筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。この記事の制度に関する記述は、すべてe-Gov法令検索と厚生労働省の公式ページで確認したものです(確認日 2026年9月9日)。服装についての部分は、公的な基準が存在しないため、販売現場での筆者自身の経験として書いています。制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の公式ページをご確認ください。
アパレル派遣に、派遣先による「面接」はありません。法律で禁じられているからです。あるのは、あなたが自分の判断で行く職場見学。だから服装は「選考で減点されない服」ではなく、その店に立つ人の服で選びます。
派遣会社から「顔合わせに行きましょう」と言われて、スーツか私服かで止まっている方へ。先に制度のほうを片づけます。ここを知らないまま行くと、服装以前に、断ってよかったことまで飲み込んでしまいます。
結局、何を着ればいいか見る出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第26条第6項/厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号)第2の3/厚生労働省「紹介予定派遣とは・・・」(確認日 2026年9月9日)
その「面接」は、法律の上では存在しない
アパレル派遣に登録すると、仕事を紹介されたあとに「顔合わせ」「職場見学」と呼ばれる場が設けられることがあります。行ってみると店長がいて、経歴を聞かれて、結果は後日連絡。どう見ても面接です。
ですが、通常の労働者派遣では、それは公式に禁じられている行為です。法律の条文はこうなっています。
労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。
出典:労働者派遣法 第26条第6項(e-Gov法令検索)(確認日 2026年9月9日)。厚生労働省の解説ページの一部はこの規定を「第26条第7項」として引用していますが、これは改正前の項番号です。現行の条文では第6項にあります。
「派遣労働者を特定することを目的とする行為」という言い方が固いので、厚生労働省の指針が中身を書き下しています。何が特定行為に当たるのかは、こう並んでいます。
- 労働者派遣に先立って面接すること
派遣が始まる前に、派遣先が会って人を見る行為そのものです。
- 派遣先に対して履歴書を送付させること
あなたが派遣会社に出した履歴書を、派遣先へ回すことも含まれます。
- 若年者に限ることとすること等
個人を絞る行為だけでなく、属性で絞ることも「特定」に入ります。
出典:厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の3(確認日 2026年9月9日)
禁じられているのは派遣先だけではありません。派遣会社が派遣先のその要請に協力することも禁止されています。厚生労働省は、派遣会社に提出した履歴書が派遣先で労働者派遣契約の締結前に回覧されていた場合、これらの規定に違反することになる、とはっきり書いています。
出典:厚生労働省「5 具体的な派遣先が決まりそうです。」(確認日 2026年9月9日)
では、あの顔合わせは何なのか
ここが肝心なところです。禁止されているのは派遣先が行う選別であって、あなたが行くことではありません。同じ指針の続きに、こう書かれています。
なお、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者が、自らの判断の下に派遣就業開始前の事業所訪問若しくは履歴書の送付又は派遣就業期間中の履歴書の送付を行うことは、派遣先によって派遣労働者を特定することを目的とする行為が行われたことには該当せず、実施可能であるが、派遣先は、派遣元事業主又は派遣労働者若しくは派遣労働者となろうとする者に対してこれらの行為を求めないこととする等、派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に触れないよう十分留意すること。
出典:厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の3(確認日 2026年9月9日)
つまり「顔合わせ」の正体は、あなたが自分の判断でその職場を見に行く事業所訪問です。主語があなたなら適法で、主語が派遣先になった瞬間に線を越えます。誰が誰を見に行く場なのか、向きが逆なのです。

| その場でのふるまい | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 自分の判断で店舗を見に行く | できる | 先指針 第2の3(なお書き) |
| 仕事の内容・就業条件を自分から質問する | できる | 同上(訪問の目的が就業先として適当かの確認) |
| 見たうえで、その仕事を断る | できる | 雇うのは派遣会社。派遣先との契約ではない |
| 派遣先が事前に面接する | 禁止 | 法 第26条第6項/先指針 第2の3 |
| 派遣先へ履歴書を出させる・回覧する | 禁止 | 先指針 第2の3/元指針 第2の11 |
