この記事の制度の説明は、e-Gov法令検索で条文を、厚生労働省が公表しているPDFで告示(指針)と履歴書の様式例を、それぞれ実際に開いて確認した内容だけを使っています。登録の流れは、アパレル専門の派遣求人サイトが公開している案内を筆者が読んだものです。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商として仕入れと買取の仕事をしています。確認日は本文の出典に書きました。
派遣の履歴書は、働くお店には渡りません。読むのは派遣会社だけなので、志望動機欄に「御社を志望した理由」を書く必要がありません。
派遣先が履歴書を送付させることは、派遣労働者を特定することを目的とする行為として、指針で行わないこととされています(紹介予定派遣を除く)。つまりあなたの履歴書は、雇用契約を結ぶ派遣会社で止まります。ここが正社員応募との決定的な違いで、書き方が変わるのは3つの欄だけです。
まず「誰が読むのか」から見る派遣の履歴書は、選考書類ではなく登録書類
「履歴書 派遣 アパレル 書き方」で調べる人がつまずくのは、たいてい志望動機欄です。正社員の応募なら「なぜこのブランドなのか」を書きます。ところが派遣で登録するとき、あなたはまだどの店に行くか決まっていません。ブランド名を書きようがない。ここで手が止まります。
止まって当然です。そもそも書く必要がない欄だからです。理由は、その履歴書が誰の手元まで行くかにあります。
派遣先が履歴書を送付させることは、派遣労働者を特定することを目的とする行為にあたります。紹介予定派遣を除いて、行わないこととされています。

根拠になっているのは労働者派遣法の条文です。第26条第6項に、労働者派遣(紹介予定派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならないとあります。条文だけでは「特定することを目的とする行為」が何を指すか分かりませんが、それを具体的に書いているのが厚生労働省の指針です。
読んでほしいのは、禁じられている行為が3つ並んでいることです。事前面接、履歴書の送付、若年者に限ること。この3つが同じ列に置かれています。年齢で断るのと、履歴書を先に見るのは、制度の上では同じ種類の行為として扱われている、ということです。
出典:労働者派遣法(昭和60年法律第88号)第26条第6項=e-Gov法令検索/厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号・最終改正 平成28年厚生労働省告示第379号)PDF/いずれも2026年9月8日確認
正社員応募と、書き方が変わるのは3つの欄だけ
誰が読むかが変われば、書く内容も変わります。とはいえ全部を書き直す必要はありません。変わるのは3つの欄だけです。
| 欄 | 正社員に応募するとき | 派遣会社に登録するとき | なぜ変わるか |
|---|---|---|---|
| 志望の動機 | その会社を選んだ理由を書く | やりたい仕事の中身と、続けられる条件を書く | 読むのは派遣会社。就業先はこれから決める |
| 本人希望記入欄 | 「貴社規定に従います」で済ませることが多い | ここが本番。勤務地・曜日・時間・扱いたい商材を具体的に書く | この欄が案件を絞る条件そのものになる |
| 学歴・職歴 | 在籍した会社名と役職を中心に書く | 会社名に加えて、立った売場の業態と価格帯を添える | 紹介できる案件が業態で分かれるため |
| 免許・資格 | 同じ。持っているものを取得順に書く | — | |
| 氏名・住所・連絡先 | 同じ。連絡先欄は現住所以外を希望する場合のみ書く | — | |
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順に見ます。
志望の動機|「御社」ではなく「この仕事」を書く
厚生労働省の様式例では、この欄は「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」という名前です。会社への志望理由だけを書く欄ではない、という作りになっています。
派遣登録では、売場に立ち続けたいのか、それとも売場以外に移りたいのかをここで宣言するのがいちばん役に立ちます。担当者が最初に紹介する案件の種類が、この一行で変わるからです。「接客は続けたい。ただし販売ノルマのない業態を希望」と書いてあれば、その方向で案件が絞られます。
本人希望記入欄|派遣ではここが主役になる
正社員応募では書くことが少ない欄ですが、派遣では逆です。様式例の欄名は「特に給料・職種・勤務時間・勤務地・その他についての希望などがあれば記入」。そのまま案件の絞り込み条件になります。
- 通える範囲を、駅名か路線で書く
「都内」では絞れません。「○○線沿線、乗り換えなしで40分以内」のように書くと、そのまま検索条件になります。
- 入れない曜日・時間帯を先に書く
売場は土日が繁忙です。土日に入れない事情があるなら、隠すより先に書いたほうが早く決まります。あとから出すと契約前に振り出しに戻ります。
- 扱いたい商材を書く
アパレル、バッグ、シューズ、アクセサリー、ジュエリー、コスメ、雑貨。派遣会社によっては事務・EC・コールセンターまで扱っています。書かないと、いちばん求人が多い区分から順に紹介されます。
- 時給は「下限」を書く
希望額ではなく、これを下回るなら受けないという線です。上限を書いても交渉材料になりません。
学歴・職歴|ブランド名の横に、業態と価格帯を足す
アパレルの職歴は、会社名だけでは伝わりません。同じ「販売スタッフ」でも、路面店とショッピングセンターの中では動き方が違いますし、単価1万円の店と単価10万円の店では接客の長さが違います。
元販売員として言うと、ここを書き足すかどうかで紹介の精度がいちばん変わります。「株式会社○○ ○○店 販売スタッフ」の下に、(駅ビル/メンズカジュアル/客単価1万円前後/1日平均○組の接客)と一行足すだけで十分です。売上金額を書く必要はありません。
2つ以上あてはまるなら、職歴欄を書き足す価値があります
- 会社名と店舗名だけで、業態を書いていない
