※この記事に出てくる法律・指針の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)と厚生労働省の公式PDFを実際に開いて確認したものです。求人件数は筆者が求人サイトの検索を集計しました。調査した日付は本文の各出典に書いています。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。
紹介予定派遣は正社員への近道ではなく、6か月で終わる試用期間です。アパレルの派遣求人4,231件を数えたところ、この枠は28件しかありませんでした。
「出るまで待つ」には数が少なすぎます。出てきたら使う枠として扱い、そのかわりこの枠にしかない2つの権利を取りこぼさないでください。元アパレル販売員で、いまは買取業を営む筆者が、法令と厚生労働省の指針の条文だけを根拠に整理します。
まず何が違うのか見る紹介予定派遣は「終わりの日が決まっている派遣」
紹介予定派遣は、法律にきちんと名前のある働き方です。労働者派遣法の第2条第4号が、こう定めています。
ふつうの派遣は「派遣で働く」だけで終わります。紹介予定派遣は、そこに職業紹介という工程がくっついている点が違います。派遣会社が、あなたをその店に紹介し、そこであなたと店が直接の雇用契約を結ぶ。この最後の一手までがセットになった枠です。
そして、この枠にはふつうの派遣にはない天井があります。厚生労働省の指針が、派遣元と派遣先の両方に同じことを求めています。
| だれに向けた決まりか | 何を定めているか | 出どころ |
|---|---|---|
| 派遣先(働く店の側) | 紹介予定派遣を受け入れるに当たっては、6箇月を超えて、同一の派遣労働者を受け入れないこと | 派遣先が講ずべき措置に関する指針 第2の18(1) |
| 派遣元(派遣会社の側) | 紹介予定派遣を行うに当たっては、6箇月を超えて、同一の派遣労働者の労働者派遣を行わないこと | 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 15(1) |
| (参考)ふつうの派遣 | 同一の組織単位で、同一の派遣労働者に3年を超えて派遣してはならない | 労働者派遣法 第35条の3 |
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ふつうの派遣の上限は3年。紹介予定派遣は6か月です。半分ではなく、6分の1です。つまりこの枠は、だらだら続けられないように最初から設計されています。試用期間を派遣という形でやっていると考えると、いちばん実態に近くなります。

求人票が紹介予定派遣かどうかは、必ず教えてもらえる
「気づいたら紹介予定派遣だった」ということは、法律上は起きません。派遣法第32条第1項が、派遣会社に対して、紹介予定派遣の派遣労働者として雇い入れようとするときはあらかじめその旨を本人に明示しなければならないと定めているからです。
すでに派遣で働いている人を、途中から紹介予定派遣の対象にする場合はさらに厳しく、同条第2項で本人の同意まで必要とされています。勝手に切り替えられることはありません。
アパレルにこの枠はどれだけあるのか。数えてみた
制度の説明はどのサイトにも書いてあります。書かれていないのは「で、自分が探しているアパレルの求人に、その枠は実際にあるのか」という一点です。そこで、アパレル・ファッションに強い派遣専門の求人サイト「派遣なび」の掲載求人を、絞り込みごとに数えました。

出典:派遣なび(haken.ca-ss.jp)の求人検索を2026年9月2日に集計。件数は日々入れ替わります(調査時点)。
アパレルの派遣求人およそ151件に1件。これが紹介予定派遣の出現率です。求人サイトを毎日開いて、この枠が出てくるのを待つという戦い方は、現実的ではありません。
枠そのものは悪くありません。ただし数が少なすぎて、狙って当てにいける対象ではありません。ふつうの求人を探しながら、目に入ったときだけ拾う。優先順位はそこまでです。
28件の中身を全部見た
28件は1件ずつ内容を取得して、共通点を出しました。
いちばんはっきり出たのは期間の偏りでした。求人サイトの勤務期間の区分で見ると、28件は「3カ月以上(長期)」が9件、「6カ月以上(長期)」が19件。「10日以内(単発)」と「3カ月未満(短期)」は1件もありませんでした。
これは考えてみれば当たり前で、紹介予定派遣は最後に直接雇用へつなぐための枠です。数日で終わる仕事に、この形を使う理由がありません。単発・短期で働きたい人にとって、この枠は最初から選択肢に入らないと割り切ってしまって大丈夫です。
