この記事の制度の説明は、厚生労働省・都道府県労働局が公表しているリーフレットを実際に開いて、そこに書かれている内容だけを使っています。求人の件数は、アパレル専門の派遣求人サイトを筆者が実際に検索して数えたものです。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商として仕入れと買取の仕事をしています。確認日は本文の出典に書きました。
50代を理由に断る募集は、派遣ではまず成り立ちません。それでも求人の見え方が薄いのは、絞り込みの名前を知らないからです。
募集・採用で年齢を制限できる例外は6つありますが、そのうち3つは「期間の定めのない労働契約」であることが条件です。登録型の派遣は有期契約なので、この3つが使えません。そのうえで、アパレル専門の派遣求人サイトで年齢条件を実際に数えると、50歳以上歓迎は4,795件中323件ありました。
まず「年齢で断れるのか」から見る「50代はお断り」は、そもそも求人に書けない
「50代 アパレル 派遣 会社」で調べている人の不安は、たいてい先回りの心配です。登録しても紹介が来ないのではないか、書類の段階で年齢だけで落とされるのではないか。まずそこから片づけます。
募集・採用は原則として年齢を不問としなければなりません。これはパート・アルバイト・派遣など、雇用の形態を問わず適用されます。
厚生労働省と都道府県労働局が事業主向けに出しているリーフレットには、こう書かれています。形式的に求人票を「年齢不問」とすればよいということではなく、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定することも法違反になります。さらに、本人の希望と関係なく一定年齢以上はパートタイムにするなど、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできない、とあります。
そしてこのリーフレットは、アパレルの売場をそのまま例に挙げています。「若者向けの洋服の販売スタッフなので30歳以下で募集しても問題ないよね?」——これに対する公式の答えは「間違いです!」です。示されている解決策は、年齢の欄を消して業務内容と必要な能力を書くことでした。
出典:厚生労働省・都道府県労働局「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」(LL290929政01)PDF/2026年9月8日確認
年齢の上限を書ける例外は6つ。派遣で使えるものが、ほとんどない
「原則」があるということは例外もあります。年齢制限が認められるのは、雇用対策法施行規則が定める6つの場合だけです。ここが50代にとっていちばん大事な部分なので、条件ごとに分けます。
| 例外 | どんな場合か | 無期契約が条件か | 登録型の派遣で使えるか |
|---|---|---|---|
| 1号 | 定年年齢を上限として、その未満の人を募集する | 必要 | 使えない |
| 2号 | 法令で年齢制限が設けられている業務(危険有害業務など) | 不要 | 該当する業務のみ |
| 3号イ | 長期勤続によるキャリア形成のため、若年者等を募集する | 必要 | 使えない |
| 3号ロ | 技能・ノウハウ継承のため、人数が少ない年齢層に限定する | 必要 | 使えない |
| 3号ハ | 芸術・芸能で表現の真実性が求められる場合 | 不要 | 売場では該当しない |
| 3号ニ | 60歳以上の高年齢者などに限定して募集する | 不要 | 使える(下限のみ) |
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表の3行目までを、もう一度読んでください。上限年齢を書ける例外のうち3つは、期間の定めのない労働契約であることが要件です。リーフレットにも「実態として、有期労働契約を更新し続ける場合であっても、個々の契約は期間の定めのある労働契約であるため、このような記載は認められません」と明記されています。
登録型の派遣は、案件ごとに期間を決めて結ぶ有期契約です。つまり「50歳以上不可」と上限を付けられる根拠が、制度上ほとんど残っていません。逆に3号ニだけは50代に不利に働くこともなく、「60歳以上の人を募集」という下限の求人を出すためのものです。しかもこの3号ニ、上限を付けることは認められていません(「60歳以上70歳以下の人を募集」はNG例として載っています)。
では実際、50代向けの求人は何件あるのか
制度の話はここまでです。次は実物を数えます。アパレル・ファッションの販売職に特化した派遣求人サイト「派遣なび」(株式会社シーエーセールススタッフ)で、掲載されている求人を年齢に関わる条件で絞り込みました。
| 絞り込みの条件 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| (絞り込みなし) | 4,795 | 100% |
| ミドル(40歳以上)活躍中 | 1,150 | 24.0% |
| エルダー(50歳以上)活躍中 | 323 | 6.7% |
| 多い年齢層_50代 | 425 | 8.9% |
| シニア(60歳以上)応援 | 171 | 3.6% |
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数字の読み方を間違えないでください。323件は「50代が応募できる求人」の数ではありません。前の章のとおり、年齢で断ることはそもそもできないので、残りの4,472件が応募不可なわけではありません。この323件は、受け入れる側が「歓迎する」と自分から表明した求人です。
