筆者は医師ではありません。この記事に出てくる治療の評価は、すべて日本皮膚科学会が公開しているガイドラインの原文(PDF)を実際に開いて確認したものです。確認できなかったことは書いていません。情報の時点は本文中の出典に明記しています。
ニキビ跡を消す施術のうち、学会が「選択肢の一つ」として推奨しているのは1つだけ。しかもそれは、へこんだ跡には使えません。
日本皮膚科学会のガイドラインは、ニキビ跡の治療に推奨度を付けています。へこんだ跡(萎縮性瘢痕)については「現時点で推奨できる治療法はない」と本文に書かれています。美容皮膚科に行く前に、自分の跡がどの型かだけは確かめてください。
まず自分の跡の型を調べるまず、自分の「跡」がどれかを見分ける
ニキビ跡という言葉は、日常会話ではかなり広く使われます。しかし医学の世界では定義が決まっていて、何を「跡」と呼ぶかで治療の答えが正反対になります。
日本皮膚科学会のガイドラインは、ニキビ跡(痤瘡瘢痕)をこう定義しています。「炎症性皮疹、その他の皮疹が軽快したあとに生じる、皮膚の陥凹(萎縮性瘢痕あるいは陥凹性瘢痕と呼ぶ)、隆起(肥厚性瘢痕とケロイドを含む)、色素沈着からなる症状をいう」。つまりへこみ・盛り上がり・色素沈着の3つです。

そして、ここが多くの人の勘違いするところですが、「赤み」はこの3つに入っていません。赤みはガイドラインの中で「炎症後の紅斑」という別の言葉で定義されていて、その説明は「炎症性皮疹が軽快し炎症所見が消失した後に、一時的に残る紅斑をいう」です。定義の中に「一時的に」と書かれているのが要点です。
鏡の前で、明るい場所で確認してください
- 指で軽く横に引っぱると、影が浅くなる、または消える
- 顔を斜めから見ると、そこだけ影ができている
- 触ると硬く、まわりの皮膚より盛り上がっている
- 平らだが、茶色または赤みが残っている
→ 1つ目と2つ目が当てはまるなら「へこみ」、3つ目なら「盛り上がり」、4つ目だけなら「色素沈着か、一時的な赤み」です。
学会が推奨度を付けた、ニキビ跡の治療6つ
ガイドラインでは、治療ごとに「クリニカルクエスチョン(CQ)」という形で有効性が検討され、A〜Dの推奨度が付きます。ニキビ跡に関係するものを、原文から抜き出して並べました。
| 治療 | 対象になる跡 | 推奨度 | 保険 |
|---|---|---|---|
| ステロイド局所注射CQ31 | 盛り上がり(肥厚性瘢痕) | C1 | 記載なし |
| トラニラスト内服CQ30 | 盛り上がり(肥厚性瘢痕) | C2 | 薬自体は適用あり |
| 外科的切除・冷凍凝固療法CQ34 | 盛り上がり・ケロイド | C2 | 冷凍凝固は適用なし |
| 充填剤注射(コラーゲン・ヒアルロン酸)CQ32 | へこみ(萎縮性瘢痕) | C2 | 適用外 |
| ケミカルピーリングCQ33 | へこみ(萎縮性瘢痕) | C2 | 適用外 |
| レーザー治療CQ42 | ニキビ・ニキビ跡 | C2 | 適用なし |
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出典:公益社団法人 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」(日皮会誌133(3), 407-450, 2023)CQ30〜CQ34・CQ42。2026年9月22日にPDF原文を確認。
推奨度の意味も、同じガイドラインの中で決められています。ここを知らないと表が読めません。
- A = 行うよう強く推奨する
有効性を示す質の高い研究があるもの。ニキビ跡の治療に、この評価が付いたものはありません。
- C1 = 選択肢の一つとして推奨する
根拠は強くないが、選んでよいという位置づけ。ニキビ跡では6つのうち1つだけです。
- C2 = 十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない
有効というエビデンスがない、あるいは無効というエビデンスがある状態。クリニックで宣伝されている施術の多くがここに入ります。
へこんだ跡:推奨できる治療は、現時点でない
いちばん多い相談がこれで、いちばん残酷な答えになるのもここです。ガイドラインのCQ32の解説には、次の一文があります。
