この記事の賃金の数字は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」の第3表・第8表を実際に開いて確認したものです。派遣の時給の下限は同省の労働者派遣の局長通達(令和8年度適用)から計算しています。就職情報サイトの平均年収や体験談は使っていません。筆者は元アパレル販売員で、いまはファッションバイヤー兼古物商として働いています。確認日は本文の出典に書きました。
高卒と大卒の差は、20代前半で月3.9万円。50代前半で月16.0万円。4.1倍に開きます。
ただし、この差はアパレルの販売職の中にいる限り、あまり出てきません。派遣の時給の下限を決めているのは職種であって、学歴の欄はどこにもないからです。差が出るのは、学歴を問われる職種へ移るときです。
差が開いていく様子を見るまず全体の数字を置く
| 学歴 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 大学院 | 51.7万円 | — | — |
| 大学 | 39.6万円 | 43.0万円 | 32.7万円 |
| 高専・短大 | 32.1万円 | — | — |
| 専門学校 | 31.4万円 | — | — |
| 高校 | 29.7万円 | 32.2万円 | 24.5万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(3)学歴別にみた賃金、第3表(mhlw.go.jp)。一般労働者、産業計、所定内給与額(2025年6月分)。男女計で高校297.2千円、専門学校313.7千円、高専・短大321.2千円、大学396.3千円、大学院517.4千円。男性は高校321.7千円・大学429.6千円、女性は高校245.0千円・大学327.4千円。2026年9月5日に確認。
高校と大学の差は、年齢計で月9.9万円。年にすると119万円です。ここだけ見ると絶望的に見えますが、この数字は全年齢を混ぜた平均なので、実際に何が起きているかは分かりません。年齢で割ると、まったく違う絵が出てきます。
差は入口では小さく、あとから開く
| 年齢 | 高校 | 専門学校 | 大学 | 高校と大学の差 |
|---|---|---|---|---|
| 〜19歳 | 20.9万円 | — | — | — |
| 20〜24歳 | 22.5万円 | 23.8万円 | 26.4万円 | 3.9万円 |
| 25〜29歳 | 25.2万円 | 26.7万円 | 29.6万円 | 4.5万円 |
| 30〜34歳 | 27.6万円 | 28.2万円 | 34.0万円 | 6.4万円 |
| 35〜39歳 | 29.7万円 | 30.3万円 | 38.2万円 | 8.6万円 |
| 40〜44歳 | 30.9万円 | 32.2万円 | 42.5万円 | 11.6万円 |
| 45〜49歳 | 32.2万円 | 33.4万円 | 45.8万円 | 13.6万円 |
| 50〜54歳 | 33.5万円 | 35.7万円 | 49.5万円 | 16.0万円 |
出典:同上、第3表(学歴、性、年齢階級別賃金及び対前年増減率)。男女計。差は筆者が計算したもの。
20代前半では3.9万円しか違いません。それが50代前半で16.0万円になる。差そのものが4.1倍に開いています。
そして高校卒の伸び方を見てください。22.5万円から33.5万円まで、30年かけて11万円しか上がっていない。大学卒は26.4万円から49.5万円まで23.1万円上がっています。スタートの差より、伸び方の差のほうが大きい。
ところがアパレルの販売職では、この差が出にくい
ここからが本題です。上の表は産業計の平均で、全部の職種を混ぜたものです。アパレルの売場という1つの職種の中に限ると、学歴の効き方はまったく違います。
いちばんはっきりしているのが派遣です。派遣の時給には法律上の下限があり、その額は職種ごとに決められています。
出典:厚生労働省 令和8年度適用 局長通達 別添1(Excel)および別添3(Excel)。基準値に東京の地域指数111.4を掛け、1円未満を切り上げたもの。掲載元は厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」(mhlw.go.jp)。2026年9月5日に確認。
この通達には、職種と勤続年数と地域の3つしかありません。学歴の欄は存在しません。高卒でも大卒でも、販売店員として契約されている限り、法律上の下限は同じ1,311円です。
売上も、接客も、在庫の精度も、学歴では変わりません。だからアパレルの店頭は、学歴を問われずに実力で評価される仕事として機能してきました。問題は、その先です。