意味があるのはそこです。制度上応募できることと、面接で歓迎されることは別の話で、50代が探しているのは後者だからです。全体の6.7%というのは、探し方を変えなければ埋もれる濃さです。
出典:派遣なび(株式会社シーエーセールススタッフ)https://haken.ca-ss.jp/ の求人検索で、条件ごとの表示件数を筆者が数えたもの/2026年9月8日確認。件数は日々変わります
探し方は、絞り込みの名前を知っているかどうかで変わる
ここが実務です。求人サイトの検索画面で「50代」と入力しても、たいてい何も出ません。年齢の条件は、サイトごとに別の呼び名のチェックボックスとして用意されているからです。
- 「エルダー」「ミドル」「シニア」で探す
年齢の条件は、この3つの呼び名で並んでいることが多いです。派遣なびの場合、ミドルが40歳以上、エルダーが50歳以上、シニアが60歳以上でした。50代は「エルダー」と「ミドル」の両方に入ります。
- 「多い年齢層」を別枠で見る
歓迎の表明とは別に、いま働いている人の年齢層を出している求人があります。歓迎とは書いていないが50代が多い職場は、この枠でしか見つかりません。派遣なびでは425件ありました。
- エリアを先に絞らない
母数が少ない条件では、エリアを絞った瞬間に0件になります。まず年齢条件だけで並べて、通える範囲があるかを後から見るほうが取りこぼしません。
- 「無期雇用派遣」の有無を見る
これは次の章の話に直結します。同じサイトの絞り込みに項目として並んでいるので、年齢条件と一緒にチェックしておくと選択肢が整理できます。
59歳と60歳のあいだに、制度の線が引いてある
50代でこれから派遣で働くなら、知っておくと判断が変わることがひとつあります。派遣の制度は60歳で切り替わります。しかも、有利な方向と不利な方向に同時に切り替わります。

派遣には、同じ事業所・同じ組織単位で3年を超えて働けないという期間制限があります。リーフレットには「ただし、『派遣元で無期雇用されている派遣労働者』や『60歳以上の派遣労働者』などは、期間制限の対象外です」と書かれています。60歳を超えると、この3年の壁がなくなります。
ところが同じリーフレットの次の項目に、雇用安定措置の説明があります。同じ組織単位に3年続けて派遣される見込みになると、派遣元には雇用の安定を図る措置の義務が生じる、という制度です。そしてここにも同じ但し書きが付いています。60歳以上の派遣労働者は、雇用安定措置の対象外です。
つまり50代は、縛りも守りも両方効いている最後の年代です。同じ職場に長く居続けたいだけなら60歳を待つほうが楽ですが、直接雇用に移ることを狙うなら、その働きかけの根拠になる制度は59歳までしか使えません。どちらを取るかは、いま何歳かで変わります。
出典:厚生労働省・都道府県労働局「派遣で働く皆様へ」(LL300427需01)PDF/2026年9月8日確認
登録先が本物かどうかは、公式サイトで確かめられる
派遣の会社選びで最初に確認するのは、知名度でも求人数でもありません。労働者派遣事業の許可を受けているかどうかです。これは厚生労働省が運営している「人材サービス総合サイト」で、誰でも無料で検索できます。
- 許可番号を確認する
派遣の許可番号は「派13-040737」のような形をしています。会社名か番号で、人材サービス総合サイトの労働者派遣事業所検索にかければ出ます。求人サイトの運営会社と、実際に雇用契約を結ぶ派遣元が別会社のことがあるので、番号は必ず派遣元のほうで見ます。
- 対象エリアを見る
アパレルの派遣は都市部に偏ります。派遣なびの場合、勤務地の選択肢に並んでいたのは東京・関東・北信越・東海・関西・中国・四国・九州・沖縄でした。自分の通える範囲がそこに入っているかを、登録前に見ておきます。
- 扱う職種の幅を見る
売場だけを扱う会社と、アパレル事務・EC・倉庫まで扱う会社があります。50代で立ち仕事の時間を減らしたいなら、後者でないと選択肢が出てきません。
参照:人材サービス総合サイト(厚生労働省職業安定局)https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp//2026年9月8日確認
登録する前に、この5つを確かめる
2つ以上が「わからない」なら、登録より先に確認する段階です
- 登録しようとしている会社の派遣許可番号を見たか
- 年齢条件の絞り込み(エルダー・ミドル)で件数を数えたか
- 自分が通える範囲に、その条件の求人が残るか
- 売場以外の職種(事務・EC・倉庫)も扱っているか
- 60歳までに何年あるか、3年の区切りが何回来るか
→ 2つ以上が空白なら、まず1社に登録して紹介を受けるより、条件で数える作業を先にしたほうが早く決まります。
まとめ
50代でアパレルの派遣を探すときに押さえるのは、次の3つです。
- 年齢で断られる筋合いはない
募集・採用の年齢不問は派遣にも適用されます。上限を書ける例外6つのうち3つは無期契約が条件なので、登録型の派遣では使えません。
- 歓迎の表明は全体の6.7%に集まっている
応募できる求人の話ではなく、受け入れる側が歓迎を明示した求人の話です。「エルダー」「多い年齢層」という絞り込みの名前を知っているかどうかで、見える数が変わります。
- 60歳で制度が切り替わる
3年の期間制限も、雇用安定措置も、60歳以上は対象外になります。長く同じ場所で働きたいのか、直接雇用に移りたいのかで、いま動くかどうかが変わります。
どの登録先が自分に合うかは、経験してきた職種と、これから売場に立ち続けるかどうかで変わります。そこは診断で切り分けてください。
8つの質問で、向いている登録先を出す