地域はかなり偏っている
| エリア | 件数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 東京 | 9 | 新宿4/渋谷2/銀座・有楽町1/東京・日本橋1/青山一丁目・表参道1 |
| 東海 | 9 | 栄5/名古屋(名駅)4 |
| 九州沖縄 | 8 | 天神5/博多1/熊本1/沖縄1 |
| 北信越 | 2 | 富山2 |
| 関西・北海道・東北・中国四国 | 0 | この調査時点では掲載なし |
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28件しかないので、たまたまの偏りである可能性は十分あります。それでも、住んでいる場所によっては、そもそも母数がゼロになるという事実は知っておいて損がありません。関西で紹介予定派遣を待ち続けるのは、この調査を見るかぎり分の悪い賭けです。
ふつうの派遣との最大の違いは「働く前に面接がある」こと
ここがこの記事でいちばん覚えて帰ってほしいところです。ふつうの派遣では、派遣先があなたを事前に面接することは認められていません。
派遣法第26条第6項が、派遣先に対して「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と定めています。そしてこの条文には、はっきりと「紹介予定派遣を除く」という但し書きが付いています。
厚生労働省の派遣先向けの指針は、その中身をもっと具体的に書いています。
派遣先が講ずべき措置に関する指針 第2の3
面接なしで決まる
選考なし- 派遣先による事前面接は認められていない
- 履歴書を送らせることもできない
- スキルと条件が合えば就業が決まる
- そのかわり直接雇用の約束はない
働く前に選考がある
面接あり- この枠だけ事前面接が認められている
- 履歴書の送付を求められることがある
- 落ちることがある
- そのかわり直接雇用が予定されている
「面接がある」を不利だと感じる必要はありません。面接があるということは、時給や条件ではなく、あなた自身を見て選んでいるということです。店頭の販売職で、接客の受け答えや身だしなみを直接見てもらえるのは、書類だけで判断されるよりずっと有利に働きます。30代で経験があるなら、なおさらです。
直接雇用の条件は、働き始める前に決まっている
もうひとつ、知られていない条文があります。派遣法第26条第1項第9号は、労働者派遣契約に定めるべき事項として、紹介予定派遣の場合には「当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件」を挙げています。
つまり、直接雇用に切り替わったあとにどんな仕事をして、どういう条件で働くのかは、あなたが働き始めるより前に、派遣会社と店の間の契約書に書かれているということです。
これは実務でそのまま使えます。応募の段階で「直接雇用後の雇用形態と労働条件を教えてください」と聞いてください。「まだ決まっていません」という答えが返ってくるのは、契約の書き方としておかしいことになります。ここで正社員なのか契約社員なのかが曖昧なままエントリーすると、6か月後に「うちの直接雇用は契約社員です」となっても文句が言えません。
直接雇用に至らなかったとき、理由を書面でもらえる
紹介予定派遣は、必ず直接雇用になる枠ではありません。指針が定めているのは「6か月を超えて受け入れない」ことまでで、雇用を約束する決まりはどこにもありません。
そのかわり、うまくいかなかったときのための決まりがあります。派遣元向けの指針の15(2)です。
- 派遣先が「紹介はいりません」または「雇いません」と判断する
職業紹介を受けることを希望しなかった場合と、紹介を受けた派遣労働者を雇用しなかった場合の両方が対象です。
- あなたが派遣会社に理由を求める
ここが要です。指針は「派遣労働者の求めに応じ」と書いています。黙っていると始まりません。
- 派遣会社が派遣先に、理由の明示を求める
派遣先は、派遣元の求めに応じて、書面・FAX・電子メール等でその理由を明示することとされています(派遣先指針 第2の18(2))。
- 派遣会社が、その理由をあなたに明示する
指針は「派遣先から明示された理由を、派遣労働者に対して書面…により明示すること」としています。口頭で流されるものではありません。
この決まりは、契約書に書くことまで求められています。労働者派遣法施行規則の第22条の2第1号が、紹介予定派遣の契約書面に理由の明示に関する事項を記載しなければならないとしているからです。つまり、あなたが知らないだけで、その約束はすでに紙になっています。