| 若年者に限る・特定の性別に限る | 禁止 | 先指針 第2の3(属性の特定も含む) |
| 労働者派遣契約に性別を定めておく | 禁止 | 先指針 第2の4/元指針 第2の11の(2) |
| 訪問や面接を受けるよう強要する | 禁止 | 元指針 第2の11/先指針 第2の3 |
| 派遣会社が技能・知識のレベルテストを行う | 問題ない | 派遣会社は就業機会確保の努力義務を負うため |
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出典:厚生労働省「5 具体的な派遣先が決まりそうです。」/同「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の3・第2の4(確認日 2026年9月9日)。左の列は筆者が現場の言い方に置き換えたもので、扱いと根拠は公式の記載によります。
紹介予定派遣だけは、本当に面接がある
ひとつだけ例外があります。紹介予定派遣です。こちらは派遣期間の後に直接雇用へ切り替わることを予定した仕組みなので、厚生労働省のパンフレットに、次のことができると明記されています。
- 派遣就業開始前又は派遣就業期間中の求人条件の明示
直接雇用になったときの条件が先に示されます。
- 派遣期間中の求人・求職の意思の確認及び採用内定
お互いに続ける意思があるかを確認します。
- 派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為
派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等。ここだけは通常の派遣と正反対です。
出典:厚生労働省「紹介予定派遣とは・・・」(労働者派遣事業関係パンフレット)(確認日 2026年9月9日)
ただし紹介予定派遣にも枠があります。同一の派遣労働者について、6箇月を超えて労働者派遣を行ってはならないと定められています。また、特定を行うに当たっても、直接採用の場合と同様のルールの下で、年齢・性別・障害による差別を行ってはならないとされています。派遣先が雇い入れた労働者に試用期間を設けないことも、あわせて示されています。
通常の派遣なら、派遣先はあなたを選別できません。服装で合否が決まる場ではないので、そこに合わせて服を用意する必要がありません。
それでも服装で見られている。理由が違うだけ
ここからは制度の話ではありません。顔合わせの服装を定めた公的な基準は、e-Govにも厚生労働省にも見当たりませんでした。存在しないので、公式の裏取りとして書けることはここまでです。以下は、販売の現場に立ってきた筆者自身の判断として読んでください。
選別できないのに、なぜ服を見られるのか。理由は単純で、その日に会う相手が、あなたと同じ売り場に立つ人だからです。採点しているのではなく、隣に並んだ絵を想像しています。だから基準は「無難かどうか」ではなく「その店の客層と合うかどうか」に寄ります。
選考だと思って選ぶ
減点を避ける- とりあえずスーツ
- 黒・紺で無難にまとめる
- 個性を消すほど安全だと考える
- 結果、どの店にも合わない
売り場だと思って選ぶ
絵を合わせる- 配属先の価格帯と客層に寄せる
- そのブランドの隣に置ける服にする
- 手持ちの服で足りることが多い
- 結果、話が早く終わる
先に調べるのは服ではなく、配属先
服を決める前に、派遣会社から聞ける情報があります。ここが分かれば、着るものは自動的に絞れます。
- 配属先の店舗名と場所
同じブランドでも、駅ビルと路面店と百貨店では客層が違います。可能なら当日より前に一度、客として見ておきます。
- 取り扱う価格帯
値札の桁が、その場にふさわしい服の格を決めます。上に外しても下に外しても浮きます。
- スタッフの服装ルール
自社商品の着用が必要か、貸与や社販があるか、私服可か。就業後の出費に直結するので、この場で聞いておく価値があります。
- その日に会う人の役職
店長なのか、本部の担当者なのか。売り場に立つ人が来るなら、なおさら売り場の目線で見られます。
筆者が販売員だった頃、顔合わせで来た方の服装で覚えているのは、良し悪しではなく「この人がうちのラックの前に立っている絵が浮かぶかどうか」でした。全身をそのブランドで固めてきた方より、シルエットと清潔感だけ合わせてきた方のほうが、決まって話が早かったです。無理に寄せると、着せられている感じがそのまま伝わります。
ブランドの系統別に、寄せる方向だけ
具体的な品番を挙げるつもりはありません。手持ちの中から選ぶための、方向の話です。
| 配属先の系統 | 寄せる方向 | 外しやすいところ |
|---|---|---|
| 百貨店・ハイブランド | ジャケット。色数を抑え、サイズを合わせる | 靴の手入れ。ここだけで格が落ちる |
| セレクトショップ | 私服でよい。シルエットと素材感を上げる | スーツで行くと逆に浮く |
| ファストファッション・量販 | 清潔感と動きやすさ。カジュアルで問題ない | 過度なきれいめは現場感が出ない |
| スポーツ・アウトドア | そのカテゴリの服を1点は入れる | 革靴。売り場と地続きに見えない |
| バックヤード・事務系の派遣 | 売り場に出ないなら、きれいめカジュアルで足りる | 売り場にも出る契約かを先に確認する |
