筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在はファッションバイヤーとして仕入れの実務に関わっています。この記事では転職サービス「iDA」「ワンキャリア転職」を紹介しています。広報・PRに関するデータは公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会の公開資料を参照し、出典を明記しています(情報時点 2026年8月)。
アパレルのプレスは、服の職種ではありません。「広報(パブリックリレーションズ)」という別の職種の、ごく一部を切り出した呼び名です。
だから「服が好きです」「ブランドが好きです」で応募すると落ちます。採用側が見ているのは服の知識ではなく、誰に何をどの順で伝えるかを組み立てられるかどうかだからです。そしてここが希望のあるところで、服の経験年数では差がつかない代わりに、広報の型は数字で証明できます。元販売員で現役バイヤーの筆者が、求人票の読み分けから順にお伝えします。
求人票の「プレス」3タイプを見る「プレス」は服の職種ではなく、広報の職種です
アパレルの求人サイトで「プレス」を探すと、華やかな仕事に見えます。展示会に立ち、雑誌に服を貸し、ブランドの顔として発信する。ところが実際に選考に進むと、聞かれるのは服の話ではありません。「このブランドを知らない人に、一文で説明してください」「ネガティブな情報が出たとき、最初に何をしますか」。面食らう人が多いのですが、これは意地悪ではなく、プレスが広報職だからです。
公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会は、広報・PRを「関係性の構築・維持のマネジメント」と説明しています。同協会が紹介している日本広報学会の定義(2023年6月発表)は、こうです。「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である」。服という単語はひとつも出てきません。
同協会は、広報・PR活動には5つの機能があると整理しています。①外部情報の受信(広聴)、②外部情報の経営者・従業員への発信(情報参謀)、③社内情報の受信(社内広聴)、④内部情報の従業員への発信(社内広報)、⑤社内情報の対外的な公式発表(対外広報)です。アパレルの求人票にある「プレス」が担うのは、主に⑤だけです。

出典:公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会「PR(パブリックリレーションズ)とは」
この図の意味は2つあります。ひとつは、プレスの求人に応募するとき、あなたは「広報職の候補者」として見られるということ。もうひとつは、⑤の中でも同協会が挙げているのはマスメディア対応だけでなく、公式サイト・公式Instagram・公式YouTube・公式Xといった自社媒体(Owned Media)の活用まで含まれる、ということです。プレスの仕事の幅は、会社がこの⑤のどこを任せるかで決まります。
求人票の「プレス」は3つに分かれる
ここがこの記事のいちばん大事なところです。同じ「プレス」という職種名でも、⑤の対外広報をどこまで単独で担うかで、仕事の中身がまるごと変わります。求人票はその区別を書いてくれないので、図にしました。

TYPE 1:対外広報型プレス
いわゆる本来のプレスです。メディアの担当者と関係を作り、リリースを書いて配信し、サンプルの貸し出しを管理し、取材や問い合わせの一次窓口になります。広報部・PR部に置かれることが多く、会社の中で「情報の出口」を単独で預かるポジションです。
ここで効くのは、服の知識より文章と段取りです。編集者が締切に間に合う形で情報を渡せるか。貸し出したサンプルが期日に戻り、次の撮影に回せるか。地味ですが、ここを外す人は続きません。逆に言えば、服の経験が浅くても、この2つができる人は評価されます。
TYPE 2:マーケ一体型プレス
公式SNSとオウンドメディアの運用、ECの特集やLPの企画まで含むタイプです。マーケティング部やEC部に置かれ、施策の数字まで見ることになります。外部のPR会社と組む体制の会社では、社内側の窓口としてこの形になることもあります。
先ほどの5機能で言えば、同協会が⑤対外広報の中に挙げている自社媒体(Owned Media)の比重が大きいタイプです。販売やECの経験がそのまま材料になるのはここで、30代・業界内から動く人にとっては入りやすい入口になります。「何が売れたか」を数字で語れる人は、この求人で強く出られます。
TYPE 3:販売兼務型プレス
