※この記事の後半で紹介する「ShockMania」は、当サイト運営者が運営するG-SHOCK・カシオ腕時計の買取サービスです。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、その経験に基づいて書いています。扱いかたと数字は、セイコーとシチズンの公式ページを実際に開いて確認しました(確認日:2026年10月9日)。
時計屋の試着で守る線は3つだけです。サイズは指1本、りゅうずは触らない、外すときは留め具を閉じて置く。
この3つは、気分や店の空気ではなくメーカーが公式に書いている基準です。逆にいえば、それ以外はほとんど自由です。「着けてみてもいいですか」は失礼な言葉ではありません。
行く前にやることから見る店に行く前に、3つだけ決めておく
試着で困る人のほとんどは、店に入ってから考え始めています。先に決めておくのは3つだけです。
- 手首の太さを測っておく
メジャーがなければ、紙テープを巻いて定規に当てるだけで十分です。これがないと、店頭で「この長さで大丈夫ですか」と聞かれたときに答えられません。
- 袖口の広い服で行く
細い袖の服だと、時計を腕に通す動作そのものがやりにくく、袖の金属ボタンがケースに当たります。一番よくある、自分でつけてしまう傷です。
- 水にどこまで入れるかを決める
防水の表示は「あとから足せない性能」です。買ってから後悔しやすいのはここなので、先に決めます。基準は下の表のとおりです。
防水の表示は、文字板か裏ぶたに書かれています。「3気圧だからシャワーも平気だろう」という読み替えは、公式の記載とは合いません。
| 分類 | 仕様 | 文字板・裏ぶたの表示 | 使えるシーン |
|---|---|---|---|
| 非防水 | 非防水 | 表示なし | 水に触れる前提では使えない |
| 日常生活用防水 | 3気圧 | WATER RESIST | 汗・洗顔の水滴・雨。水圧の変化が激しい条件では使えない |
| 日常生活用強化防水 | 5気圧 | WATER RESIST 5bar/WR 50 | 水仕事・一般水泳。素潜りには使えない |
| 日常生活用強化防水 | 10〜30気圧 | WATER RESIST 10bar/WR 100 ほか | 同上の表記で気圧が上がる |
| ダイバーズウオッチ | 潜水用200m・300m | 200m/300m | ISO6425規格に適合したもの |
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出典:シチズン公式「防水性能について」(確認日 2026年10月9日)
「着けてみてもいいですか」で通る。店員が見ているのは別のところ
時計売り場が入りにくいのは、ガラスケースに鍵がかかっていて、頼まないと何も始まらないからです。服屋のように勝手に手に取れません。つまり声をかけることが前提の売り場で、店員はそれを待っています。
言い方は「これ、着けてみてもいいですか」で十分です。機種名が言えなくても、指をさせば通じます。予算を聞かれたら正直に答えたほうが早く終わります。背伸びした額を言うと、見たくもないものを出されて帰れなくなります。
販売の側にいたころ、面倒だと思ったお客さんは「たくさん試着する人」ではありませんでした。困るのは、黙って20分立っていて、最後に何も言わずに帰る人です。試着を頼まれるのは、こちらからすれば仕事が始まる合図なので、むしろ歓迎です。
サイズを確かめずに買って、あとからバンドを詰める手間とお金が発生するほうが、店にとっても面倒です。「今日は決めません」と先に言っておけば、お互いに気が楽になります。
触っていい操作と、触ってはいけない操作
試着中に壊すとしたら、ほとんどがりゅうず(横についているつまみ)の操作です。しかも「いつ触るか」で危険度が変わります。

セイコーの公式ページには、日付と曜日を動かす部品が午後9時前後から午前4時前後にかけて、1日ぶんだけゆっくり回って切り替わると書かれています。この間は歯車がかみ合っているので、そこへりゅうずから力を加えると二重にかかります。結果として部品が壊れたり、翌日になっても日付が変わらなくなることがあります。
閉店前の時計売り場は、まさにこの時間帯です。自分の時計でもやってはいけない操作を、他人の商品でやる理由はありません。
| 操作 | 自分の時計 | 店頭の商品 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 腕に通して着ける・外す | ○ | ○ | 試着そのもの。遠慮はいらない |
| ベゼル(外枠)を回す | ○ | △ 店員に聞く | 逆回転防止の機種がある。無理に戻すと壊れる |
| 日付・曜日を送る | △ 時間帯による | × | 午後9時〜午前4時は部品が破損する(セイコー公式) |
| 時刻を合わせる | ○ | × | 自分の持ち物になってからでいい |
| クロノグラフのボタンを押す | ○ | △ 店員に頼む | 押す順番が決まっている機種がある |
| ねじロックのりゅうずを緩める | △ | × | 締め直さないと防水性能が出ない(シチズン公式) |
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出典:セイコー公式「カレンダーの合わせ方」/シチズン公式「防水性能について」(いずれも確認日 2026年10月9日)
腕に乗せたら見る4か所。公式の「ゆるさ」は指1本
見た目の好みは自分で決めればいいので、ここではあとから直せないところだけ挙げます。
「時計を腕につけた状態で、指1本が入る程度が適当」。多少の余裕をもたせて通気性をよくする、というのがセイコー公式の書き方です。ぴったり巻くのは正解ではありません。夏に蒸れてかぶれるのは、たいてい締めすぎが原因です。
