アパレルの給料が安い理由|統計で見ると、安いのは業界ではなく「販売店員」という職種

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アパレルの給料が安い理由

※この記事の給料の数字は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の統計表をe-Statから実際にダウンロードして読んだ値だけを載せています。求人サイトや他のまとめ記事の数字は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤー兼古物商として仕入れと買取の仕事をしています。

CONCLUSION

安いのは「アパレル」ではなく販売店員という職種です。同じ43歳・同じ勤続13年でも、販売店員と営業職では年収が229.7万円ちがいます。

年齢も勤続年数もほぼ同じなので、この差は「経験が足りない」では説明がつきません。差は職種そのものに付いています。どこを動かせば上がるのかを、公的統計の数字だけで3つに絞ります。

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あなたが調べた「アパレルの平均年収」が、やたら高かった理由

「アパレル 給料 安い」で調べると、逆に高い数字が出てくることがあります。600万円台が出てくることさえある。自分の明細と合わなくて、余計に分からなくなります。

まず、その数字の正体をはっきりさせておきます。国の統計で、アパレルの店にいちばん近い区分は「織物・衣服・身の回り品小売業」です。ここの男性の数字はこうなっています。

月額(きまって支給する現金給与額)45.1万円
年間賞与98.3万円
年収換算639.6万円
平均年齢/勤続40.3歳 / 12.4年

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」産業中分類別(I57 織物・衣服・身の回り品小売業・男・一般労働者・企業規模計10人以上)。年収換算は月額×12+年間賞与その他特別給与額。

640万円。たしかに高いです。ですが、この数字にはひとつ大きな断りがいります。この区分で数えられている男性は、全国で3万6,460人しかいません。同じ区分の女性は8万8,800人です。

補足:この調査が数えているのは「一般労働者」です。パート・アルバイトなどの短時間労働者は別集計になっており、この数字には入っていません。つまり正社員などフルタイムで働いている人だけの平均です。

男性の平均年齢が40.3歳、勤続年数が12.4年。この2つが意味するところは、はっきりしています。この640万円は「アパレルの店に長く残って、上まで行った男性」の姿であって、20代・30代で売場に立っている段階の数字ではありません。母数が3万人台しかいないのは、その手前で外に出る人が多いからです。

だから、調べると高い数字が出るのに自分の明細と合わない、という現象が起きます。あなたが見ていた平均は、あなたと同じ場所に立っている人の平均ではなかった、というだけの話です。

統計には「販売店員」という職種の欄がある

産業(どんな会社か)で切ると、いま見たようにブレます。もっと自分に近い数字を出すには、職種(どんな仕事をしているか)で切るほうが早いです。同じ調査には職種別の集計があり、そこには「販売店員」という区分があります。

販売店員・男の月額32.6万きまって支給する現金給与額
販売店員・男の年間賞与67.7万その他特別給与額を含む
年収換算459.3万平均43.1歳・勤続13.2年

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別(販売店員・男・一般労働者・企業規模計10人以上/産業計)。月額は2025年6月分。

459.3万円。さきほどの640万円とは、180万円ちがいます。同じ人たちを別の切り口で数えているだけなのに、これだけ動きます。

どちらが正しいという話ではありません。売場に立ち続ける仕事をしているなら、あなたに近いのは「販売店員」のほうです。産業の平均には、その会社の本部にいる人も、EC担当も、経理も、全部入っています。

販売員だった頃、同期が「うちのブランドの平均年収」を見せてきて、その額と自分の明細がどうしても結びつかなかったのを覚えています。あとで分かったのは、その平均には本部の人がまるごと入っていたということでした。同じ会社にいても、立っている場所で数字は別物になります。

