へ」が出発点です。
店頭を続けて、会社を替える
最短- 経験がそのまま条件になる
- 経験者採用なので年齢制限を付けられない
- 働き方(土日・立ち仕事)は変わらない
本社側の職種へ寄る
本命- 店頭で見てきたものが強みになる
- 働き方が変わる余地がある
- 店頭より枠が少なく、時間がかかる
3つめのルートC「業界の外へ出る」も当然あります。ただ、40代で業界も職種も同時に変えると、経験を条件にした求人に応募できなくなるぶん、選べる枠が一気に狭くなります。前の章の三号イを思い出してください。経験を問わない求人は、年齢制限を付けられる側の求人です。順番としては、まずAかBを検討してから考えるほうが安全です。
AかBのどちらかに決まったなら、その時点でいちど求人票の実物を見ておくほうが早いです。頭の中だけで比べても、条件の相場が分からないまま堂々巡りになります。
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店頭の経験がそのまま材料になるのは、商品部(MD・バイヤー)、EC、VMD、販売企画、店舗開発、生産管理といったあたりです。どれも「店で何が売れて何が残ったか」を体で知っている人が有利な仕事です。ただし会社によって呼び名も職務範囲もかなり違うので、求人票の職種名ではなく仕事内容の記述のほうを読んでください。この記事では、どの会社にどの枠があるかまでは確認できていないため、具体的な社名は挙げていません。
求人票の年齢表記を、3つに見分ける
ここまで分かったうえで求人票を見ると、年齢に関する表記が3種類に分かれて見えるようになります。この見分けができると、応募する前にあきらめる回数が減ります。
- 「経験不問・35歳まで」と書いてある
三号イの育成枠です。あなたの経験は評価されない枠なので、そもそも狙う場所ではありません。ここを見て落ち込む必要はありません。
- 「販売経験◯年以上」と書いてあり、年齢の記載がない
経験者採用です。ここが本命。年齢の上限を書けない求人なので、40代でも応募の土俵には乗っています。
- 「◯歳以下(定年◯歳のため)」と書いてある
一号の定年による制限です。これは合法で、理由も明示されています。定年年齢を確認して、自分が下回っていれば問題ありません。
これは判断を保留してください。違法ではありませんが、実際の年齢構成は求人票からは読めません。次の章のやり方で、在籍している人の声を先に見ておくほうが確実です。
確かめ方は2つあります
ここから先は、記事を読んでいても分かりません。実際の求人票と、実際に働いている人の話を見に行く必要があります。方向が違う2つを、順番に使うのが効率的です。
1. 在籍している人が、いくらもらっているかを見る
会社ごとの実額は、公的統計には出てきません。在籍者・元在籍者が書いた口コミを集めているサービスを使うのが早道です。気になる会社の年収の書き込みを、自分のいまの額と並べてみてください。
転職会議
現社員や元社員が投稿した、企業の評判・年収・面接対策の口コミを見られるサービスです。求人票の「想定年収」ではなく、実際に在籍している人が書いた額を確認できます。
口コミを見てみる 会員登録は無料2. 経験者向けの求人票が、いま何と書いてあるかを見る
そして、前の章の「2番目のパターン」の求人が実際にどれくらいあるのかを見ます。アパレル・ファッションに特化した人材紹介を使うと、店頭の経験を前提にした求人だけをまとめて見られます。
iDA
アパレル・ファッション業界に特化した人材紹介サービスです。業界を絞ってあるぶん、店頭の経験をそのまま条件として扱う求人が集まります。登録して求人票の給与レンジを見るところまでは、応募と切り離して進められます。
iDAに無料で登録する 登録は無料 / 最新の条件は公式ページでご確認ください在職中に求人票を見ておくと、いまの会社の条件が相場より上なのか下なのかが初めて分かります。動かないという判断も、比べたうえでの判断なら根拠のあるものになります。
まとめ
- 経験を条件にした求人に、年齢の上限は付けられない
年齢制限が許されるのは4つの場面だけで、いちばん多い「35歳まで」の枠は、条文上経験を問わないことが条件になっています。
- 40代で動いている人は、20代の半分以下だがゼロではない
40〜44歳の男性(フルタイム)の転職入職率は5.9%。およそ17人に1人です。40歳で崖のように落ちるわけでもありません。
- 賃金は、まだ増えるほうが多い年代
40〜44歳は増加45.9%・減少29.0%。ただし1割以上減る人も21.2%います。条件が悪くなるのは50代後半からです。