- ラグが手首からはみ出していないか
ラグはバンドが付く角の部分です。ここが手首の幅をはみ出すと、何を着ても「借りてきた時計」に見えます。ケース径の数字より、この見え方です。
- ケースの厚みが袖に入るか
厚い時計はジャケットの袖口に引っかかります。試着のときに、袖のある服を着ていないと分からない項目です。だから袖の広い服で行きます。
- 留め具の位置が手首の裏の中心に来るか
ずれていると、デスクに手を置いたときに留め具の角が当たります。擦れて真っ先に傷が出るのがここです。
- 文字盤が読めるか
店の照明は明るすぎます。少し陰になる場所に手首を下ろして確かめてください。黒文字盤に黒い針は、屋内だと意外に読めません。
出典:セイコー公式「金属バンドの初回の長さ調整」/シチズン公式「バンドの長さ調整・交換」(いずれも確認日 2026年10月9日)
外すとき・置くときに壊す。公式のNGが3つある
事故が多いのは、着けるときではなく外したあとです。シチズンが公式に「やってはいけない扱い」として挙げているもののうち、試着の場面でそのまま起きるのが3つあります。
- 三つ折れの留め具を開いたまま置かない
公式が挙げているのは「開いたまま鞄にしまう」ケースですが、カウンターに置く場合も同じです。開いた留め具は細い金具が立った状態なので、上から何かが乗ると曲がります。査定の現場でも、留め具の歪みは直しにくい減点項目でした。
- 革バンドを反らせすぎない
外すときに、革を大きく反らせて引き抜く人がいます。革を傷める原因だと公式が書いています。適度に反らせる程度にとどめます。他人の商品なら、なおさらです。
- 買ったあと、裏ぶたの保護シールは剥がす
新品の裏ぶたには保護シールが貼られていることがあります。貼ったままにすると、たまった汚れがかぶれや金属腐食の原因になります。きれいに保てそうで、逆効果です。
家に帰ってからの話になりますが、外した時計をスマホやイヤホンと同じ鞄に入れないことも公式のNGです。スピーカーの磁石が時刻を狂わせるので、およそ5cm以上は離します。狂ったときの直し方は修理の流れと期間で触れています。
出典:シチズン公式「避けてほしいこと(腕時計の扱いNG集)」(確認日 2026年10月9日)
買う直前に見る紙2枚と、店で買うと得なこと
買うと決めたあとに確認するものが2つあります。どちらも、あとからでは取り返しがつきません。
レジを離れる前に、この2つを見る
- 保証書に、販売店名・購入日などの必要事項が記入されているか
- レシートや納品書を受け取ったか(保証書とセットで保管する)
→ シチズンの公式ページには、記入のない保証書は無効であること、保証書は再発行しないことが明記されています。その場で開いて確認するのが唯一の防ぎ方です。
国内保証書の期間はお買い上げ日より1年、対象は時計機械(ムーブメント)です。そして使用中に生じた小傷や汚れの復元は保証の対象外と明記されています。ガラス・ケース・バンドの傷は、保証では直りません。
もうひとつ、店で買う実利がバンド調整です。初回の長さ調整はお買い上げ店に依頼するのが原則だと、セイコーが公式に案内しています。通販や贈り物で頼めない場合はメーカーの窓口に送ることになり、送料は自己負担、お買い上げ店以外だと有料になることがあります。
通販で買う
調整は別手配- 実物を腕に乗せずに決めることになる
- 初回のバンド調整を頼む先を自分で探す
- 送付するなら送料は自己負担
- 他店だと有料になることがある
店頭で買う
その場で完結- 指1本の基準を見ながら詰めてもらえる
- 保証書の記入をその場で確認できる
- 中留が自分で調整できる型か聞ける
- 次に長さを変えたいときも同じ店に行ける
価格だけを比べると通販が有利に見えます。ただし初回のバンド調整を外で頼む手間と費用、保証書の記入漏れを自分で確かめる手間が乗ります。そこまで含めて比べてください。
出典:シチズン公式「保証書の種類・保証規定」/セイコー公式「金属バンドの初回の長さ調整」(いずれも確認日 2026年10月9日)
傷は保証で直らない。だから買ったあとに守る
小傷は保証の対象外です。買取の現場から見ても同じで、外装の状態は査定額にそのまま出ます。査定員が最初に光を当てる場所は、だいたい決まっています。
※このメーターは公式の数値ではなく、筆者が査定員として見てきた「傷が見つかる頻度」の体感です。金額の目安は出していません。
傷の多くは、外したあとに付きます。机に直接置く、他の金属と同じ引き出しに入れる、鞄の中で鍵と転がす。この3つをやめるだけで数年後が変わります。高い道具より、置き場所を決めるほうが効きます。
2本以上持つなら、収納ケースのほうが結果的に安くつきます。仕切りで金属どうしが当たらず、留め具を閉じたまま寝かせられるのが大きい点です。公式がNGに挙げた「開いたまましまう」を、置き方で防げます。
クロスは1枚で足ります。試着のあとに自分の指紋を拭いて返すのは、店員が次の人に出す手間を省く行為でもあります。買ったあとは、肌に触れる裏ぶたとバンドの内側に使います。汗や汚れを付けたままにしないこと自体が、公式の注意点です。
まとめ:今日覚えて帰るのは3つ
時計屋が入りにくいのは、作法が分からないからです。その作法は、ほとんどがメーカーの公式ページに書いてあります。
- サイズは「指1本」
ぴったりではなく、指1本が入る余裕。セイコーが公式に示している唯一の数値基準です。
- りゅうずは触らない
とくに午後9時から午前4時のカレンダー送りは、自分の時計でも部品が壊れます。店頭の商品なら、なおさら触りません。
- 外したら留め具を閉じて置く
開いたまま置くと中留が壊れます。革バンドは反らせすぎない。この2つは公式のNG集そのままです。
そして、声をかけることを怖がらないことです。試着を頼むのは、店員にとって仕事が始まる合図です。