- 複数のブランドを経験しているが、価格帯の違いを書いていない
- レジ・在庫・発注・売場変更など、接客以外の担当を書いていない
- アルバイトや契約社員の期間を省略している
→ 派遣会社は「どの売場に入れられるか」で読みます。肩書きより、立っていた場所の情報のほうが効きます。
履歴書そのものの様式は、正社員応募と同じでいい
ここまで書き方の違いを見てきましたが、用紙そのものは同じもので構いません。派遣専用の履歴書というものはありません。
使うのは厚生労働省の履歴書様式例です。JIS規格の解説に載っていた履歴書の様式例は令和2年7月に削除されており、その後に厚生労働省が作った様式例が公表されています。性別欄は任意記載になり、記載しないことも選べます。そして「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の4つの欄は、設けないことになりました。
様式そのものの詳しい話は、正社員の応募もふくめて別の記事にまとめてあります。用紙をどれにするか迷っている段階なら、先にそちらを見てください。
アパレル転職の履歴書|「JIS規格」はもう無い。厚労省の様式例を使う出典:厚生労働省「新たな履歴書の様式例の作成について」(LL030419就01)PDF/ハローワークインターネットサービス配布の厚生労働省履歴書様式例/2026年9月8日確認
登録の6ステップで、履歴書が要るのはどこか
実際の流れの中で、履歴書がどこで出てくるのかを見ておきます。アパレル・ファッションの販売職に特化した派遣求人サイト「派遣なび」(株式会社シーエーセールススタッフ)が公開している手順が、この業界の標準的な形です。
| ステップ | 内容 | 履歴書 |
|---|---|---|
| 1. WEBエントリー | 求人サイトのフォームから送る。担当者から確認の連絡が来る | 不要 |
| 2. 派遣登録 | 電話・WEB・LINE・来社から方法を選べる。職務経歴の確認と希望を伝える | ここで使う |
| 3. カウンセリング | 勤務地・仕事内容・就業条件を担当者と詰める | 2の内容を見ながら話す |
| 4. お仕事紹介 | 条件に合う案件を紹介してもらう | 不要 |
| 5. 店舗見学(任意) | 就業することになる店舗を自分の目で見る。任意 | 不要 |
| 6. 就業開始 | 雇用契約書など、入社に必要な書類を用意する | 不要 |
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注目してほしいのはステップ5が「見学」で、しかも任意だということです。正社員応募の面接に当たるものが、この流れの中にありません。前の章の指針のとおり、派遣先が事前に面接することは行わないこととされているからです。同社のよくある質問にも「事前見学は皆さまにお任せしております」とあり、行くかどうかを決めるのは本人の側だと書かれています。
指針にも、これに対応する一文があります。本人が自らの判断で就業開始前に事業所を訪問したり、履歴書を送ったりすることは、特定することを目的とする行為には該当しないという部分です。ただし同じ文の後半に、派遣先はそれを求めないこととする、と釘が刺してあります。行くかどうかを決めるのはあなたで、求められて行くものではないという構造です。
出典:派遣なび(株式会社シーエーセールススタッフ)「登録から就業までの流れ」「よくある質問」/2026年9月8日確認。手順は派遣会社によって異なります
紹介予定派遣だけは、正社員応募と同じ書き方に戻る
例外がひとつあります。紹介予定派遣です。ここまで見てきた「派遣先は履歴書を送付させない」という指針は、条文にも指針にも「紹介予定派遣の場合を除き」と明記されています。
紹介予定派遣は、派遣期間が終わったあとに直接雇用へ移ることを前提にした働き方です。最初から採用選考の性格を持つので、事前面接も履歴書の送付も認められています。この場合だけは、志望動機欄に会社を選んだ理由を書く意味があります。就業先が最初から決まっているからです。
紹介予定派遣で書くとき
- 就業先の会社名が分かっているので、志望動機を書ける
- 面接があるので、履歴書の内容を口頭で補足できる
- 直接雇用後の職種を前提に、職歴の見せ方を組み替えられる
通常の登録型派遣で書くとき
- 就業先が未定なので、志望動機は書けない(書かなくてよい)
- 派遣先は履歴書を見ないので、そこ向けの表現は意味がない
- 本人希望記入欄の具体度が、そのまま紹介の精度になる
アパレルで紹介予定派遣の求人がどのくらいあるかは、別の記事で実数を数えています。正社員を目指して派遣から入るつもりなら、そちらを先に見たほうが判断が早いです。
アパレルの紹介予定派遣は求人4,231件中28件|6か月で終わる正社員ルートの中身書かなくていいこと、書かされなくていいこと
最後に、書く前に知っておくと安心できる話をひとつ。求職者の個人情報の扱いには、職業安定法に決まりがあります。第5条の5第1項に、求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集するとあります。目的の範囲を超えて集めてよい、とは書かれていません。
もうひとつ、派遣先が講ずべき措置に関する指針の第2の4(1)には、派遣先は、派遣元事業主との間で労働者派遣契約を締結するに当たっては、当該労働者派遣契約に派遣労働者の性別を記載してはならないとあります。履歴書の性別欄が任意記載になったのと同じ方向を向いた決まりです。
ここまでが、履歴書1枚の話です。そのうえで、そもそもどの派遣会社・求人サイトに登録するかで、紹介される案件の幅が変わります。売場だけを扱う会社と、アパレル事務・EC・倉庫まで扱う会社があるからです。
8つの質問で、向いている登録先を出す出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の5第1項=e-Gov法令検索/厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の4(1)/2026年9月8日確認