店頭に立ちながら発信も担うタイプです。撮影のスタイリングや着用、SNSへの投稿を業務の一部として持ちます。肩書きはプレスでも、勤務の実態は販売寄りになります。
これを悪い求人だと言いたいわけではありません。ブランドが小さいうちは、この形しか作れないのが普通です。ただ「プレスの経験を積むつもりで入ったのに、3年経っても職務経歴書に書ける広報の実績がない」という事故が起きやすいのはここです。応募前に、発信が業務のどれくらいを占めるのかを確認してください。
| タイプ | 主に担うもの | 置かれる部署 | 効く経験 | 30代からの入りやすさ |
|---|---|---|---|---|
| TYPE 1 対外広報型 | メディア対応・リリース・貸し出し | 広報部・PR部 | 文章と段取り | 広報の型を示せるかで決まる |
| TYPE 2 マーケ一体型 | 公式SNS・オウンドメディア・EC | マーケ部・EC部 | 販売やECの数字 | 業界内から動くなら現実的 |
| TYPE 3 販売兼務型 | 店頭業務+発信 | 店舗・営業部 | 接客と商品知識 | 入りやすいが実績が残りにくい |
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売れた理由と売れ残った理由を数字で説明できる人は、この求人で他の候補者と差がつきます。服が好きという話をしなくても、必要なことが言えるからです。まずTYPE 2で広報の実務に入り、そこから対外広報へ広げるほうが、遠回りに見えて早いことが多いです。
不可能ではありません。ただ、対外広報を単独で預けるポジションは数が少なく、空いても社内異動か、実績のある人で埋まります。ブランドを1社に絞って求人を待つ時間のほうが高くつきます。職種で探して、ブランドは後から選び直してください。
3つのルートを、正直に評価する
どのルートも「頑張れば行ける」で片づけると、時間を失います。30代・アパレル業界内から動く前提で、正直なところを並べます。
評価の根拠は、筆者が仕入れの仕事で各ブランドのプレス・広報の担当者と接してきた実感です。公的な統計ではありませんので、目安として見てください。
展示会でいちばん印象に残っているのは、あるブランドのプレスの方が、同じ服を相手によって全然違う言い方で説明していたことです。バイヤーの私には「この生地は前期より2割軽くなっていて、春の頭出しに使えます」。隣にいた雑誌の編集者には「今シーズン、軽さで遊べる一着です」。同じ商品なのに、渡す情報が違いました。あとで理由を聞いたら、「編集者が誌面に書ける言葉で渡さないと、そもそも載らないので」と言われました。プレスの仕事は服を語ることではなく、相手が使える形に情報を切り分けることなのだと、このとき分かりました。
求人票で見るべき4点
職種名が同じでも中身が違う以上、判別は本文から読み取るしかありません。見るのはこの4か所です。
- 「メディアリレーションズ」「プレスリリース」という語があるか
あればTYPE 1です。逆に「SNS運用」「オウンドメディア」「EC」「KPI」が並んでいればTYPE 2、「店舗業務あり」「シフト」が混ざればTYPE 3です。この3組の語で、応募前にほぼ振り分けられます。どれも出てこない求人は、会社側も仕事の中身を決めきれていない可能性があります。
- 配属先の部署名が書いてあるか
広報部・PR部なのか、マーケティング部・EC部なのか、店舗・営業部なのか。ここが書かれている求人は、仕事の範囲がすでに決まっています。書かれていない求人は、面接で必ず聞いてください。同じ「プレス」でも、部署が違えば評価される軸が変わります。
- PR会社を使っているかどうか
外部のPR会社と組んでいる会社では、社内のプレスは「PR会社への発注と社内調整」が中心になります。自分でリリースを書いて配信する経験は積みにくい代わりに、施策を設計する側の経験が積めます。どちらが向くかは、目指すキャリアによります。面接で「PR会社は入っていますか」と聞くだけで分かります。
- 危機対応がミッションに含まれているか
「リスク管理」「危機管理広報」の記述がある求人は、広報職として本気で採る会社です。負担は増えますが、職務経歴書にいちばん書ける経験でもあります。記述がなくても、実際には窓口になることが多いので、体制を面接で確認しておくと入社後のずれが減ります。
3つ以上あてはまるなら、いま動いて勝ち目がある側です
- 売れた商品と売れ残った商品の理由を、数字を添えて説明できる
- 同じ商品を、客・上司・取引先で言い方を変えて説明したことがある
- 締切のある依頼を、催促されずに出せる