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補足:上の表は公的な基準ではなく、筆者の販売現場での経験にもとづく整理です。判断に迷ったら、その店に客として一度入ってみるのがいちばん確実です。顔合わせは選考ではないので、服装で不合格になる制度そのものが存在しません。
当日の持ち物と身支度。ここだけ押さえれば足ります
- 配属先の店舗を、事前に一度見ておいた
- 靴は磨いてある(系統を問わず、いちばん見られる)
- 髪と爪が整っている。香りは強くしない
- 質問したいことを3つメモしてある
- 就業条件について、書面で確認したい点を控えてある
- 派遣会社の担当者の連絡先を手元に出せる
→ 履歴書は、派遣先に渡すものではありません。持参を求められた場合は、その場で出す前に派遣会社の担当者に確認してください。
その場で聞かれたら、答えなくてよいこと
通常の派遣なら、そもそも選別のための質問が想定されていません。ただ、実際には雑談の流れで踏み込まれることがあります。厚生労働省は、採用選考の場面について「配慮すべき事項」を公式に列挙しています。直接雇用の選考ですら聞いてはいけないとされている項目なので、選別が禁じられている派遣の顔合わせなら、なおさら答える必要はありません。
| 区分 | 公式に挙げられている項目 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 (4項目) | 本籍・出生地に関すること/住宅状況に関すること/家族に関すること/生活環境・家庭環境などに関すること |
| 本来自由であるべき事項 (7項目) | 宗教に関すること/人生観・生活信条などに関すること/思想に関すること/購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること/支持政党に関すること/尊敬する人物に関すること/労働組合、学生運動などの社会運動に関すること |
| 採用選考の方法として 避けるべき事項(3項目) | 身元調査など/合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施/本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用 |
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出典:厚生労働省 公正な採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」(確認日 2026年9月9日)
加えて派遣特有の線があります。厚生労働省は、「特定」には事前面接や履歴書の事前送付などにより個人を特定することのほか、若年者に限る、特定の性別に限るなど、派遣労働者の業務遂行能力にかかわりのない属性を特定することも含むと書いています。「もう少し若い方を探していて」と言われて話が終わったなら、それは認められていない行為です。
あなたを雇っているのは派遣会社です。派遣先とのやり取りを整理する立場にあるのも派遣会社です。違和感があった場面は、当日中に担当者へ事実として伝えてください。動かないようなら、都道府県労働局の需給調整事業部門が相談窓口です。
当日の流れと、聞いておくこと
- 派遣会社の担当者と現地で合流する
多くの場合、担当者が同行します。単独で行くよう言われたときほど、事前に条件面を書面で確認しておいてください。
- 店舗を見る。これが本来の目的
売り場の広さ、スタッフの人数、レジの位置、バックヤードの動線。あなたが働けるかどうかを判断する場です。
- 就業条件を口頭ではなく書面で確認する
業務内容、勤務地、シフト、時間外の有無、契約期間。あとで違ったときに効くのは書面だけです。
- 服装ルールと自己負担を聞く
自社商品の着用義務があるか、社販の割引率はいくらか。アパレルの派遣では、ここが実質的な手取りに効きます。
- 断ってよい。断っても次がある
雇用契約は派遣会社との間で結びます。ここで見送っても、派遣会社との関係が切れるわけではありません。
「顔合わせ」「職場見学」「面談」と呼び方が違うのはなぜか
法律や指針に「顔合わせ」という言葉は出てきません。指針にあるのは「派遣就業開始前の事業所訪問」です。派遣先による面接が禁じられている以上、面接という名前は使えないため、現場で別の呼び方が使われているとみられます。呼び方が何であれ、公式に線が引かれているのは「派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為」かどうかという一点です。名前ではなく、その場で何が行われたかで判断してください。
服装より先に決まっていること
顔合わせの服で悩んでいる時点で、多くの場合すでに案件は決まっています。そして通常の派遣なら、その案件は服装で覆りません。実際に手取りと働き方を決めているのは、契約に書かれた職種のほうです。
同じアパレル派遣でも、売り場に立つ販売職、バックヤード、EC、事務では、時給の上限も休みの取り方も別物になります。当日の服より、そちらを先に決めたほうが効きます。
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