腕時計が遅れる・進むときの切り分け|公式の基準は3つあって、1日の誤差では判定できない

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その遅れ、まだ故障じゃない

※この記事で紹介する「ShockMania」は、当サイト運営者が運営するG-SHOCK買取の専門サイトです。筆者は元買取査定員・古物商で、その経験に基づいて書いています。精度の数値はすべてメーカー公式の取扱説明書を開いて確認しました(確認日:2026年10月9日)。

CONCLUSION

時計が遅れる・進むと感じたら、修理に出す前に1週間測る。1日の誤差では、壊れているかどうかは判定できません。

セイコーもシチズンも、公式の説明書に「1日だけで判断するな」と書いています。測らずに持ち込むと、正常な個体に調整費を払うことになります。元買取査定員が、公式の数値だけを使って切り分けの手順をまとめました。

まず自分の時計がどのタイプか見る

その「遅れ」、たぶんまだ故障ではありません

腕時計が1日に10秒ずれていたとします。これは異常でしょうか。答えは「時計の種類による」で、しかも同じメーカーの中ですら基準が3つあるというのが実際のところです。

腕時計の日差の基準3つを1本の数直線に重ねた図。グランドセイコー規格は−3.0〜+5.0秒、携帯時の目安は−1〜+10秒、セイコー6R31/6R38/6R35は−15〜+25秒
日差の基準は1つではありません。工場で測った値と、腕につけたときの目安は別の数字です。

図のとおり、グランドセイコーの工場検定は −3.0〜+5.0秒、同じグランドセイコーでも腕につけたときの目安は −1〜+10秒、セイコーの6R系にいたっては −15〜+25秒 が公式の仕様です。

つまり1日10秒進む時計は、6R系なら完全に正常、グランドセイコーでも目安の範囲内です。ネットで「日差5秒以内が普通」という記述を見て不安になった人は、まずこの図を見てください。それは工場検定の数字で、あなたの腕の上の数字ではありません。

補足:クオーツ(電池・ソーラー)は日差ではなく「月差」で表します。セイコーの電波時計7B52の仕様は、電波を受信しない状態で平均月差±15秒以内(気温5〜35℃で腕に着けた場合)。1か月で15秒なので、1日あたりなら0.5秒です。クオーツが1日で何秒もずれているなら、それは精度ではなく別の原因です。

まず、自分の時計がどれか決める

切り分けは、動力の種類から始まります。ここを間違えると、以降の手順が全部ずれます。

種類見分け方精度の単位「遅れる」の主な原因
機械式(自動巻・手巻)秒針がなめらかに流れる。電池が入っていない日差巻き上げ不足/温度/姿勢/油切れ/磁気
クオーツ(電池式)秒針が1秒ずつカチッと進む月差電池の消耗/磁気/温度
クオーツ(ソーラー)1秒ずつ進む。文字板に「SOLAR」等の表記月差充電不足/油切れ/磁気
電波・GPS自動で時刻が合う機能つき月差(受信しない間)受信失敗/充電不足

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見分けは秒針が確実です。なめらかに流れていれば機械式、1秒ずつ刻んでいればクオーツ。これだけで判断できます。

クオーツなら、秒針の「飛び方」を先に見る

クオーツで真っ先に確認するのは、精度ではなく秒針の動き方です。セイコーの説明書には、こう書かれています。

秒針が2秒ごと、または5秒ごとにまとめて動くなら、それは「エネルギー切れ予告機能」です。故障ではありません。ソーラーなら光に当てて充電し、1秒ごとの運針に戻るまで待ちます。セイコーの説明書は、毎日身につけているのにこれが起きる場合、時計が衣類の袖の中に隠れて十分な光が当たっていない可能性を挙げています。スーツで働く人には、かなり心当たりのある話だと思います。

△
VERDICT 2秒運針・5秒運針なら、修理に出す必要はありません

充電または電池交換で直ります。先に充電を試してください。なお電池交換は、シチズン・セイコーとも裏ぶたを自分で開けないよう案内しています(ゴミの侵入と防水性能の低下のため)。

補足:買ったばかりなのに電池がすぐ切れた、という場合も故障とは限りません。シチズンは公式に、購入時に入っている電池は動作確認用の「モニター用電池」で、工場出荷時に組み込まれるため購入時点ですでに消耗していると説明しています。そのため取扱説明書の持続時間より早く寿命に達することがあります。

機械式の人がやること:1週間の精度テスト

ここからが本題です。機械式は、1日の誤差を見ても何も分かりません。

セイコーの説明書にはこうあります。「1日のみの誤差で判断せず1週間程度の誤差で判断するようにしてください」。シチズンも別々に、「1週間から10日間ほどの精度のずれの平均を確認しましょう」と書いています。2社が同じことを言っているので、これは製品差ではなく機械式という仕組みの話です。