- 自分が好きな服と、いま伝えるべき服を切り離して考えられる
- ブランドに不都合な話が出たとき、隠すより先に整理する側に立てる
→ 3つ以上なら、職種を指定して求人を探す段階です。0〜1個なら、プレスより販売・MD・バイヤー側のほうが力が出る可能性があります。
iDA
アパレル・ファッション業界に特化した人材紹介サービスです。「販売(またはEC)からプレス・広報側へ移りたい」と職種を指定して相談し、条件に合う求人があるかを確認するのが早い進め方です。登録・相談は無料です。
iDAで職種を指定して相談する 登録・相談は無料 / アパレル・ファッション業界専門の人材紹介服の知識では差がつかない。広報の型は数字で証明できる
ここからが、30代から動く人にとっていちばん使える話です。プレスの選考で服の知識を武器にしようとすると、相手も服の会社なので差がつきません。ところが広報の型のほうは、公的な資格試験の形で外から証明できます。
日本パブリックリレーションズ協会が主催する「PRプランナー資格認定制度」です。認定は3段階(PRプランナー補/准PRプランナー/PRプランナー)で、それぞれ1次・2次・3次の検定試験に対応しています。上の資格を取るのに下の資格を持っている必要はありません。
この制度で30代の転職者にとって決定的に重要なのが、次の2点です。
出典:PRプランナー資格認定制度/検定試験「実施要項」(主催:公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会)
つまり入口は完全に開いていて、上の段だけが実務経験で閉じているということです。いま広報の実務経験がない人でも1次は今日から受けられますし、2次も1次に受かれば受けられます。3次だけが「3年以上の広報・PR関連実務経験者」に限られます。転職活動で使うなら、まず1次です。
合格率を年代別に見ると、これは30代の資格です
同制度は第1回から第39回までの累計を公開しています。受験者数と合格者数から年代別の合格率を計算すると、こうなります。
| 試験 | 20代(以下) | 30代 | 40代以上 | 全体 |
|---|---|---|---|---|
| 1次(受験資格なし) | 66.0% | 80.3% | 78.4% | 73.7% |
| 2次(1次合格者) | 69.3% | 78.3% | 81.7% | 76.5% |
| 3次(実務3年以上) | 49.9% | 50.5% | 40.0% | 46.4% |
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出典:PRプランナー資格認定制度/検定試験「過去の合格率(1次試験)」ほか2次・3次の同ページ(第1回〜第39回累計)。公表されているのは受験者数と合格者数で、年代別の合格率は筆者が計算したものです
1次試験の30代の合格率は80.3%で、全年代のなかでいちばん高い数字です。20代以下の66.0%より14ポイント上にあります。社会人の経験がそのまま点になる出題だからだと考えられます。
受験者の構成を見ると、もっとはっきりします。1次では20代以下が43.4%を占めますが、2次になると30代が40.8%で最多になり、3次では30代が43.6%と最も多くなります。段が上がるほど30代の比率が上がる制度です。
1次33.8%/2次40.8%/3次43.6%(同上の公開データより。バーは5段階の目安表示です)
もうひとつ。1次試験の受験者を業種別に見ると、PR業・PR関連業が22.7%、一般企業の広報PR関連が38.9%で、「一般企業(その他)」=広報以外の部署から受けている人が12.3%(2,315名)います。広報の外にいる人が受けに来ている試験だ、ということです。男女比も、累計の受験者は男性7,715名・女性11,084名で、男性が約4割を占めています。
1次試験のテキストは公式に1冊だけ決まっています
同制度の公式テキストは、1次試験用が『広報・PR概説』、2次・3次試験用が『広報・PR実践』です。まず買うのは1次用の1冊で足ります。A5判349ページ、定価2,750円(税込)、発行は同友館です。内容は広報・PRの基本、企業経営と広報・PR、メディアリレーションズ、マーケティング、ブランド、危機管理広報などで、各章末に参考問題が付いています。
仕様・定価はPRプランナー資格認定制度/検定試験「公式テキスト/参考図書」による。販売価格は変動します(調査時点)。対応する試験回は版によって変わるので、購入前に公式ページで最新版をご確認ください
30代から動くときの順番
- 3タイプのどれを狙うかを先に決める
