※この記事の金額は、すべて厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の公表ファイルを実際に開いて読んだ値だけを使っています(確認日:2026年9月7日)。年収まとめサイトの数字は使っていません。職種の分け方も、同じ調査の「役職及び職種解説」に書かれている定義に従っています。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商として仕入れの仕事をしています。
国の統計に「バイヤー」という欄はありません。「商品バイヤー」が書かれているのはその他の商品販売従事者という別名の欄で、年収に直すと557.6万円です。
販売店員の384.8万円との差は172.8万円。ただしこの欄には訪問販売員や古紙卸売人も一緒に入っています。数字そのものより、自分がどの欄に入る働き方をしているかのほうが効きます。その見分け方まで書きました。
まず「どの欄に入るか」を見る公的統計に「バイヤー」という名前の欄はない
先に、いちばん大事なことを書きます。国がやっている賃金の調査には「バイヤー」「仕入担当」という名前の職種の欄がありません。令和7年賃金構造基本統計調査の職種(小分類)は435行ありますが、その中に「バイヤー」も「仕入」も出てきません。実際に全行を開いて確認しました。
ですから「アパレルバイヤーの平均年収は◯◯万円です」と書いてあるページを見つけても、その数字が公的な調査から来ていることは、まずありません。
では、バイヤーの給料はどこにも載っていないのか。そうではありません。同じ調査の「役職及び職種解説」を開くと、「商品バイヤー」という言葉が1か所だけ出てきます。
つまり、統計の中でバイヤーが入っているのは「その他の商品販売従事者」という欄です。名前からはまったく想像がつきませんが、公式の解説にそう書かれています。

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」役職及び職種解説(2026年9月7日にe-Statで確認)
3つの欄と、その周りの職種を年収で並べる
金額を出します。調査が公表しているのは「きまって支給する現金給与額(月額)」と「年間賞与その他特別給与額」の2つなので、年収換算=月額×12+年間賞与で計算しました。この列と、いちばん右の「賞与の月数」は、こちらで割り算した列です。
| 職種の欄 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収換算 | 賞与の月数 |
|---|---|---|---|---|
| 管理的職業従事者 | 59.9万 | 247.1万 | 966.8万 | 4.18 |
| 企画事務員 | 46.4万 | 179.4万 | 736.8万 | 4.17 |
| 販売類似職業従事者 | 43.3万 | 143.8万 | 664.5万 | 3.54 |
| その他の営業職業従事者 | 42.6万 | 149.3万 | 660.7万 | 3.74 |
| その他の商品販売従事者(商品バイヤーはここ) | 38.0万 | 101.3万 | 557.6万 | 2.83 |
| デザイナー(服飾デザイナーを含む) | 37.5万 | 88.8万 | 539.6万 | 2.51 |
| 営業・販売事務従事者 | 35.2万 | 101.7万 | 525.1万 | 3.11 |
| 販売店員 | 28.2万 | 46.3万 | 384.8万 | 1.75 |
← 横にスクロールできます(産業計・男女計・企業規模10人以上・一般労働者)
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表(2026年9月7日にe-Statで確認)。年収換算と賞与の月数は、公表値からこちらで計算しました。
販売店員が384.8万円、その他の商品販売従事者が557.6万円。差は172.8万円です。ただし、この2つは人数の規模がまったく違います。販売店員は約122万人、その他の商品販売従事者は約12.8万人。10分の1です。「小さいほうの欄に移れる人は限られる」ということでもあります。
差をいちばん作っているのは、賞与の月数
表のいちばん右の列を見てください。年間賞与が所定内給与の何か月分にあたるかを出したものです。
出典:同上(年間賞与その他特別給与額 ÷ 所定内給与額)
月額の差だけを見ていると「10万円くらいか」で終わりますが、賞与の月数はほぼ倍になります。販売員のときに感じる「手取りは思ったより悪くないのに、年間で見ると増えていない」という感覚は、ここに出ています。売場の仕事は月ごとの給与で回っていて、賞与で乗る分が薄いのです。
30代前半で、いちばん差が開く
年齢階級別のデータもあるので、販売店員とその他の商品販売従事者を並べました。同じく年収換算です。
| 年齢 | 販売店員 | その他の商品販売従事者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 25〜29歳 | 367.2万 | 454.8万 | 87.6万 |