萎縮性瘢痕とは、この記事でいう「へこみ」です。クレーター状のニキビ跡に対して、学会が推奨できると判断した治療は1つもないと書かれています。
充填剤注射・ケミカルピーリング・レーザーは、いずれも推奨度C2です。自費で受けること自体は自由ですが、学会が推していないことを知ったうえで決めてください。
個別に見ると、理由も書かれています。充填剤注射(CQ32)は、海外では改善したという報告があるものの「本邦での報告はなく、十分な根拠となる報告も少ない」。ケミカルピーリング(CQ33)は、海外の比較試験で効果は報告されているが「23人中7人の脱落症例があり、また4人に長期の紅斑・落屑が観察されている」ため、副作用も含めてC2。レーザー治療(CQ42)は改善の報告自体はあるものの、「設備の問題、本邦での検討が不十分であり、保険適用もないことから推奨はしない」とされています。
それでも受ける価値がある人
- 効果が保証されないことを理解している
- 複数回・数十万円の費用を許容できる
- 副作用の説明を受けて納得した
いま受けるべきでない人
- 「1回で消える」と説明された
- いまも新しいニキビができ続けている
- カウンセリング当日に契約を迫られている
盛り上がった跡:6つのうち、C1があるのはここだけ
ニキビ跡がしこりのように硬く盛り上がっているタイプ(肥厚性瘢痕・ケロイド)には、表のとおり推奨度C1の治療が1つあります。ステロイドの局所注射(CQ31)です。
ガイドラインの推奨文は「痤瘡の肥厚性瘢痕に、ステロイド局所注射を選択肢の一つとして推奨する」。ニキビ跡の治療で唯一、C1が付いています。
解説にはこう書かれています。「ステロイド局所注射は、ケロイドや肥厚性瘢痕の治療法として確立しており」、液体窒素による冷凍凝固療法との比較試験では「冷凍凝固療法とステロイド局所注射が同等の有効性を示していた」。ただし冷凍凝固療法のほうは「ケロイドや肥厚性瘢痕の治療法として一般的ではなく、保険適用はないことを考慮しなければならない」とされ、C2にとどまっています。
※メーターは上記ガイドラインの推奨度(C1・C2)を視覚化したもので、効果の大きさを示すものではありません。
トラニラストという飲み薬について補足します。この薬は「ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に保険適用を有している」薬ですが、ニキビの肥厚性瘢痕に対しては「臨床試験は行われていないため、推奨する十分な根拠はない」としてC2です。薬に保険が効くことと、ニキビ跡に効くと証明されていることは、別の話になります。
赤み・色素沈着:跡と呼ぶ前に、待つ期間がある
冒頭に書いたとおり、赤みはガイドライン上「一時的に残る紅斑」と定義されています。時間の経過で引くことが前提になっている状態なので、ここに高額な施術を入れるのは順番として早すぎます。
炎症後の紅斑は一時的なものと定義されています。ここで判断せず、まず新しいニキビが出ない状態をつくってから考えてください。
赤みに対してよく挙がるビタミンC外用(CQ36)も、推奨度はC2です。推奨文は「炎症性皮疹、炎症後の紅斑に、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルとL-アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウムの外用を行ってもよいが、推奨はしない。但し、保険適用外であることに配慮する必要がある」。
それでも自費で受けるなら、厚労省の4つを先に
ここまで読んでも受けたい、という判断は当然ありえます。その場合、厚生労働省が美容医療を受ける前のチェックとして公開している4項目を、カウンセリングの前に確認してください。4つとも「医師に聞けているか」を問う形になっています。
- 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できますか?
商品名だけでなく、何が入っていて何をするものかを、自分の言葉で言えるか。
- 効果だけでなく、リスクや副作用などについても知り、納得しましたか?
ケミカルピーリングでは長期の紅斑・落屑が報告されています。聞いていないなら聞いてください。
- ほかの方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?
