※この記事の給料の数字は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(mhlw.go.jp)の図表データを実際にダウンロードして読んだ値だけを載せています。求人サイトや他のまとめ記事の数字は使っていません。筆者は元アパレル販売員・元買取査定員で、現在は古物商としてブランド古着の買取業を営んでいます。
卸売業・小売業で働く男性の給料は、30〜34歳で月31.7万円。ただしこれは残業代も賞与も入っていない額です。
「アパレル社員の給料はいくらか」は、金額そのものよりどの数字の話をしているかで答えが変わります。まず言葉をそろえて、そのあと金額を決めている3つの条件を見ていきます。
給料を決めている3つを見るまず「給料」という言葉をそろえます
アパレルの給料を調べると、サイトごとにまるで違う数字が出てきます。300万円台と書いてあるところもあれば、450万円と書いてあるところもある。これはどこも嘘をついていないのに、数えているものが違うから起きます。
国が毎年やっている調査に「賃金構造基本統計調査」があります。給料の話をするときに、いちばん出どころがはっきりしている数字です。ただしこの調査でいう「賃金」には、はっきりした定義があります。公式の用語定義ページにはこう書かれています。
つまり、この記事にこれから出てくる数字はいわゆる「基本給まわり」だけです。次のものは入っていません。
入っているもの
- 基本給
- 役職手当・地域手当など、あらかじめ決まっている手当
- 税・社会保険料を引く前の額(額面)
入っていないもの
- 残業代・深夜手当・休日出勤手当
- 賞与(ボーナス)
- 販売インセンティブなど変動する分
ここが大事です。この数字を12倍しても年収にはなりません。賞与が入っていないからです。求人票の「想定年収」は賞与も残業代も足した数字なので、比べると必ず求人票のほうが大きく見えます。同じものを比べていないだけで、どちらかが盛っているわけではありません。
数字で見ると、いくらか
もうひとつ先に断っておきます。この調査で公表されている区分に「アパレル販売員」という項目はありません。いちばん近いのが「卸売業,小売業」という産業の区分です。以下の数字はすべてこの区分のものです。

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第5-2表(卸売業,小売業・男・一般労働者/2025年6月分の所定内給与額)
グラフの形を言葉にすると、こうなります。
- 20代前半は、ほかの業界と横並び
20〜24歳は24.6万円で、産業計(24.6万円)とほぼ同じです。「アパレルは最初から安い」というイメージがありますが、少なくとも所定内給与で見るかぎり、入口の水準はそこまで変わりません。
- 30代前半でいちばん差が開く
30〜34歳は31.7万円。産業計の33.0万円より月1万3,500円ひくい。年齢別で見て、この差がいちばん大きくなるのがここです。同期が別の業界にいると、この時期にいちばん見劣りします。
- 35歳を過ぎると追いつき、40代後半で追い越す
35〜39歳は36.5万円で産業計とほぼ並び、45〜49歳では43.5万円と産業計(42.1万円)を上回ります。伸びが止まる業界ではなく、伸びるタイミングが遅いというのが数字の形です。
販売員をしていた頃、給与明細を見て「基本給ってこんなに少なかったのか」と思ったのを覚えています。手取りの感覚は残業と手当でできていて、基本給だけを見たことがなかった。あとで転職の条件交渉をするとき、基準になるのはその基本給のほうでした。
給料を決めているのは、業界ではなく3つの条件
ここからが本題です。同じ「アパレルの社員」でも、月の給料は人によって10万円以上ちがいます。その差を作っているのは業界ではなく、雇用形態・会社の規模・役職の3つです。同じ統計から、それぞれの効き幅を出しました。

1つめ:正社員かどうか(月14万4,900円)
いちばん効きます。卸売業,小売業で見ると、正社員・正職員が37.4万円、正社員・正職員以外が22.9万円。正社員を100としたときの水準は61.3です。同じ売場に立って、同じ商品を売っていても、これだけ違います。
2つめ:会社の規模(月6万6,000円)
ここは見落とされがちです。30〜34歳の男性で比べると、大企業 36.6万円/中企業 31.5万円/小企業 30.0万円。大企業と小企業で月6万6,000円ちがいます。
| 年齢階級 | 大企業 1,000人以上 | 中企業 100〜999人 | 小企業 10〜99人 |
|---|---|---|---|
| 30〜34歳 | 366.4 | 315.4 | 300.4 |
| 35〜39歳 | 420.0 | 342.3 | 324.6 |
| 40〜44歳 | 464.8 | 376.8 | 343.3 |
← 横にスクロールできます(単位:千円・男・産業計)
注目してほしいのは、年齢が上がるほど差が広がるところです。30代前半で6.6万円だった差は、40代前半で12.2万円になります。規模の大きい会社ほど昇給の階段が長い、ということです。
アパレルは、同じ「ブランドの販売員」でも運営会社の規模が大きく違う業界です。大手の傘下ブランドと、数十人規模の会社が運営する店では、着ている服が似ていても給与テーブルが別物になります。ブランドではなく運営会社を見る癖をつけるだけで、選択肢の見え方が変わります。