| 30〜34歳 | 387.1万 | 547.4万 | 160.3万 |
| 35〜39歳 | 401.9万 | 584.6万 | 182.7万 |
| 40〜44歳 | 427.6万 | 591.3万 | 163.7万 |
| 45〜49歳 | 428.4万 | 620.9万 | 192.5万 |
| 50〜54歳 | 417.2万 | 650.0万 | 232.8万 |
← 横にスクロールできます(産業計・男女計・企業規模10人以上・一般労働者)
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表(2026年9月7日にe-Statで確認)
形を言葉にすると、こうです。販売店員は45〜49歳の428.4万円が頭打ちで、50代に入ると下がります。いっぽう、その他の商品販売従事者は50〜54歳の650.0万円まで伸び続けます。25〜29歳では87.6万円だった差が、50代前半では232.8万円になります。
同じ「店長」でも、統計上は3つの欄に散らばる
ここが、この記事でいちばん実務に効く部分です。職種解説には、店長の扱いがはっきり書かれています。
- 主に経営管理の仕事に従事している店長
「管理的職業従事者」の欄に入ります。年収換算966.8万円の欄です。
- 主に商品の仕入・販売に従事している店長
「販売店員」の欄に入ります。年収換算384.8万円の欄です。
- 他人を訪問し、仕入れ・買付けに従事しているもの
「その他の商品販売従事者」の欄に入ります。年収換算557.6万円の欄です。
解説の「管理的職業従事者」には、×(含まれない職種の例)として「小売・卸売店長(主に商品仕入・販売に従事するもの)」がわざわざ書かれています。肩書が店長でも、売場に立って仕入れと販売をしているなら、統計上は販売店員です。
統計が分けているのは肩書ではなく、主にどの仕事に時間を使っているかです。名刺にバイヤーと入っても、勤務時間の大半が売場なら、置かれている場所は変わっていません。求人票を見るときも、そこを見ます。
販売員から仕入れ側に移ったとき、いちばん変わったのは月給ではありませんでした。変わったのは「何で評価されるか」です。売場にいた頃は自分が売った金額でしたが、仕入れ側は残らなかった枚数で見られます。数字の種類が変わると、賞与の付き方も変わりました。
求人票と自分の会社で、確かめる3点
統計の平均を眺めても、自分の金額は決まりません。決まるのは次の3つです。上から順に効きます。
1つめ、求人票の職種名。「バイヤー」と書いてあっても、業務内容の欄に「店舗業務あり」「販売応援あり」と入っていることがあります。その場合、実態は上の②に近づきます。仕事内容の箇条書きを、上から順に読んでください。先に書いてある業務ほど、時間の配分が大きいのがふつうです。
2つめ、売場に立つ割合。面接で聞いていい質問です。「仕入れと店頭の時間の割合はどれくらいですか」と聞けば、たいてい答えが返ってきます。答えを濁されるときは、実際には決まっていないことが多いです。
3つめ、賞与が何か月分か。表で見たとおり、この職種のあいだの差は賞与で大きく開きます。求人票の「賞与年2回」だけでは月数が分かりません。「昨年度の支給実績は何か月分でしたか」と聞くところまでが確認です。
あてはまるものにチェックしてください。
3つ以上あてはまる人は、動く前に確かめる段階です
- 求人票の「バイヤー」の業務内容に、店舗業務が含まれている
- いまの職種名が、給与規程のどの等級に対応しているか知らない
- 昨年度の賞与が所定内給与の何か月分だったか、言えない
- 仕入れの仕事はしているが、勤務時間の半分以上は売場にいる
- 「バイヤーになれば年収が上がる」という話を、金額の根拠なしで聞いた
→ 3つ以上なら、上の3点を埋めるところからです。それだけで、比べる相手がはっきりします。
この記事で書かなかったこと
正直に書いておきます。調べてみて公的な資料では確認できなかったものがあります。推測では埋めません。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| アパレルだけのバイヤーの年収 | 確認できなかった(統計は産業計。アパレルだけの内訳は公表されていない) |
| マーチャンダイザー(MD)がどの欄か | 確認できなかった(職種解説の全文に「マーチャンダイザー」は1件も出てこない) |
| アパレル各社のバイヤー職の給与テーブル | 確認できなかった(有価証券報告書には職種別の金額は載らない) |
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とくに1つめは大事です。この記事の557.6万円も384.8万円も全産業をならした数字で、アパレルだけを取り出したものではありません。アパレルの実額に近づけたいときは、アパレル社員の給料はいくら?で使った産業別の数字と、この記事の職種別の数字を、両方から挟んで見てください。
