※この記事で紹介する「ShockMania」は、当サイト運営者が運営するG-SHOCK・カシオ腕時計の買取サービスです。筆者は元買取査定員で、その経験に基づいて書いています。数字と仕様は、セイコー・シチズン・カシオの公式ページを実際に開いて確認しました(確認日:2026年10月9日)。
急に進む・遅れる・針だけズレた。その多くは故障ではなく磁気帯びです。そしてクオーツと機械式で、やることが正反対になります。
クオーツは離して合わせ直すだけで戻ります。機械式は離しても戻らず、脱磁という作業が要ります。この切り分けを先にやらないと、直るものを修理に出し、直らないものを放置することになります。
まず自分の時計のタイプを見るタイプが3つある。起きることが全部違う
「時計が磁気に弱い」とひとくくりにされますが、中身の仕組みで症状も直し方も変わります。メーカー3社の公式説明を突き合わせると、はっきり3つに分かれました。
| タイプ | 磁気を受ける部品 | 起きること | 離したら戻る? |
|---|---|---|---|
| デジタル表示 | — | 影響を受けない | そもそも狂わない |
| アナログクオーツ | ステップモーター(磁石入り) | 一時的に止まる・進む・遅れる | 戻る(ただし針ズレは残る) |
| 機械式 | ひげぜんまい(鉄) | 部品が磁化して精度が狂う | 戻らない。脱磁が必要 |
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出典:シチズン「磁気についての注意」/セイコー 取扱説明書 4R34「耐磁性能について」/2026年10月9日確認
デジタルが無事なのは、時を刻むクオーツ発振器そのものは磁気の影響を受けないからです。狂うのはいつも「針を回す部分」か「ひげぜんまい」。ここを押さえると、次の判断が早くなります。
カシオの公式サポートは「電波時計の場合でも自動では直りませんので、必ず修正が必要です」と明記しています。電波を受信しても、ズレた針の位置までは直りません。例外はタフムーブメント(Tough MVT.)搭載機で、これは既定の時刻になると自動で修正されます。
出典:カシオ お客様サポート「時刻が合っていない(遅れ・進み)」/2026年10月9日確認
磁気帯びかどうかの見分け方(方位磁針を使ってはいけない)
ネット上でよく見かけるのが「方位磁針を時計に近づけて、針が振れたら磁気帯び」という確認方法です。これはやらないでください。
代わりに、起きたことの中身で切り分けます。
2つ以上あてはまるなら、磁気帯びの可能性が高い
- ある日を境に、急に1日5分以上ずれるようになった
- 落としたりぶつけたりした覚えがない
- スマホと同じポケット、またはノートPCの横に置く習慣がある
- マグネットで留めるバッグや財布を毎日使っている
- デジタル表示は合っているのに、針だけが合っていない
→ 2つ以上なら、修理に出す前にまず「離して、合わせ直す」を試す段階です。
経年による精度低下は、何年もかけてじわじわ進みます。対して磁気帯びはある日いきなり始まる。この「急に」が、いちばん分かりやすい目印です。
裏ぶたの刻印を見ると、離すべき距離が書いてある
自分の時計がどれくらい磁気に強いかは、裏ぶたの刻印で分かります。日本産業規格(JIS B 7024-1994)で水準が決まっていて、シチズンは刻印の文字列まで公開しています。

ここに、他ではあまり見ない逆転があります。同じ「刻印なし」でも、セイコーの指定はクオーツが10cm以上、機械式が5cm以上。クオーツのほうが2倍遠ざけろと書いてあります。「機械式のほうが磁気に弱い」という通説と逆です。
理由は構造です。機械式で影響を受けるのはひげぜんまい1点ですが、クオーツは針を回すモーターそのものが磁石で動いているため、外から磁気が加わると回転が直接乱れます。
自分でできること、やらないほうがいいこと
クオーツなら、ここまでで終わることがほとんどです。公式が案内している手順はシンプルです。
- 磁気の発生源から時計を離す
まずポケットやデスクから物理的に遠ざけます。スマホ、ACアダプター、磁気ネックレス、スピーカーのある機器。これだけでクオーツは正常な動きに戻ります。
- 時刻とカレンダーを合わせ直す
動きが戻っても、ズレた分は残ったままです。手動で合わせます。電波時計でも針位置は自動で直りません。
- 針位置(基準位置)を確認する
秒針が目盛からわずかに外れているなら、基準位置合わせが要ります。手順は機種ごとに違うので、取扱説明書を見てください。
- 数日ようすを見る
これで精度が戻れば磁気帯びでした。戻らないなら、残留磁気か別の不具合です。次の章へ進みます。
問題は機械式です。離しても戻りません。ひげぜんまい自体が磁石になってしまうので、磁気を消す「脱磁」という作業が要ります。そこで出てくるのが、数千円で買える家庭用の消磁器です。
自分で脱磁してもいい時計
- 1万円台までの実用機械式
- 保証がとっくに切れている
- 最悪ダメでも諦めがつく
- すぐ試したい
店に出したほうがいい時計
- 保証期間が残っている
- 10万円を超える、または思い入れがある
- 最後のオーバーホールから3年以上