REAL EXPERIENCE — 元アパレル販売員/元買取査定員/現ファッションバイヤー

同じ年齢・同じ勤続年数で、年収は229.7万円ちがう

ここからが、この記事でいちばん見てほしいところです。販売店員と、それ以外の販売・営業系の職種を並べます。年齢と勤続年数がほぼ同じものだけを選んでいます。

同じ年齢・同じ勤続年数でも職種で年収が違うことを示した図。販売店員459万円、その他の営業職業従事者689万円

職種(男)平均年齢勤続月額年間賞与年収換算
販売店員43.1歳13.2年32.6万67.7万459.3万
その他の商品販売従事者42.4歳13.1年39.1万106.9万576.4万
営業・販売事務従事者45.5歳16.0年42.5万129.0万638.7万
その他の営業職業従事者43.5歳14.6年44.2万158.2万689.0万

← 横にスクロールできます(男・一般労働者・企業規模計10人以上/産業計)

販売店員が43.1歳・勤続13.2年、その他の営業職業従事者が43.5歳・勤続14.6年。年齢差0.4歳、勤続差1.4年で、年収は229.7万円ひらきます。

この差の意味は大きいです。「あと数年がんばれば追いつく」という説明が、この数字では成り立たないからです。追いつく相手は、もう同じだけ働いています。

この記事の数字は、年齢・勤続年数以外の条件(学歴、企業規模、役職、地域など)をそろえていない平均どうしの比較です。「職種を変えれば必ず229.7万円増える」という意味ではありません。読み取れるのは「年齢と勤続年数では説明のつかない差が、職種の間にある」というところまでです。

差の4割は、賞与で付いている

229.7万円の中身を分解します。

  1. 月額の差:11.6万円 × 12 = 139.2万円(差の60.6%)

    販売店員32.6万円に対し、その他の営業職業従事者は44.2万円。毎月の給与明細に出る差です。

  2. 年間賞与の差:90.5万円(差の39.4%)

    販売店員67.7万円に対し、その他の営業職業従事者は158.2万円。賞与だけで2.3倍ひらいています。

賞与は毎月の明細に出てこないので、比べるときに抜け落ちがちです。ですが、差の4割はここで付いています。転職先を検討するときに月給だけを見比べていると、いちばん大きく動く部分を見ないまま決めることになります。

賞与の水準は、業態でもはっきり分かれます。

産業(男女計)年間賞与
卸売業(I50〜55)158.1万
繊維・衣服等卸売業(I51)88.4万
小売業(I56〜61)68.3万
織物・衣服・身の回り品小売業(I57)61.6万

← 横にスクロールできます(男女計・一般労働者・企業規模計10人以上)

補足:なぜ小売業の賞与が小さいのか、その理由はこの統計からは分かりません。ここで言えるのは「そういう分布になっている」という事実までです。理由の説明を載せている記事を見かけたら、その根拠がどこにあるかを確かめてください。

では、どこを動かすと上がるのか

ここまでの数字から、動かせる場所は3つに絞れます。効く順に並べます。

  1. 職種を動かす(最大229.7万円)

    いちばん大きく動きます。売場から、営業・商品仕入・EC・本部のいずれかへ。同じ会社の中に職種転換の制度があるなら、転職より先にそちらを確認してください。社内異動なら、業界知識と社内の信用をそのまま持っていけます。

  2. 賞与の出る会社に動く(業態で2.3倍差)

    販売の仕事を続けるなら、ここがいちばん現実的です。求人票の「賞与年2回」という表記だけでは何も分かりません。見るべきは支給実績の月数です。面接で「直近の賞与は基本給の何ヶ月分でしたか」と聞けば答えは返ってきます。

  3. 役職に乗る(同じ会社の中で)

    非役職者と課長級では月額が大きく動きます。ただし、アパレルの「店長」が給与規程上の役職者に当たるとはかぎりません。この軸は数字が細かいので、別記事で分解しています。

VERDICT 30代なら、まず職種の軸から手を付けてください

年齢と勤続では説明のつかない差が職種の間にある以上、同じ職種のまま年数を重ねても、この差は縮みません。動くなら、勤続年数が武器として通用するうちのほうが有利です。

