アパレル本社勤務の給料|統計に「本社」の欄はない。職種に置き換えると販売店員との差は117万〜366万

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本社勤務の給料

筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、いまはファッションバイヤー兼古物商として働いています。金額はすべて厚生労働省の統計表を実際にダウンロードして確認したものだけを書きました。会社ごとの給与規程は当然ちがうので、最後は自社の規程と求人票で確かめてください。

CONCLUSION

「本社勤務の給料」が調べても出てこないのは、国の統計に「本社」という欄が無いからです。

本社にいる人は、ひとまとめに数えられていません。企画・総務・経理・営業事務・デザイン・仕入と、職種ごとにバラバラの欄に入っています。そこで、自分が行きたい仕事を統計の職種名に置き換えると金額が出ます。売場の販売店員が年収換算459.3万円(男)。本社側はいちばん低い区分でも576.4万円、いちばん高い企画事務員で825.2万円でした。

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統計に「本社勤務」という欄は無い

賃金の相場を調べるときの大元は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。この調査が集計している切り口は、産業・職種・役職・企業規模・学歴・雇用形態など。「本社」「本部」「店舗」という切り口はどこにもありません。

理由は単純で、統計は「どこの建物にいるか」ではなく「何の仕事をしているか」で人を数えているからです。同じ会社の同じフロアにいても、経理をしている人は会計事務、商品計画をしている人は企画事務、仕入をしている人は商品販売と、別々の欄に振り分けられます。

補足:ここでいう「一般労働者」は、パート・アルバイトなどの短時間労働者を除いた、フルタイムで働いている人です。以下の金額はすべて男・企業規模計(10人以上)・一般労働者の数値で、月額は2025年6月分です。

だから「アパレル 本社勤務 給料」で検索しても、そのままの平均額は出てきません。出すには、自分の仕事を統計の職種名に置き換える必要があります。ここを間違えると、まったく別の職種の金額を自分の相場だと思い込むことになります。

本社の仕事を、統計の職種名に置き換える

アパレルの本社でよく使われる呼び名と、国の統計の職種名の対応はこうなります。金額は年収換算(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)です。

売場と本社の呼び名を国の統計の職種名に置き換えた対応表。販売店員459.3万円を出発点に、その他の商品販売従事者576.4万円、デザイナー601.5万円、営業・販売事務従事者638.7万円、総合事務員674.7万円、企画事務員825.2万円
会社での呼び名と、統計の職種名の対応
統計の職種名会社での呼び名年収換算販売店員との差平均年齢/勤続
販売店員店長・副店長・スタッフ459.3万43.1歳/13.2年
その他の商品販売従事者バイヤー・仕入担当576.4万+117.1万42.4歳/13.1年
デザイナーデザイナー・VMD601.5万+142.2万41.3歳/11.1年
会計事務従事者経理・原価・調達627.0万+167.7万44.2歳/13.7年
庶務・人事事務員総務・人事・給与629.5万+170.2万46.2歳/15.1年
営業・販売事務従事者営業事務・営業管理638.7万+179.4万45.5歳/16.0年
総合事務員担当を限らない管理業務674.7万+215.4万45.2歳/15.3年
その他の営業職業従事者卸・法人営業689.0万+229.7万43.5歳/14.6年
企画事務員商品企画・MD・マーケティング825.2万+365.9万44.9歳/15.9年

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」。男・企業規模計(10人以上)・一般労働者。年収換算は当サイトによる計算です。2026年9月5日に e-Stat から統計表をダウンロードして確認しました。

注意:この表は産業計(全業界)の数字です。「アパレル企業の本社」だけを抜き出した公的な賃金統計は存在しません。職種を業界で絞った表は公表されていないので、業界を絞った数字はこのあとの章で、職種の大きなくくりに戻して見ます。

いちばん低い区分でも販売店員より117.1万円上、いちばん高い企画事務員では365.9万円上でした。ここで大事なのは、年齢も勤続年数もほとんど変わらないことです。販売店員が43.1歳・勤続13.2年、企画事務員が44.9歳・勤続15.9年。1.8歳と2.7年の差では、366万円の説明はつきません。差を作っているのは経験年数ではなく、職種そのものです。

バイヤーは「販売店員」に入っていない

この対応表でいちばん引っかかるのが、バイヤーの置きどころです。同じ商品を扱う仕事なのに、統計上は販売店員の欄ではなく「その他の商品販売従事者」に入ります。

CODE 1321販売店員
除外されるもの商品仕入員(1324)
CODE 1324その他の商品販売従事者
含まれる例商品バイヤー

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の「役職及び職種解説」。1321販売店員の【含まれない職種の例】に「商品仕入員(1324)」、1324その他の商品販売従事者の【含まれる職種の例】に「商品仕入員、仕入外交員、商品バイヤー」と記載されています。

