筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の件数は、すべてアパレル専門の派遣求人サイトを実際に開いて、職種ごとに数えたものです。派遣会社から提供を受けた数字は使っていません。情報の時点は2026年9月15日です。
「アパレル EC 派遣」で求人が出てこないのは、求人サイトに「EC」という職種が存在しないからです。そしてEC側の求人72件のうち50件は倉庫でした。
アパレル専門の派遣サイトで4,756件を職種ごとに数えました。販売が4,425件。EC側に当たる職種はぜんぶ足しても72件で、その約7割が「軽作業・仕分け作業」=物流倉庫です。まず、探すときに打ち込む言葉を変えてください。
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求人サイトに「EC」という職種名は無い
「アパレル EC 派遣」で検索して、ピンとくる求人が出てこない。これは検索の仕方が下手なわけではありません。そもそも求人サイト側に「EC」という入れ物が用意されていないのが原因です。
アパレル・ファッションに特化した派遣求人サイト「派遣なび」(株式会社シーエーセールススタッフ)の求人検索を開くと、職種の選択肢は26個あります。その26個を全部書き出すと、こうなります。
職種の選択肢26個を全部見る
販売(ファッション・アパレル・コスメ)/調理師・調理補助/接客・ショールーム・カウンター窓口/販売(家電・携帯・その他)/食品販売(デパ地下・デリ)/レジ・デモンストレーター/受付/テレマーケティング・コールセンター/データ入力・キーパンチャー/ホテル・旅行/デザイナー(ファッション・アパレル)/ブライダル・セレモニースタッフ/経理(経理事務)・英文経理/秘書・セクレタリー/人事・総務/その他オフィスワーク・事務/飲食店スタッフ(キッチン・ホール)/翻訳・通訳/アパレル事務/営業・企画営業・ラウンダー/営業アシスタント/ヘルパー・介護士・介護福祉士/軽作業・仕分け作業/講師・教師・インストラクター・非常勤講師/家事代行・清掃員(ハウスクリーニング)/その他
「EC」も「Eコマース」も「通販」も「ネットショップ」もありません。読者が使っている言葉と、求人サイトが使っている言葉がずれているということです。ずれたまま検索窓に打ち込んでも、当たりません。
出典:株式会社シーエーセールススタッフ「派遣なび」の求人検索結果を職種ごとに集計(2026年9月15日に確認)
4,756件を職種で数えた結果
職種の選択肢をひとつずつ選んで、出てくる件数をそのまま数えました。結果がこれです。
| 職種(サイトの表記) | 件数 | 全体比 | EC側か |
|---|---|---|---|
| 販売(ファッション・アパレル・コスメ) | 4,425 | 93.0% | 店頭 |
| 軽作業・仕分け作業 | 50 | 1.1% | EC(倉庫) |
| その他オフィスワーク・事務 | 8 | 0.2% | EC(事務) |
| テレマーケティング・コールセンター | 6 | 0.1% | EC(CS) |
| 営業・企画営業・ラウンダー | 3 | 0.1% | EC(営業) |
| アパレル事務 | 2 | 0.0% | EC(事務) |
| データ入力・キーパンチャー | 1 | 0.0% | EC(事務) |
| 営業アシスタント | 1 | 0.0% | EC(営業) |
| デザイナー(ファッション・アパレル) | 1 | 0.0% | EC(制作) |
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EC側に当たる8職種を足すと72件。全体の1.5%です。そして72件の内訳を見ると、50件が「軽作業・仕分け作業」でした。EC求人の69.4%、つまり約7割です。

出典:「派遣なび」求人検索を職種ごとに集計(2026年9月15日に確認)
ECの仕事は、この4つの職種名に散っている
「EC」という言葉でひとくくりにしている仕事は、現場では4つに分かれています。求人サイトではそれぞれ別の職種名で載っているので、打ち込む言葉を4つに分けると一気に見つかるようになります。
- 倉庫(ピッキング・検品・梱包)→「軽作業・仕分け作業」で探す
注文が入った服を棚から取り、検品して、畳んで、箱に入れる仕事です。派遣のEC求人ではここがいちばん多く、50件ありました。服には毎日触りますが、接客はしません。
- 受注・問い合わせ対応(CS)→「テレマーケティング・コールセンター」で探す