手順はこうです。

  1. ぜんまいをしっかり巻いてから始める

    精度はぜんまいの巻き上げ量で変わります。公式の説明では、いっぱいに巻かれた状態は精度が安定し、ほどけてくると不安定になります。止まっている状態からなら、りゅうずを10〜20回転。1秒にりゅうず1〜2回転くらいのゆっくりした速さで回します。

  2. 時報で時刻をきっちり合わせ、その時刻を記録する

    合わせた日時と、何秒に合わせたかをメモします。スマホの時計表示でかまいません。機械式は秒針を止められる機種が多いので、12時の位置でりゅうずを引いて止め、時報と同時に押し込みます。

  3. ふだんどおり1週間使う

    ここが重要で、テストのために特別な使い方をしないでください。いつもの生活のままで測らないと、あなたの使い方での精度が分かりません。

  4. 7日後の同じ時刻に、ずれた秒数を数える

    たとえば7日で+49秒進んでいたら、49÷7=1日あたり+7秒。これがあなたの時計の日差です。

  5. 説明書の「精度」欄と比べる

    機種ごとに数字が違うので、必ず自分の機種の仕様を見ます。6R系なら+25〜−15秒、グランドセイコーなら携帯時の目安が−1〜+10秒です。

注意:巻き上げるときに時計を手で持って振る、手のひらにぶつけるのはやめてください。シチズンが公式に、時計を落としたり内部の部品が破損する原因として挙げています。自動巻は腕につけて腕の動きで巻くのが正しい方法です。

デスクワークの人は、そもそも巻き上がっていない

自動巻なのに遅れる、という相談でいちばん多い原因がこれです。

シチズンは公式に、腕に着用していても巻き上がりにくい状況として「デスクワーク」と「傘をさしているとき」を具体的に挙げています。1日中パソコンの前にいる人は、腕がほとんど動きません。ぜんまいがほどけかけた状態で動き続けるので、精度が落ちます。

心当たりがあるなら、テストの前に朝にりゅうずで手巻きを足す習慣をつけ、それから測ってください。それだけで範囲に収まることがあります。

どうしても巻き上げが足りない、複数本を回したいという場合に、ぜんまいを巻いておく機械があります。

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ただし、これは万能ではありません。シチズンは「使わないときは時計を休ませる」ことを公式に勧めています。理由は、巻き上げたぜんまいが部品に力を伝え続けるため、歯車が摩耗し潤滑油も劣化するからです。毎日使う1本の巻き上げを補う道具であって、コレクションを常時回し続けるための道具ではない、と考えておくのが無難です。

測った数字が範囲を超えていたら、原因は4つ

1週間の平均が仕様の範囲を外れた。ここで初めて「何かある」と判断します。公式が挙げている要因は、大きく4つです。

要因1巻き上げ量
要因2温度
要因3姿勢(向き)
要因4磁気・油切れ

温度:高いと遅れ、低いと進む

セイコーとシチズンが両方とも同じ説明をしています。機械式の精度を作る部品は金属なので、温度で伸び縮みします。高温下では遅れがちに、低温下では進みがちになります。

真夏の車内に置いた、といった心当たりがあるなら、まず常温に戻して測り直してください。セイコーは暑いところや寒いところに放置した場合の対処として「常温に戻れば元の精度に戻ります」と明記しています。

姿勢:置き方で変わる。しかも補正に使える

機械式は重力の影響を受けるので、水平に置いたときと、12時側を上にして立てたときで進み・遅れが変わります。

これは欠点のように見えて、実は使えます。グランドセイコーの公式ページは「時計を腕に着用しないときは、置きかたによって着用中に生じた精度の誤差をある程度補正することもできます」と書いています。日中に進む個体なら、夜は遅れる向きで置く。自分の個体に合う置き方を探してください、という案内です。

なお、シチズンによればぜんまいがしっかり巻き上げられていると、向きによる誤差は小さくなります。巻き上げが足りていないと、姿勢差も大きく出るということです。

磁気:これは自力では直りません

急に大きく狂い出したなら、磁気を疑う段階です。シチズンは機械式について、一度磁気の影響を受けると磁気から遠ざけても機械内部に影響が残り、この場合は修理が必要と説明しています。磁気を発するものからは最低でも5cm以上離すよう案内されています。スマートフォン、ノートパソコン、ヘッドフォン、ハンドバッグの留め具。どれも毎日そばにあるものです。

注意:磁気帯びは保証の対象外になります。セイコーは、磁気を帯びたことが原因で携帯使用時の精度めやす範囲を超えている場合、磁気の除去および精度の再調整作業は保証期間にかかわらず有料と明記しています。グランドセイコーも同様に、磁気を帯びさせてしまうなど使用者の不注意による精度の狂いは保証期間内でも有料対応としています。