そしてもう1つ、同じ解説には見落とせない一文があります。1321販売店員には「主に商品の仕入・販売に従事している小売・卸売店長・店主も含まれる」と書かれています。つまり店長も、統計の上では販売店員です。店長になっても職種の欄は変わりません。欄が変わるのは、主に経営管理の仕事に従事するようになったとき(管理的職業従事者)だけです。

売場にいた頃、本部の仕入担当は「同じ商売をしている隣の部署」だと思っていました。実際に自分が仕入れる側に回ってみると、見ている数字がまるで違う。売場は今日の消化率を見ますが、仕入は半年先の在庫を見ます。国の分類がこの2つを別の職種として数えているのは、現場感覚としても正しいと思います。

REAL EXPERIENCE — 元アパレル販売員/現在はファッションバイヤー

バイヤーという仕事そのものの中身と入口は、アパレルのバイヤーへ転職で分けて書いています。企画やMDを狙う人はアパレルのMDへ転職のほうが近いはずです。

「小売の会社だから本社も安い」は、統計ではそうなっていない

ここまでの表は産業計でした。「でも自分がいるのは小売の会社だから、本社もその分安いのでは」と思うのが自然です。産業を絞った表で確かめます。職種は大きなくくり(大分類)に戻ります。

産業/職種(大分類)年収換算平均年齢平均勤続労働者数
卸売業,小売業/販売従事者583.2万43.3歳14.8年約123万人
卸売業,小売業/事務従事者704.3万47.0歳18.6年約45万人
卸売業,小売業/専門的・技術的職業従事者683.9万43.0歳12.9年約16万人
産業計/販売従事者616.0万42.8歳13.8年約191万人
産業計/事務従事者660.3万45.7歳15.7年約258万人

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出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第20表「職種(大分類)、産業、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」。男・企業規模計(10人以上)・一般労働者。産業区分は「I 卸売業,小売業」。年収換算は当サイトによる計算です。

VERDICT 小売業の事務職は、産業計の事務職より44.1万円高い

卸売業,小売業の事務従事者は704.3万円。全業界を合わせた事務従事者の660.3万円より上です。同じ産業の販売従事者(583.2万円)と比べると121.1万円の差。「小売の会社だから本社も安い」は、少なくとも統計ではそうなっていません。

逆になっているのは販売側です。卸売業,小売業の販売従事者は583.2万円で、産業計の販売従事者(616.0万円)より32.8万円下。この業界で低いのは会社ではなく、売場という職種のほうです。同じ話を業界の平均値の側から見たのがアパレルの給料が安い理由で、あちらで「産業の平均には本部の人も入っている」と書いた、その本部の中身がこの章です。

補足:大分類の「販売従事者」には、販売店員だけでなく営業職も入ります。だから小分類の販売店員(459.3万円)より金額が高く出ます。売場だけを見たいときは小分類の販売店員を、部門ごと比べたいときは大分類を使い分けてください。

上がるのは金額だけではない。1時間あたりで見る

年収だけを比べると「働く時間も増えるのでは」と思うところですが、統計には労働時間も載っています。1か月の実労働時間(所定内+超過)で割って、時間あたりの単価にしてみます。

職種所定内超過合計月額時間単価
販売店員166h10h176h32.6万1,854円
その他の商品販売従事者166h9h175h39.1万2,236円
デザイナー164h8h172h41.6万2,418円
庶務・人事事務員160h11h171h41.1万2,402円
営業・販売事務従事者161h12h173h42.5万2,455円
総合事務員158h12h170h43.3万2,547円
企画事務員159h11h170h51.5万3,029円

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所定内実労働時間数・超過実労働時間数・きまって支給する現金給与額は、上と同じ(職種)第1表の数値(男・2025年6月分)。時間単価は「きまって支給する現金給与額 ÷(所定内+超過)」で当サイトが計算したものです。

販売店員の時間単価1,854円月176時間で32.6万円
企画事務員の時間単価3,029円月170時間で51.5万円
その差1,175円働く時間は6時間短い

本社側の職種は、所定内の労働時間がそろって短くなります。販売店員の166時間に対して、事務系は158〜161時間。一方で超過(残業)は11〜12時間と、販売店員の10時間より少し増えます。合計すると170〜173時間で、販売店員の176時間より3〜6時間短い。時間は減って単価は上がる、という並びになっています。

ただし残業が増える側面は本当です。売場は営業時間で終わりが決まりますが、本社の仕事は締切で終わりが決まります。ここは金額で得をしても、生活のリズムは変わると考えておいたほうがいいところです。

数字に出ている壁は、勤続年数のほう

ここまで見ると本社に移らない理由がないように見えますが、同じ表にちゃんと壁も出ています。勤続年数と、椅子の数です。

数字が味方する点

  • 年齢がほぼ同じでも年収が117万〜366万上
  • 所定内の労働時間が3〜8時間短い
  • 小売業の事務職は産業計の事務職より高い
  • 時間単価では最大1,175円の差

