※この記事の数字は、厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」の公式ページと、そこで配布されている図表データ(Excel)を筆者が実際に開いて読み取ったものです。転職サイトのまとめや他人のブログは使っていません。筆者は新卒で入ったアパレル会社を8ヶ月で辞めた元販売員で、その後は買取査定員を経て、いまはブランド古着買取「オーラリアン」とG-SHOCK買取「ShockMania」を運営する古物商です。人事の専門家ではないため、公的な統計で言えるところと、筆者自身の経験にすぎないところは本文で分けて書きます。情報の時点は2026年9月です。
1年目で辞めるかどうかは、期間ではなく辞める理由の中身で決まります。
厚生労働省の調査を勤続期間で切ると、はっきりした差が出ます。1年未満で辞めた人の理由は「人間関係」「仕事が合わない」に偏り、1年を越えると「賃金」「将来性」に入れ替わります。同じ退職でも、面接で扱いやすい理由とそうでない理由が分かれるということです。あなたの理由がどちら側かを先に見てください。
理由が入れ替わる境目を見る「1年は我慢しろ」にも「すぐ動け」にも根拠がない
入社して半年から10ヶ月あたり。辞めたい気持ちは固まっているのに動けない、という相談がいちばん多い時期です。止めているのはたいてい、この一言です。
「1年も続かなかったやつ、と思われる」
ここで周りに聞くと、返ってくる答えは二つに割れます。「最低1年は我慢しろ」と「合わないなら早く動け」。どちらも言い切るわりに、根拠を出してくれません。年数の話をしているのに、年数のデータが出てこない。
なので、年数のデータを見にいきました。厚生労働省が5年に一度おこなっている若年者雇用実態調査です。15〜34歳の働いている人に直接聞いた調査で、その中に「初めて勤めた会社を、勤続どれくらいで、どんな理由でやめたか」という表があります。
勤続1年のあたりで、辞めた理由が入れ替わる
先に結論から出します。下のグラフは、初めて勤めた会社をやめた人が挙げた理由を、勤続期間ごとに並べたものです。

赤とオレンジの線が人にまつわる理由、青の線が条件にまつわる理由です。勤続1〜2年のあたりで上下が入れ替わっているのが見えると思います。
数字で並べるとこうなります。
| やめた主な理由 | 3か月未満 | 3〜6か月 | 6か月〜1年 | 1〜2年 | 2〜3年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人間関係がよくなかった | 52.3 | 40.1 | 37.4 | 25.1 | 23.1 |
| 仕事が自分に合わない | 42.1 | 29.6 | 34.6 | 20.7 | 18.8 |
| 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった | 40.8 | 32.5 | 32.4 | 29.1 | 30.3 |
| 賃金の条件がよくなかった | 22.4 | 11.1 | 15.2 | 22.3 | 30.0 |
| 会社に将来性がない | 5.8 | 4.5 | 10.1 | 10.1 | 14.6 |
| ノルマや責任が重すぎた | 12.5 | 13.3 | 12.7 | 16.0 | 14.3 |
| 健康上の理由 | 16.1 | 13.8 | 12.9 | 7.5 | 6.7 |
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出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」表17(同ページで配布されている図表データを2026年9月に取得して読み取り)
読みどころは3つです。
- 人間関係は、早く辞めた人ほど高い
3か月未満で辞めた人の52.3%が挙げています。6か月〜1年でも37.4%。ところが2〜3年になると23.1%まで下がります。
- 賃金は、長くいた人ほど高い
3〜6か月では11.1%しかないのに、2〜3年では30.0%。この表のなかで最も大きく伸びる理由です。
- 労働時間・休日は、どの期間でも下がらない
3か月未満の40.8%から2〜3年の30.3%まで、ずっと高いままです。在籍を延ばしても解決しない種類の不満だと読めます。
この差が意味するのは「評価」ではなく「言葉にしやすさ」
ここで誤解しないでほしいのは、1年未満で辞めた人の理由が軽い、という話ではないことです。人間関係で心身を削られるのは、賃金が低いことより深刻な場合がいくらでもあります。筆者自身、8ヶ月で辞めた理由の半分は職場の空気でした。
問題は別のところにあります。その理由が、面接の場で検証できない形をしているということです。
人にまつわる理由
1年未満に多い- 人間関係/仕事が合わない
- 相手からは事実を確かめようがない
- 「うちでも同じでは」と思われやすい
- 本人にとっては最も切実
条件にまつわる理由
1年以降に多い- 賃金/労働時間/将来性
- 金額・時間・制度で示せる
- 会社を替えれば変わると分かる
- 説明が短くて済む
採用する側は、あなたの前職を見ていません。見られるのは「同じことがうちでも起きないか」の1点です。条件の話であれば「うちは違います」と相手が確かめられる。人の話だと確かめられない。それだけの違いです。
つまり、勤続1年という線は評価が変わる線ではなく、言葉にできる材料が増える線ということになります。だとすれば、やるべきことは「1年まで耐える」ではありません。いまの不満を、条件の言葉に置き換えられるかどうかを確かめることです。
メーターは「面接で説明したときに、相手が事実として確かめられるか」を筆者の基準で5段階にしたものです。公的な統計ではありません。
自分の理由がどちら側か、先に判定する
紙でもスマホのメモでもいいので、いま辞めたい理由を思いつくまま3つ書き出してください。そのうえで、下を読んでください。
3つ以上あてはまるなら「条件の側」に寄せられます
- 不満を、金額・時間・日数のどれかで言い直せる
- 求人票に載っている項目(給与・休日・残業時間・職種)と突き合わせられる