サイズ交換、返品、配送の問い合わせに答える仕事です。6件。店頭で同じ質問に答えてきた経験がそのまま効く職種です。
- 商品登録・受注処理 →「その他オフィスワーク・事務」「アパレル事務」「データ入力」で探す
商品の採寸、写真の差し替え、説明文の入力、受注データの処理。3つ合わせて11件。パソコンでの作業が中心になります。
- サイト制作・モール担当 →「デザイナー(ファッション・アパレル)」「営業・企画営業」で探す
バナーやページを作る、楽天やZOZOなどのモールを担当する仕事です。合わせて5件。ここは実務経験を求められることが多く、いちばん狭い入口です。
メーターは求人の数の多さ、つまり入口の広さです。仕事の良し悪しではありません。倉庫がいちばん広く開いていて、制作がいちばん狭い、ということだけを示しています。
「EC」で探し続けるか、職種名に変えるか
職種の選択肢に存在しない言葉なので、フリーワード欄に打ち込んでも、求人票の本文にたまたま「EC」と書いてあるものしか拾えません。取りこぼしのほうが大きくなります。
「軽作業・仕分け作業」「テレマーケティング・コールセンター」「その他オフィスワーク・事務」「アパレル事務」。この4つをひとつずつ選んで見れば、いま出ているEC側の求人はほぼ拾えます。
在宅・テレワーク・リモートOKで絞ると6件しかありませんでした。4,756件のうちの6件です。条件に入れた瞬間に選択肢がほぼ消えるので、まず通勤前提で探して、在宅は後から相談するほうが現実的です。
方針が決まったら、次に決めるのは「そもそも派遣を続けるのか」です。同じアパレルの経験でも、派遣で職種を移るのと、正社員で移るのとでは、行き先も年収も変わります。
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在宅6件、無期雇用派遣1件。期待しすぎないほうがいい条件
職種ではなく「特徴」で絞ったときの件数も数えました。ここは希望と現実が大きくずれやすいところです。
| 絞り込みの条件 | 件数 | 全体4,756件に対して |
|---|---|---|
| 未経験歓迎 | 1,644 | 34.6% |
| 電話対応なし | 125 | 2.6% |
| 紹介予定派遣 | 43 | 0.9% |
| Web関連のスキルを活かす | 18 | 0.4% |
| 在宅・テレワーク・リモートOK | 6 | 0.1% |
| IT・通信・Web関連の企業 | 6 | 0.1% |
| 無期雇用派遣 | 1 | 0.0% |
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出典:「派遣なび」求人検索の特徴での絞り込み結果(2026年9月15日に確認)
読み取れることは2つです。ひとつは「未経験歓迎」は珍しくないということ。1,644件、3分の1以上にその印が付いています。もうひとつは、在宅と無期雇用は、ほぼ無いということです。
店頭からECに移ると、時給の決まり方そのものが変わる
ここは見落とされがちですが、派遣の賃金には職種ごとの下限という考え方があります。
派遣で働く人の待遇の決め方には2つの方式があり、そのうち「労使協定方式」を採る場合、派遣会社は同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額を下回らないように賃金を決めることになっています。この「一般賃金」の額は、厚生労働省が毎年、職業安定局長通達というかたちで職種ごとに示します。
つまり、販売から倉庫に移る、あるいは事務に移るというのは、あなたに適用される賃金テーブルの行が変わるということです。同じ会社の同じ支店に登録していても、職種が変われば基準そのものが別の行になります。「ECに移ったら時給が下がった/上がった」が起きるのは、これが理由のひとつです。
もうひとつ、時期の話があります。厚生労働省は2026年10月1日から派遣労働者の同一労働同一賃金が改正されると公表しています。改正点のひとつが、雇い入れるときと派遣するときの明示事項に「待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨」が加わることです。
これは実務的に大きな話です。「なぜこの時給なのか、説明してもらえます」と会社の側から知らせる義務ができるということだからです。職種を移るかどうかを相談する場面では、これを使わない手はありません。
出典:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」(2026年9月15日に確認)
応募する前に、求人票でこの5つを確認する