- 脱磁しても精度が戻らなかった
セイコーの取扱説明書は、磁化した場合は「磁気抜き等の修理が必要となりますので、お買い上げ店にご依頼ください」としています。家庭用の消磁器はメーカーが案内しているものではありません。大事な1本でいきなり試す道具ではない、という位置づけで考えてください。
店に出すと、いくら・何日かかるのか
ここは各社で開示の度合いがかなり違いました。一般向けに料金表を公開していたのはシチズンだけです。セイコーは「お買い上げ店またはお客様相談室へ」とだけ案内していて、金額の掲載がありません。カシオの料金ページは当方から開くことができませんでした。
出典:シチズン「修理料金について」/同「修理は何日かかりますか?」/2026年10月9日に筆者が集計
注目したいのは3つ目です。公式の料金表に「脱磁」という項目はありません。脱磁は分解掃除に含まれる作業という扱いで、単独のメニューにはなっていない。つまり「磁気を抜くだけ」で安く済むとは限らないということです。
ただしシチズンは、こうも書いています。「弊社では、修理お預かりした時計に残留磁気がある場合は必ず脱磁を行います」。別件で修理に出せば、磁気の分は一緒に面倒を見てもらえます。
シチズンの内装修理(分解掃除)の料金レンジを見る
公式料金表に載っている一般機種のうち、修理を受け付けている598機種の内装修理は6,600円〜30,800円でした(最多は16,500円で252機種、次が18,700円で134機種)。ザ・シチズン、カンパノラ、エコ・ドライブ ワンなど「オーナーズクラブ」対象製品は別料金で、44,000円・49,500円・57,200円・67,100円・82,500円の5段階です。いずれも税込で、2026年10月9日時点の掲載額です。
セイコーは金額こそ出していませんが、頻度の目安は明記しています。機械式は2年〜3年に1度の分解掃除。そして磁気については、「磁気の除去および精度の再調整作業は、保証期間にかかわらず有料」。買ったばかりでも、磁気帯びは無料修理の対象外です。
じつは「直せない時計」のほうが多い
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。シチズンの公式料金表に載っている機種番号を筆者が全件数えました。
シチズン公式料金表 1,937機種のうち、修理を受け付けている割合
出典:シチズン「修理料金について」の掲載機種を筆者が集計(2026年10月9日時点)。「部品保有期間が過ぎたため、修理できません。」と表示された機種を修理不可として数えました
1,937機種のうち1,339機種、じつに69.1%が「部品保有期間が過ぎたため、修理できません」。セイコーも補修用性能部品の保有期間を「通常7年」と明記しています。
これが意味するのは、磁気帯びを「まあいいか」で放置している数年のあいだに、直す選択肢そのものが消えるということです。10年前のモデルなら、今まさにその境目にいます。
修理代が時計の値段を超えるなら、直さずに手放すのも立派な答えです。そしてこれも部品があるうちのほうが値が付きます。「動くけれど少し狂う」状態と「部品が無くて直せない」状態では、査定が別物になるからです。
査定の現場で「急に狂うようになった」と言われた時計を、その場で持ち主のスマホから離して預かると、翌日には普通に動いていることがよくありました。壊れていたのではなく、ずっと磁石の横に置かれていただけです。いちばん多かった原因は、意外にもスマホそのものではなく、マグネットで閉じる手帳型のスマホケースでした。
磁気帯びを二度と起こさない置き方
公式が名指ししている発生源を、3社分まとめました。意外なものが入っています。
- スマホと同じポケットに入れない
本体のスピーカー部に加えて、カバーのマグネット部が名指しされています。手帳型ケースの留め具は、時計のすぐ隣に来ます。
- マグネット留めのバッグ・財布に注意する
3社とも「バッグの磁石の止め金」「カバンの留め金等に使用されている永久磁石」を挙げています。毎日触れるぶん、影響の時間が長くなります。
- ノートPCやACアダプターの横に置かない
帰宅後に時計を外してデスクに置く場所が、たまたまアダプターの真横、というのがよくある形です。
- 磁気ネックレス・磁気枕と一緒に寝ない
磁気健康機器は3社とも明記しています。つけたまま寝る習慣があるなら、時計は別の部屋に置くほうが確実です。
- 店の出口とレジまわりでは手首を近づけない
カシオだけが挙げているのが「お店のカウンターにある盗難防止装置」です。タグを外す装置は強力な磁石を使っています。
出典:セイコー 取扱説明書「耐磁性能について(磁気の影響)」/シチズン「磁気についての注意」/カシオ お客様サポート/2026年10月9日確認
裏を返せば、置き場所を1か所決めてしまえば、この問題はほぼ起きません。玄関でも寝室でもかまいません。電源タップとスマホから50cm離れた棚が1つあれば十分です。
まとめ:今日やることは2つだけ
長くなったので、最後に絞ります。
戻ればクオーツの磁気帯びで、費用はゼロです。戻らなければ機械式の磁化か別の不具合なので、部品があるうちに店に相談してください。放置して得をすることは、この件に関しては一つもありません。