ここを決めないまま「プレス」で検索すると、中身の違う求人が混ざって出てきます。決めてから探すと、見るべき求人が大きく減ります。決められないときは、TYPE 2(マーケ一体型)から当たってください。販売やECの経験がいちばん効き、入ってから対外広報側へ広げられます。
- 職務経歴書を「伝えた実績」で書き直す
「個人売上◯位」ではなく、「入荷が遅れた品番について、入荷前に店頭とSNSで告知の順番を変え、入荷週の消化率を落とさずに済ませた」のように書きます。同じ経験でも、広報側に伝わる形になります。伝えた相手・伝えた順番・結果、の3点で1件です。
- 広報の型を1行足す
PRプランナー1次は受験資格がなく、いつでも受けられます。受験中なら「学習中」でも書けます。服の知識で差がつかない選考で、ここだけは客観的に示せます。
- アパレル専門の窓口で、職種を指定して出してもらう
プレス・広報の求人は数が多くありません。総合型の求人サイトで「アパレル プレス」と検索すると、販売職の求人に埋もれます。業界に特化した人材紹介のほうが、職種を絞った求人が出てきやすくなります。
- 事業会社側は「中の人の話」で調べる
メーカーや小売の本社広報まで視野に入れるなら、会社ごとの中の様子を先に調べておくと面接でずれません。転職者の体験談やクチコミが載っているサイトを併用してください。
- 在職中に動く
プレス・広報の求人は出方に波があります。辞めてから探すと、条件の合わない求人に飛びつきやすくなります。店舗勤務でも面接は組めます。
アパレル専門の窓口と、総合型の転職サイト
どちらが良い悪いではなく、向いている使い方が違います。職種を変える転職では、この違いがそのまま結果に出ます。
アパレル専門の人材紹介
職種で探す- 「販売からプレスへ」がそのまま通じる
- 職種を指定して求人を出してもらえる
- 表に出ていない求人に当たることがある
- 担当者との相性で結果が変わる
総合型の転職サイト
会社を調べる- 事業会社の広報職まで視野が広がる
- 転職者の体験談やクチコミが読める
- 自分のペースで検索できる
- 「アパレル」で引くと販売職が大半を占める
アパレルの中で職種を変える転職は、業界の外の人には説明が要ります。その説明が要らない相手を選ぶだけで、面談の1回目から話が進みます。そのうえで、応募先の会社そのものを調べる作業は、総合型のサイトのほうが向いています。使い分けてください。
iDA
アパレル・ファッション業界に特化した人材紹介サービスです。販売職の求人が中心と思われがちですが、業界内での職種変更の相談窓口としても使えます。「プレス・広報側に移りたい」という希望と、狙うタイプ(対外広報型かマーケ一体型か)を最初に伝えたうえで、どの求人があるかを確認するのが早い進め方です。登録・相談は無料です。
iDAに無料登録する 登録・相談は無料 / アパレル・ファッション業界専門の人材紹介ワンキャリア転職
企業ごとのキャリアパス・社員のクチコミ・選考対策・転職体験談が載っている転職サイトです。応募先の会社について「入った人が実際にどう感じたか」を先に読めます。アパレルに特化したサイトではないので、メーカーや小売の本社広報まで視野を広げるときの下調べに向いています。登録は無料です。
ワンキャリア転職で会社を調べる 登録は無料 / 転職体験談・クチコミ・選考対策よくある質問
アパレルのプレスは未経験からでもなれますか?
PRプランナーの資格は転職に必要ですか?
PRプランナーの上位資格まで取ったほうがいいですか?
販売員の経験は、プレスの選考で評価されますか?
「プレス」と「広報」は求人票でどう違いますか?
まとめ
アパレルのプレスは、服の職種ではありません。広報・PRという職種の、5つの機能のうち⑤対外広報だけを切り出した呼び名です。だから「服が好きです」では通りません。見られているのは、誰に何をどの順で伝えるかを組み立てられるかどうかです。
そして求人票の「プレス」は、対外広報型・マーケ一体型・販売兼務型の3つに分かれます。どれを狙うかを決めないまま応募すると、受かっても中身が外れます。販売やECから動くなら、経験がいちばん効くマーケ一体型から当たるのが現実的です。
服の知識では差がつきません。ですが広報の型のほうは、外から証明できます。PRプランナー1次試験は受験資格がなく、第1回から第39回までの累計で30代の合格率は80.3%と全年代の最高です。段が上がるほど30代の比率は増え、3次では受験者の43.6%が30代です。これは30代が主役の分野だ、ということです。職種を決めて、証明を1行足して、専門の窓口で探す。この順番で進めてください。