2つ以上「分からない」があるなら、応募前にコーディネーターに聞く
- 勤務先は店舗か、オフィスか、倉庫か(住所が工業団地・物流センターなら倉庫)
- 立ち仕事か座り仕事か(倉庫は座れません。店頭から移る動機が「立ち仕事がつらい」なら要確認)
- その職種で契約したあと、他の業務に回されることがあるか
- 労使協定方式か、派遣先均等・均衡方式か
- 契約の更新がどのくらいの周期か、繁忙期だけの募集ではないか
→ とくに1つ目。「EC」と書かれた求人の実体が倉庫であることは珍しくありません。勤務地の住所を地図で見れば、たいてい判別できます。
登録から就業までの流れ
- 職種を4つに分けて、求人を数える
「EC」で検索せず、軽作業・仕分け/コールセンター/その他オフィスワーク・事務/アパレル事務の4つを、ひとつずつ選んで見ます。ここで「自分の希望に合う求人が何件あるのか」が分かります。
- ウェブで登録し、面談の日を決める
派遣は、登録してからでないと出てこない求人があります。サイトに出ている件数は、動かせる求人の全部ではありません。
- 面談で「職種を移りたい」とはっきり伝える
アパレルの経験があると、コーディネーターは自動的に店頭の求人を出してきます。これは悪意ではなく、それがいちばん数が多いからです。移りたいなら自分から言う必要があります。
- 時給の根拠を聞く
「この職種だとどの区分になりますか」「10月1日以降の説明義務の話も含めて教えてください」。ここで具体的な答えが返ってくるかどうかは、会社を見極める材料にもなります。
- 職場見学があれば必ず行く
倉庫は、写真と実物の印象が最も食い違う職場です。空調、動線、立ちっぱなしの時間。行けば1回で分かります。
派遣でECに移ることの、いい面と悪い面
向いている人
- 接客そのものが負担になってきた
- 服に関わる仕事は続けたい
- シフトの希望が通りにくい生活をしている
- まず経験を作ってから正社員を狙いたい
向いていない人
- 立ち仕事そのものから離れたい(倉庫は立ち仕事です)
- 在宅で働くことが第一条件(6件しかありません)
- いますぐ安定した雇用がほしい(無期雇用は1件でした)
- サイト制作やモール運営を未経験から始めたい(5件・経験者向け)
正直に言うと、派遣のEC求人は「接客から離れる」には向いていて、「体を使う仕事から離れる」には向いていません。この2つは似ているようで別物です。自分がどちらから離れたいのかをはっきりさせておくと、求人票の見え方が変わります。
派遣を続けるか、別の道にするか整理する 8つの質問に答えると、向いている進み方を最大3つ出します
販売から倉庫の現場に移った同僚が「服には毎日触ってるのに、誰とも話さない日がある」と言っていました。接客が嫌で移ったはずなのに、今度は静かすぎてきつい、と。仕事の何が好きで何が嫌だったのかは、離れてみないと案外分からないものです。
この記事で確認できなかったこと
- 職種ごとの一般賃金の具体的な金額。厚生労働省の局長通達はPDFで公開されていますが、筆者の環境では中身の数字を正確に読み取れませんでした。仕組みの説明にとどめ、金額は書いていません。
- 他の派遣会社の求人の内訳。今回数えたのは1社分です。他社でも「EC」という職種名を置いていないケースが多いと見ていますが、実際に数えて確かめたわけではありません。
- EC側72件のうち、未経験歓迎が何件か。職種と特徴を組み合わせた集計までは行っていません。
この記事の数え方(同じ手順で自分でも確認できます)
「派遣なび」の求人検索で、職種を1つだけ選んで検索し、表示された件数をそのまま記録しました。特徴(在宅・無期雇用など)も同じく1つだけ選んで数えています。複数を組み合わせた絞り込みは行っていません。すべて2026年9月15日の値です。件数は日々入れ替わるので、同じ手順で数え直すと違う数字になります。
よくある質問
「アパレル EC 派遣」で検索しても求人が出てこないのはなぜですか?
派遣でECの仕事に就くと、どんな仕事をすることが多いですか?
在宅でできるアパレルECの派遣はありますか?
店頭からECに職種を変えると、時給はどうなりますか?
まとめ:言葉を変えれば、求人は見つかる
「アパレル EC 派遣」で出てこないのは、あなたの探し方の問題ではなく、求人サイトに「EC」という入れ物が無いからでした。職種名を4つに置き換えれば、いま出ている求人はほぼ拾えます。
ただし拾った先に待っているものは、正確に知っておいてください。EC側の求人72件のうち50件は倉庫です。接客からは離れられますが、立ち仕事からは離れられません。そこまで分かったうえで選べば、入ってから「話が違う」とはなりません。