1つの施術だけを勧められている場合、この項目が満たされていません。
- その美容医療は「今すぐ」必要ですか?
その日のうちに契約させる形になっていないか。ここが一番効きます。
出典:厚生労働省「確認してください!美容医療の施術を受ける前にもう一度!」(2026年9月22日確認)
順番が逆になっていないか。跡を作らせない側には推奨度Aがある
ここまでの表を、もう一度引いて見てください。跡を消す治療にはAもBも付いていません。一方で、跡になる前の段階には推奨度Aの治療があります。
できてしまった跡への施術
C1 が1つ- へこみには推奨できる治療なし
- ほとんどが保険適用外
- 効果の報告は本邦で不十分
いまあるニキビを止める治療
A が3つ- アダパレン0.1%ゲル
- 過酸化ベンゾイル2.5%ゲル
- 両者の配合ゲル
出典:同ガイドライン CQ27・CQ28・CQ29。いずれも「炎症軽快後の寛解維持に……強く推奨する」(推奨度A)。
ガイドラインは治療期間の目安も示しています。「急性炎症期の治療期間は最大3カ月間を目安として、維持期の治療へ移行する」。炎症を3か月で抑え、そのあとは再発させない維持期に移るというのが、跡を増やさない道筋です。
新しいニキビが出続けている限り、跡は増えます。推奨度Aが付いているのは、そちらの治療です。
毎日の土台は、ノンコメドジェニック表示のあるもので揃える
スキンケアでニキビ跡が消えることはありません。ただしガイドラインは、スキンケアにも1つだけC1を付けています。CQ44の推奨文は「痤瘡患者のスキンケアに痤瘡用基礎化粧品の使用を選択肢の一つとして推奨する」。そして条件として、「低刺激性でノンコメドジェニックな痤瘡用基礎化粧品を選択するなどの配慮が必要である」と書かれています。
つまり選ぶ基準は、ブランドでも値段でもなく「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示があるかどうかです。これは「毛穴を詰まらせにくいことを確認した」という意味の表示で、パッケージや公式サイトに書かれています。
ファンケル 無添加FDR アクネケアライン(医薬部外品)
公式サイトで確認したところ、ノンコメドジェニックテスト済み・皮膚科専門医監修による使用テスト済みの表示がありました。防腐剤・合成香料・合成色素・石油系界面活性剤・紫外線吸収剤を使わず、一般のニキビケアに使われる殺菌剤も入れていないラインです。ニキビを防ぐ目的の製品で、できてしまった跡を消すものではありません。
ファンケル公式でアクネケアを見る 医薬部外品 / 洗顔クリーム1,540円〜(税込・公式価格)| 品目 | 容量 | 公式価格税込 | 定期便税込 |
|---|---|---|---|
| アクネケア 洗顔クリーム | 90g(約60回分) | 1,540 | 1,460 |
| アクネケア 化粧液 | 30mL(約30日分) | 1,650 | 1,560 |
| アクネケア ジェル乳液 | 18g(約30日分) | 1,650 | 1,560 |
| アクネケア エッセンス | 8g(約50回分) | 1,980 | 1,880 |
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出典:ファンケル公式「無添加FDR アクネケアライン」(2026年9月22日確認)。価格は改定されることがあります。
30代で最初に足すなら洗顔と化粧液の2本です。理由は単純で、毎日必ず使う工程だからです。使わない日が出る工程から買うと、続きません。
まとめ:行き先は、跡の型が決めている
- 自分の跡の型を見分ける
へこみ・盛り上がり・色素沈着の3つ。赤いだけなら、まだ跡と決まっていません。
- 盛り上がりなら皮膚科でステロイド局所注射を聞く
ニキビ跡の治療で、唯一C1が付いている選択肢です。
- へこみなら、推奨できる治療がないことを知ってから決める
受けるなら厚労省の4項目を先に確認する。その日に契約しない。
- 新しいニキビを止める
推奨度Aが付いているのはこちら側。跡が増える速度を止めるのが最優先です。
- 毎日の土台をノンコメドジェニック表示のあるラインに替える
CQ44がC1を付けた唯一のスキンケア条件です。