VERDICT 接客そのものが好きなら、無理に職種を替えなくていい

その場合に効くのは2つめの軸です。同じ販売職でも、賞与の支給実績で年収は大きく変わります。仕事の中身を変えずに条件だけを替える、という選び方は成立します。

動く前に、給与明細から3つの数字を出す

求人票と自分の条件を比べるとき、比べる単位がそろっていないと判断を間違えます。動き出す前に、手元の明細から次の3つを出しておいてください。所要30分で終わります。

この3つが言えない状態で求人を見ても、条件の良し悪しは判断できません

  • 基本給(残業代・変動手当を抜いた額)が、月いくらか
  • 直近1年の賞与の合計が、いくらか
  • その2つを足した「賞与込みの年収」が、いくらか
  • 手取りの多い月と少ない月で、3万円以上ちがっていないか

→ 4つめにチェックが付いた人は要注意です。収入の多くが残業代と変動分でできているということで、その部分は条件交渉でほとんど評価されません。

注意:求人票の「想定年収」には、賞与も残業代も見込みで入っていることがあります。いまの自分の「賞与込みの年収」と比べないと、上がったつもりで下がることがあります。比べるなら年収どうし、月給どうしです。

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職種を替えるにしても、賞与の出る会社に移るにしても、まず必要なのはいま業界にどんな求人があるかを一度に見ることです。1社ずつ採用ページを見て回ると、比べる前に時間が尽きます。

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使うときのコツを1つだけ。求人を見るときはブランド名ではなく運営会社名で見るようにしてください。着ている服が似ていても、運営会社が違えば給与テーブルは別物です。同じ売場に立っていても、年収が100万円単位でずれるのはここが理由です。

よくある質問

アパレルの給料が安いというのは、結局そのとおりなのですか?
「業界として安い」より「販売店員という職種が、ほかの販売・営業系の職種より低い」と言うほうが正確です。令和7年賃金構造基本統計調査では、販売店員(男)の年収換算が459.3万円、その他の営業職業従事者(男)が689.0万円で、平均年齢と勤続年数はほぼ同じです。
調べると600万円台という数字も出てきます。どちらが本当ですか?
どちらも同じ調査の数字です。産業(織物・衣服・身の回り品小売業)で切ると男性は639.6万円、職種(販売店員)で切ると459.3万円になります。前者には本部やEC担当なども含まれ、対象の男性は全国で3万6,460人・平均40.3歳・勤続12.4年です。売場に立っている段階の実感に近いのは後者です。
賞与は転職を考えるときにどのくらい重要ですか?
販売店員とその他の営業職業従事者の年収差229.7万円のうち、90.5万円(約4割)は賞与の差です。月給だけを比べていると、この部分が判断から抜け落ちます。求人票の「賞与年2回」ではなく、支給実績が基本給の何ヶ月分かを確認してください。
販売の仕事を続けたまま年収を上げることはできますか?
できます。年間賞与は業態で差が大きく、男女計で卸売業158.1万円、小売業68.3万円です。同じ販売職でも、賞与の支給実績が違う会社に移れば年収は変わります。仕事の中身を変えずに条件だけを替える選び方は成立します。

まとめ

「アパレルの給料が安い」と感じているとき、原因は業界の名前ではなく、もっと手前にあります。

  1. 安いのは職種のほう

    販売店員(男)は年収換算459.3万円。その他の営業職業従事者(男)は689.0万円で、年齢も勤続年数もほぼ同じです。

  2. 差の4割は賞与

    229.7万円の差のうち90.5万円は賞与。月給だけを比べていると見えません。

  3. 動かせるのは3つ

    職種/賞与の出る会社/役職。30代なら、効き幅がいちばん大きい職種の軸から手を付けるのが順当です。

そして、動く前に自分の「賞与込みの年収」を1つの数字にしておくこと。ここがそろっていないと、求人票と比べようがありません。

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