ふつうの派遣にも、直接雇用につながる決まりはある(3つ)
紹介予定派遣ほど直接ではありませんが、ふつうの派遣にも入口はあります。①派遣先は、同じ組織単位で1年以上受け入れた有期の派遣労働者について、その後その仕事に人を雇い入れるときは、その人を雇い入れるよう努めなければならない(派遣法第40条の4)。②派遣先は、1年以上受け入れている派遣労働者に対して、正社員の募集をするときはその内容を周知しなければならない(同第40条の5第1項)。この②は努力義務ではなく義務です。③3年の期間制限にかかる人に対して派遣会社が取るべき雇用安定措置の一つとして、紹介予定派遣の対象とすることが挙げられています(施行規則第25条の5第2号)。つまり、いま派遣で働いている人が派遣会社に「紹介予定派遣にしてほしい」と相談するのは、制度の想定内の行動です。
応募する前に確かめる4つ
- 直接雇用後の「雇用形態」を文字で確認する
正社員なのか、契約社員なのか、パートなのか。派遣法第26条第1項第9号により、これは契約に定めておくべき事項です。曖昧なまま進めない。
- 直接雇用後の給与を、時給ではなく年収で聞く
派遣中の時給は求人票に出ています。今回数えた28件の下限は中央値で1,400円でした。しかし切り替わったあとは月給制になることが多く、時給とは別の話になります。比べるべきはそちらです。
- 派遣として働く期間が何か月かを確認する
上限は6か月ですが、3か月で切り替える設計もあります。短いほど早く決着し、長いほどこちらも店を見極める時間が取れます。どちらが良いかは、あなたがその店をどれだけ知っているかで変わります。
- 「紹介予定派遣」と明示されているかを見る
派遣法第32条第1項により、明示は派遣会社の義務です。求人票に書かれていないのに面接があると言われたら、そこはいったん確認したほうがいい場面です。
2つ以上あてはまるなら、この枠はあなたに合っています
- その店・そのブランドで長く働きたいと決まっている
- 職務経歴書だけだと弱いが、会って話せば伝わる自信がある
- いきなり正社員で入るには、店の中を先に見ておきたい
- 6か月後に結論が出ることを、不安ではなく期限として使える
→ 2つ以上なら、見つけたときに迷わず応募して大丈夫です。ただし前提として、母数が151件に1件であることは忘れないでください。
向いている人と、向いていない人
向いている人
- アパレルの経験があり、店頭で見せられるものがある
- 働く場所を決めてから正社員になりたい
- 面接があることを、むしろ有利だと感じる
- 東京・名古屋・福岡で探している
向いていない人
- 単発や短期で働きたい(この枠には1件もない)
- すぐに安定した収入がほしい
- 複数の店を経験してから決めたい
- 関西・北海道・東北・中国四国で探している
新卒で入ったアパレルを8か月で辞めたとき、いちばんこたえたのは「なぜ自分が合わなかったのか」が最後まで言語化されなかったことでした。店の空気は入ってみないと分からないし、こちらの適性も働いてみないと分からない。だからこそ、6か月で結論が出て、しかも理由を書面でもらえる仕組みには意味があると思っています。制度として弱いのは、そこに至る求人の数のほうです。
紹介予定派遣は、よくできた仕組みです。事前に面接ができて、条件が先に決まっていて、断られたら理由をもらえる。読者の側から見て、これだけ守られている入口はほかにありません。問題は制度の中身ではなく、アパレルでの出現率が151件に1件しかないことです。だから作戦としては、これを本命に置かない。ふつうに探しながら、視界に入ったときに確実に拾う。それがいちばん損をしない構え方です。
紹介予定派遣なら必ず正社員になれますか?
紹介予定派遣は何か月働くのですか?
派遣なのに面接があるのはおかしくないですか?
直接雇用にならなかった理由は教えてもらえますか?
出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第2条第4号・第26条第1項第9号・第26条第6項・第32条・第35条の3・第40条の4・第40条の5)/同法施行規則(第22条の2第1号・第25条の5第2号)=e-Gov法令検索(デジタル庁)/厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の3・18/「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」15。いずれも2026年9月2日に取得。求人件数は同日に派遣なび(haken.ca-ss.jp)の求人検索を集計したもので、日々入れ替わります(調査時点)。