では、なぜ全体では16万円も開くのか
学歴そのものが賃金を決めているのではありません。学歴によって、就く職種と役職の配分が違うからです。役職別の数字を見ると、それがはっきりします。
| 役職 | 月額(男女計) | 非役職者=100 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|
| 部長級 | 63.6万円 | 204.8 | 53.1歳 |
| 課長級 | 52.9万円 | 170.4 | 49.5歳 |
| 係長級 | 39.9万円 | 128.6 | 45.4歳 |
| 非役職者 | 31.1万円 | 100.0 | 41.8歳 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第8表(役職、性別賃金、対前年増減率及び役職・非役職間賃金格差)。一般労働者のうち雇用期間の定めのない者、産業計・男女計。部長級635.8千円、課長級529.2千円、係長級399.2千円、非役職者310.5千円。2026年9月5日に確認。
50代前半で大卒が49.5万円というのは、課長級52.9万円に近い水準です。つまり大卒の平均は、役職に就いた人がかなり含まれた数字ということになります。一方、高卒の33.5万円は非役職者31.1万円のすぐ上です。
差を生んでいるのは学歴の証明書ではなく、「役職の段を上がったかどうか」です。そしてアパレルの場合、店長になっても等級が動かない会社があります。その仕組みはアパレル店長の給料が上がらない理由に書きました。
高卒がアパレルで金額を動かす、現実的な順番
学歴は変えられません。変えられるのは職種と、等級のある場所にいるかどうかです。効き幅の大きい順に並べます。
- 職種を移す
販売店員の下限1,311円に対して、会計事務従事者は1,624円、営業・販売事務従事者は1,583円、生産関連事務従事者は1,446円です。学歴要件が付きにくく、売場の経験がそのまま接続する職種があります。詳しくはアパレルから事務へ転職に書きました。
- 等級が動く会社に移る
役職手当だけが付く会社と、等級が上がる会社では、上がり方が根本的に違います。手当は基本給に入らないことが多く、賞与が基本給連動なら賞与にも反映されません。
- 資格で職種の入口を開ける
経理なら日商簿記。2級のネット試験は2025年4月〜2026年3月の合格率が32.9%で、統一試験の15.1%より高く、随時受験できます。学歴要件はありません。
簿記の出典:日本商工会議所「簿記 受験者データ」(kentei.ne.jp)。統一試験は第173回(2026年6月14日施行)で実受験4,821名・合格728名・15.1%、ネット試験は2025年4月〜2026年3月で141,072名・46,351名・32.9%。2026年9月5日に確認。
求人票の「大卒以上」は違法ではない
よく聞かれるので書いておきます。募集で年齢を制限することは原則として禁止されていますが、学歴の制限は禁止されていません。
事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第9条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)(e-Gov法令検索)。2026年9月5日に確認。
条文にあるのは「年齢」だけです。学歴は書かれていません。だから「大卒以上」と書かれた求人に高卒で応募しても、企業側は書類で落とすことができます。そこに時間を使うより、学歴要件のない職種を探すほうが早い。
まとめ
- 高卒と大卒の差は20代前半で3.9万円、50代前半で16.0万円。4.1倍に開く
- 高卒は30年で11万円、大卒は23.1万円上がる。スタートの差より伸び方の差が大きい
- アパレルの販売職では学歴が効きにくい。派遣の下限を決める通達に学歴の欄が無い
- 差を生んでいるのは学歴そのものではなく就く職種と役職の配分
- 高卒が金額を動かす順番は①職種を移す ②等級が動く会社に移る ③資格で入口を開ける
- 募集での年齢制限は原則禁止だが、学歴制限は禁止されていない
いま登録できるサービス
ここまでの内容を踏まえて、実際に求人を見られるサービスを挙げます。どれも登録と相談は無料です。最新の条件は各社の公式ページでご確認ください。
アパレル派遣なび
アパレル・ファッションの販売職に特化した人材派遣・職業紹介。運営は株式会社シーエーセールススタッフ(2003年4月設立/労働者派遣 派13-040737・有料職業紹介 13-ユ-040624)。案件提供元の説明では関東・中部・関西・九州が対象エリア(2026-09-02確認)。
アパレル派遣なびで求人を見る登録・相談は無料/最新の条件は公式ページでご確認ください