※この記事の求人件数は、アパレル・ファッション業界の求人サイト「Fashion HR」の検索結果を、筆者が職種・条件ごとに実際に数えたものです。応募条件は求人票の詳細ページを1件ずつ開いて読みました。件数は日々動きます(取得時点は本文と出典に明記しています)。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商です。
求人票の「未経験OK」は、アパレル未経験OKという意味ではありません。EC職の「未経験OK」16件を開くと、EC実務経験が必須と書かれているものが7件ありました。
販売からECへ移りたい30代の男性向けに、アパレル求人7,328件を職種と条件で数え直しました。実際に応募できる求人が何件あるのか、そこに何が書いてあるのかを、数えた数字だけで説明します。
「未経験OK」16件の中身を先に見る7,328件を絞っていくと、販売員が出せるEC求人は7件だった
まず全体像です。アパレル・ファッション業界の求人サイトで、募集中の求人は7,328件ありました。ここから「未経験OK」のチェックを入れると449件。全体の6.1%です。
ここまでは検索画面の操作だけでできます。問題はこの先です。職種を「Eコマース」に絞ると、未経験OKの求人は16件まで減ります。そして16件の応募条件を1件ずつ開いて読むと、販売員がそのまま出せるのは7件でした。

出典:Fashion HRの求人検索(2026年9月2日に取得)。職種・こだわり条件・勤務地の絞り込みごとに検索結果の表示件数を確認しました。
7件という数字だけを見ると絶望的に思えるかもしれませんが、そうではありません。7件が具体的に何を求めているかが分かれば、次に何をすればいいかも決まります。順番に見ていきます。
「未経験OK」は「EC未経験OK」。アパレル未経験OKではない
この記事でいちばん伝えたいのはここです。求人サイトの「未経験OK」というタグは、多くの場合その職種の実務が未経験でよいという意味で付いています。業界経験まで不問という意味ではありません。
実際に、未経験OKのタグが付いたEC求人の応募条件に、こう書いてあるものがありました。
EC実務は歓迎どまりで、必須なのは店長経験のほうです。この求人にとっての「未経験OK」は「ECをやったことがなくても構いません、ただし店は回せる人に限ります」という意味でした。タグだけを見て応募すると、なぜ落ちたのか分からないまま時間が過ぎます。
16件すべての【必須】欄を読んで分類すると、こうなりました。
| 【必須】に書かれていたこと | 件数 | 販売員が応募できるか |
|---|---|---|
| EC・ECモールの実務経験(1〜3年以上) | 7 | できない |
| ECアカデミーの卒業相当のスキル | 1 | できない |
| ショップマネージャー(店長)経験 | 1 | 店長経験があれば |
| 販売・接客・社会人経験(+PCの基本操作) | 7 | できる |
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7件のうち1件は、本文に「経験者のみ募集」とはっきり書いたうえで未経験OKのタグが付いていました。タグと本文が食い違っている求人は、実際に存在します。
判断材料はタグではなく【必須】の行です。ここに「EC」「実務経験」「〜年以上」のどれかが入っていたら、いまの自分は対象外です。開くのに10秒、落ちるのに3週間かかります。
16件に実際に書かれていた【必須】の文言を見る
EC実務が必須だったもの:「ECサイト・ECモールに関する実務経験」「ECショップマネージャーの実務経験2年以上」「ECサイト運営の実務経験(1年以上)」「EC運営経験(3年以上)」「ECサイトの運用経験」「Amazon・楽天等のEC運営、受注・在庫・発送管理、商品ページ更新のいずれか1〜2年以上」「EC運営の経験、お客様対応の経験+HTML・CSS・Photoshop・Illustrator」。販売・社会人経験で出せたもの:「社会人経験/基本的なPCスキル」「社会人経験2年以上/Word・Excel・PowerPoint」「ブランドに興味がある・ファッションが好き・基本的なPC操作」「販売やカスタマーサポート、営業など顧客折衝の経験」「社会人経験2年以上/販売経験もしくはEC経験(1〜2年)」「基本的なPCスキル、VLOOKUPなど基礎的なExcel関数」「正社員2年以上、または数値目標を持った接客・販売経験2年以上、またはExcel・スプレッドシートの実務経験」。
ウェブ系の中で、未経験に開いているのはECだけだった
「PCの仕事に移りたい」と考えたとき、EC以外の選択肢も一緒に見ているはずです。Webディレクター、Webデザイナー、デジタルマーケティング。ここも同じ手順で数えました。
| 職種 | 全求人 | 未経験OK | 率 |
|---|---|---|---|
| Eコマース | 204 | 16 | 7.8% |
| Webデザイナー | 118 | 1 | 0.8% |
| Webディレクター | 64 | 0 | 0% |
| デジタルマーケティング | 102 | 1 | 1.0% |
| システム | 48 | 0 | 0% |
| プロジェクトマネージャー | 10 | 0 | 0% |
| (参考)販売 | 2,811 | 262 | 9.3% |
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ウェブ系全体では389件のうち未経験OKが19件。そのうち16件がEコマース1職種に集まっています。Webディレクターとシステムは0件、Webデザイナーとデジタルマーケティングは1件ずつでした。
つまり「アパレルでPCの仕事に移る」という話は、実質EC運営に移れるかどうかという1本道です。制作や分析の側から入る道は、未経験には開いていません。ここを知らずにWebデザイナーの求人を10件見て落ち込む必要はありません。最初から募集がないだけです。
未経験の求人は、東京と大阪にしかなかった