数字が示す壁

  • 卸売業,小売業の事務従事者は平均勤続18.6年
  • 同じ産業の販売従事者は14.8年。3.8年長い
  • 人数は販売従事者の約3分の1(約45万人)
  • 企画事務員は勤続15.9年。未経験の入口ではない

勤続18.6年という数字は、本社の事務の椅子が「長くいる人」で埋まっていることを意味します。人数も販売従事者の約123万人に対して約45万人。金額が高いのは、そこに空きが少ないからでもあります。求人数の側から同じ構造を見たのがアパレル本社勤務への転職で、椅子の数を実際に数えています。

そして事務系のどこを狙うかで難易度は大きく変わります。企画事務員は金額が突出している代わりに、販売から直接移るのは現実的ではありません。事務の内訳と入りやすさの順番はアパレルから事務へ転職に分けてあります。

動く前に、この4つを確かめる

統計はあくまで全国の平均です。自分の会社と応募先で、次の4つを先に確かめてください。ここが埋まらないうちは、金額の比較をしても意味がありません。

  1. 社内公募や職種転換の制度があるか

    就業規則か人事のイントラに書いてあります。制度があるなら、外に出るより先に手を挙げるほうが早い。制度が無い会社は、本社の椅子が中途採用と本社採用だけで埋まっている可能性があります。

  2. 販売職と本社職で、給与テーブルが別かどうか

    別テーブルなら、店舗で等級を上げても本社の水準には届きません。同一テーブルなら、異動しても等級はそのまま持っていけます。給与規程の「職群」「コース」という言葉を探してください。

  3. 求人票の職種名が、統計のどの区分にあたるか

    「本社スタッフ」「管理部門」のような書き方は、この記事の表のどこにも対応しません。仕事内容の欄を読んで、企画なのか、経理なのか、営業事務なのかまで落としてから金額を当ててください。

  4. いまの自分の時間単価

    給与明細のきまって支給する額を、勤怠表の実労働時間(残業込み)で割るだけです。この1つの数字が、応募先の条件と直接比べられる唯一の物差しになります。

3つ以上あてはまるなら、社内では動かない可能性が高い状態です

  • 社内公募の制度が無い、または過去に本社へ移った先輩を知らない
  • 販売職と本社職で給与テーブルが分かれている
  • 店長・副店長になっても月の実労働時間が170時間を下回らない
  • 自分の時間単価を計算したら2,000円に届かなかった

→ 3つ以上なら、辞めるかどうかより先に「他社の本社職の求人票を、職種名まで落として読む」段階です。

まとめ

  1. 統計に「本社勤務」の欄は無い

    本社にいる人は職種ごとに別の欄で数えられています。金額を出すには、自分の仕事を職種名に置き換える必要があります。

  2. 販売店員459.3万円が出発点

    本社側はいちばん低い区分でも576.4万円、企画事務員で825.2万円。差は117.1万〜365.9万円で、年齢も勤続年数もほぼ同じです。

  3. バイヤーも店長も、統計の位置が直感とずれる

    バイヤーは販売店員から除外されて「その他の商品販売従事者」。店長は逆に、販売店員のまま数えられます。

  4. 小売業だから本社も安い、はあてはまらない

    卸売業,小売業の事務従事者は704.3万円で、産業計の事務従事者より44.1万円高い数字でした。

  5. 壁は勤続年数のほうに出ている

    卸売業,小売業の事務従事者は平均勤続18.6年、人数は販売従事者の約3分の1。金額が高いのは、空きが少ないことの裏返しでもあります。

アパレルの本社勤務の平均年収はいくらですか?
「アパレル企業の本社」を抜き出した公的な統計はありません。本社にいる人は職種ごとに別々に数えられているためです。産業計・男・一般労働者の年収換算で見ると、その他の商品販売従事者(バイヤーなど)576.4万円、デザイナー601.5万円、営業・販売事務従事者638.7万円、総合事務員674.7万円、企画事務員825.2万円でした。売場の販売店員は459.3万円です。
店長になると、統計の職種は変わりますか?
変わりません。厚生労働省の職種解説には、1321販売店員に「主に商品の仕入・販売に従事している小売・卸売店長・店主も含まれる」と書かれています。欄が変わるのは、主に経営管理の仕事に従事するようになったとき(管理的職業従事者)だけです。
本社に移ると残業は増えますか?
統計上は、所定内の労働時間が減って超過(残業)が少し増えます。販売店員は所定内166時間・超過10時間の合計176時間。事務系は所定内158〜161時間・超過11〜12時間で合計170〜173時間です。合計では3〜6時間短くなっていますが、残業そのものは1〜2時間増えています。
販売員から本社へは、どの職種が入りやすいですか?
金額がいちばん高い企画事務員は平均勤続15.9年で、販売から直接移る入口ではありません。統計で見えるのは、卸売業,小売業の事務従事者が平均勤続18.6年・人数は販売従事者の約3分の1という「空きの少なさ」です。まずは社内公募の有無と、給与テーブルが販売職と分かれているかを確かめるのが先になります。
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