- 「他社ならこうなっているはず」と具体的に言える
- その不満は、部署が変わっても解消しないと分かっている
- 会社の制度や仕組みが原因だと説明できる
→ 3つ以上なら、勤続1年を待つ理由はありません。材料はもう揃っています。
2つ以下だった人も、書き直せることが多いです。ここが本題です。
「人の理由」を「条件の理由」に置き換える3手
嘘をつくという話ではありません。同じ出来事の、検証できる側面を取り出す作業です。
- 出来事を1つに絞って書き出す
「人間関係が悪い」ではなく、実際に起きたことを1件だけ。「週2回、閉店後に1時間半の反省会があり、その分は記録されていなかった」のように、日付と回数と時間で書きます。
- そこから、制度や仕組みの言葉を拾う
いまの例なら「労働時間の管理」です。人の性格ではなく、会社の運用の話に置き換わります。ここで初めて、相手が確かめられる形になります。
- 次の会社で確認したい項目に言い換える
「残業の申請と記録がどう運用されているかを知りたい」。これは退職理由であると同時に、面接での逆質問にもなります。辞めた理由と志望理由が1本の線でつながります。
3手を通しても条件の言葉に届かない不満が残ることはあります。その場合の判定を出します。
調査でも「健康上の理由」は1年未満で12.9〜16.1%と、1〜3年で辞めた人の6.7〜7.5%と比べて倍近くあります。決して珍しい退職理由ではありません。体調を理由に動くことは、説明としても通ります。
合わないのが職種なのか、業界なのか、働き方なのかで、次に選ぶ求人がまるで変わります。分解しないまま動くと、同じ不満を持ったまま2社目に入ることになります。
同期の動きは、あなたの次の会社を決める材料になりません。辞めること自体は多数派ですが(後述)、それはあなたが何を選ぶかとは無関係です。
辞めること自体は、まったく珍しくない
「1年も続かなかった」を怖がる人が多いので、母数の話も出しておきます。同じ調査には、初めて勤めた会社にいまも勤めているかを聞いた表があります。
出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」表16・表17(2026年9月に取得)
おもしろいのは、この数字が前回・前々回の調査より改善していることです。「今もいる」の割合は平成25年調査が51.8%、平成30年調査が50.9%、そして今回が55.5%。世間で言われるほど、若い人がどんどん辞めるようになっているわけではありません。
一方で、こちらは逆方向に動いています。
若年正社員のうち「今後、転職したいと思っている」人の割合
出典:同調査 表18。男性は27.7%、20〜24歳は35.0%、25〜29歳は33.4%、30〜34歳は26.6%。
つまり実際に辞めた人は減り、辞めたいと思っている人は増えている。迷っている状態そのものが、いまの多数派だということです。あなたが動けないでいることは、性格の問題ではありません。
新卒で入ったアパレルを8ヶ月で辞めるとき、いちばん怖かったのは「8ヶ月」という数字でした。面接で必ず突っ込まれると思っていたからです。実際に聞かれたのは一度だけで、しかも聞かれたのは期間ではなく「何が起きたのか」でした。期間の短さではなく、説明できるかどうかを見られていたのだと、あとから分かりました。
いま何をするかは、3つに分かれる
ここまでの判定をもとに、動き方を分けます。
TYPE A|条件の言葉にできた人
材料は揃っています。次にやるのは辞表ではなく、その条件が他社でいくらになるかを見ることです。順番を逆にすると、比べる相手がいないまま辞めることになります。
賃金や休日の不満は、同じ職種でも会社によって幅があります。自分の経歴だと何が狙えるのかを、辞める前に一度だけ確かめておくと、残るにしても出るにしても判断が変わります。
在職のまま動くメリット
- 収入が途切れないので条件を妥協しなくて済む
- 「離職期間の説明」が不要になる
- 残るという選択肢も残せる
気をつけること
- 面接の時間を作るのが大変
- 決めきれないまま長引くことがある
- 社内に伝えるタイミングを間違えない
TYPE B|体調に影響が出ている人
この記事の判定は○(待たなくていい)です。勤続1年という線は、統計を読むかぎり評価の線ではありません。理由の説明しやすさが変わるだけです。説明のしやすさのために健康を削るのは、順番が逆です。
TYPE C|まだ言葉にできていない人
いちばん多いのがここです。やることは1つだけ、1週間、出来事を日付つきで記録すること。感情は書かず、事実だけを書きます。何時に何が起きたか。それが何回目か。
1週間ぶんたまると、たいてい繰り返しているパターンが見えます。見えたらそれが「条件」です。前の章の3手に戻ってください。
記録するときに書く項目(そのまま使えます)
日付/曜日/起きた時刻/出来事(事実だけ)/かかった時間/同じことが起きた回数/それが記録や申請に反映されたか。この7項目だけで十分です。感想を書くと読み返したときに判断が鈍るので、事実と分けて別の行にしてください。
自分の持ち駒を、辞める前に一度だけ確かめる
TYPE AとTYPE Cの人に共通してやってほしいのは、いまの経歴でどんな選択肢があるかを見ておくことです。求人を眺めるのではなく、自分の条件を入れて結果を見るほうが早いです。
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1年未満で辞めると、次の面接で必ず突っ込まれますか?
「人間関係で辞めた」と正直に言ってはいけませんか?
1年未満で辞めた人の転職成功率はどれくらいですか?
辞めてから探すのと、在職のまま探すのはどちらがいいですか?
まとめ
勤続1年という線は、評価が変わる線ではなく、理由を言葉にしやすくなる線でした。1年未満で辞めた人の理由は人間関係と仕事の相性に偏り、1年を越えると賃金と将来性に入れ替わる。統計が示しているのはそれだけです。
だから、待つべきなのは「1年」ではありません。自分の不満を、条件の言葉に置き換えられるまでです。それは1週間で終わることもあります。
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