16件を勤務地で数え直すと、東京都が13件、大阪府が3件。神奈川・愛知・福岡は0件でした。合計が16件になるので、この2都府県以外に1件もないということになります。
理由は考えれば当たり前で、EC運営は本社機能だからです。店舗は全国にありますが、ECの部署は本社にしかありません。地方で販売をしている人がECに移るなら、職種を変えるだけでなく引っ越しも同時に決めることになります。これは求人票の条件を見る前に、家族と話しておくべき部分です。
引っ越しが難しいなら、EC1本に絞るのは効率が悪すぎます。販売の経験がそのまま効いて、かつ求人が本社に集中していない職種を後半で挙げます。
応募できる7件が共通して求めていたのはExcelだった
ここからが実際に動く話です。販売員が応募できる7件の【必須】欄を並べると、5件がPCスキルやExcelを条件に挙げていました。そのうち2件は、関数の名前まで書いてありました。
注目してほしいのは「調べながらでも」という一言です。暗記していることを求めていません。その機能があると知っていて、必要になったときに自分で調べて使える状態であればいい、と書いてあります。この2つだけなら、週末2日で触れる範囲です。
- VLOOKUP(またはXLOOKUP)
品番の一覧に、別の表から商品名や在庫数をくっつける関数です。ECの仕事は「商品マスタと売上表を突き合わせる」作業の連続なので、これが最初に要求されます。
- ピボットテーブル
売上データを、ブランド別・サイズ別・週別に一瞬で集計し直す機能です。店舗で言えば「今週どの色が動いたか」を出す作業で、やっていること自体は販売員に馴染みがあります。
- 商品ページ用の写真と採寸
16件の中に「ささげ担当(撮影・採寸)」という求人がありました。必須は「ファッションが好き」「基本的なPC操作」だけで、一眼レフでの撮影経験やPhotoshopは歓迎条件です。EC職のいちばん広い入口はここです。
この2つの関数を扱う本は1冊で足ります。EC求人の必須欄に出てくる範囲は、入門書の前半で終わります。
先に持っておくと効くのは資格ではなく、面接で見せられる1枚の表です。自分の店の売上を月別・カテゴリ別に集計したものが1枚あれば、「Excelは使えます」より強く伝わります。数字の出し方についてはアパレル店長からの転職|職務経歴書に書く3つの数字で詳しく書いています。
販売の経験がそのまま効く職種は、EC以外にもある
職種ごとの未経験OK率をすべて出したときに、いちばん高かったのはECではありませんでした。
| 職種 | 全求人 | 未経験OK | 率 | 販売経験がどう効くか |
|---|---|---|---|---|
| ディストリビューター | 37 | 9 | 24.3% | どの店に何を何枚送るかを決める仕事。店頭の売れ方が読める人が強い |
| 販売 | 2,811 | 262 | 9.3% | いまの延長。件数がいちばん多い |
| カスタマーサービス | 60 | 5 | 8.3% | 接客をそのまま電話・メールに移す |
| Eコマース | 204 | 16 | 7.8% | 商品を売り場に並べる感覚が、そのままページ作りに効く |
| マーケティング | 241 | 12 | 5.0% | 実際に売れた理由を知っている強みがある |
| 貿易・物流・オペレーション | 93 | 4 | 4.3% | 在庫と納期の感覚が効く |
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ディストリビューターは37件中9件が未経験OK。率でいえばECの3倍です。各店の在庫を見て、どの店にどの商品を何枚振り分けるかを決める職種で、店頭で「この色はうちなら売れる」と分かっていた人の感覚がそのまま仕事になります。求人の絶対数は少ないので毎日は出ませんが、狙う職種のリストに入れておく価値はあります。
ECが向いている人
- 東京か大阪に住んでいる、または引っ越せる
- 数字を見て打ち手を変えるのが好き
- 撮影・採寸・原稿づくりを面倒だと思わない
ECより先に別を見るべき人
- 地方から動けない
- Excelに一切触りたくない
- 人と話す仕事のほうが力が出る(→カスタマーサービス)
どの職種が自分に向いているかは、いま何ができるかよりこの先どう働きたいかで決まります。服の仕事を続けるのか、業界ごと変えるのかを含めて整理したい人は、下の診断で先に方向を決めてから求人を見てください。
アパレル転職診断で向いている職種を見る 2分・登録不要 / 服の仕事を続ける道と、業界を変える道の両方が出ます応募する前に、求人票をこの順番で読む
ここまでの内容を、求人票1枚を前にしたときの手順にまとめます。
- タグは飛ばして【必須】欄まで下げる
「未経験OK」「学歴不問」は判断材料になりません。求人票は下のほうに本音が書いてあります。
- 「実務経験」「〜年以上」の文字を探す
この2語が【必須】側にあれば、いまの自分は対象外です。歓迎条件の側にあるなら応募できます。ここだけで大半が振り分けられます。
- PC・Excelの記述を見て、足りない分を書き出す
VLOOKUPとピボットテーブルは、名指しで出てきます。読めない用語があったら、応募を諦めるのではなく、その週末に触ってみる対象としてメモします。
- 勤務地を先に確認する
EC職は本社にしかありません。通えるか、引っ越せるかを最初に決めておくと、無駄な応募が消えます。
3つ以上あてはまるなら、ECは現実的な選択肢です
- 東京か大阪に通える、または引っ越せる
- 店の売上を自分でExcelにまとめたことがある
- 販売か接客の経験が2年以上ある
- 商品の写真を撮ったり、採寸したりするのが苦ではない
- 1年後に年収が一度下がることを受け入れられる
→ 2つ以下なら、ECより先にディストリビューターやカスタマーサービスを見たほうが早く決まります。
販売からECへの転職は、狭い代わりに道筋がはっきりしています。求人が少ないのは事実ですが、求められているものが7件とも似ているので、準備すべきことが1つに絞れるからです。まず自分がどの方向に進むのかを決めて、そこから求人を見てください。
診断でいまの選択肢を確かめる アパレルの経歴から、続ける道と変える道を出します