3つめ:役職に就いているか(月8万8,700円)
非役職者が31.1万円、係長級が39.9万円、課長級が52.9万円です。役職がひとつ上がるだけで、規模を変えるより大きく動きます。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第8表(産業計・男女計/単位:千円)。非役職者の平均は41.8歳・勤続10.8年、係長級は45.4歳・勤続17.5年。
ただし、ここには落とし穴があります。アパレルの「店長」が、この区分でいう役職者に必ず当たるとはかぎりません。会社によって、店長は係長級として扱われることもあれば、非役職者のまま店舗手当が付くだけのこともあります。自分の会社の給与規程で、店長がどの等級に置かれているかを確認してください。ここを確認しないまま「店長になれば上がる」と思って走ると、上がらないことがあります。
自分は、どこが下がっているのか
3つの軸のうち、あなたが下側にいるのはどれか。ここを1つに絞ります。
あてはまるものにチェックしてください
- いまの月の所定内給与(残業代と手当を抜いた額)を、明細を見ずに言えない
- 勤め先の全社員数が100人未満だ
- 入社してから等級・役職が一度も上がっていない
- 自分の会社の昇給テーブルがどうなっているか知らない
- 手取りの多い月と少ない月で、3万円以上ちがう
→ 3つ以上なら、転職を考える前に「自分の給料の中身を分解する」段階です。
とくに最後の項目にチェックが付いた人は要注意です。月によって手取りが大きくぶれるということは、収入の多くが残業代と変動分でできているということです。この部分は転職の条件交渉ではほとんど評価されません。基準になるのは所定内給与のほうです。
「給料が安い」と感じているときの原因は、金額そのものより内訳の偏りにあることが多いです。基本給・固定手当・残業代・賞与の4つに分けて、それぞれが年間でいくらかを出す。所要30分で、動くべき軸が1つに決まります。
統計に出てこない部分をどう扱うか
正直に書いておきます。アパレルの給料でよく話題になるもののうち、公的な統計で確認できないものがあります。この記事では数字を出しません。
統計で確認できるもの
- 月の所定内給与額(年齢・産業・企業規模・役職・雇用形態ごと)
- 平均年齢と平均勤続年数
- 前年からの増減率
確認できないもの
- 販売インセンティブ・個人歩合の相場
- 社販の負担がいくらになるか
- ブランドごと・会社ごとの給与テーブル
- 賞与が何か月分か
右側は、業界のなかで語られはするものの、出どころのある数字が存在しません。だからこそ、右側は統計ではなく実物で確かめるしかないというのが結論になります。方法は2つです。
確かめ方は2つ。順番があります
先に本音を書いておくと、転職サービスはボランティアではありません。あなたが登録したり転職したりすることで報酬を受け取るビジネスです。だから合わなければ使うのをやめていいし、紹介された求人が微妙なら断っていい。主導権はこちら側にあります。そのうえで、この2つは役割が違うので、順番に使ってください。
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数字が分かったあと、何をするか
- いまの所定内給与を確定させる
直近の給与明細から、残業代と変動手当を抜いた額を出します。これがあなたの「比べられる数字」です。この記事のグラフと同じ土俵に立ちます。
- 3つの軸のうち、下がっているものを1つ決める
雇用形態・会社の規模・役職。全部を同時に動かそうとすると失敗します。いちばん効くのは雇用形態ですが、すでに正社員なら残りは規模と役職の2つです。
- 社内で動かせるかを先に確かめる
役職の軸は、転職しなくても動くことがあります。等級制度と昇格の要件を人事に聞く。ここで道があるなら、転職より確実で早いです。
- 動かせないと分かってから、外を見る
社内に道がないと確認できてから求人票を見ると、条件の比較が具体的になります。順番を逆にすると「なんとなく今より良さそう」で決めてしまいます。
もうひとつ。この業界にいると、店頭で扱っている商品の中古市場での値段を知る機会がほとんどありません。定価しか知らない販売員と、二次流通の相場まで見ている販売員では、とくに高額品を扱う店で見え方がまったく違います。査定の考え方は、そのまま商品知識の裏づけになります。
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アパレル社員の給料は、ほかの業界より安いのですか?
この記事の金額に、ボーナスや残業代は入っていますか?
店長になれば給料は上がりますか?
給料を上げるには転職しかないですか?
まとめ
「アパレル社員の給料はいくらか」への答えは、卸売業・小売業で働く男性なら30代前半で月31.7万円、35〜39歳で36.5万円(所定内給与額・2025年6月分)。ただしこれは残業代も賞与も入っていない額で、年収ではありません。
そして金額を作っているのは、業界ではなく雇用形態・会社の規模・役職の3つです。店を替えても、この3つが変わらなければ金額はほとんど変わりません。逆に、このうち1つを動かせば月6万〜14万円の幅で変わります。
まずは明細を開いて、自分の所定内給与を出すところからです。比べる数字が手元にないと、求人票を見ても判断できません。