油切れ:年数で見当がつく

買ってから、あるいは前回のオーバーホールから何年経っているか。セイコーは2〜3年に1度の分解掃除を、シチズンも毎日同じ機械式を使う場合は2〜3年に1度のメンテナンスを勧めています。

セイコーの説明では、使用状況によっては機械の保油状態が損なわれたり、油の汚れで部品が摩耗し、時刻の進み・遅れが大きくなったり、止まりにいたることがあります。5年以上何もしていない機械式が範囲を外れているなら、まずここを疑うのが順当です。

ソーラーも無関係ではありません。シチズンは、長期間使うと歯車の汚れや油切れで電流消費が大きくなり充電の持続時間が短くなると説明しています。「前より充電の持ちが悪い」は、機械側のサインであることがあります。

修理に出すか、売るか。分かれ目は「時計の値段」

原因の見当がついたら、最後の判断です。

○
VERDICT 範囲内だった → そのまま使ってください

何もする必要はありません。巻き上げを安定させ、置き場所の温度に気をつければ、それ以上は求めても変わりません。

△
VERDICT 範囲外 かつ 思い入れがある → 調整・オーバーホールへ

グランドセイコーは、1週間から10日間使った平均が目安範囲を超える場合は調整を勧めています。ただし公式は「ご使用期間が長く部品が経年劣化している場合には、ご希望の精度に調整できないこともあります」とも書いています。年数が経った個体に完璧を期待しないこと。

×
VERDICT 範囲外 かつ 修理費が時計の価値を超える → 直さない

量販の実用時計で油切れが進んでいる場合、分解掃除の費用が買い替え価格に近づきます。ここは感情ではなく金額で決めるところです。

査定の現場でよく見たのが、「調整に出したけれど直りきらなかった」個体です。費用をかけたあとで手放すので、受け取る金額に対して持ち出しが大きくなる。順番を逆にして、先に今の買取価格を知ってから修理するかどうか決めた人のほうが、結果的に損をしていませんでした。

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今日からやること

  1. 秒針の動きを見る

    なめらかなら機械式、1秒ずつならクオーツ。2秒・5秒おきにまとめて動くなら、充電か電池交換で解決します。

  2. 機械式なら、ぜんまいを巻いて時刻を合わせ、日付をメモする

    今日の作業はここまでです。あとは1週間ふだんどおり使うだけ。

  3. 7日後に、ずれた秒数を7で割る

    出た数字を説明書の「精度」欄と比べます。範囲内なら、あなたの時計は正常です。

補足:この記事の数値は、セイコー・グランドセイコー・シチズンの公式取扱説明書およびサポートページで確認したものです(確認日 2026年10月9日)。カシオの精度仕様は公式サイトにアクセスできず確認できなかったため、本記事には記載していません。お手元の機種の正確な仕様は、必ずその機種の説明書でご確認ください。

よくある質問

機械式時計の日差は、何秒以内なら正常ですか?
機種によって違うので、一律の数字はありません。セイコーの6R31・6R38・6R35は日差+25秒〜−15秒、グランドセイコーの携帯使用時の目安は一日あたり−1〜+10秒と、公式に定められています。お手元の機種の説明書にある「精度」欄の数値と比べてください。
1日だけ測って判断してはいけないのはなぜですか?
機械式の精度は、ぜんまいの巻き上げ量・温度・時計の向きによって毎日変化するためです。セイコーは「1日のみの誤差で判断せず1週間程度の誤差で判断するように」、シチズンは「1週間から10日間ほどの精度のずれの平均を確認しましょう」と、それぞれ公式に案内しています。
秒針が2秒ごとに動くのは故障ですか?
故障ではありません。セイコーの説明書によれば、これは「エネルギー切れ予告機能」で、残量が少なくなると働きます。ソーラーなら光を当てて充電し、秒針が1秒ごとに動くまで戻してください。毎日身につけていてこれが起きる場合は、時計が袖に隠れて光が当たっていない可能性があります。
磁気帯びの修理は保証で直りますか?
有料です。セイコーは、磁気を帯びたことが原因で携帯使用時の精度めやす範囲を超えている場合、磁気の除去および精度の再調整作業は保証期間にかかわらず有料としています。グランドセイコーも、磁気を帯びさせるなど使用者の不注意による精度の狂いは保証期間内でも有料対応と明記しています。

出典:セイコー「メカニカルウオッチの精度について」/セイコー 6R31/6R35/6R38 製品仕様/グランドセイコー規格について/グランドセイコー「機械式時計の精度についてご注意事項」/シチズン「機械式時計の基礎知識」/シチズン「電池交換」(いずれも確認日 2026年10月9日)

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